家族葬の費用は本当に安いのか

平均96.39万円。全体平均96.73万円とほとんど変わりません

家族葬の費用は本当に安いのか

家族葬なら安く済む。そう考えている方は多くいます。

でも、調査による家族葬の平均は96.39万円です。全体の平均96.73万円と、ほとんど変わりません。

なぜでしょうか。費用の構造を見れば分かります。

家族葬96.39万円、全体平均96.73万円。差はわずか
家族葬96.39万円、全体平均96.73万円。差はわずか(作図: 弁護士による葬儀ガード)

数字で確かめる

鎌倉新書「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)による形式別の平均です。

形式平均
一般葬122.01万円
家族葬96.39万円
一日葬74.43万円
直葬・火葬式49.56万円
全体96.73万円

一般葬と比べれば、確かに25万円ほど低くなっています。

しかし、「数十万円で収まる」という印象とは開きがあります。

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料の副題は、「『家族葬だから安い』と思っていませんか?」というものでした。この認識のずれが、相談の中心にあります。

下がるのは4分の1だけ

理由は費用の構造にあります。内訳の平均を見てください。

費目平均参列者が減ると
基本料金72.02万円ほとんど変わりません
飲食費11.67万円減ります
返礼品費13.03万円減ります

減るのは下の2つ、合わせて約24.7万円分です。総額のおよそ4分の1にとどまります。

基本料金に含まれる祭壇・棺・寝台車・霊柩車・式場使用料・火葬料は、参列者が10名でも50名でも大きくは変わりません。

つまり、人数を絞っても、費用の大部分はそのまま残ります。

図で整理: 減るのは変動費だけ
図で整理: 減るのは変動費だけ(作図: 弁護士による葬儀ガード)

平均に含まれていないもの

96.39万円という数字にも、注意点があります。

お布施については、別の調査があります。『葬儀の口コミ』が2026年3月28日から4月11日にかけて、全国20の政令指定都市で実施したものです。

それによると、葬儀のお布施は20万円から50万円の範囲が中心とされています。最も高い回答はさいたま市の170万円、最も低い回答は熊本市の8万円でした。

宗教者に読経を依頼する場合、96.39万円に20万〜50万円を足した金額が、実際の総額に近くなります。

本当に費用を下げたいなら

参列者を減らすより、形式そのものを見直すほうが効きます。

形式平均何が変わるか
家族葬96.39万円参列者が少ない
一日葬74.43万円通夜がない(飲食費が減る)
直葬・火葬式49.56万円式を行わない(式場代・飲食費がない)

一日葬にすると、通夜振る舞いの費用と、通夜の式場使用料が減ります。

直葬・火葬式にすると、式そのものを行わないため、祭壇・式場・飲食費がなくなります。

ただし、いずれも安置料は減りません。火葬場の予約状況で日数が決まるためです。形式を変えても、ここは動きません。

また、菩提寺がある場合は、事前に相談してください。式を省略すると、後から納骨を断られることがあります。

見積書で確かめる3か所

金額の妥当性を判断するには、内訳が要ります。

数量と単価。料理1人前◯円×◯人分、返礼品1個◯円×◯個、という形で書かれているかを見ます。

変わる費目。参列者数や日数で動くのはどれか。契約時に確定しない部分を把握します。

含まれないもの。火葬料・式場代・お布施が入っているかを聞いてください。

根拠となる考え方 — 明細を求めるのは正当です

お金を払う側は、支払いと引き換えに受取証書の交付を求めることができます(民法486条1項)。

また、契約は、内容を示した申込みに相手が承諾したときに成立します(民法522条1項)。合意の内容が特定されていなければ、どこまでが約束だったのかを後から確かめられません。

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料には、「家族葬50万円」の表示を見て依頼したところ、見積書に明細がなく、追加費用も出て総額が200万円を超えたという事例が紹介されています。

家族葬の費用 — 契約前に確かめる項目
家族葬の費用 — 契約前に確かめる項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

実質の負担を出す

総額がそのまま持ち出しになるわけではありません。

公的給付は、国民健康保険や後期高齢者医療なら葬祭費(東京23区は7万円)、健康保険なら埋葬料5万円です。申請しないともらえず、期限は2年です。

家族葬では香典が少ないため、公的給付の比重が相対的に大きくなります。忘れずに申請してください。

参列者の範囲をどう決めるか

家族葬という言葉に、決まった定義はありません。何人までという基準もありません。

そのため、「どこまで呼ぶか」で迷う方が多くいます。

呼ぶ範囲想定される人数
同居の家族のみ数名
子・孫まで10名前後
兄弟姉妹まで10〜20名
甥姪・いとこまで20〜30名

人数が増えれば、飲食費と返礼品費が増えます。同時に香典も増えます。

判断の目安として、故人と生前に交流があったかどうかで考える方法があります。形式的な親等より、実際の関わりで決めるほうが納得が得やすくなります。

呼ばなかった方には、後日あらためて知らせることになります。その際、香典や弔問を辞退するかどうかも決めておいてください。

香典を辞退するかどうか

家族葬では、香典を辞退することが増えています。

辞退すれば香典は入りませんが、香典返しの費用も発生しません。差し引きでどうなるかは、参列予定者の人数と関係性によります。

香典は、弔問者から喪主に渡された贈り物と考えられ、故人の遺産には入りません。実務では葬儀費用に充てます。

家族の間で費用を分担する場合は、香典の総額を引いた実質額で話し合ってください。総額のまま議論すると、実態と合わない前提で進みます。

後から後悔しやすい点

費用を抑えることばかりに目が向くと、後で悔いが残ることがあります。

呼ばなかった方への対応です。家族葬にしたことで、後から「なぜ知らせてくれなかったのか」と言われることがあります。

対策としては、後日に訃報を知らせる方法があります。四十九日を過ぎたころに挨拶状を送る形が一般的です。

その際、弔問を受けるかどうかも決めておいてください。個別に自宅へ来られると、その都度対応することになります。

菩提寺との関係も確かめてください。式を簡略にした場合、後から納骨に支障が出ることがあります。事前に相談しておけば避けられます。

費用の話とは別に、こうした点も先に決めておくと、後から慌てずに済みます。

増えやすい費目を押さえる

家族葬でも、請求書が見積書より高くなることがあります。

費目何で変わるか
料理・返礼品参列者が想定より多かった
安置料・ドライアイス火葬までの日数が延びた
寝台車・霊柩車距離が遠い、回数が多い
式場使用料公営が取れず民営になった

とくに安置日数です。火葬場の予約が数日先になることがあり、その分だけ積み上がります。

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料では、令和6年の死亡数が約161万人と、調査開始以来もっとも多かったことに触れています。火葬場の予約が取りにくい背景です。

契約時に「安置料は1日いくらか」を聞いておけば、増える金額をその場で計算できます。

参列者についても、「1人増えるといくら増えるか」を確かめてください。料理・返礼品・会葬礼状の単価を足した数字です。

相談できる窓口

見積書の内容が分からない、金額に納得がいかない。そうしたときの相談先です。

相談先内容費用
消費生活センター電話188。相談員が助言、あっせん無料
弁護士見積書・請求書の確認、争える範囲事務所による

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件、うち52.6%が料金に関するものでした。

契約前でも相談できます。むしろ、この段階のほうが実益があります。条件そのものを直せるためです。

事前に見積もりを取る

家族葬にするかどうかを決める前に、いくつかの形式で見積もりを取っておくと比べられます。

一般葬、家族葬、一日葬。同じ条件で出してもらえば、差額がどこから生じているかが見えます。作成は無料であることがほとんどです。

「家族葬」という言葉の幅

同じ「家族葬」でも、葬儀社によって想定している内容が違います。

ある会社では通夜と告別式を行う2日間の式を指し、別の会社では告別式のみを指すことがあります。参列者の人数の想定も違います。

見積書を比べるときは、内容がそろっているかを確かめてください。

これらが違えば、総額が違って当然です。「A社は80万円、B社は110万円」と比べても意味がありません。

同じ条件を伝えて出してもらえば、差額がどこから生じているかが見えます。