年金の受給停止手続き|期限と未支給年金の請求
厚生年金は10日、国民年金は14日。遅れると過払い分の返還が生じる
年金を受けていた方が亡くなったときは、年金受給権者死亡届の提出が必要です。期限は厚生年金が死亡から10日以内、国民年金が14日以内とされています(日本年金機構)。ただし、日本年金機構にマイナンバーが収録されている方については、この死亡届は原則として省略できます。一方で、まだ受け取っていない年金(未支給年金)を受け取るための請求は、省略されず、遺族が自分で行う必要があります。この二つを混同しないことが出発点です。
死亡届の期限と提出先
年金受給権者死亡届(報告書)の提出期限は、厚生年金保険の受給者は死亡から10日以内、国民年金の受給者は14日以内です。市区町村に出す死亡届(戸籍法上の死亡届。7日以内)とは別の手続きなので、死亡届は7日以内と混同しないよう注意してください。
提出先は、年金事務所または街角の年金相談センターです。障害基礎年金・遺族基礎年金のみを受給していた方については、市区町村の窓口が受付先になります。
提出時には、死亡年月日、年金証書に記載された基礎年金番号と年金コード、生年月日などを記入し、亡くなった方の年金証書と、死亡の事実を明らかにできる書類(戸籍抄本、住民票の除票、死亡診断書のコピーなど)を添えます。
前述のとおり、マイナンバーが収録されている方は死亡届自体を省略できます。実務上、多くのケースで省略が可能ですが、収録の有無は本人には分かりにくいため、年金事務所に電話で確認するのが確実です。
止め忘れると返還が必要になる
年金は偶数月の15日に、その前2か月分が後払いで振り込まれます。このため、亡くなった後にも振込が行われることがあります。
日本年金機構は、届出が遅れて亡くなった日の翌日以後に年金を受け取ったときは、その分を後日返還することになると案内しています。受け取れる分と返還すべき分が同じ振込に混ざっていることも多いので、亡くなった後に入金があった口座からは、内訳が確定するまで安易に引き出さないほうが安全です。
なお、口座の凍結と年金の振込は別の話です。金融機関が死亡を把握すれば口座は凍結されますが、それによって年金の受給停止手続きが自動的に行われるわけではありません。逆に、年金の受給停止を届け出たからといって口座が凍結されるわけでもありません。
また、亡くなった月の分までの年金は本来受け取れるものです。「振り込まれた年金は全額返さなければならない」と誤解して手続きをためらう方がいますが、返還が必要なのは亡くなった日の翌日以後の分にあたる部分だけです。返還額と未支給年金は年金事務所が計算して案内してくれるので、まずは事実を届け出るところから進めてください。
未支給年金は誰が受け取れるか
年金は後払いのため、亡くなった月の分までは必ず「まだ受け取っていない年金」が残ります。これが未支給年金です。
国民年金法19条1項は、年金給付の受給権者が死亡した場合に、その配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹またはこれらの者以外の3親等内の親族であって、死亡当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で未支給の年金の支給を請求できると定めています(厚生年金保険法37条にも同趣旨の規定があります)。
受け取る順位は、日本年金機構の案内によれば、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、そのほか3親等内の親族の順です。先順位者がいる場合、後順位者は受け取れません。
手続きは「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」を年金事務所などに提出して行います。亡くなった方と請求者の続柄がわかる戸籍謄本、生計を同じくしていたことを示す書類(住民票の写しなど)、請求者名義の口座がわかるものが必要です。
請求期限は5年です。日本年金機構によれば、未支給年金の時効は5年で、起算日は受給権者の年金の支払日の翌月の初日とされています。
相続放棄をしても未支給年金は受け取れる
未支給年金でよく問題になるのが、相続財産にあたるかどうかです。
最高裁平成7年11月7日判決は、未支給年金請求権について、国民年金法が民法の相続人の範囲・順位とは異なる定め方をしていることなどから、遺族が自己の固有の権利として請求するものであり、相続の対象にはならないという趣旨を示しました。
これを受けて国税庁も、質疑応答事例「未支給の国民年金に係る相続税の課税関係」において、未支給年金は死亡した受給権者の相続税の課税対象にはならないとしています。そのうえで、遺族が受け取った未支給年金は、所得税基本通達34-2によりその遺族の一時所得に該当するとされています。一時所得には50万円の特別控除があるため、ほかの一時所得と合わせて50万円を超える場合には確定申告を検討することになります。
相続財産ではないということは、相続放棄をした人でも未支給年金は受け取れるという結論につながります。ただし、これはあくまで未支給年金についての整理であり、故人の預金など他の財産に手をつければ相続放棄ができなくなる可能性があります。何が問題になるかは相続放棄ができなくなる行為にまとめていますので、放棄を検討中の方は確認したうえで進めてください。
あわせて確認しておきたい年金・給付
年金関係では、遺族の状況によって次の制度が使える場合があります。いずれも自動的に支給されるものではなく、請求が必要です。
- 遺族基礎年金・遺族厚生年金(生計を維持されていた配偶者や子など、要件を満たす遺族)
- 寡婦年金・死亡一時金(国民年金の第1号被保険者期間に関するもの。どちらか一方の選択)
- 未支給年金(前述)
年金以外にも、期限のある手続きが同時期に集中します。医療費については、亡くなった後でも高額療養費の申請ができます。葬儀費用については、国民健康保険・後期高齢者医療の葬祭費や健康保険の埋葬料があります。全体の順番は葬儀後の手続き一覧で整理しています。
まとめ
年金受給権者死亡届は厚生年金10日以内・国民年金14日以内が目安ですが、マイナンバーが収録されていれば原則として省略できます。省略できないのは未支給年金の請求のほうで、こちらは生計を同じくしていた遺族が5年以内に自分で行う必要があります。未支給年金は相続財産ではなく遺族固有の権利とされるため、相続放棄をした方でも受け取れます。亡くなった後に入金された年金には返還すべき分が混ざっていることがあるので、内訳が確定するまでは動かさずに、年金事務所に確認してください。
