葬儀のトラブル事例|実際に多いのはこの5つ

相談は年に900件台。金額の大小ではなく、どこでつまずいたかで対応が変わります

葬儀のトラブル事例|実際に多いのはこの5つ

葬儀の費用でつまずく人は、めずらしくありません。全国の相談窓口には、年に900件台の相談が寄せられています。

ただ、ひとくちに「高かった」といっても、中身はさまざまです。つまずいた場所によって、確認することも、相談先も変わります。

ここでは実際に多い5つの形を並べます。ご自身がどれに近いかを見つけてください。

葬儀のトラブルは5つの形に分かれる。まず自分がどれに近いかを見つける
葬儀のトラブルは5つの形に分かれる。まず自分がどれに近いかを見つける(作図: 弁護士による葬儀ガード)

相談は年に900件台。半分以上が「料金」

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料に、件数が出ています。

年度相談件数うち「高価格・料金」
2019年度632件33.2%
2024年度978件—
2025年度917件52.6%

件数そのものより、割合の変化が目を引きます。6年で、料金に関する相談が3分の1から半分以上になりました。

同じ資料は、令和6年の死亡数が約161万人だったことにも触れています。調査開始以来もっとも多い数字です。

葬儀の件数が増えれば、相談も増えます。特別な人が特別な目に遭っている、という話ではありません。

① 「家族葬50万円」が200万円になった

公表されている相談事例のひとつです。表示を見て依頼したところ、高額なプランを案内された。見積書には明細がなく、追加費用も出て、総額が200万円を超えた。

ここでつまずいた原因は、はっきりしています。見積書に明細がなかったことです。

明細がなければ、50万円のプランに何が含まれていたのかを、後から確かめられません。「これは入っていたはず」と言おうにも、根拠になる書面がないのです。

② チラシの30万円が、契約では80万円だった

もうひとつの事例です。一日葬は約30万円というチラシを見て依頼したところ、契約は約80万円になった。含まれるものもチラシと違っていた。

①との違いは、契約の時点ですでに金額が動いていることです。後から増えたのではありません。

この場合に聞くことは、ひとつだけです。

「チラシの30万円では、なぜできないのでしょうか。何が足りないのか教えてください」

答えは、たいてい2つに分かれます。

答え意味すること
「もっと良いプランを選ばれたので」選ぶ過程で何を説明されたかが問題になる
「火葬料と式場代は別途なので」最初にそう言うべきだったという話になる

後者なら、有利なことだけを告げて不利なことを伝えなかった、という評価になり得ます。

③ 病院で紹介された葬儀社に、そのまま頼んだ

金額そのものより、決め方が問題になる形です。この事例も公表されています。

臨終の直後、遺体を運ばなければならない。病院で葬儀社を紹介される。その場で搬送を頼み、流れで葬儀まで契約する。比べる時間はありません。

ここで知っておいてほしいことがあります。

搬送と葬儀を切り離すだけで、比べる時間がつくれます。「まず搬送だけお願いします」と言えば足ります。

④ 後から費用が積み上がった

契約のときは納得していたのに、請求書で膨らんでいた。もっとも多い形です。

増える費目は、だいたい決まっています。

増えた費目何で増えたか
料理・返礼品・会葬礼状参列者が増えた
安置料・ドライアイス火葬までの日数が延びた
寝台車・霊柩車距離が遠かった、回数が多かった
式場使用料公営が取れず民営になった

このうち、人数や日数で増えた分は、計算を確かめれば納得できます。「1人前5,000円 × 8人分 = 4万円」という形です。

確かめられないのは、単価が書かれていないときです。その場合は、単価と数量が入った明細をもらってください。

分かれ目は、金額の大きさではありません。その項目を頼んだかどうかです。頼んだ覚えのないものは、説明を求めてかまいません。

増えた費用は3つに分かれる。争えるのは「頼んだ覚えのない分」だけ
増えた費用は3つに分かれる。争えるのは「頼んだ覚えのない分」だけ(作図: 弁護士による葬儀ガード)

⑤ 互助会を解約したら、ほとんど戻らなかった

葬儀そのものではなく、備えのほうのトラブルです。何年も掛金を払ってきたのに、解約したら手数料で大半が引かれた、という形です。

まず確認するのは3つです。

3つ目が大切です。引かれる理由を、費目ごとに教えてくださいと聞いてください。

根拠となる条文 — 解約金には上限があります

契約をやめるときの違約金や手数料を定めた条項は、その事業者に実際に生じる「平均的な損害」を超える部分が無効になります(消費者契約法9条1項1号)。

この「平均的な損害」の意味について、最高裁判所平成18年11月27日判決(民集60巻9号3437頁)は、解約の理由や時期で分けたグループごとに、事業者に生じる損害の平均値を指すとしました。大学の入学辞退と学納金が争われた事件です。

つまり、いつ解約したかで損害は変わるはずだ、という前提に立っています。加入して3か月と、20年積み立てた後で、同じ料率をあてはめることには説明が要ります。

なお2022年の改正で、消費者から求められたら算定根拠の概要を説明するよう努める義務が加わりました(同条2項)。

つまずく原因は、結局3つです

5つの形を並べると、原因は重なってきます。

原因具体的には防ぎ方
契約の中身が書面で特定されていない「一式」表記、明細なし数量と単価を入れてもらう
考える時間がない臨終直後にその場で契約搬送と葬儀を分けて頼む
相場を知らない高いのか安いのか判断できない平均額だけ頭に入れておく

3つ目について、目安を挙げておきます。調査による平均額です。

形式平均
一般葬122.01万円
家族葬96.39万円
一日葬74.43万円
直葬・火葬式49.56万円
全体96.73万円

この金額に、お布施は含まれていません。別に用意するものと考えてください。

起きてしまったら、この順番で

どの形であっても、進め方は同じです。

3つ目が肝心です。全額を止めないでください。争っていない分まで支払いが遅れると、遅延損害金がつき、話も進みにくくなります。

伝えるときは、メールなど記録が残る方法で。責める必要はありません。事実と、してほしいことだけを書きます。

契約者が誰かも見てください

見落とされやすい点です。請求されている相手が、自分とは限りません。

葬儀は臨終直後に進みます。喪主と、申込書に署名した人が違うことがあります。

葬儀社にお金を払う義務を負うのは、契約した人です。家族で「費用は長男が出す」と決めていても、契約者が次男なら、請求は次男に行きます。

ただしこれは、葬儀社との関係の話です。家族の間で誰がいくら負担するかは、別の問題として整理します。

根拠となる考え方 — 誰が負担するかに条文はありません

葬儀費用を誰が負担するかについて、民法に決まりはありません。裁判例も分かれています。

下級審では、葬儀を主宰した人(喪主)が負担するという考え方を採るものが多く見られます。東京地方裁判所平成19年7月27日判決は、自己の責任と計算で手配し挙行した葬儀主宰者が負担すべきものとしました。

名古屋高等裁判所平成24年3月29日判決は、費用を分けて判断しています。通夜や告別式の費用は儀式を主宰した人が、火葬・埋葬の費用は祭祀を主宰すべき人が負担すべきものとしました。

祭祀を主宰すべき人は、故人の指定があればその人、なければ慣習で決まります(民法897条)。

この2つを混ぜると、話す相手を間違えます。まず葬儀社と契約したのは誰かを確かめてください。

香典と公的給付を先に引いてください

もうひとつ、争う前に確かめてほしいことがあります。実際にいくら持ち出しているかです。

まず香典です。香典は喪主に渡された贈与と考えられ、故人の遺産には入りません。実際には葬儀費用に充てるのが普通ですから、総額から引いて考えます。

次に公的給付です。申請すればもらえるお金があります。

加入していた保険もらえるもの金額の目安
国民健康保険・後期高齢者医療葬祭費自治体による(東京23区は7万円)
健康保険(協会けんぽ等)埋葬料5万円
仕事中・通勤中の死亡労災の葬祭料31万5000円+給付基礎日額30日分

いずれも申請しないともらえません。期限は2年です。

香典と給付を引いた後で、残った金額のどこに納得がいかないのか。そこまで絞れば、話し合いはずっと具体的になります。

相談は無料の窓口から

いきなり弁護士や裁判ではありません。段階があります。

段階内容費用
消費生活センター電話188。相談員が間に入る無料
内容証明郵便いつ何を求めたかが残る数千円
少額訴訟60万円以下なら原則1回で終わる数千円〜
弁護士に相談争える範囲と見込みを確かめる事務所による

まずは消費生活センターで十分です。第三者が入ることで、出てこなかった内訳が出てくることがあります。

葬儀のトラブル事例 — 支払う前・動く前に確認しておきたい項目
葬儀のトラブル事例 — 支払う前・動く前に確認しておきたい項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

契約前なら、30分で防げます

これから契約する方は、次の3つを聞くだけで、ここに挙げたトラブルのほとんどを避けられます。

  1. このプランに含まれないものは何ですか(火葬料・式場代・お布施)
  2. 参列者が1人増えると、いくら増えますか
  3. 安置が1日延びると、いくら増えますか

いずれも一言で聞ける質問です。答えはメモに残し、できればメールで確認しておいてください。