準確定申告は4か月以内|必要になる人と還付されるケース

義務がなくても、申告すると税金が戻ってくることがあります

準確定申告は4か月以内|必要になる人と還付されるケース

亡くなった方に一定の所得があった場合、その年の分を相続人が代わりに申告します。これを準確定申告といいます。

期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月です。

ここで知っておいてほしいことがあります。申告義務がなくても、申告すると税金が戻ってくることがあります。

年の途中で亡くなると、源泉徴収された所得税が納めすぎになっていることが多いのです。放っておくと、そのままです。

準確定申告は4か月以内の全体像。判断が分かれる点を一枚で示す
準確定申告は4か月以内の全体像。判断が分かれる点を一枚で示す(作図: 弁護士による葬儀ガード)

申告が必要になる人

亡くなった方が次のいずれかに該当する場合、準確定申告が必要になるのが一般的です。

  • 事業所得や不動産所得があった
  • 給与所得が2,000万円を超えていた
  • 給与や退職金以外の所得が20万円を超えていた
  • 2か所以上から給与を受けていた
  • 公的年金等の収入が400万円を超えていた
  • 生前に確定申告をしていた

会社員として1か所から給与を受けていただけであれば、勤務先の年末調整に相当する処理が行われ、申告が不要となることもあります。

判断に迷う場合は、税務署または税理士に確認してください。税務署は申告の相談を無料で受け付けています。

根拠となる条文 — 準確定申告の期限

年の中途で死亡した居住者がその年分の所得税について申告書を提出しなければならない場合、その相続人は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月を経過した日の前日までに、税務署長に対し、申告書を提出しなければなりません(所得税法125条1項)。

前年分について申告書を提出すべき者が、その年の1月1日から申告期限までの間に申告書を提出しないで死亡した場合も、同様に4か月以内の申告が必要です(同法124条1項)。

納付についても、同じ期限までに行う必要があります(同法129条)。

還付されるケース

申告義務がなくても、申告することで所得税が還付される場合があります。

こういう場合理由
年の途中で亡くなった源泉徴収された税額が納めすぎになっている
高額な医療費を支払っていた医療費控除が使える
生命保険料・地震保険料を払っていた各控除の適用がある
公的年金から源泉徴収されていた同じく納めすぎの可能性

とくに多いのが、1つ目です。

給与や年金から源泉徴収される所得税は、1年間その収入が続く前提で計算されています。年の途中で亡くなると、本来の税額を上回っていることが多いのです。

還付申告は5年間可能とされていますが、他の相続手続きとあわせて早めに済ませるのが実際的です。後回しにすると、書類が散逸します。

医療費控除の扱い

ここは、扱いが分かれるところです。整理しておきます。

控除できるのは、亡くなった日までに実際に支払った医療費です。

支払った時期準確定申告で控除できるか
亡くなった日まで○
亡くなった後に相続人が支払った×

死亡後に相続人が支払った入院費などは、亡くなった方の準確定申告では控除できません。

ただし、その医療費が生計を一にしていた親族の負担であれば、その親族自身の確定申告で医療費控除の対象になることがあります。

さらに、死亡後に支払った医療費は、相続税の計算上、債務控除の対象になり得ます。

つまり、こうなります。

  1. 亡くなった日までに支払った分 → 準確定申告で医療費控除
  2. 亡くなった後に支払った分 → 相続税で債務控除、または親族の医療費控除

所得税と相続税で扱いが分かれます。領収書は、支払った日付が分かるように保管しておいてください。

そして、高額療養費の請求も忘れないでください。死亡後でも相続人が申請できます。時効は2年です。

高額療養費で戻ってきた分は、医療費控除の計算で差し引きます。順序としては、先に高額療養費の支給額を確定させておくほうが確実です。

図で整理: 申告の方法
図で整理: 申告の方法(作図: 弁護士による葬儀ガード)

申告の方法

準確定申告は、相続人全員が共同で行うのが原則です。

申告書には、相続人全員が連署します。または、各相続人が別々に申告書を提出することになります。

項目内容
提出先亡くなった方の死亡当時の納税地を所轄する税務署
提出書類確定申告書(準確定申告である旨を記載)、付表(相続人等に関する事項)、各種控除の証明書
期限相続の開始を知った日の翌日から4か月以内

提出先は、相続人の住所地ではありません。故人の納税地です。

還付金は、各相続人が相続分に応じて受け取るのが原則です。

代表者がまとめて受け取る場合は、委任状が必要になります。付表の中に記載欄がありますので、そこで指定します。

申告書の作成に迷ったら、税務署の相談窓口を使ってください。事前に電話で予約する方式を採っている署が多くなっています。

他の期限との関係

死亡後の手続きには、期限のあるものが複数あります。順に並べておきます。

手続き期限
死亡届7日以内
相続放棄・限定承認3か月以内
準確定申告4か月以内
相続税の申告・納付10か月以内

準確定申告は、相続放棄の判断期限の直後に来ます。

ここで大切なことがあります。相続放棄をした場合、その相続人は準確定申告の義務を負いません。

放棄を検討しているなら、まず3か月の判断を優先してください。

放棄すると決めたのに準確定申告の準備を進めていた、ということにならないよう、順序を意識してください。

なお、相続人全員が放棄した場合、申告する人がいなくなります。この場合の扱いは事案によりますので、税務署に確認してください。

消費税の申告

亡くなった方が消費税の課税事業者だった場合、消費税についても同様に4か月以内の申告が必要です。

事業を営んでいた場合は、所得税とあわせて確認してください。

事業を相続人が引き継ぐ場合は、別の手続きも必要になります。

  • 開業届
  • 青色申告承認申請
  • 消費税の各種届出
  • 従業員がいる場合は、給与支払事務所等の開設届

青色申告承認申請には期限があります。死亡の時期によって、4か月以内などの期限が定められています。

期限が短いものがありますので、事業がある場合は早めに税理士に相談することをおすすめします。

事業用の資産や在庫の扱い、取引先への連絡も並行して進めることになります。一人で抱えず、専門家の手を借りてください。

準確定申告は4か月以内 — 支払う前・動く前に確認しておきたい項目
準確定申告は4か月以内 — 支払う前・動く前に確認しておきたい項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

集める書類

申告に必要な書類を挙げておきます。故人の書類ですから、探すところから始まります。

源泉徴収票は、勤務先に依頼すれば発行してもらえます。年金の分は、日本年金機構から送られてきます。

生前に確定申告をしていた方であれば、前年の申告書の控えが手がかりになります。どういう所得があったかが分かります。

税務署では、過去の申告内容を確認できます。相続人であることを示す書類を持参してください。

控除証明書は、秋ごろに保険会社から送られてくるものです。見当たらなければ、保険会社に再発行を依頼できます。

書類が見つからないからといって、申告をあきらめないでください。分かる範囲で作成し、税務署に相談すれば進められます。

還付金はどう扱われるか

準確定申告で還付を受けた場合、そのお金の扱いを整理しておきます。

還付金は、相続財産に含まれます。

故人が本来受け取るべきだった税金の還付ですから、故人の財産として扱われます。遺産分割の対象になり、相続税の課税対象にもなります。

ここが、未支給年金との違いです。

相続財産か相続放棄しても受け取れるか
準確定申告の還付金含まれる受け取れない
未支給年金含まれない受け取れる
生命保険の死亡保険金含まれない(受取人固有)受け取れる

相続放棄を考えている場合、還付金を受け取ってはいけません。相続財産の処分と評価され、放棄ができなくなるおそれがあります。

根拠となる条文 — 還付金の性質と相続放棄

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条)。所得税の還付請求権は、被相続人に帰属していた権利として、この承継の対象になります。

相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされます(民法921条1号)。

なお、相続の放棄をした者は、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされるため(同法939条)、準確定申告の義務も負いません。

還付金は、相続税の計算では未収入金として財産に計上します。金額が小さくても、申告の際には忘れずに含めてください。

逆に、納付すべき税額がある場合、その税額は債務控除の対象になります。相続財産から差し引けます。

まとめ

準確定申告について、覚えておくことは3つです。

  1. 期限は4か月。相続の開始を知った日の翌日から数えます
  2. 義務がなくても申告する価値がある。還付を受けられることがあります
  3. 相続放棄を先に判断する。放棄すれば、申告の義務も負いません

医療費控除は死亡日までに支払った分に限られるなど、扱いが細かく分かれます。

資料をそろえたうえで、税務署または税理士に確認してください。税務署の相談は無料です。まずそこから始めるのが、いちばん早く進みます。