葬儀費用が払えないとき|公的給付と支払い方法の選択肢
香典・公的給付・仮払い・分割・葬祭扶助。使える順に確認していく
葬儀費用が用意できないときにまず確認すべきは、費用を下げる方法ではなく、火葬より前に手を打つ必要がある制度があるかどうかです。生活保護法18条の葬祭扶助は、火葬を済ませてから申請しても認められないのが通常の運用だからです。その次に、公的給付の申請、故人の預貯金からの支払い、支払い時期の調整という順で選択肢を検討していきます。慌てて高額な契約をしてしまう前に、順番を確認してください。
最初に確認する:葬祭扶助は火葬前の申請
生活保護を受けている方が亡くなった場合や、葬儀を行う方自身が生活保護を受けている場合には、生活保護法18条の葬祭扶助が使える可能性があります。
同条2項は、被保護者が死亡した場合にその葬祭を行う扶養義務者がないとき、または死者に葬祭を行う扶養義務者がない場合においてその遺留した金品で葬祭に必要な費用を満たすことができないときに、葬祭を行う者に対して葬祭扶助を行うことができると定めています。支給範囲は同条1項の検案・死体の運搬・火葬または埋葬・納骨その他葬祭のために必要なものに限られます。
重要なのは申請のタイミングです。葬祭扶助は火葬を行う前に福祉事務所へ申請する必要があります。葬儀を済ませてから申請しても、支払える資力があったとみなされるためです。該当する可能性がある場合は、葬儀社に依頼するより先に、福祉事務所へ連絡してください。詳しくは葬祭扶助の条件と支給金額をご覧ください。
受け取れる公的給付を洗い出す
葬祭扶助に当たらない場合でも、次の給付があります。いずれも申請しなければ支給されません。
葬祭費は、国民健康保険法58条1項および高齢者の医療の確保に関する法律86条に基づき、国民健康保険・後期高齢者医療制度の加入者が亡くなったときに、葬祭を行った人へ支給されます。金額は条例で定まるため地域差があり、東京23区では7万円です。港区の案内では申請期限は葬祭を行った日の翌日から2年以内とされています。詳しくは葬祭費の申請方法と支給額をご覧ください。
埋葬料・埋葬費は、健康保険法100条・105条に基づく給付です。協会けんぽの場合、生計を維持されていた方で埋葬を行う方に埋葬料5万円、該当者がいない場合は実際に埋葬を行った方に上限5万円の埋葬費が支給されます。時効は2年です。詳しくは埋葬料・埋葬費の申請方法をご覧ください。
労災保険の葬祭料(葬祭給付)は、業務上の事由や通勤による死亡の場合の給付です。厚生労働省の案内によれば、315,000円に給付基礎日額の30日分を加えた額(それが給付基礎日額の60日分に満たない場合は60日分)が支給されます。請求先は所轄の労働基準監督署長です。
これらは支給までに1か月前後かかることが多く、葬儀社への支払期日に間に合わないことがあります。給付を当てにする場合は、後述の支払い時期の調整と併せて考える必要があります。
故人の預貯金から支払えるか
故人名義の口座は、金融機関が死亡を把握した時点で凍結されます。ただし、民法909条の2により、各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に自分の法定相続分を乗じた額について、単独で払戻しを受けることができます。1つの金融機関あたりの上限は法務省令で150万円と定められています。
条文自体が「平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して」と定めているとおり、葬儀費用の支払いを想定した制度です。手続きには戸籍書類が必要で、金融機関ごとに求められる書類が異なります。詳しくは預貯金の仮払い制度で解説しています。
ここで一点、注意が必要です。故人に借金がある可能性があり相続放棄を検討している場合、相続財産の使い方によっては単純承認とみなされる可能性があります。仮払いを受けた金銭を葬儀費用以外に使うことは避け、領収書を必ず保管してください。判断が分かれる場面ですので、相続放棄をしても葬儀費用は払えるかと相続放棄ができなくなる行為を確認したうえで、迷う場合は弁護士に相談することをおすすめします。
支払い時期を調整する
葬儀社への支払いは、多くの場合、施行後1週間から2週間程度の期日が設定されています。ここで無理をして高金利の借入れに頼る前に、まず葬儀社に事情を伝えて相談してください。分割払いやクレジットカード払いに対応している葬儀社もあります。
その際、口頭のやり取りだけで済ませず、変更後の支払期日と金額を書面またはメールで残してください。後日の食い違いを防げます。
また、支払いが難しいという状況は、そもそもの請求額が想定を大きく超えていることが原因である場合もあります。国民生活センターが2026年6月3日に公表した「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル」では、PIO-NETに寄せられた葬儀サービスに関する相談が2025年度で917件、そのうち「高価格・料金」に関するものの割合が52.6%(2019年度は33.2%)と報告されています。見積書に明細がなく追加費用が発生して総額200万円を超えたという相談事例も紹介されています。請求額に納得できない場合は、支払う前に見積書と請求書を並べて差分を確認してください。確認の観点は葬儀の見積書チェックポイントにまとめました。
費用の分担を後から整理する
葬儀費用を立て替えた場合、その負担を他の親族と分け合えるかは別途の問題です。誰が最終的に負担すべきかについては裁判例の考え方が分かれており、一律の結論はありません。立替分の扱いは葬儀費用を兄弟に請求できるかで扱っています。
大切なのは記録です。誰が何をいくら支払ったのか、香典をいくら受け取り何に充てたのかを、領収書とともに残しておいてください。後から整理するとき、記録の有無が結論を左右します。
まとめ
葬儀費用が払えないときの順序は、まず葬祭扶助に該当するかを火葬前に確認すること、次に葬祭費・埋葬料・労災の葬祭料といった公的給付を漏らさず申請すること、そして預貯金の仮払い制度や葬儀社との支払い時期の調整を検討することです。
支払いに追われている状況こそ、請求額そのものが妥当かを確認する価値があります。見積書、契約書、請求明細、香典の記録を揃えたうえで、福祉事務所や消費生活センター、弁護士に相談しながら進めてください。
