葬儀後の手続き一覧|期限つきのものを優先順に整理

期限のあるものから片づける。14日・3か月・4か月・10か月・2年・3年

葬儀が終わった後の手続きは数が多く見えますが、実際に期限があるものは限られています。順に並べると、年金の受給権者死亡届が10日または14日、世帯主変更届が14日、相続放棄が3か月、準確定申告が4か月、相続税の申告が10か月、給付の請求は時効2年です。この六つを押さえておけば、残りは期限のない名義変更や解約で、落ち着いて進めて構いません。期限の短い順に、根拠となる条文とあわせて整理します。

10日・14日以内のもの

最初に来るのが年金と住民票の手続きです。

  • 年金受給権者死亡届(厚生年金)は10日以内。 受給権者が死亡したとき、戸籍法の規定による死亡の届出義務者は10日以内に厚生労働大臣へ届け出なければなりません(厚生年金保険法98条4項)。
  • 年金受給権者死亡届(国民年金)は14日以内。 国民年金法105条4項に基づく届出で、同法施行規則24条1項が「当該事実があつた日から14日以内」と定めています。
  • 世帯主変更届は14日以内。 世帯またはその世帯主に変更があった人は、変更があった日から14日以内に市町村長へ届け出ます(住民基本台帳法25条)。正当な理由なく届け出ないと5万円以下の過料の対象です(同法52条2項)。残る世帯員が一人だけの場合など、届出が不要とされるケースもあります。
  • 健康保険・介護保険の資格喪失届。 国民健康保険や後期高齢者医療は市区町村に、健康保険は勤務先を通じて届け出ます。保険証の返却も必要です。

いずれもマイナンバーによる情報連携で一部が省略できる場合がありますが、自治体や制度によって扱いが異なります。窓口で確認してください。年金については未支給年金の請求もあわせて検討します。詳しくは年金の受給停止手続き|期限と未支給年金の請求をご覧ください。

3か月以内のもの

相続をどうするかの判断です。相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかを選ぶことになります(民法915条1項)。この期間は熟慮期間と呼ばれ、利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所で伸長することができます。

期間内に限定承認も放棄もしなければ、単純承認したものとみなされます(民法921条2号)。単純承認をすると、無限に被相続人の権利義務を承継します(同法920条)。負債があるかどうか分からない場合は、この3か月の間に財産と債務を調べる必要があります。

注意が必要なのは、期間内であっても相続財産の全部または一部を処分すると単純承認とみなされる点です(民法921条1号。ただし保存行為等を除く)。故人の預金を引き出して葬儀費用にあてる行為がこれにあたるかは、事情によって判断が分かれます。詳しくは相続放棄をしても葬儀費用は払えるか|判断の分かれ目相続放棄ができなくなる行為|単純承認とみなされるケースを参照してください。

4か月・10か月以内のもの

準確定申告は4か月以内

準確定申告です。亡くなった人のその年の所得について確定申告が必要な場合、相続人は相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月を経過した日の前日までに申告と納税をします(所得税法125条1項)。

年の途中で亡くなった場合だけでなく、前年分の確定申告を済ませないまま年明けに亡くなった場合も、同様に4か月以内の申告が必要です(所得税法124条1項)。医療費が多くかかっていた場合などは、申告により還付を受けられることがあります。

相続税の申告は10か月以内

相続税の申告です。相続または遺贈により財産を取得した人は、課税価格の合計額が基礎控除額を超え、税額が生じる場合、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告書を提出しなければなりません(相続税法27条1項)。

配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は、期限内に申告することが適用の前提とされている点に注意が必要です。また、葬式費用は相続財産から差し引ける場合があります。対象になる範囲は相続税から控除できる葬式費用|対象になるもの・ならないもので整理しています。

遺産分割協議は法律上の期限がありませんが、相続税の申告や不動産の名義変更に必要になるため、10か月を目安に進めるのが現実的です。書き方は遺産分割協議書の書き方|必要な場面と記載事項をご覧ください。

時効2年のもの

請求しなければ受け取れない給付です。いずれも時効は2年で、行使できる時から起算します。

  • 葬祭費。 国民健康保険・後期高齢者医療の加入者が亡くなったとき、葬祭を行った人に支給されます(国民健康保険法58条1項)。金額は市区町村の条例で定められます。
  • 埋葬料・埋葬費。 健康保険の被保険者が亡くなったとき、生計を維持されていた人に埋葬料が支給されます(健康保険法100条1項)。受け取るべき人がいない場合は、埋葬を行った人に埋葬費が支給されます(同条2項)。
  • 高額療養費。 医療費の自己負担が高額だった場合に支給されます(健康保険法115条、国民健康保険法57条の2)。亡くなった後でも相続人が請求できます。

いずれも保険給付を受ける権利は2年で時効消滅します(健康保険法193条、国民健康保険法110条)。詳しくは葬祭費の申請方法と支給額|国民健康保険・後期高齢者医療高額療養費は死亡後も申請できる|相続人が受け取る手続きを参照してください。

期限のない手続き

残りは期限の定めがないもので、落ち着いてから進めて構いません。

  • 公共料金、携帯電話、インターネットの名義変更または解約
  • クレジットカードの解約
  • 各種会員資格やサブスクリプションの解約
  • 生命保険金の請求(保険法95条により3年で時効となる契約が多く、約款の確認が必要)
  • 預貯金口座の名義変更または解約
  • 不動産の相続登記(令和6年4月から義務化され、所有権の取得を知った日から3年以内が原則)
  • 自動車の名義変更

なお、預貯金は死亡の連絡により入出金が停止されます。葬儀費用の支払いに困る場合は、民法909条の2の仮払い制度が使えることがあります。詳しくは預貯金の仮払い制度|凍結された口座から葬儀費用を出す方法をご覧ください。

まとめ

葬儀後の手続きで急ぐべきは、年金の死亡届(10日または14日)と世帯主変更届(14日)だけです。次に3か月の相続の判断、4か月の準確定申告、10か月の相続税申告と続きます。給付の請求は2年の時効があるため、忘れていても取り返しがつく場面が多いものの、葬祭費と高額療養費は請求しない限り支給されません。期限のある六つを一覧にして順に片付ければ、残りは急ぐ必要のない手続きです。判断に迷う点があれば、期限が来る前に専門家に確認しておくと安全です。