高額療養費は死亡後も申請できる|相続人が受け取る手続き

死亡後も相続人が申請できる。時効は2年、準確定申告との関係も確認する

高額療養費は、被保険者が亡くなった後でも相続人が請求できます。時効は2年で、健康保険法193条および国民健康保険法110条が、保険給付を受ける権利は行使できる時から2年で時効消滅すると定めています。入院が長期にわたった後に亡くなった場合、支給対象になる月があるのに未請求のまま気づかれていないことが少なくありません。市区町村から支給申請の案内が届くこともありますが、届かないケースもあります。ここでは請求の流れと必要書類を整理します。

高額療養費とはどういう給付か

医療機関の窓口で支払う自己負担額が、ひと月あたりの上限額を超えたとき、超えた分が払い戻される制度です。健康保険法115条1項と国民健康保険法57条の2第1項に根拠があり、支給要件や支給額は政令で定められます。

上限額は年齢と所得区分によって異なります。70歳未満の場合、標準報酬月額や住民税の課税状況に応じた区分ごとに計算式が決まっており、70歳以上では外来のみの上限額が別に設けられています。

亡くなる前の入院では、集中治療や手術で自己負担額が上限を大きく超えることがあります。限度額適用認定証を提示していれば窓口負担が上限額までに抑えられていますが、認定証の交付が間に合わなかった場合や、月をまたいで入院した場合には、後から請求する高額療養費が残ります。

誰が請求できるか

被保険者本人が亡くなっている以上、請求するのは相続人です。相続人が複数いる場合は、代表者を決めて申請するのが一般的な取り扱いです。

自治体の運用例として、板橋区は後期高齢者医療の高額療養費(相続)について、相続権が確認できる方が申請できるとし、被保険者と同じ住民票に記載される配偶者または子であれば相続権を証明する書類の提出を不要としています。同様の取り扱いは他の自治体でも見られますが、細部は保険者ごとに異なります。

なお、相続放棄を検討している場合は注意が必要です。相続財産の全部または一部を処分すると、単純承認したものとみなされます(民法921条1号)。未支給の高額療養費を受領する行為がこれにあたるかは事案によって判断が分かれ得るため、放棄を予定しているのであれば受領前に確認しておくのが安全です。判断の分かれ目は相続放棄ができなくなる行為|単純承認とみなされるケースで扱っています。

申請先と必要書類

加入していた制度によって申請先が変わります。

  • 国民健康保険・後期高齢者医療。 亡くなった方の最後の住所地の市区町村役場です。
  • 健康保険(協会けんぽ)。 加入していた都道府県支部です。
  • 健康保険組合・共済組合。 それぞれの組合です。

必要書類は一般に次のようになります。

  • 高額療養費支給申請書
  • 相続権を確認できる書類(戸籍謄本、法定相続情報一覧図、遺言公正証書のいずれか)
  • 相続人代表者を届け出る書類
  • 申請者の本人確認書類とマイナンバーが確認できる書類
  • 振込先となる相続人名義の口座情報
  • 医療機関の領収書(保険者によって要否が異なります)

戸籍謄本は、故人の出生から死亡までの連続した戸籍を求められることがあります。相続手続き全般で必要になる書類なので、法定相続情報一覧図を法務局で作成しておくと、複数の窓口で使い回せて負担が減ります。

時効2年の起算点

健康保険法193条は「これらを行使することができる時から二年」と定めており、高額療養費の場合は診療を受けた月の翌月1日が起算日と扱われるのが一般的です。医療機関の窓口で支払った日ではない点に注意してください。

たとえば1月に入院し2月に亡くなった場合、1月分の高額療養費は2月1日から2年、2月分は3月1日から2年で時効となります。月ごとに期限が異なるため、複数月にわたる入院では最も古い月から順に確認する必要があります。

2年という期間は他の給付と共通で、葬祭費や埋葬料も同じく2年で時効消滅します(健康保険法193条、国民健康保険法110条)。まとめて請求できるものがないか確認しておくとよいでしょう。詳しくは葬祭費の申請方法と支給額|国民健康保険・後期高齢者医療埋葬料・埋葬費の申請方法|協会けんぽの5万円給付を参照してください。

見落としやすいケース

次のような場合は、未請求のまま残っている可能性があります。

  • 限度額適用認定証を使っていなかった。 急な入院で交付が間に合わず、窓口で全額を支払っていた場合です。
  • 月をまたいで入院した。 高額療養費は暦月単位で計算されるため、月ごとに判定が必要です。
  • 複数の医療機関にかかっていた。 同一世帯・同一月の自己負担を合算できる場合があります(世帯合算)。
  • 転院した。 病院と診療所、入院と外来がそれぞれ別に計算されることがあります。
  • 住所地の市区町村が変わった。 転居していると案内が届かないことがあります。

保険者に照会すれば、支給対象となる月があるかどうかを確認できます。故人の被保険者証番号または基礎年金番号が分かれば照会は可能です。

高額介護合算療養費も確認する

医療費と介護保険サービスの自己負担が同一世帯で年間の限度額を超えた場合、高額介護合算療養費が支給されることがあります。こちらも同様に2年の時効があり、亡くなった後に相続人が請求できます。

介護サービスを長く利用していた場合は、市区町村の介護保険担当窓口にもあわせて確認しておくと、請求漏れを減らせます。葬儀後の手続き全体の期限は葬儀後の手続き一覧|期限つきのものを優先順に整理にまとめました。

まとめ

高額療養費は本人の死亡後も相続人が請求でき、時効は2年です(健康保険法193条、国民健康保険法110条)。起算日は診療を受けた月の翌月1日とされるのが一般的で、月ごとに期限が異なります。必要になるのは申請書、相続権を証明する書類、代表者の届出、口座情報です。長期入院の後に亡くなった場合はとくに未請求が残りやすいため、保険者に照会して支給対象月の有無を確かめてください。相続放棄を検討している場合は、受領する前に取り扱いを確認しておくと安全です。