埋葬料5万円の申請|埋葬費との違い

定額5万円の埋葬料と、実費で上限5万円の埋葬費。要件も起算日も違います

埋葬料5万円の申請|埋葬費との違い

健康保険に加入していた方が亡くなったとき、給付があります。

埋葬料は5万円の定額です。似た名前の埋葬費は、実費で上限5万円です。

名前が似ていますが、要件も時効の起算日も違います。順に確かめてください。

埋葬料は定額5万円、埋葬費は実費で上限5万円
埋葬料は定額5万円、埋葬費は実費で上限5万円(作図: 弁護士による葬儀ガード)

3つの給付があります

健康保険からの給付は、状況によって3つに分かれます。

給付の名前誰が受け取るか金額
埋葬料被保険者に生計を維持されていた方で、埋葬を行う方定額5万円
埋葬費埋葬料を受けられる方がいない場合に、実際に埋葬を行った方実費(上限5万円)
家族埋葬料被扶養者が亡くなったとき、被保険者へ定額5万円

つまり、定額で出るのが埋葬料と家族埋葬料、実費精算で上限5万円なのが埋葬費という関係です。

実際にかかった費用が5万円に満たない場合、埋葬費では満額を受け取れません。埋葬料であれば5万円が支給されます。

根拠となる条文 — 埋葬料の給付

被保険者が死亡したときは、その者により生計を維持していた者であって、埋葬を行うものに対し、埋葬料として、政令で定める金額を支給すると定められています(健康保険法100条1項)。

埋葬料を受けるべき者がない場合においては、埋葬を行った者に対し、埋葬料の金額の範囲内においてその埋葬に要した費用に相当する金額を支給するとされています(同条2項)。

被扶養者が死亡したときは、被保険者に対し、家族埋葬料として、埋葬料の金額を支給すると定められています(同法113条)。

「生計を維持されていた」とは

埋葬料の要件です。同居していたかどうかだけで決まるわけではありません。

被保険者の収入によって生計の一部でも支えられていれば、該当するとされています。完全に扶養されている必要はありません。

配偶者や子はもちろん、別居していた親でも、仕送りを受けていれば該当し得ます。

判断に迷う場合は、協会けんぽの支部や健康保険組合に事情を伝えて確かめてください。

時効の起算日が違います

ここが見落とされやすい点です。

根拠となる考え方 — 時効と起算日

保険給付を受ける権利は、2年を経過したときに時効によって消滅すると定められています(健康保険法193条1項)。

起算日は、給付によって違います。

給付起算日
埋葬料・家族埋葬料死亡した日の翌日
埋葬費埋葬を行った日の翌日

埋葬費のほうが、実際に埋葬を行った日から数えるため、期間が後ろにずれます。

いずれにしても2年です。他の手続きと比べれば余裕がありますが、忘れやすい申請です。

四十九日の前後を目安に、まとめて処理するとよいでしょう。

図で整理: 3つの給付の使い分け
図で整理: 3つの給付の使い分け(作図: 弁護士による葬儀ガード)

申請の手順

窓口は、加入していた健康保険によって変わります。

加入先申請先
協会けんぽ都道府県支部
健康保険組合その組合
共済組合その組合

埋葬費の場合は、領収書が必須です。実費精算のためです。埋葬料であれば、金額を示す書類は不要とされることがあります。

健康保険組合によっては、法定の給付に上乗せする付加給付を行っているところもあります。勤務先の担当部署に確かめてください。

退職直後に亡くなった場合

判断に迷いやすい場面です。

健康保険の資格を失ってから3か月以内に亡くなった場合、埋葬料が支給される取扱いがあります。

一方、退職して国民健康保険に切り替えていれば、葬祭費の対象にもなり得ます。

制度金額
埋葬料5万円
葬祭費自治体による(東京23区は7万円)

金額が違うため、どちらで申請するかで受取額が変わります。両方の窓口に事情を伝えて確かめてください。

なお、両方を重ねて受け取ることはできません。

埋葬料の申請 — 窓口へ行く前の確認
埋葬料の申請 — 窓口へ行く前の確認(作図: 弁護士による葬儀ガード)

仕事中・通勤中の死亡は別の制度です

業務上または通勤による死亡の場合、健康保険ではなく労災保険から給付が行われます。

根拠となる条文 — 労災の葬祭料

業務災害による死亡の場合は葬祭料、通勤災害による死亡の場合は葬祭給付が支給されます。

金額は、31万5000円に給付基礎日額の30日分を加えた額です。その額が給付基礎日額の60日分に満たないときは、60日分となります。

請求先は労働基準監督署で、時効は死亡の日の翌日から2年です。

なお、労災保険の給付を受けることができる場合、健康保険の給付は行われません(健康保険法55条)。

判断に迷う場合は、まず労働基準監督署に相談してください。認定されるかどうかを判断するのは監督署です。

金額が大きく違うため、業務上の死亡にあたる可能性があるなら、必ず確かめてください。

費用全体の中での位置づけ

埋葬料5万円は、葬儀費用の全体から見れば一部です。ただ、確実にもらえるお金として、資金計画に組み込む価値があります。

調査による葬儀費用の平均額を挙げます。

形式平均
一般葬122.01万円
家族葬96.39万円
一日葬74.43万円
直葬・火葬式49.56万円

全体の平均は96.73万円です。この金額にお布施は含まれていません。

実質の持ち出しを出すには、香典と公的給付を引きます。埋葬料5万円は、その中に含まれます。

支払時期とのずれに注意

埋葬料は、申請してから振り込まれるまで時間がかかります。数週間から2か月ほどが目安です。

一方、葬儀費用の支払期日は、葬儀の後1週間から10日ほどに設定されることが多くあります。

つまり、支払いのほうが先に来ます。

埋葬料を当てにして支払いを待つことはできません。いったん立て替える現金が必要です。

手元の資金が足りない場合は、香典、生命保険金、故人の口座からの仮払いで不足を減らせないか確かめてください。凍結された口座からも、金融機関ごとに150万円までは払い戻せます。

申請書に書くこと

保険者からもらう申請書には、次の内容を書きます。

記入欄内容
被保険者の情報氏名、記号番号、死亡年月日
申請者の情報氏名、住所、故人との続柄
生計維持の状況同居か別居か、仕送りの有無など
振込先申請者名義の口座

記号番号は健康保険証に書かれています。返却する前に控えておいてください。

事業主の証明欄がある場合は、勤務先に記入を依頼します。退職後の死亡であれば、事業主の証明が不要な場合もあります。

協会けんぽの場合、申請書はウェブサイトからダウンロードできます。郵送での提出も受け付けています。

他の手続きとまとめて進める

死亡後には、期限のある手続きが複数あります。まとめて確認しておくと、取りこぼしを防げます。

手続き期限
死亡届7日以内
年金の受給停止厚生年金10日/国民年金14日
健康保険・介護保険の資格喪失14日以内
相続放棄・限定承認3か月以内
準確定申告4か月以内
相続税の申告・納付10か月以内
埋葬料・埋葬費2年以内
高額療養費2年以内

短いものから片づけるのが基本です。埋葬料は後回しでも間に合いますが、忘れやすい申請です。

とくに注意したいのは、3か月の相続放棄です。故人に借金がある可能性があるなら、この判断を先にしてください。期限を過ぎると、後から変えられません。

高額療養費もあわせて確かめる

亡くなる前の医療費が高額だった場合、高額療養費の払い戻しを受けられることがあります。

死亡後でも、相続人が申請できます。こちらも時効は2年です。

窓口は、埋葬料と同じ健康保険です。あわせて確かめてください。

入院していた期間の医療費については、準確定申告での医療費控除の対象になることもあります。領収書は保管しておいてください。

なお、亡くなった後に相続人が支払った医療費は、故人の準確定申告では控除できません。相続税の計算で、債務控除の対象になり得ます。

遺族年金もあわせて確かめる

健康保険の給付とは別に、年金の手続きもあります。

手続き内容
受給権者死亡届年金の受給を止めます
未支給年金の請求受け取っていない分を遺族が請求します
遺族年金の請求要件を満たす遺族に支給されます

未支給年金は、故人が受け取るはずだった分です。生計を同じくしていた三親等内の親族が、自分の名前で請求できます。

相続財産ではないため、相続放棄をしても請求できます。

窓口は年金事務所です。健康保険の窓口とは別なので、それぞれ手続きが必要です。

相談できる窓口

制度が分からない、自分が対象になるか判断できない。そうしたときの相談先です。

相談先内容費用
協会けんぽ都道府県支部埋葬料の要件、必要書類無料
健康保険組合付加給付の有無、金額無料
市区町村国民健康保険の葬祭費無料
労働基準監督署労災の葬祭料無料
年金事務所遺族年金、未支給年金無料

いずれも無料です。「これは対象になりますか」と電話で聞くだけでも構いません。

判断に迷いやすいのは、退職直後に亡くなった場合、別居していた親族の場合、業務上の死亡かどうかが微妙な場合です。

どれも金額が変わる場面です。面倒でも、両方の窓口に確かめてください。

勤務先の担当部署が手続きを案内してくれることもあります。まず勤務先に聞いてみるのも一つの方法です。

退職後であっても、在職時の健康保険から給付を受けられる場合があります。遠慮せず問い合わせてください。

書類は、健康保険証の記号番号を控えたうえで返却してください。後から必要になることがあります。

領収書はまとめて保管を

埋葬費の申請には領収書が必須です。埋葬料の場合も、相続税の申告で使います。

葬式費用は遺産の総額から差し引けますが、差し引ける費目とそうでない費目が分かれます。明細つきの領収書を、一か所にまとめて保管してください。