葬儀費用を内容証明で請求する|書き方と法的な効果
強制力はない。それでも送る意味は、6か月の時効完成猶予と記録に残ることにある
内容証明郵便は、いつ、誰から誰に、どのような内容の文書が差し出されたかを郵便局が証明する制度です。それ自体に相手を強制する力はありませんが、通知した事実と内容を後から証明できる点に意味があります。民法150条により、催告をした時から6か月間は時効の完成が猶予されるため、時効が近い場面では特に有効です。葬儀費用の返金請求や、立て替えた費用の求償で使われます。
内容証明でできること・できないこと
内容証明は、文書の内容と差出日を郵便局が証明するものです。配達された事実まで証明するには、あわせて配達証明を付けます。実務では「配達証明付き内容証明郵便」として使うのが通常です。
できるのは、次の三つです。
- 請求の意思を明確に伝え、その事実と内容を証拠として残すこと
- 民法150条により、催告の時から6か月間、時効の完成を猶予させること
- 交渉が決裂した場合に、自分がいつ何を求めたかを裁判で示すこと
一方、内容証明を送っても、相手に支払義務が生じるわけではありません。強制的に回収するには、最終的に裁判手続が必要です。この点を誤解して過度な期待をしないことが大切です。
書式のルール
内容証明には、文字数と行数の制限があります。縦書きの場合は1行20字以内・1枚26行以内、横書きの場合は1行26字以内・1枚20行以内、1行13字以内・1枚40行以内、1行20字以内・1枚26行以内のいずれかとされています。句読点や記号も1字と数えます。
同じ文書を3通用意し、1通を相手に送付、1通を郵便局が保管、1通を差出人が控えとして持ち帰ります。差出人と受取人の住所氏名を文書内にも記載してください。図表や写真は入れられないため、資料を送りたい場合は別便にします。
なお、日本郵便のe内容証明(電子内容証明)を使えば、オンラインで差し出すことができ、字数制限の扱いも異なります。窓口に行く時間が取れない場合は選択肢になります。
葬儀費用の請求で書くべき項目
葬儀費用に関する内容証明では、次の項目を漏らさず記載します。
- 当事者の特定(自分と相手の住所・氏名/名称)
- 契約の特定(契約日、契約の相手方、対象となった葬儀の日時)
- 請求の対象となる金額と、その内訳
- 請求の根拠となる事実(合意していない項目である、説明と異なっていた、立て替えた等)
- 支払いや回答を求める期限
- 期限までに応じない場合に法的手続を検討する旨
金額と根拠を特定することが最も重要です。「高すぎるので返してほしい」ではなく、「◯月◯日付見積書に記載のない◯◯費◯円について、注文した事実がないため返還を求める」と書きます。どの法律構成で請求するかは葬儀費用の返金を請求する方法を参照してください。
相続人の一人が立て替えた費用を他の相続人に求める場合は、対象となる支出と負担割合の根拠を書きます。考え方は葬儀費用を兄弟に請求できるかにまとめています。
時効との関係で押さえておくこと
民法166条1項は、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年で債権が時効により消滅すると定めています。内容証明による催告は、民法150条により催告の時から6か月間、時効の完成を猶予させます。
ただし、猶予は一度きりで、催告を繰り返しても期間は延びません。6か月の間に、訴訟の提起や支払督促、調停の申立てなど、時効の完成猶予・更新の効果がある手続に進む必要があります。葬儀費用の時効については葬儀費用の未払いに時効はあるかにまとめました。
トーンについて
内容証明は威圧の道具ではありません。攻撃的な表現や、事実と異なる決めつけを書くと、かえって相手の態度を硬化させ、後の交渉を難しくします。事実と根拠を淡々と書き、求めることを明確にする方が結果につながります。
送る前に確認しておくこと
内容証明を出す前に、次の点を確認してください。
宛先の特定 ── 法人であれば、登記上の商号と本店所在地を確認します。屋号と登記上の名称が異なることがあり、間違えると届いても効果が薄れます。法人番号公表サイトや登記情報で確認できます。
根拠となる資料の整理 ── 文面に書く事実は、資料で裏づけられるものに限ります。裏づけのない主張を書くと、後の交渉で不利になります。
求める金額の確定 ── 概算で書かず、内訳を積み上げて金額を確定させてください。後から増額すると、主張の一貫性を欠くことになります。
時効の残り期間 ── 催告による猶予は6か月です。その間に次の手続へ進めるかを見通したうえで送ってください。
相手方との関係 ── 交渉で解決できる見込みが十分あるなら、まず通常の書面やメールで求める方が穏当です。内容証明は、通常のやり取りで進まなかった場合の次の段階と位置づけるのが自然です。
これらを確認したうえで送れば、文面の説得力が変わります。
まとめ
内容証明郵便は、請求の内容と日付を証拠に残し、民法150条により6か月間の時効の完成猶予を得るための手段です。書式には字数・行数の制限があり、同じ文書を3通用意します。
記載の中心になるのは、金額の特定と請求の根拠です。ここが曖昧だと、送っても交渉が進みません。金額が大きい場合や、次の法的手続まで見据えている場合は、送付前に弁護士に文面を確認してもらうと安全です。
