解約手数料が高すぎる場合は無効か|平均的な損害の考え方

上限を画すのは平均的損害。最高裁平成18年判決が示した時期による区分の考え方

解約手数料は、約款に書かれていれば必ず支払わなければならないものではありません。消費者契約法9条1項1号は、契約の解除に伴う損害賠償額の予定や違約金の条項のうち、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき「平均的な損害」の額を超える部分を無効と定めています。争点になるのは、その葬儀社や互助会に実際にどれだけの損害が生じるか、という一点です。

「平均的な損害」とは何を指すか

平均的な損害とは、同一事業者が同種の契約について解除された場合に、その事業者に一般的・平均的に生ずる損害の額を指します。個別の契約でたまたま大きな損失が出たかどうかではなく、同種の解除に共通して生じる損害が基準になります。

代表的な判断が、最高裁判所平成18年11月27日判決(民集60巻9号3437頁)です。大学の学納金返還請求をめぐる事案で、最高裁は、消費者契約法9条1号にいう平均的な損害とは、当該条項が適用される契約の解除の事由・時期等により同一の区分に分類される複数の同種の契約の解除に伴い、当該事業者に生ずる損害の額の平均値を意味するとしました。そのうえで、在学契約の解除の時期が入学年度の始期より前か後かで結論を分ける判断を示しています。

この考え方は葬儀契約にもあてはまります。解除の時期によって事業者に生じる損害は当然に異なり、施行の直前と数か月前とを同じ料率で扱うことには合理性がありません。

葬儀契約で実際に生じる損害を項目で考える

葬儀契約の解除で事業者に生じ得る損害は、おおむね次のようなものです。

  • すでに手配し、キャンセルできない外注費(火葬場の予約、生花、料理、返礼品など)
  • すでに実施した搬送・安置・ドライアイスなどの実費
  • 契約手続きに要した事務費用

いずれも、施行日から遠い時点での解約であれば発生していないか、ごく小さい額にとどまります。契約直後に解約したにもかかわらず契約金額の数十パーセントを請求されている場合、その差は説明が必要です。

なお、逸失利益(受け取れたはずの利益)を平均的損害に含められるかは争いのあるところで、一般的には、他の顧客で埋め合わせが可能な業種では損害と認めにくいと考えられています。キャンセル料の一般的な水準は葬儀社のキャンセル料の相場と法的な限界にまとめています。

算定根拠の説明を求める

2022年の消費者契約法改正で、9条2項が加わりました。事業者は、消費者から解約料の算定根拠の概要について説明を求められたとき、説明するよう努めなければならないとされています。

努力義務であり、応じないこと自体に直ちに制裁があるわけではありません。しかし、根拠を示せない解約料は、交渉でも訴訟でも説得力を持ちません。まずは「どの費目にいくら発生したのか、内訳を示してほしい」と書面で求めてください。

立証責任の考え方も押さえておくと役に立ちます。平均的損害を超えることの立証責任は、原則として消費者側にあるとされています。ただし、費用の内訳は事業者の内部にある情報であるため、裁判例では、事業者が具体的な反証をしない場合に消費者側の主張を採用したものもあります。実際の交渉では、まず内訳の開示を求めるところが出発点になります。

互助会の解約手数料は特に問題になりやすい

冠婚葬祭互助会は、月々の掛金を長期間積み立てる仕組みのため、解約時の手数料が争点になりやすい分野です。過去には、互助会の解約手数料条項について消費者団体訴訟が提起され、一部の条項が平均的損害を超えるとして差止めの対象となった例があります。

解約に際しては、まず約款の解約条項と、これまでの払込総額、提示された返戻額の三つを突き合わせてください。返戻額の計算方法は互助会を解約すると返金はいくらかに、契約自体の解除ができるかは冠婚葬祭互助会にクーリングオフはあるかにまとめています。

交渉で確認する順序

実際に解約料の減額を求める場合、次の順序で進めると整理しやすくなります。

最初に、適用される条項を特定します。約款のどの条項に基づいて、いくらが請求されているのかを確認してください。複数の条項が組み合わされていることもあります。

次に、算定根拠の開示を求めます。消費者契約法9条2項の努力義務を踏まえ、「どの費目にいくら発生したのか、内訳を教えてください」と書面で尋ねます。ここで具体的な回答が得られない場合、その事実自体が交渉材料になります。

三つ目に、実際に発生した費用を突き合わせます。手配済みでキャンセルできない外注費、すでに実施した搬送や安置の実費が中心です。契約からの経過日数と、これらの費用の有無を照らし合わせてください。

四つ目に、こちらが妥当と考える金額を示します。「実費として◯円は理解しますが、それを超える◯円については根拠が示されていません」という形で、支払う意思のある額を明示すると、交渉が具体化します。

一方的に全額の免除を求めるより、実費相当額を認めたうえで超過分を争う方が、結果的に早く決着します。

まとめ

解約手数料は、消費者契約法9条1項1号により、平均的な損害を超える部分が無効になります。最高裁平成18年11月27日判決は、解除の事由や時期で区分した同種契約の損害の平均値を基準とする考え方を示しました。

実際に動くときは、約款の解約条項を確認し、算定根拠の内訳を書面で求め、施行日までの期間との関係で妥当かを検討するという順序になります。金額が大きく、説明にも納得できない場合は、約款と払込記録を持参して弁護士に相談すると、争える幅がはっきりします。