家族葬とは|メリット・デメリットと費用の実際
参列者が減っても、下がるのは費用の一部だけです。安いという前提を置かずに読んでください
家族葬にすれば安く済む。そう聞いて検討している方が多いと思います。
半分は当たっています。ただし、下がるのは費用の一部だけです。
葬儀の費用は、参列者の人数で変わるものと、変わらないものに分かれます。参列者を減らして減るのは前者だけ。祭壇も棺も霊柩車も、5人でも50人でも同じです。
この構造を先に知っておくと、見積書の読み方が変わります。
「家族葬」に決まった定義はありません
葬儀の形式を定めた法律はありません。国が関わるのは、死亡届と火葬の許可の部分だけです。
通夜をするかどうか、誰を呼ぶか。これらはすべて喪主が決めます。
ですから、「家族葬」という言葉が指す範囲は葬儀社ごとに違います。
| ある社の説明 | 別の社の説明 |
|---|---|
| 参列者10名まで | 人数の上限なし |
| 通夜と告別式を行う | 近親者中心の葬儀 |
契約書やプラン表に、人数の上限が書かれているかを必ず確認してください。
上限を超えた時点で、別プランの料金が適用される契約になっている例があります。これは後から気づいても遅い部分です。
一般葬との違いは、規模と参列者の範囲だけです。通夜・告別式・火葬という流れは同じです。
株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)を見てみます。調査期間は2026年2月27日から3月3日、有効回答は2,000件です。この調査では、家族葬が全体の47.0%で最も多い形式でした。もはや例外的な選択ではありません。
下がる費用と、下がらない費用
同じ調査によると、平均費用は次のとおりです。
| 形式 | 平均 |
|---|---|
| 一般葬 | 122.01万円 |
| 家族葬 | 96.39万円 |
差は約26万円です。この差がどこから生まれるのかを理解しておくと、見積書の読み方が変わります。
同じ調査は、葬儀費用を3つに分けています。
| 区分 | 平均 | 参列者数との関係 |
|---|---|---|
| 基本料金 | 72.02万円 | ほぼ変わらない |
| 飲食費 | 11.67万円 | 人数に比例する |
| 返礼品費 | 13.03万円 | 人数に比例する |
家族葬で確実に下がるのは、飲食費と返礼品費です。合わせて24.70万円。全体の約26%にあたります。
一方、基本料金に含まれるものは、参列者が5人でも50人でも変わりません。
- 祭壇、棺、遺影、骨壺
- 霊柩車、寝台車
- 式場使用料
- 火葬料
- 遺体の搬送・安置、ドライアイス
つまり、家族葬で削れるのは費用の約4分の1ということです。
基本料金が高いプランを選べば、家族葬でも一般葬並みの金額になり得ます。「家族葬だから安い」という前提は、置かないでください。
費用が想定を超える場面
実際の相談で金額が膨らむのは、次のような場面です。
参列者が予定より増えた。訃報を知った親族や故人の友人が当日来られ、料理と返礼品を追加した。変動費ですから、人数分そのまま増えます。
安置日数が延びた。火葬場が混み合い、通夜まで数日空いた。安置料とドライアイス代は1日単位で加算されるのが通例です。
プランに含まれない項目があった。火葬料、式場使用料、心づけ、お布施は「別途」となっていることが多い項目です。
後日、弔問客が続いた。参列を断った結果、四十九日まで個別に自宅へ弔問が続き、そのつどの対応が負担になる例があります。
呼ぶ範囲を、どう決めるか
家族葬で最も相談が多いのは、金額よりも「誰を呼ぶか」です。
判断の材料になるのは、次の3点です。
- 故人が生前、交流を望んでいた相手か。外すと、後から親族間の感情的な対立になりやすくなります
- 香典を辞退するか。辞退すれば収入がゼロになり、実質の負担は増えます
- 後日の弔問に対応できるか。呼ばなかった人が個別に訪ねてくることがあります
菩提寺がある場合は、家族葬にすることを事前に伝えておいてください。
連絡がないまま進めると、納骨の段階で寺院との調整が必要になることがあります。事前に伝えておけば、まず問題になりません。
なお、参列者を限定して後日あらためて本葬を行う形式は「密葬」と呼ばれます。家族葬とは目的が違います。密葬は本葬とセットの前段階であり、家族葬はそれで完結する形式です。
家族葬でも省略できない手続き
形式を小さくしても、行政の手続きは変わりません。
| 手続き | 期限 |
|---|---|
| 死亡届の提出 | 死亡の事実を知った日から7日以内 |
| 火葬許可の申請 | 死亡届と同時に行うのが通常 |
| 火葬 | 死亡後24時間を経過した後 |
死亡後24時間の制約は、家族葬でも直葬でも共通です。「その日のうちに終わる」ことはありません。
根拠となる条文 — 死亡届と火葬の手続き
死亡の届出は、届出義務者が死亡の事実を知った日から7日以内にしなければなりません(戸籍法86条1項)。国外で死亡した場合は3か月以内です。
届出先は、死亡者の本籍地または届出人の所在地(同法25条1項)のほか、死亡地でも受け付けられます(同法88条1項)。
火葬には市町村長の許可が必要で、許可を受けると火葬許可証が交付されます(墓地、埋葬等に関する法律5条1項、8条)。火葬場は火葬許可証を受理した後でなければ火葬を行えません(同法14条3項)。
さらに、火葬は死亡または死産後24時間を経過した後でなければ行えません(同法3条)。
これらの届出は、葬儀社が代行してくれることが多くあります。ただし、代行手数料の有無はプランによって違います。
見積書に「役所手続き代行」といった項目があるかどうかも確認してください。
契約前に確認したいこと
見積書を受け取ったら、次の点を口頭ではなく書面で確認してください。
急いでいても、この5点の確認に必要な時間は10分ほどです。
判断に迷う項目があれば、その場で署名しなくて構いません。金額の根拠を書面で出してもらうよう求めてください。
きちんとした会社ほど、この依頼にはっきり答えてくれます。答えを渋る会社は、その時点で判断材料になります。
受け取った見積書は、その場でスマホで撮っておいてください。後から内容が変わったときに、いつ・どの内容で受け取ったのかを示せます。
実質の負担を出しておく
総額が出たら、そこから引けるものを引いてください。
| 差し引くもの | 内容 |
|---|---|
| 香典 | 喪主に渡された贈り物。遺産には入りません |
| 葬祭費 | 国民健康保険・後期高齢者医療。東京23区は7万円 |
| 埋葬料 | 健康保険。5万円 |
葬祭費と埋葬料は、申請しないともらえません。期限は2年です。窓口は市区町村か、加入していた健康保険です。
なお、お布施は上の平均額に含まれていません。20万〜50万円が中心とされていますので、別枠で現金を用意してください。
これらを踏まえた実質の持ち出しは、次のようになります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 葬儀社への支払い | 96.39万円 |
| お布施 | 30万円 |
| 香典(20人・1人1万円と仮定) | −20万円 |
| 葬祭費 | −7万円 |
| 差引 | 99.39万円 |
数字を出してみると、判断が変わることがあります。一日葬なら平均74.43万円、直葬なら49.56万円です。
訃報の伝え方で、後の手間が変わります
家族葬でいちばん多いつまずきが、知らせ方です。
参列してほしい人と、そうでない人。この線引きを言葉にしないまま連絡すると、行き違いが起きます。
伝えるときは、次の3つを必ず入れてください。
- 家族葬で行うこと
- 参列を辞退していただきたいこと(該当する場合)
- 香典・供花を辞退するかどうか
書き方の例を挙げておきます。
「葬儀は家族のみで執り行います。誠に勝手ながら、ご参列・ご香典・ご供花はご辞退申し上げます」
この一文があるかないかで、当日の対応がまったく変わります。書いておかないと、供花の手配が動いてしまうことがあります。
会社関係への連絡も同じです。総務や上司に伝えるときに、この方針をあわせて伝えてください。会社として弔電や供花を出す規定があることが多く、伝えないと自動的に手配されます。
葬儀を終えた後に、あらためて書面であいさつを送る方法もあります。「故人の遺志により、近親者のみで執り行いました」と添えれば、事後の連絡でも角が立ちません。
家族葬でも必要になる、後の手続き
葬儀が終わっても、期限のある手続きが続きます。形式にかかわらず同じです。
| 手続き | 期限 |
|---|---|
| 世帯主変更届 | 14日以内 |
| 年金の受給停止 | 厚生年金は10日、国民年金は14日以内 |
| 健康保険証の返却 | 14日以内 |
| 葬祭費・埋葬料の申請 | 2年 |
| 相続放棄 | 相続人になったことを知った時から3か月 |
| 準確定申告 | 4か月 |
| 相続税の申告 | 10か月 |
このうち、期限が短いものから手をつけてください。世帯主変更届と年金の停止は、放っておくと後で面倒になります。
年金は、受給を停止しないまま振り込まれ続けると、後から返還を求められます。亡くなった月の分まで受け取れる制度がありますので、窓口で確認してください。
葬祭費と埋葬料は、申請しないともらえません。期限は2年ありますが、書類がそろっているうちに済ませておくほうが確実です。
これらの手続きには、戸籍や住民票が繰り返し必要になります。まとめて多めに取っておくと、窓口に何度も足を運ばずに済みます。
まとめ
家族葬について、覚えておくことは3つです。
- 下がるのは一部だけ。飲食費と返礼品費、全体の約4分の1です
- 人数の上限を確認する。超えた時点で料金が変わる契約があります
- 差し引きで考える。香典が減る分も計算に入れてください
平均は96.39万円ですが、これは基本料金の水準やプランの構成で大きく上下します。
人数上限、火葬料や式場使用料の扱い、安置が延びた場合の加算。この3つを書面で確認しておけば、後から金額が動く要因はかなり絞り込めます。
すでに受け取った見積書に疑問があるときは、契約の前に相談してください。契約後より、契約前のほうがずっと選べることが残っています。
