未支給年金の請求方法|請求できる人の順位と期限
相続財産ではありません。相続放棄をしても、生計を同じくしていた親族なら請求できます
年金は後払いです。ですから、亡くなった時点では必ず「まだ受け取っていない分」が残ります。
これが未支給年金です。
そして、これは請求しなければ支給されません。放っておくと、そのままです。
もうひとつ、大切なことがあります。未支給年金は相続財産ではありません。ですから、相続放棄をしても請求できます。
請求できる人と、その順位からお伝えします。
なぜ未支給年金が生じるのか
公的年金は、偶数月の15日に、その前月までの2か月分が支払われます。
たとえば4月15日には、2月分と3月分が支払われます。
このため、亡くなった時点では必ず未払いの月分が残ります。
5月に亡くなった場合を考えてみましょう。
| 月 | 支給の状況 |
|---|---|
| 4月分 | まだ支払われていない(6月15日に支払われる予定だった) |
| 5月分(死亡月) | 同上 |
この2か月分が、未支給年金になります。年金は死亡した月の分まで支給されるという扱いです。
請求できる人の範囲と順位
請求できるのは、亡くなった受給権者と生計を同じくしていた次の親族です。
| 順位 | 続柄 |
|---|---|
| 1 | 配偶者 |
| 2 | 子 |
| 3 | 父母 |
| 4 | 孫 |
| 5 | 祖父母 |
| 6 | 兄弟姉妹 |
| 7 | これら以外の三親等内の親族 |
先順位の人がいる場合、後順位の人は請求できません。
同順位の人が複数いる場合は、そのうち1人がした請求が全員のためにしたものとみなされます。支給も1人に対して行われます。
「生計を同じくしていた」ことが要件です。ここが問題になることがあります。
同居していない場合は、次のような事情を説明する必要があります。
- 仕送りをしていた(送金の記録)
- 定期的に訪問し、生活を支えていた
- 健康保険の被扶養者だった
別世帯であれば、生計同一関係に関する申立書を求められることがあります。第三者の証明を求められる場合もあります。
根拠となる条文 — 未支給年金
年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹またはこれらの者以外の3親等内の親族であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができます(国民年金法19条1項)。
厚生年金保険法37条にも、同趣旨の規定があります。
未支給の年金を受けるべき者の順位は、政令で定められています(同条4項)。同順位者が2人以上あるときは、その1人がした請求は、全員のためにその全額につきしたものとみなされ、その1人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなされます(同条5項)。
相続財産ではありません
ここが、この制度の重要な特徴です。
未支給年金は、相続財産ではありません。
法律は、遺族が「自己の名で」請求できると定めています。相続によって承継されるものではない、と理解されています。
最高裁平成7年11月7日判決も、この点について判断を示しました。
未支給年金の請求権について、法律が民法の相続人の範囲・順位とは異なる定め方をしていること。そのことなどから、遺族が自己の固有の権利として請求するものであり、相続の対象にはならないという趣旨です。
このため、次のことが言えます。
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 相続放棄をした場合 | 要件を満たせば請求できる |
| 遺産分割の対象か | 対象にならない |
| 相続税がかかるか | かからない |
| 所得税は | 受け取った人の一時所得 |
一時所得には50万円の特別控除があります。ほかの一時所得と合わせて50万円を超える場合には、確定申告を検討することになります。
請求手続きと必要書類
請求先は、年金事務所または年金相談センターです。
国民年金のみを受給していた場合は、市区町村の窓口でも受け付けています。
提出するのは「未支給【年金・保険給付】請求書」です。次の書類を添えます。
死亡診断書のコピーは、各種手続きで繰り返し必要になります。役所に提出する前に、5枚から10枚は取っておいてください。
なお、受給権者死亡届(報告書)と同時に提出するのが一般的です。様式も一体になっています。
日本年金機構にマイナンバーが収録されている場合、死亡届の提出は省略できることがあります。ただし、未支給年金の請求は省略されません。
ここを混同する方が多いので、注意してください。「マイナンバーがあるから何もしなくてよい」ではありません。
時効は5年
未支給年金の請求権には、5年の時効があります。
実際には、受給停止の手続きと同時に請求することがほとんどです。ですから、時効が問題になる場面は多くありません。
ただし、手続きが漏れていたことに後から気づいた場合は、5年を過ぎていないかを確認してください。
「亡くなってからだいぶ経つが、請求していない気がする」という場合。年金事務所に問い合わせれば、未請求の分があるか確認できます。
遺族年金との関係
未支給年金と遺族年金は、別の制度です。
| 何のためのお金か | |
|---|---|
| 未支給年金 | 亡くなった方が受け取るはずだった分 |
| 遺族年金 | 遺族自身の生活保障 |
両方の要件を満たす場合は、それぞれ請求できます。どちらか一方ではありません。
遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。要件が細かいため、年金事務所で確認してください。
このほか、国民年金の第1号被保険者期間に関するものとして、寡婦年金と死亡一時金があります。こちらは、どちらか一方を選ぶ形です。
死亡一時金の時効は2年と短くなっています。他の給付より先に期限が来ますので、注意してください。
年金事務所へ行く際は、これらをまとめて確認してしまうのが効率的です。
年金事務所へ行く前に
年金の手続きは、書類が多く、制度も複雑です。事前の準備で、行く回数を減らせます。
まず電話で予約する。多くの年金事務所が予約制を採っています。予約なしだと、待ち時間が長くなります。
必要書類を聞く。電話のときに、何を持っていけばよいかを確認してください。状況によって変わります。
まとめて聞く。次の項目を、一度に確認してしまうのが効率的です。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 受給停止 | 死亡届が必要か(マイナンバー収録の有無) |
| 未支給年金 | 請求できるか、いくらか |
| 遺族基礎年金 | 要件を満たすか |
| 遺族厚生年金 | 同上 |
| 寡婦年金・死亡一時金 | 要件を満たすか、どちらが有利か |
持っていくものは、次のとおりです。
- 亡くなった方の年金証書、年金手帳
- 請求する方の年金手帳、マイナンバーが分かるもの
- 戸籍謄本(続柄が分かるもの)
- 世帯全員の住民票
- 死亡診断書のコピー
- 請求者名義の預金通帳
- 印鑑
戸籍と住民票は、多めに取っておいてください。年金以外の手続きでも繰り返し必要になります。
分からないことは、その場で聞いてください。窓口の職員は制度に詳しく、こうした相談に慣れています。
受け取った後の税金
未支給年金を受け取ったら、税金の扱いも確認しておいてください。
相続税はかかりません。相続財産ではないためです。
所得税では、受け取った人の一時所得になります。一時所得の計算は次のとおりです。
(収入金額 − 収入を得るために支出した金額 − 特別控除50万円)× 1/2
特別控除が50万円ありますので、未支給年金の額が50万円以下であれば、課税されないのが通常です。
ただし、ほかにも一時所得がある場合は合算します。次のようなものが一時所得にあたります。
- 生命保険の一時金(契約者と受取人が同じ場合)
- 懸賞や福引の賞金
- 競馬・競輪の払戻金
これらと合わせて50万円を超える場合は、確定申告を検討してください。
なお、生命保険の死亡保険金は、契約の形によって扱いが変わります。故人が契約者・被保険者で、相続人が受取人の場合は、相続税の対象(みなし相続財産)になります。
このとき、500万円 × 法定相続人の数の非課税枠があります。ただし、相続放棄をした人はこの枠を使えません。
税の扱いは制度ごとに違います。金額が大きい場合は、税務署か税理士に確認してください。税務署の相談は無料です。
まとめ
未支給年金について、覚えておくことは3つです。
- 請求しないともらえない。受給停止の手続きとは別です
- 相続財産ではない。相続放棄をしても請求できます
- 順位がある。先順位者がいれば、後順位者は請求できません
請求先は年金事務所などで、受給権者死亡届と同時に提出するのが一般的です。
時効は5年ですが、受給停止の手続きとあわせて早めに済ませてください。遺族年金や死亡一時金の要件も、同じ機会に確認しておくと漏れがありません。
