直葬とは|流れと注意すべき点

儀式を行わない選択です。決めたら、菩提寺と親族への連絡だけは先に済ませてください

直葬とは|流れと注意すべき点

直葬は、通夜と告別式を行わず、火葬だけを行う形式です。火葬式とも呼ばれます。

平均費用は49.56万円。形式の中では最も費用が抑えられます。

ただし、金額だけで選ぶと後から調整が必要になる場面があります。とくに菩提寺と親族への連絡です。ここを飛ばすと、納骨や関係の面で困ることがあります。

順番さえ守れば、直葬そのものが不利になることはありません。何を先に済ませるかをお伝えします。

直葬とはの全体像。判断が分かれる点を一枚で示す
直葬とはの全体像。判断が分かれる点を一枚で示す(作図: 弁護士による葬儀ガード)

直葬の流れと、24時間の制約

直葬でも、法律上の手続きは他の形式とまったく同じです。時系列で見ておきましょう。

  1. 臨終と死亡診断書の受け取り。病院で亡くなった場合は、医師が死亡診断書を交付します
  2. 搬送と安置。病院から自宅または安置施設へ移します
  3. 死亡届と火葬許可申請。死亡診断書は死亡届と一体の用紙になっています
  4. 火葬。死亡後24時間を経過した後でなければ行えません
  5. 収骨。火葬済の印が押された許可証が返され、これが納骨のときに必要になります

自宅などで亡くなり、異状が疑われる場合は、医師が警察へ届け出ることになります。警察の検視を経て、死体検案書が交付されます。

つまり、直葬でも亡くなってから最短で24時間強かかります。火葬場の予約状況によっては数日を要します。

「その日のうちに終わる」ものではありません。ここは誤解されやすいところです。

根拠となる条文 — 死亡届と火葬の手続き

死亡の届出は、届出義務者が死亡の事実を知った日から7日以内にしなければなりません(戸籍法86条1項)。国外で死亡した場合は3か月以内です。

火葬は、死亡または死産後24時間を経過した後でなければ行えません(墓地、埋葬等に関する法律3条)。火葬場は、火葬許可証を受理した後でなければ火葬を行えません(同法14条3項)。

自宅などで亡くなり、死体に異状があると認めたときは、医師は24時間以内に所轄警察署に届け出なければなりません(医師法21条)。この場合、検視を経て死体検案書が交付されます。

火葬が済むと、火葬済の証明が押された許可証が返されます。これが納骨のときに必要です。骨壺と一緒に保管し、なくさないでください。

49.56万円に、何が含まれるか

株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると、直葬・火葬式の平均費用は49.56万円、実施割合は10.8%でした。

ただし、これは平均です。プランの表示価格が10万円台のこともあります。

その場合、含まれる範囲が狭いことが多くあります。次の項目が別途になっていないか確認してください。

費目確認する点
火葬料公営か民営か、住民かどうかで大きく変わる
安置料・ドライアイス1日単位で加算されるのが通例
搬送費規定距離を超えた分が別途かかる
骨壺・骨箱グレードによって差がある
役所手続きの代行料プランに含まれるか
お布施火葬炉前で読経を依頼する場合

とくに安置料は要注意です。火葬場が混み合う時期は日数が延び、金額が動きやすい項目です。

確認するのは次の2つです。

  1. 何日分が見積もりに入っているか
  2. 1日延びるといくら加算されるか

この2つが分かっていれば、日数が延びたときの金額を自分で計算できます。契約前に、書面で確認してください。

菩提寺との関係で起きやすいこと

直葬でとくに注意したいのが、先祖代々の墓を管理する菩提寺がある場合です。

墓地や納骨堂は、寺院や霊園がそれぞれ使用規則を定めて運営しています。

宗教儀礼を経ていないことを理由に、納骨の受け入れについて寺院と協議が必要になる例があります。

法律が納骨を禁じているわけではありません。墓地の管理者との契約関係の問題として、調整が求められる場面があるということです。

避ける方法は単純です。

直葬にすると決めた段階で、菩提寺に連絡してください。

事後に伝えるより、圧倒的に話が進みやすくなります。事情を伝えれば、折衷案が取られることもあります。

  • 火葬炉前で、短時間だけ読経を依頼する
  • 後日あらためて法要を行う
  • 納骨のときに、あわせて読経をお願いする

菩提寺が遠方にある、付き合いが途絶えている。そういう場合も、まず電話を1本入れることをおすすめします。

図で整理: 親族への説明と、後日の弔問
図で整理: 親族への説明と、後日の弔問(作図: 弁護士による葬儀ガード)

親族への説明と、後日の弔問

直葬は「お別れの場がない」形式です。

故人と親しかった親族や友人が、参列の機会を得られないまま火葬が終わります。

そのため、事前に説明がないと「なぜ知らせてくれなかったのか」という不満が残りやすくなります。

連絡の順番が大切です。直葬にする意向を親族に伝えてから、日程を確定させてください。逆にすると、相談ではなく通知になります。

故人が生前に希望していた場合は、その旨を伝えると理解を得やすくなります。

また、火葬後に自宅への弔問が個別に続くことがあります。四十九日まで対応が続き、負担が大きいと感じることもあります。

その場合は、次のような方法があります。

  • 後日、少人数でのお別れ会を設定する
  • 四十九日の法要にあわせて集まる場を持つ
  • 弔問を受ける日をあらかじめ決めて知らせる

「お別れの時間がなかった」と感じたとき

直葬を終えた後で、物足りなさを感じることがあります。

後からできることは、いくつもあります。

  1. 四十九日や一周忌の法要を、参列できなかった人にも案内して行う
  2. 自宅に小さな祭壇を設け、弔問を受ける日を決めて知らせる
  3. 納骨の日にあわせて、集まる場を持つ

いずれも、直葬を選んだこと自体をやり直す必要はありません。後から追加できるものです。

費用を理由に選ぶ場合

費用が理由で直葬を選ぶのであれば、先に公的給付を確認してください。

故人が加入していた制度給付金額の目安
国民健康保険・後期高齢者医療葬祭費自治体による。東京23区は7万円
健康保険(協会けんぽ等)埋葬料5万円
労災(業務上・通勤による死亡)葬祭料315,000円+給付基礎日額30日分

いずれも申請しないともらえません。期限は2年です。

直葬の平均費用49.56万円に対し、葬祭費7万円が出れば、実質は42.56万円ほどになります。

根拠となる条文 — 葬祭費・埋葬料・葬祭扶助

葬祭費は、国民健康保険法58条1項と、高齢者の医療の確保に関する法律86条にもとづく給付です。金額は保険者の条例または規約で定められます。

埋葬料は健康保険法100条にもとづき、生計を維持されていた方で埋葬を行う方に支給されます。保険給付を受ける権利は2年で時効消滅します(同法193条、国民健康保険法110条)。

生活保護を受けている方が関わる場合は、葬祭扶助という制度があります(生活保護法18条)。支給の範囲は、検案、死体の運搬、火葬または埋葬、納骨その他葬祭のために必要なものに限られます。

生活保護を受けている方が関わる場合は、火葬より前に福祉事務所へ申請してください。火葬後の申請は、通常認められません。

契約前に確認したいこと

直葬の見積書を受け取ったら、次の点を書面で確認してください。

直葬は項目が少ない分、1つの見落としが総額に響きます。とくに安置料と搬送費は、後から動きやすい部分です。

受け取った見積書は、その場でスマホで撮っておいてください。

直葬とは — 支払う前・動く前に確認しておきたい項目
直葬とは — 支払う前・動く前に確認しておきたい項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

火葬場で何が行われるか

儀式を行わないといっても、火葬場でまったく何もしないわけではありません。当日の流れを知っておくと、心づもりができます。

一般には、次のように進みます。

  1. 安置場所から火葬場へ搬送する
  2. 火葬炉の前で、短い時間のお別れをする
  3. 炉に納め、火葬が行われる(1時間から2時間程度)
  4. 控室で待つ
  5. 収骨する

炉前でのお別れは、10分程度が一般的です。この時間に、花を手向けたり、手紙を納めたりすることができます。

読経を希望する場合は、この炉前で短時間だけお願いする形になります。事前に葬儀社へ伝えておいてください。当日の申し出では手配が間に合いません。

副葬品として棺に納められるものには制限があります。燃えにくいもの、有害なガスが出るものは入れられません。

納められることが多いもの納められないもの
手紙、写真眼鏡、指輪などの金属類
少量の花分厚い書籍
好物のお菓子(少量)缶、瓶、ペットボトル

施設によって扱いが違いますので、事前に確認してください。入れられなかったものは、当日その場で外すことになります。

火葬にかかる時間は、控室で待つことになります。飲み物の用意がある施設と、ない施設があります。

決める前に、家族で共有しておくこと

直葬を選ぶかどうかは、費用だけの問題ではありません。後から関係に響くことがあります。

決める前に、次の4点を家族で共有しておいてください。

  • 誰が喪主になるか(契約者と分けても構いません)
  • 誰が費用を負担するか
  • 菩提寺への連絡を誰がするか
  • 親族への説明を誰がするか

とくに3番目と4番目は、誰か一人に任せきりにすると抜けます。担当を決めてください。

そして、決めたことはメールでも構いませんので文字にしておいてください。口約束は、時間が経つと必ず食い違います。

葬儀社との契約は、申込書に署名した人が責任を負います。喪主と契約者が別でも構いません。資金を出す人が契約者になるほうが、後の精算は単純になります。

家族の中の分担と、葬儀社との関係は別の問題です。ここを混ぜると、話す相手を間違えます。分けて整理してください。

まとめ

直葬について、覚えておくことは3つです。

  1. 24時間は火葬できない。その日のうちに終わることはありません
  2. 菩提寺に先に連絡する。事後だと、納骨で調整が必要になることがあります
  3. 親族には日程確定の前に伝える。順番を逆にすると、相談になりません

金額面では、安置料と火葬料の扱いが動きやすい部分です。何日分入っているか、1日延びたらいくらかを確認してください。

事前の連絡と書面の確認を済ませておけば、直葬そのものが不利になることはありません。

見積書に分からない点が残るときは、契約の前に相談してください。項目が少ない分、確認にかかる時間も短くて済みます。