消費者契約法で無効になる不当条項|葬儀契約での見方
書いてあれば有効、ではない。8条・9条・10条がそれぞれ何を無効にするのか
葬儀の約款に書かれている条項は、書いてあれば必ず有効というわけではありません。消費者契約法は、消費者と事業者の間の契約について、一定の条項を無効と定めています。責任をすべて免れる条項、平均的な損害を超える解約料の条項、消費者の利益を一方的に害する条項がその代表です。契約書にサインしていても、こうした条項に基づく請求には応じる義務がない場合があります。
事業者の責任を全部免除する条項は無効
消費者契約法8条は、事業者の損害賠償責任を全部免除する条項、または事業者に責任の有無・限度を決定する権限を与える条項を無効としています。故意または重大な過失による場合には、一部を免除する条項も無効です。
葬儀の場面では、「当社は理由のいかんを問わず一切責任を負いません」「損害の有無は当社が判断します」といった書きぶりがこれに当たり得ます。遺体の搬送中の事故や、預かった遺品の紛失など、実際に損害が生じたときに問題になります。
2022年の改正により、8条3項として、軽過失による行為にのみ適用される旨が明らかでない一部免責条項も無効とされました。「当社に過失がある場合でも賠償は◯万円を上限とする」とだけ書かれ、重過失の場合を除外していない条項は、この規定にかかる可能性があります。
さらに8条の2は、消費者の解除権を放棄させる条項や、事業者に解除権の有無を決定する権限を与える条項を無効としています。「契約後はいかなる理由でも解約できない」という条項は、この規定により効力を持ちません。
高すぎる解約料の条項は超過部分が無効
消費者契約法9条1項1号は、契約の解除に伴う損害賠償額の予定や違約金の定めについて、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき「平均的な損害」の額を超える部分を無効と定めています。
つまり、約款に「解約時は契約金額の50%を申し受けます」と書かれていても、実際に葬儀社に生じる平均的な損害がそれを下回るなら、超える部分は無効です。判断の枠組みは解約手数料が高すぎる場合は無効かで詳しく扱っています。
2022年改正で加わった9条2項は、消費者から算定根拠の説明を求められた事業者に、その概要を説明する努力義務を課しました。義務違反そのものに直接の制裁はありませんが、根拠を示せない解約料の請求は、交渉の場で説得力を失います。互助会の解約に関する具体的な扱いは互助会を解約すると返金はいくらかにまとめています。
一方的に不利な条項は10条で無効になり得る
消費者契約法10条は、法令中の任意規定の適用による場合に比べて消費者の権利を制限し義務を加重する条項であって、民法1条2項の信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効としています。8条や9条に当てはまらない条項の受け皿となる一般条項です。
葬儀の約款で問題になりやすいのは、次のような書き方です。
- 追加費用について「当社が必要と認めた費用は請求できる」とだけ定め、単価も算定方法も示していない条項
- 引き渡し後の異議申立てを、極端に短い期間に制限する条項
- 支払いが遅れた場合の遅延損害金を、法定利率を大きく超える水準に設定する条項
- 契約者に無断で内容を変更できるとする条項
10条に該当するかは、条項の内容と契約全体のバランス、説明の状況を総合して判断されます。一律の答えはなく、個別の検討が必要です。
無効を主張する前に、契約書と約款をそろえる
条項の効力を争うには、まず約款の全文を手元に置く必要があります。申込書の裏面や別紙にあることが多く、渡されていない場合は交付を求めてください。約款の読み方は葬儀の約款と解約条項の読み方にまとめています。
そのうえで、問題の条項がどの規定に触れるのかを整理します。「責任の免除なら8条」「解約料なら9条1項1号」「それ以外の一方的な条項なら10条」という順に当てはめると、主張が明確になります。
なお、条項が無効でも、契約そのものが無効になるわけではありません。無効となるのはその条項(または超過部分)だけで、契約の他の部分は有効なまま残ります。実際の請求では、無効を前提に「支払うべき金額はいくらか」を計算し直すことになります。
条項が無効になったあとの計算
条項が無効と判断された場合、その後どうなるかを整理しておきます。
解約料の条項が9条1項1号により一部無効になった場合、無効となるのは平均的な損害を超える部分だけです。したがって、平均的な損害に相当する額については支払義務が残ります。全額を支払わなくてよくなるわけではありません。
責任免除条項が8条により無効になった場合は、その条項がなかったものとして、民法の原則に戻って損害賠償の可否と範囲が判断されます。損害の発生と因果関係は、請求する側が示す必要があります。
10条により無効となった場合も同様で、任意規定に戻って考えることになります。たとえば追加費用に関する包括条項が無効であれば、追加分について合意があったかどうかを、通常の契約の解釈で判断することになります。
つまり、無効の主張は「支払わなくてよい」という結論に直結するのではなく、「何を基準に計算し直すか」を変えるものです。この点を踏まえて、支払うべき額を具体的に算出したうえで交渉に臨むと、話が進みやすくなります。
まとめ
消費者契約法は、8条で責任免除条項を、9条で高すぎる解約料を、10条で消費者の利益を一方的に害する条項を無効としています。約款に書かれているというだけで、請求に応じる義務が生じるわけではありません。
まず約款の全文を取り寄せ、問題の条項がどの規定に当たるかを整理してください。条項の効力は文言だけでなく契約全体の事情から判断されるため、金額が大きい場合や葬儀社が譲らない場合は、約款と契約書を持参して弁護士に確認してもらうのが確実です。
