解約手数料が高すぎるときは払わないといけない?

約款の数字がそのまま通るわけではありません。上限は実際に生じた費用で決まります

解約手数料が高すぎるときは払わないといけない?

解約を申し出たら、思っていたより高い金額を提示された。

このとき、約款に書かれた数字がそのまま通るわけではありません。法律が上限を定めています。

上限を決めるのは、その事業者に実際に生じる費用です。まず内訳を確かめてください。

上限を決めるのは、実際に生じた費用
上限を決めるのは、実際に生じた費用(作図: 弁護士による葬儀ガード)

上限を定めている法律

まず根拠を確かめておきます。

根拠となる条文 — 消費者契約法9条1項1号

契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、または違約金を定める条項は、その事業者に生ずべき「平均的な損害」の額を超える部分について無効です。

ここでいう平均的な損害は、当該条項において設定された解除の事由・時期などの区分に応じて算定されます。

つまり、約款に「契約金額の50%」と書かれていても、実際に生じる平均的な損害がそれを下回るなら、超える部分には効力がありません。

無効になるのは超えた部分だけです。平均的な損害に相当する額の支払義務は残ります。

だから、交渉では「一切払いません」ではなく、「実費相当額は理解します」という形をとるほうが現実的です。

「平均的な損害」とは何か

条文だけでは意味が決まりません。この点を明らかにしたのが最高裁の判断です。

最高裁平成18年11月27日判決(民集60巻9号3437頁)

大学に入学を辞退した学生が、納付した学納金の返還を求めた事件です。

最高裁は、平均的な損害とは、同一の事業者が締結する多数の同種契約事案について類型的に考察した場合に算定される平均的な損害の額を指すとしました。

そして、当該条項が適用される契約の解除の事由・時期などにより同一の区分に分類される複数の同種契約の解除に伴い、その事業者に生ずる損害の額の平均値を意味するとしています。

そのうえで、解除の時期が入学年度の始期より前か後かによって結論を分けました。始期より前であれば、大学は他の入学希望者を確保できるため損害が生じない、という考え方です。

この枠組みを葬儀にあてはめると、次のようになります。

解約の時期事業者に生じる費用
契約の直後事務費用のみ。ごくわずか
数週間前手配が始まっていなければ、まだ小さい
施行の直前外注のキャンセル料が実際に発生

時期が違えば損害も違う。両者を同じ料率で扱う条項には、説明が必要になります。

実際に生じる費用を数える

上限を検討するには、解約によって何が生じるのかを費目ごとに考えます。

費目いつ発生するか
生花・料理・返礼品のキャンセル料発注の締切を過ぎてから
火葬場・式場の予約のキャンセル料施設の規定による
搬送・安置・ドライアイスの実費すでに行われた分
契約手続の事務費用契約時(額は限られます)

契約の直後で、搬送も発注もまだなら、生じているのは最後の1つだけです。

それにもかかわらず契約金額の数十パーセントを求められているなら、その差の説明が要ります。

内訳の説明を求める

進め方の中心はここです。

根拠となる条文 — 説明に努める義務

2022年の改正で加わった消費者契約法9条2項により、事業者は、消費者から解約料の算定根拠の概要について説明を求められたときは、説明するよう努めなければならないとされています。

努力義務であるため、応じないこと自体に直ちに制裁はありません。

しかし、根拠を示せない解約料は、交渉でも裁判でも説得力を持ちません。開示を求めた事実と、その回答(または無回答)は、そのまま材料になります。

求め方は具体的にしてください。

「解約手数料◯円について、どの費目にいくら発生したのかをお示しください」

生花や料理のキャンセル料なら、発注先への支払いが実際にあるはずです。その資料の提示を求めることもできます。

図で整理: 契約からの日数と、生じる費用の関係
図で整理: 契約からの日数と、生じる費用の関係(作図: 弁護士による葬儀ガード)

立証責任の考え方

「証明するのはそちらでしょう」と言われることがあります。整理しておきます。

上限を超えていることの立証責任は、原則として消費者の側にあるとされています。

ただし、費用の内訳は事業者の内部にある情報です。消費者が知りようがありません。

裁判例には、事業者が具体的な反証をしない場合に、消費者側の主張を採用したものもあります。まずは開示を求めることが、実務上の出発点になります。

交渉の進め方

順序立てて進めると、感情的にならずに済みます。

4つ目が効きます。

「実費として◯円は理解します。それを超える◯円については、根拠が示されていません」

全額の免除を求めるより、支払う意思のある額を示すほうが、話は早く進みます。相手も具体的に答えやすくなります。

クーリング・オフが使えるなら、そもそも不要です

その前に確かめたいことがあります。無条件でやめられる場合、解約手数料は一切かかりません。

根拠となる条文 — 8日間の解除

訪問販売にあたる場合、法定の書面を受け取った日から数えて8日を過ぎるまで、書面や電磁的記録で解除できます(特定商取引法9条1項)。

このとき、事業者は損害賠償や違約金を請求できません(同条3項)。

対象は「営業所以外の場所」での契約です。自宅、病院の霊安室や待合室などが該当し得ます。

数え始めるのは契約日ではなく、書面を受け取った日です。書面に不備があれば、8日はまだ始まっていないと考えられています。

まず手元の書面を確認してください。日が経っていても、見る価値があります。

互助会の場合

冠婚葬祭互助会の解約手数料も、同じ条文の適用を受けます。ただし、検討の中身が変わります。

葬儀社のキャンセル料が「これから発生するはずだった費用」を埋めるものであるのに対し、互助会の解約手数料は「積立金からの控除」です。

施行に向けた手配は、まだ何も始まっていません。生花の発注も車両の確保もありません。

事業者が挙げることが多いのは、募集にかかった費用と、掛金の収納・管理の費用です。前者は加入時に一度きり生じるもので、積立期間の長さとは関係しません。

過去には、互助会の解約手数料条項について消費者団体訴訟が起こされ、一部が差止めの対象になった例もあります。金額が争われてきた分野です。

解約手数料 — 提示されたときに確認する項目
解約手数料 — 提示されたときに確認する項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

支払った後でも請求できます

納得しないまま払ってしまった場合も、対応できます。

上限を超えていた部分は、法律上の原因がないお金として返還を求められます。

時効は原則5年です。権利を行使できることを知った時から数えます。

進め方は同じで、まず算定根拠の開示を求め、実際に発生した費用と支払った額の差を明らかにします。そのうえで、差額の返還を求めます。

応じてもらえない場合は、消費生活センターへの相談、内容証明郵便による請求、少額訴訟という段階があります。

約款のどこを読むか

解約手数料の条項は、約款の中にあります。申込書の裏や別紙です。手元になければ、写しを求めてください。

根拠となる条文 — 約款は見せてもらえます

定型約款を準備した側は、合意の前、または合意の後の相当な期間内に相手から請求があった場合、遅滞なくその内容を示さなければなりません(民法548条の3第1項)。すでに書面を交付していた場合などは除きます。

また、相手の権利を制限したり義務を重くしたりする条項で、取引の実情などに照らして信義則に反し一方的に相手の利益を害するものは、合意しなかったものとみなされます(民法548条の2第2項)。

読むのは4か所です。

見る箇所確かめること
時期の区分契約からいつまでなら、いくらか
料率・金額契約金額の何%か、定額か、実費か
実費の扱い手配済みの費用が別建てになっているか
申出の方法電話でよいか、書面が必要か

とくに1つ目です。区分がなく一律の料率なら、その点自体が検討の対象になります。

申し出た日が金額を左右します

見落とされがちですが、大切な点です。

多くの約款は、時期によって料率を変えています。つまり、いつ申し出たかがそのまま金額に響きます。

電話だけで伝えると、その日付が残りません。「言った」「聞いていない」となっている間に、区分が変わってしまうこともあります。

メールで構いません。次のことを書いて送ってください。

電話で伝えた場合も、その日のうちに「本日◯時にお電話で解約をお申し出しました」と送っておいてください。

契約者が亡くなっている場合

生前契約や互助会を、相続人が解約する場面もあります。手続きが少し変わります。

契約上の立場は相続人が引き継ぎます。相続人が複数いれば、全員の同意や委任状を求められることがあります。

返戻金が出る場合、そのお金は遺産に含まれます。相続放棄を考えているなら、受け取りは保留してください。遺産に手をつけたと評価され、放棄ができなくなるおそれがあります。

相続放棄の期限は、自分が相続人になったことを知った時から3か月です。判断が固まるまでは、手続きを進めないほうが安全です。

必要書類は、戸籍謄本、他の相続人の委任状、本人確認書類などが一般的です。書類が理由で手続きが止まりやすいため、必要書類の一覧を最初に書面でもらってください。

契約前に確かめておけば防げます

解約手数料をめぐる争いは、契約前の数分で大きく減らせます。

とくに生前契約や互助会のように期間が長い取引では、途中で事情が変わる可能性が高くなります。

「解約する場合、時期によって金額はどう変わりますか。実費は別途かかりますか」

この一言を聞いて、回答をメモに残してください。できればメールで確認しておきます。

あわせて、算定根拠の説明を求めたら応じてもらえるかも確かめておくと安心です。