自宅で結んだ葬儀契約は8日以内ならやめられます

決め手は署名した場所。打ち合わせの場所ではありません

自宅で結んだ葬儀契約は8日以内ならやめられます

葬儀社の担当者が自宅に来て、その場で契約した。病院の控室で書類に署名した。

こうした場合、8日以内なら理由を問わずにやめられます。キャンセル料もかかりません。

決め手になるのは、打ち合わせをした場所ではなく、署名した場所です。ここを取り違えないでください。

署名した場所で決まる。打ち合わせの場所ではない
署名した場所で決まる。打ち合わせの場所ではない(作図: 弁護士による葬儀ガード)

対象になるのはどんな場合か

法律が対象にしているのは「訪問販売」です。葬儀にあてはめると、次のようになります。

署名した場所対象か
自宅(担当者が来た)対象です
病院の霊安室・待合室対象になる可能性が高い
安置施設(店舗ではない場所)対象になる可能性があります
葬儀社の会館・事務所原則として対象外
路上や電話で呼ばれて会館へ対象になる可能性があります

最後の行が見落とされがちです。自分から出向いたのではなく、呼ばれて行った場合は、訪問販売として扱われることがあります。

葬儀社の会館は「営業所」にあたります。事前相談のために自分から出向き、その場で契約したなら、対象外です。

判断は「署名した場所」で

打ち合わせは会館でしたが、契約書には自宅で署名した。こういうことがあります。

この場合、契約が成立したのは自宅です。対象になる可能性があります。

葬儀社の担当者が自宅に来ることは珍しくありません。祭壇の配置を見る、遺影の写真を受け取る。そうした目的で訪問し、流れで契約になることがあります。

この経緯は、後から思い出そうとすると曖昧になります。いまのうちにメモにしてください。

着信履歴やメールと突き合わせると、日時がはっきりします。

8日をいつから数えるか

ここを間違えると、使えるはずの権利を逃します。

数え始めるのは、契約した日ではありません。法律が定める書面を受け取った日からです。

根拠となる条文 — 8日間の解除

訪問販売では、申込者等が法定の書面を受け取った日から数えて8日を経過するまで、書面や電磁的記録により申込みの撤回や契約の解除ができます(特定商取引法9条1項)。

このとき、事業者は損害賠償や違約金を請求できません(同条3項)。

法定の書面とは、申込みを受けたときの書面(同法4条)または契約を結んだときの書面(同法5条)です。記載すべき事項が定められています。

つまり、書面をもらっていなければ、8日はまだ始まっていません。契約から1か月が経っていても、使える可能性があります。

書面に何が書かれているべきか

渡された書面を見て、次のことを確かめてください。

記載事項内容
商品・役務の種類何を頼んだか
価格・対価いくらか
支払時期と方法いつ、どう払うか
提供時期いつ行われるか
クーリング・オフに関する事項やめられること、その方法
事業者の氏名・住所・電話番号連絡先
担当者の氏名誰が対応したか

さらに、クーリング・オフに関する事項は赤枠の中に赤字で書くこととされています。文字の大きさにも基準があります。

これらを欠く書面は、法定の書面としては不十分です。その場合、8日は進んでいないと考えられています。

図で整理: 書面に不備があれば、8日はまだ始まっていない
図で整理: 書面に不備があれば、8日はまだ始まっていない(作図: 弁護士による葬儀ガード)

やめ方は、はがき1枚で足ります

手続きは難しくありません。書面か電磁的記録で伝えれば足ります。口頭ではだめです。

効果は出した時点で生じます。8日以内に出していれば、相手に届いたのが9日目でも有効です。

通常の連絡とは違う扱いで、消費者に有利になっています。だから、迷っている段階でも先に出しておくほうが安全です。

やめた後はどうなるか

項目どうなるか
キャンセル料かかりません
支払い済みのお金返してもらえます
すでに受けた役務の代金原則として請求されません

約款に「契約後の解約は契約金額の◯%」と書かれていても、この場合は関係ありません。

事業者から「もう受け付けられない」と言われても、効果は出した時点で生じています。要件を満たしていれば、解除は成立しています。

事業者の義務違反も材料になります

この法律は、8日間の解除のほかにも、事業者の義務を定めています。

義務内容
氏名等の明示勧誘の前に、社名・勧誘目的・商品の種類を明らかにする
再勧誘の禁止断った相手に、勧誘を続けたり繰り返したりしない
不実告知等の禁止事実と違うことを告げる、重要な事実をわざと隠す、困惑させる

目的を告げずに接触し、流れで契約になった。断ったのに勧誘が続いた。こうした事情があれば、記録に残しておいてください。

根拠となる条文 — 取消しができる場合

事業者が不実告知や重要事項の故意の不告知をした場合、消費者は契約を取り消すことができます(特定商取引法9条の3)。

8日を過ぎていても使える可能性があるため、勧誘の経緯に問題があったと感じるなら、この点も含めて相談してください。

対象外だった場合の道

自分から会館に出向いて契約した場合や、8日を過ぎている場合も、抜けられないわけではありません。

道内容
約款による解約解約金の額が争点になります
説明が事実と違った契約を取り消せる可能性があります
条項が不当その条項だけ無効になることがあります

解約金については、事業者に実際に生じる「平均的な損害」を超える部分が無効になります。約款の料率がそのまま通るわけではありません。

契約の直後で、搬送も発注もまだなら、生じている費用はごくわずかのはずです。内訳を費目ごとに求めてください。

法人契約は対象外です

社葬など、法人が契約者になる場合は扱いが変わります。

営業のために、または営業として結ぶ契約には、訪問販売の規定が適用されません。この場合、契約の内容や説明の適否を検討することになります。

個人が家族のために契約する場合は、対象外にはなりません。契約者が事業を営んでいるというだけで外れるわけではなく、その契約が営業のためかどうかで判断されます。

訪問販売にあたる葬儀契約 — 動く前に確認しておきたい項目
訪問販売にあたる葬儀契約 — 動く前に確認しておきたい項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

通知を出した後に起きること

通知を発信すると、事業者から連絡が入るのが普通です。ここでの対応にも注意点があります。

まず、解除の効果はすでに生じています。「受け付けられない」と言われても、それで効力が失われるわけではありません。

次に、支払い済みのお金がある場合、事業者は速やかに返す義務を負います。返金の時期と方法を確認し、書面で記録に残してください。

返金が滞る場合は、配達証明付きの内容証明郵便で改めて請求します。それでも応じないときは、消費生活センターに相談してください。

事業者が「営業所での契約だから対象外だ」と主張してきたら、経緯の記録を示すことになります。署名した場所と日時を書いたメモが、そのまま材料になります。

契約するときに備えておくこと

臨終直後でも、後の選択肢を残すためにできることがあります。

とくに3つ目です。搬送を頼んだ会社と、葬儀を頼む会社が違っても問題ありません。

迷ったら無料の窓口へ

自分のケースが該当するか分からない。それが普通です。

相談先内容費用
消費生活センター電話188。契約の経緯を聞いて助言無料
弁護士通知の文面や次の手続の見通し事務所による

相談するときは、契約書・交付された書面・約款・見積書と、経緯のメモを持っていってください。

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件でした。うち52.6%が料金に関するものです。

臨終直後に、比べる時間のないまま契約する。この構造は誰にでも起こります。制度は、そういう場面を想定して用意されています。

期間が短い制度です。解除する気持ちがあるなら、迷っている段階でも先に出しておくほうが安全です。後で契約を続けることはできますが、期間を過ぎてから戻ることはできません。