年金の受給停止手続き|期限と未支給年金の請求
止める手続きは省略できることがあります。省略できないのは、受け取るほうの請求です
年金を受けていた方が亡くなったとき、手続きは2つあります。
- 年金を止める手続き(年金受給権者死亡届)
- まだ受け取っていない年金を受け取る手続き(未支給年金の請求)
この2つを混同しないでください。扱いがまったく違います。
止めるほうは、マイナンバーが収録されていれば原則として省略できます。
一方、受け取るほうは省略されません。遺族が自分で請求しなければ、1円も出ません。
死亡届の期限と提出先
年金受給権者死亡届(報告書)の提出期限は、次のとおりです。
| 制度 | 期限 | 提出先 |
|---|---|---|
| 厚生年金保険 | 死亡から10日以内 | 年金事務所、街角の年金相談センター |
| 国民年金 | 死亡から14日以内 | 同上 |
| 障害基礎年金・遺族基礎年金のみ | 14日以内 | 市区町村の窓口 |
これは、市区町村に出す死亡届(7日以内)とは別の手続きです。混同しないでください。
提出時には、次の情報を記入し、書類を添えます。
- 死亡年月日
- 年金証書に記載された基礎年金番号と年金コード
- 生年月日
- 亡くなった方の年金証書
- 死亡の事実を明らかにできる書類(戸籍抄本、住民票の除票、死亡診断書のコピーなど)
前述のとおり、マイナンバーが収録されている方は死亡届自体を省略できます。
実務上、多くのケースで省略が可能です。ただし、収録の有無は本人には分かりにくいところです。年金事務所に電話で確認するのが確実です。
根拠となる条文 — 死亡の届出
年金の受給権者が死亡したときは、戸籍法の規定による死亡の届出義務者は、10日以内(国民年金については14日以内)に、その旨を厚生労働大臣に届け出なければなりません(厚生年金保険法98条4項、国民年金法105条4項、同法施行規則24条1項)。
なお、市区町村への死亡届は、届出義務者が死亡の事実を知った日から7日以内です(戸籍法86条1項)。別の手続きですので、期限も提出先も異なります。
止め忘れると、返還が必要になります
年金は、偶数月の15日に、その前2か月分が後払いで振り込まれます。
このため、亡くなった後にも振込が行われることがあります。
日本年金機構は、届出が遅れて亡くなった日の翌日以後に年金を受け取ったときは、その分を後日返還することになると案内しています。
ここで、よくある誤解を解いておきます。
「振り込まれた年金は全額返さなければならない」と思って、手続きをためらう方がいます。
そうではありません。亡くなった月の分までの年金は、本来受け取れるものです。返還が必要なのは、亡くなった日の翌日以後の分にあたる部分だけです。
また、口座の凍結と年金の振込は別の話です。
| 何が起きるか | |
|---|---|
| 金融機関が死亡を把握 | 口座が凍結される |
| 年金の受給停止を届け出た | 口座は凍結されない |
金融機関が死亡を把握すれば口座は凍結されますが、それによって年金の受給停止手続きが自動的に行われるわけではありません。
逆に、年金の受給停止を届け出たからといって、口座が凍結されるわけでもありません。
未支給年金は誰が受け取れるか
年金は後払いです。ですから、亡くなった月の分までは必ず「まだ受け取っていない年金」が残ります。これが未支給年金です。
受け取れるのは、死亡当時その方と生計を同じくしていた次の親族です。
| 順位 | 続柄 |
|---|---|
| 1 | 配偶者 |
| 2 | 子 |
| 3 | 父母 |
| 4 | 孫 |
| 5 | 祖父母 |
| 6 | 兄弟姉妹 |
| 7 | そのほか3親等内の親族 |
先順位者がいる場合、後順位者は受け取れません。
手続きは「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」を年金事務所などに提出して行います。
必要な書類は次のとおりです。
請求期限は5年です。時効の起算日は、受給権者の年金の支払日の翌月の初日とされています。
根拠となる条文 — 未支給年金
年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹またはこれらの者以外の3親等内の親族であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができます(国民年金法19条1項)。
厚生年金保険法37条にも、同趣旨の規定があります。
未支給年金を受けるべき者の順位は、政令で定められています(同条4項)。
相続放棄をしても受け取れます
未支給年金でよく問題になるのが、相続財産にあたるかどうかです。
最高裁平成7年11月7日判決は、この点について判断を示しました。
未支給年金の請求権について、法律は民法の相続人の範囲・順位とは異なる定め方をしています。そのことなどから、遺族が自己の固有の権利として請求するものだとされました。つまり、相続の対象にはならないということです。
これを受けて、国税庁も質疑応答事例で、未支給年金は死亡した受給権者の相続税の課税対象にはならないとしています。
そのうえで、遺族が受け取った未支給年金は、その遺族の一時所得に該当するとされています。
一時所得には50万円の特別控除があります。ほかの一時所得と合わせて50万円を超える場合には、確定申告を検討することになります。
相続財産ではないということは、相続放棄をした人でも未支給年金は受け取れるという結論につながります。
あわせて確認しておきたい給付
年金関係では、遺族の状況によって次の制度が使える場合があります。
| 制度 | 対象 |
|---|---|
| 遺族基礎年金 | 生計を維持されていた配偶者や子など、要件を満たす遺族 |
| 遺族厚生年金 | 同上(厚生年金の加入歴がある場合) |
| 寡婦年金 | 国民年金の第1号被保険者期間に関するもの |
| 死亡一時金 | 同上(寡婦年金とどちらか一方の選択) |
| 未支給年金 | 生計を同じくしていた遺族 |
いずれも自動的に支給されるものではなく、請求が必要です。
年金以外にも、期限のある手続きが同時期に集中します。
| 給付 | 時効 |
|---|---|
| 葬祭費(国民健康保険・後期高齢者医療) | 2年 |
| 埋葬料(健康保険) | 2年 |
| 高額療養費 | 2年 |
医療費については、亡くなった後でも高額療養費の申請ができます。入院が長期にわたった場合は、未請求のまま残っていることがあります。
年金事務所に行く際に、市区町村の窓口もあわせて回れるよう、必要書類を先に確認しておいてください。
遺族年金を受けられるかを確認する
未支給年金とは別に、遺族年金を受けられる場合があります。こちらは継続して支給されるものですから、金額の影響が大きくなります。
大きく2種類あります。
遺族基礎年金。国民年金から支給されます。受けられるのは、亡くなった方に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」です。ここでいう子は、18歳到達年度の末日までにある方などに限られます。
遺族厚生年金。厚生年金の加入歴がある方が亡くなった場合に支給されます。受けられる遺族の範囲は、遺族基礎年金より広くなっています。
このほか、国民年金の第1号被保険者期間に関するものとして、寡婦年金と死亡一時金があります。どちらか一方を選ぶ形です。
いずれも要件が細かく、自分で判断するのは難しいところです。年金事務所で確認してください。
相談に行くときは、次のものを持参すると話が早く進みます。
- 亡くなった方の年金証書、年金手帳
- 請求する方の年金手帳、マイナンバーが分かるもの
- 戸籍謄本(続柄が分かるもの)
- 住民票(世帯全員のもの)
- 死亡診断書のコピー
- 請求者名義の預金通帳
事前に電話で予約を取れる年金事務所が多くなっています。混み合う時期もありますので、予約してから行くほうが確実です。
手続きをまとめて進める順序
年金以外にも、期限のある手続きが同時期に集中します。回る順番を決めておくと、二度手間が減ります。
| 順序 | 窓口 | 主な手続き |
|---|---|---|
| 1 | 市区町村 | 死亡届、世帯主変更届、保険証の返却、葬祭費 |
| 2 | 年金事務所 | 受給停止、未支給年金、遺族年金 |
| 3 | 勤務先 | 健康保険、弔慰金、死亡退職金 |
| 4 | 生命保険会社 | 死亡保険金の請求 |
| 5 | 金融機関 | 口座の名義変更・解約 |
1番目の市区町村では、複数の手続きを同じ庁舎で済ませられることが多くあります。
このとき、戸籍と住民票を多めに取っておいてください。年金でも保険でも金融機関でも、繰り返し必要になります。
故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本は、相続手続きでほぼ必ず求められます。本籍を移している場合は複数の役所にまたがり、取り寄せに時間がかかります。
法務局で「法定相続情報一覧図」を作ってもらう制度もあります。戸籍の束の代わりに1枚で足りるようになりますので、金融機関を何行も回る場合は手間が減ります。作成は無料で、何通でも交付を受けられます。
まとめ
年金の手続きについて、覚えておくことは3つです。
- 止めるのは省略できることがある。マイナンバーが収録されていれば原則不要
- 受け取るほうは省略されない。未支給年金は、5年以内に自分で請求します
- 入金があってもすぐ引き出さない。返還すべき分が混ざっていることがあります
未支給年金は相続財産ではなく、遺族固有の権利とされます。相続放棄をした方でも受け取れます。
まずは年金事務所に電話して、何が必要かを確認してください。制度が複雑ですから、聞いてしまうのがいちばん早く進みます。
