国民年金の死亡一時金|支給額・要件と寡婦年金との選択

時効は2年です。他の年金給付より先に期限が来ます

国民年金の死亡一時金|支給額・要件と寡婦年金との選択

国民年金の第1号被保険者として保険料を納めていた方が亡くなった。そして、遺族基礎年金を受けられる遺族がいない。

そういう場合に支給されるのが、死亡一時金です。

保険料を納めた月数に応じて、12万円から32万円が一度だけ支給されます。

注意していただきたいのは、請求期限が2年と短いことです。遺族年金や未支給年金の時効が5年であるのに対し、こちらは2年。他の年金手続きより先に期限が来ます。

国民年金の死亡一時金の全体像。判断が分かれる点を一枚で示す
国民年金の死亡一時金の全体像。判断が分かれる点を一枚で示す(作図: 弁護士による葬儀ガード)

支給の要件

死亡一時金が支給されるのは、次の要件をすべて満たす場合です。

  1. 亡くなった方が、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた月数が合計36月以上あること
  2. 老齢基礎年金・障害基礎年金のいずれも受けたことがないこと
  3. 遺族基礎年金を受けられる遺族がいないこと

一部免除期間は、所定の割合で換算されます。

3つ目の要件が重要です。

子のある配偶者や子がいて遺族基礎年金が支給される場合、死亡一時金は支給されません。「どちらももらえる」わけではないのです。

また、厚生年金の被保険者期間しかない場合は対象外です。

自営業やフリーランスとして国民年金に加入していた期間があるかを確認してください。会社員だった方でも、若い頃や退職後に国民年金の期間があることがあります。

根拠となる条文 — 死亡一時金

死亡一時金は、死亡日の前日において、死亡日の属する月の前月までの第1号被保険者としての被保険者期間に係る保険料納付済期間の月数などを合算した月数が36月以上ある者が死亡した場合において、その者に遺族があるときに、その遺族に支給されます(国民年金法52条の2第1項)。

ただし、死亡した者が老齢基礎年金または障害基礎年金の支給を受けたことがあるときは、支給されません(同条2項)。

死亡一時金の支給を受けることができる遺族は、死亡した者の配偶者、子、父母、孫、祖父母または兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものです(同法52条の3第1項)。

請求できる遺族の順位

請求できるのは、亡くなった方と生計を同じくしていた次の遺族です。

順位続柄
1配偶者
2子
3父母
4孫
5祖父母
6兄弟姉妹

先順位の人がいる場合、後順位の人は請求できません。

同順位の人が複数いる場合は、そのうち1人が請求すれば全員のためにしたものとみなされます。

未支給年金の順位(三親等内の親族まで)とは、範囲が違います。死亡一時金は兄弟姉妹までです。

支給額

支給額は、保険料を納めた月数に応じて段階的に定められています。

納付月数支給額
36月以上180月未満12万円
180月以上240月未満14万5,000円
240月以上300月未満17万円
300月以上360月未満22万円
360月以上420月未満27万円
420月以上32万円

このほか、付加保険料を36月以上納めていた場合は、8,500円が加算されます。

金額は大きくありません。それでも、葬儀費用の一部には充てられます。

葬儀費用の平均は96.73万円(鎌倉新書「第7回 お葬式に関する全国調査」2026年)です。ここに葬祭費や埋葬料を加えれば、負担はいくらか軽くなります。

他の給付とあわせて確認してください。

図で整理: 寡婦年金との選択
図で整理: 寡婦年金との選択(作図: 弁護士による葬儀ガード)

寡婦年金との選択

寡婦年金は、次の要件を満たす場合に支給される制度です。

  • 国民年金の第1号被保険者として一定期間保険料を納めた夫が亡くなった
  • 夫が老齢基礎年金・障害基礎年金を受けずに亡くなった
  • 婚姻期間が10年以上ある

支給されるのは妻に対して、60歳から65歳までの間です。

死亡一時金と寡婦年金の両方の要件を満たす場合、どちらか一方を選択します。両方を受けることはできません。

判断の目安は、次のとおりです。

妻の年齢考え方
60歳を大きく下回る寡婦年金の受給開始までが長い。死亡一時金を選ぶ判断があり得る
60歳に近い、または超えている寡婦年金の総額が死亡一時金を上回ることが多い

寡婦年金は、5年間受け取れる可能性があります。総額では死亡一時金を大きく上回ることがあります。

一方、60歳までまだ何年もある場合、その間の生活を考えると、今すぐ受け取れる死亡一時金のほうがよいという判断もあり得ます。

請求手続きと2年の時効

請求先は、市区町村の窓口、年金事務所、または年金相談センターです。

必要書類は、おおむね次のとおりです。

死亡一時金の請求権は、死亡日の翌日から2年で時効により消滅します。

給付時効
死亡一時金2年
未支給年金5年
遺族年金5年
葬祭費・埋葬料2年

遺族年金や未支給年金の時効が5年であるのに対し、こちらは2年です。先に期限が来ます。

未支給年金の請求とあわせて手続きすると効率的です。同じ窓口で扱っています。

受給停止の手続きも忘れないようにしてください。止め忘れると、後から返還を求められます。

相続との関係

死亡一時金は、遺族が自己の権利として受け取るものです。相続財産ではありません。

したがって、相続放棄をしていても、要件を満たせば請求できます。

税務上も、死亡一時金は相続税の課税対象とされない扱いです。

ただし、他の給付とあわせて全体の課税関係を確認しておくと安心です。

給付相続財産か相続放棄しても受け取れるか
死亡一時金含まれない受け取れる
未支給年金含まれない受け取れる
生命保険の死亡保険金含まれない(受取人固有)受け取れる
準確定申告の還付金含まれる受け取れない

最後の項目に注意してください。準確定申告の還付金は相続財産です。相続放棄を考えている場合は、受け取らないでください。

国民年金の死亡一時金 — 支払う前・動く前に確認しておきたい項目
国民年金の死亡一時金 — 支払う前・動く前に確認しておきたい項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

期限の短い給付から確認する

死亡後に請求できる給付は複数あります。期限の短いものから確認するのが、取りこぼしを防ぐこつです。

給付時効窓口
死亡一時金2年市区町村、年金事務所
葬祭費2年市区町村
埋葬料2年健康保険の保険者
高額療養費2年市区町村、健康保険
労災の葬祭料2年労働基準監督署
未支給年金5年年金事務所
遺族年金5年年金事務所、市区町村
生命保険の死亡保険金多くは3年保険会社

2年のグループが5つあります。ここから先に確認してください。

葬祭費と埋葬料は、故人が加入していた制度によってどちらか一方になります。金額は、葬祭費が自治体によって異なり東京23区は7万円、埋葬料は5万円です。

高額療養費は見落とされやすい給付です。亡くなる直前に入院していた場合、未請求のまま残っていることがあります。

どれも申請しないともらえません。案内が届かないこともありますので、こちらから問い合わせてください。

窓口は分かれていますが、市区町村では複数の手続きを同じ庁舎で済ませられることが多くあります。まとめて聞いてしまうのが効率的です。

国民年金だけだった方の遺族へ

自営業やフリーランスとして働いてきた方が亡くなった場合、遺族が受けられる給付は限られます。

会社員だった方と比べると、次の違いがあります。

国民年金のみ厚生年金の期間あり
遺族基礎年金要件を満たせば同じ
遺族厚生年金なしあり
死亡一時金要件を満たせば国民年金の期間があれば
寡婦年金要件を満たせば国民年金の期間があれば

遺族厚生年金がないため、子のない配偶者は継続的な年金を受けられないことがあります。

その分、死亡一時金や寡婦年金の確認が重要になります。どちらも請求しなければ支給されません。

生活の見通しが立たない場合は、次の制度もあわせて確認してください。

  • 国民年金保険料の免除・納付猶予(自分の保険料について)
  • 国民健康保険料の減免
  • 児童扶養手当(子がいる場合)
  • 生活福祉資金貸付制度

市区町村の窓口で、「配偶者が亡くなり、生活が厳しい」と伝えれば、使える制度を案内してもらえます。

制度を知らないまま困っている方が少なくありません。遠慮せずに相談してください。

付加年金を納めていた場合

付加保険料は、国民年金の第1号被保険者が月額400円を上乗せして納める制度です。

これを36月以上納めていた場合、死亡一時金に8,500円が加算されます。

納めていたかどうかは、年金事務所で加入記録を確認すれば分かります。ねんきん定期便に記載されていることもあります。

金額は小さいものの、請求できるものは漏らさず請求してください。窓口で「付加保険料の納付はありましたか」と一言聞くだけで確認できます。

まとめ

死亡一時金について、覚えておくことは3つです。

  1. 遺族基礎年金を受けられない場合の制度。両方はもらえません
  2. 時効は2年。他の給付より先に期限が来ます
  3. 寡婦年金とは選択。両方の見込額を試算してから決めてください

支給額は12万円から32万円です。金額は大きくありませんが、請求しなければ1円も出ません。

請求期限が2年と短いため、他の手続きより優先して確認してください。判断に迷う場合は、年金事務所で両方の見込額を確認してから決めましょう。