病院で紹介された葬儀社の断り方|今すぐ確認すべき手順

断っても構わない。搬送と葬儀を分ければ、比較する時間はつくれる

病院で葬儀社を紹介されても、そこに依頼しなければならない義務はありません。断ることも、搬送だけを依頼して葬儀は別の会社に頼むこともできます。病院が退院(退室)を急ぐのは霊安室の運用上の事情であり、葬儀の内容まで決める必要はありません。まずは「搬送先だけを決める」と「葬儀の契約をする」を切り離してください。

病院の紹介は「決定」ではない

多くの病院は、遺体を長く安置できる設備を持たないため、提携している葬儀社を案内します。案内された時点では、まだ何も決まっていません。

このとき、遺族は次の3つを同時に迫られていると感じがちです。

  • どこへ遺体を搬送するか
  • どの葬儀社に葬儀を依頼するか
  • どのくらいの規模・内容の葬儀にするか

しかし、急いで決めなければならないのは1つ目だけです。搬送先は自宅でも民間の安置施設でもよく、搬送を担当した会社に葬儀まで任せる必要はありません。国民生活センターが2026年6月3日に公表した「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル」でも、病院で紹介された葬儀社を利用した事例が相談として取り上げられています。同センターによれば、葬儀サービスに関する相談は2024年度に978件、2025年度に917件寄せられ、「高価格・料金」に関する相談の割合は2025年度で52.6%を占めています。

角を立てずに断る言い方

断ることに気が引ける、という声をよく聞きます。次のような伝え方であれば、相手も業務として受け止めやすくなります。

  • 「葬儀社は家族で決めることになっているので、こちらで手配します」
  • 「生前に本人が希望していた葬儀社があるため、そちらに連絡します」
  • 「搬送だけお願いできますか。葬儀の内容は家族で相談してから決めます」
  • 「見積書をいただいたうえで、他社とも比べてから決めさせてください」

理由を詳しく説明する必要はありません。「家族で決める」「本人の希望がある」という一言で十分です。病院の職員に対しても、「搬送の手配だけ進めていただけますか」と伝えれば足ります。

すでに話が進んでいる場合でも、契約書に署名していない段階であれば、断ることに問題はありません。

搬送だけを頼むときの確認事項

搬送だけを依頼する場合、後から高額な請求につながらないよう、依頼の時点で次の点を確認しておきます。

  • 搬送料金はいくらか(距離による加算の有無、深夜・早朝の割増の有無)
  • 安置を依頼する場合、1日あたりいくらか、ドライアイスなどの費用は別か
  • 搬送・安置の費用と、葬儀の契約は別であることを相手が了解しているか
  • 葬儀を他社に依頼した場合に、追加の費用や違約金が発生しないか
  • 見積りは書面(またはメール)でもらえるか

口頭で「搬送だけです」と伝えていても、後から「一式の契約だった」と主張されることがあります。短くてよいので、メールやメッセージで「搬送と本日分の安置のみをお願いします」と送り、記録を残しておくと安心です。

署名を求められたら書面を確認する

その場で契約書への署名を求められた場合は、いったん立ち止まってください。確認すべきは次の点です。

  • その書面は「見積書」か「申込書・契約書」か
  • 総額と、含まれる項目・含まれない項目が明記されているか
  • 「一式」と書かれた項目の中身が特定されているか
  • キャンセル料の条件と金額が書かれているか

自宅や病院など葬儀社の営業所以外の場所で契約した場合、その契約は特定商取引法2条1項の「訪問販売」にあたる可能性があります。あたる場合、同法9条により、法律で定められた書面を受け取った日から8日以内であれば申込みの撤回や契約の解除ができます。同法4条・5条は事業者に書面の交付を義務づけており、この書面が交付されていなければ、8日間の期間は進行しないと解されています。詳しくは葬儀契約と特定商取引法の訪問販売で扱っています。

もっとも、消費者が自宅で契約することを自ら請求した場合には、同法26条6項1号により適用が除外されることがあります。消費者庁の解釈では、この「請求した者」にあたるのは、あらかじめ契約の申込み・締結の意思を持ち、その住居で契約したい旨の明確な意思表示をした場合に限られるとされています。搬送だけを依頼したつもりだったのか、葬儀一式の契約を求めたのかによって評価が変わるため、依頼時の記録が意味を持ちます。

決めるまでの時間を確保する

搬送と安置さえ済めば、葬儀の日程は数日先に設定できます。その間に複数の葬儀社から見積りを取ることは十分可能です。見積書のどこを見るかは葬儀の見積書チェックポイント、会社選びの基準は葬儀社の選び方にまとめています。

火葬場の予約状況によっては数日待つ地域もあり、急いで契約しても日程が早まるとは限りません。「今決めないと間に合わない」と言われたときは、火葬場の空き状況を自分でも確認してみてください。公営の火葬場であれば、自治体の窓口や公式サイトで予約状況や料金を確認できます。

なお、死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に提出しなければならないと戸籍法86条1項が定めています。火葬に必要な火葬許可証は、死亡届の提出とあわせて交付を受けるのが通常です。この手続き自体は葬儀社に代行してもらうことも、遺族が自分で行うこともできます。「手続きがあるから今すぐ契約を」という説明が出てきた場合は、手続きと契約は別だと考えて差し支えありません。

まとめ

病院で紹介された葬儀社を断ることに、法律上も慣習上も問題はありません。急ぐべきは搬送先を決めることだけで、葬儀の内容と契約先は落ち着いてから決められます。

搬送だけを依頼する場合は、費用と範囲を書面か記録の残る方法で確認しておくこと。署名を求められたら、それが見積書か契約書かを見分けること。この2つを守れば、後から生じるトラブルの多くは避けられます。すでに署名してしまった場合でも取り得る手段はありますので、契約書と受け取った書面をそろえて早めに相談してください。