葬儀後の手続き一覧|期限つきのものを優先順に整理

数は多く見えますが、期限があるのは6つだけです。それ以外は落ち着いて進められます

葬儀後の手続き一覧|期限つきのものを優先順に整理

やることが山積みに見えると思います。

でも、実際に期限があるものは6つだけです。

手続き期限
年金の受給権者死亡届10日または14日
世帯主変更届14日
相続放棄・限定承認3か月
準確定申告4か月
相続税の申告10か月
給付の請求(葬祭費など)2年

この6つを押さえておけば、残りは期限のない名義変更や解約です。落ち着いて進めて構いません。

期限の短い順に、順番に見ていきます。

葬儀後の手続き一覧の全体像。判断が分かれる点を一枚で示す
葬儀後の手続き一覧の全体像。判断が分かれる点を一枚で示す(作図: 弁護士による葬儀ガード)

10日・14日以内のもの

最初に来るのが、年金と住民票の手続きです。

手続き期限窓口
年金受給権者死亡届(厚生年金)10日以内年金事務所
年金受給権者死亡届(国民年金)14日以内市区町村
世帯主変更届14日以内市区町村
健康保険・介護保険の資格喪失届14日以内市区町村または勤務先

年金は、停止しないまま振り込まれ続けると、後から返還を求められます。早めに手続きしてください。

同時に、未支給年金の請求も検討します。年金は後払いのため、亡くなった月の分までは受け取れます。生計を同じくしていた遺族が請求できます。

世帯主変更届は、届け出ないと過料の対象になり得ます。ただし、残る世帯員が一人だけの場合など、届出が不要とされるケースもあります。窓口で確認してください。

健康保険証と介護保険証は、返却が必要です。国民健康保険や後期高齢者医療は市区町村へ、健康保険は勤務先を通じて届け出ます。

マイナンバーによる情報連携で一部が省略できる場合がありますが、制度によって扱いが違います。窓口で確認してください。

根拠となる条文 — 年金と世帯主変更

受給権者が死亡したとき、戸籍法の規定による死亡の届出義務者は、10日以内に厚生労働大臣へ届け出なければなりません(厚生年金保険法98条4項)。

国民年金については、同法105条4項にもとづく届出を、その事実があった日から14日以内に行います(同法施行規則24条1項)。

世帯またはその世帯主に変更があった者は、変更があった日から14日以内に市町村長へ届け出なければなりません(住民基本台帳法25条)。正当な理由なく届け出ない場合、5万円以下の過料の対象になります(同法52条2項)。

3か月以内のもの

相続をどうするかの判断です。

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、次のいずれかを選ぶことになります。

選択肢内容
単純承認財産も負債もすべて引き継ぐ
限定承認財産の範囲内でのみ負債を引き継ぐ
相続放棄財産も負債も一切引き継がない

この期間は熟慮期間と呼ばれます。財産の調査に時間がかかるときは、家庭裁判所に請求して伸長できることがあります。

期間内に限定承認も放棄もしなければ、単純承認したものとみなされます。負債があるかどうか分からない場合は、この3か月の間に調べる必要があります。

根拠となる条文 — 相続の承認と放棄

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について単純承認、限定承認または放棄をしなければなりません(民法915条1項)。この期間は、利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所において伸長することができます。

相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされます(同法921条1号)。ただし、保存行為などはこの限りではありません。

期間内に限定承認または放棄をしなかったときも、単純承認をしたものとみなされます(同条2号)。単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継します(同法920条)。

4か月・10か月以内のもの

準確定申告は4か月以内

亡くなった人のその年の所得について確定申告が必要な場合、相続人が代わって申告します。

期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月です。

年の途中で亡くなった場合だけでなく、前年分の確定申告を済ませないまま年明けに亡くなった場合も、同様に4か月以内の申告が必要です。

医療費が多くかかっていた場合などは、申告により還付を受けられることがあります。「税金を払う手続き」とは限りません。

相続税の申告は10か月以内

課税価格の合計額が基礎控除額を超え、税額が生じる場合に必要です。

基礎控除は、次の式で計算します。

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月です。

配偶者の税額軽減や、小規模宅地等の特例は、期限内に申告することが適用の前提とされています。「特例を使った結果、税額がゼロ」という場合も、申告は必要です。

また、葬式費用は相続財産から差し引ける場合があります。火葬・搬送・通夜の費用やお布施は対象ですが、香典返しや法要の費用は対象外です。

遺産分割協議に法律上の期限はありません。ただし、相続税の申告や不動産の名義変更に必要になるため、10か月を目安に進めるのが現実的です。

根拠となる条文 — 準確定申告と相続税の申告

年の中途で死亡した居住者について確定申告をすべき場合、その相続人は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月を経過した日の前日までに、申告書を提出しなければなりません(所得税法125条1項)。前年分について申告書を提出すべき者が死亡した場合も同様です(同法124条1項)。

相続税の申告書は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に提出しなければなりません(相続税法27条1項)。

葬式費用は、相続人・包括受遺者が負担した場合に課税価格から控除されます(同法13条1項2号)。

図で整理: 時効2年のもの
図で整理: 時効2年のもの(作図: 弁護士による葬儀ガード)

時効2年のもの

請求しなければ受け取れない給付です。いずれも時効は2年です。

給付対象金額の目安
葬祭費国民健康保険・後期高齢者医療自治体による。東京23区は7万円
埋葬料・埋葬費健康保険(協会けんぽ等)5万円
高額療養費医療費が高額だった場合自己負担限度額を超えた分
葬祭料労災(業務上・通勤による死亡)315,000円+給付基礎日額30日分

高額療養費は見落とされやすい給付です。亡くなる直前に入院していた場合、未請求のまま残っていることがあります。相続人が請求できます。

葬祭費と埋葬料は、故人が加入していた制度によってどちらか一方になります。両方はもらえません。保険証で加入先を確認してください。

申請には、葬儀の領収書や会葬礼状が必要になることがあります。捨てないでください。

根拠となる条文 — 葬祭費・埋葬料・高額療養費

葬祭費は、国民健康保険法58条1項と、高齢者の医療の確保に関する法律86条にもとづく給付です。金額は保険者の条例または規約で定められます。

埋葬料は健康保険法100条1項にもとづき、生計を維持されていた方で埋葬を行う方に支給されます。受け取るべき人がいない場合は、実際に埋葬を行った方に埋葬費が支給されます(同条2項)。

高額療養費は、健康保険法115条および国民健康保険法57条の2にもとづく給付です。

保険給付を受ける権利は、行使できる時から2年で時効消滅します(健康保険法193条、国民健康保険法110条)。

期限のない手続き

残りは期限の定めがないものです。落ち着いてから進めて構いません。

ただし、不動産の相続登記には期限があります。令和6年4月から義務化され、所有権の取得を知った日から3年以内が原則です。

サブスクリプションは、解約しないと課金が続きます。故人のスマホやパソコンに、契約の記録が残っていることがあります。

預貯金は、死亡の連絡により入出金が停止されます。葬儀費用の支払いに困る場合は、一定額を引き出せる制度が使えます。上限は1つの金融機関につき150万円です。

書類は多めに取っておく

これらの手続きでは、戸籍と住民票が繰り返し必要になります。

窓口に何度も足を運ばずに済むよう、最初にまとめて取っておいてください。

とくに、故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本は、相続手続きでほぼ必ず求められます。本籍を移している場合は複数の役所にまたがり、取り寄せに時間がかかります。

法務局で「法定相続情報一覧図」を作ってもらう制度もあります。戸籍の束の代わりに1枚で足りるようになりますので、金融機関を何行も回る場合は手間が減ります。

作成は無料です。何通でも交付を受けられます。

葬儀後の手続き一覧 — 支払う前・動く前に確認しておきたい項目
葬儀後の手続き一覧 — 支払う前・動く前に確認しておきたい項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

葬儀後の手続きについて、覚えておくことは3つです。

  1. 急ぐのは2つだけ。年金の死亡届と世帯主変更届
  2. 3か月に注意。相続放棄の判断と、故人の預金の使い方
  3. 請求しないともらえない。葬祭費・埋葬料・高額療養費

期限のある6つを一覧にして、順に片づけてください。残りは急ぐ必要のない手続きです。

判断に迷う点があれば、期限が来る前に相談してください。過ぎてしまってからでは、選べることが減ります。