検視・検案で警察が関わるときの流れ|遺体の引き渡しまで

疑われているわけではありません。死因を確かめるための、法律で決まった手続きです

検視・検案で警察が関わるときの流れ|遺体の引き渡しまで

警察が来ることになった。そう聞いて、不安になっていると思います。

先にお伝えします。事件性を疑われているという意味ではありません。

診療を継続的に受けていなかった方が亡くなった場合、死因を確かめる手続きが法律で定められています。それに従っているだけです。

ただし、手続きが終わるまで遺体は引き渡されません。葬儀の日程も、それまで確定できません。

流れと、その間にできることをお伝えします。

検視・検案で警察が関わるときの流れの全体像。判断が分かれる点を一枚で示す
検視・検案で警察が関わるときの流れの全体像。判断が分かれる点を一枚で示す(作図: 弁護士による葬儀ガード)

警察に連絡することになる場面

次のような場合は、まず119番または110番に連絡します。

  • 自宅で亡くなっているのを発見した
  • 外出先や職場で急に亡くなった
  • 診療を継続的に受けていた傷病とは異なる原因が疑われる
  • 死亡から時間が経過している

一方、かかりつけ医が継続的に診療していた傷病により亡くなったと判断できる場合は、その医師が死亡診断書を作成します。この場合、警察は関与しません。

判断が難しいときは、まずかかりつけ医に連絡し、指示を受けてください。

根拠となる条文 — 検視と届出

変死者または変死の疑いのある死体があるときは、その所在地を管轄する地方検察庁または区検察庁の検察官が検視をしなければなりません(刑事訴訟法229条1項)。検察官は、検察事務官または司法警察員にこれをさせることができます(同条2項)。

医師は、死体を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければなりません(医師法21条)。

診療中の患者が受診後24時間以内に亡くなったときは、医師は改めて診察しなくても死亡診断書を交付できます(同法20条ただし書)。

検視・検案の流れ

警察が到着すると、おおむね次の順序で進みます。

  1. 現場の確認と、遺体の状況の確認(検視)
  2. 医師による検案(死因や死亡時刻の医学的な判断)
  3. 遺族への事情の聴取
  4. 必要に応じて、解剖の実施
  5. 死体検案書の作成
  6. 遺体の引き渡し

多くの場合、当日から翌日には引き渡されます。ただし、解剖が行われる場合はさらに日数がかかります。

引き渡しの時期が決まるまでは、葬儀の日程を確定できません。

聴取で聞かれること

遺族への聴取は、事件性を疑っているというより、死因の判断に必要な情報を集めるためのものです。

聞かれるのは、次のようなことです。

  • 生前の様子(最近の体調、変わったことはなかったか)
  • 既往症と通院歴
  • 服薬の状況
  • 最後に会った時期と、そのときの様子
  • 発見したときの状況

お薬手帳や診察券を手元に用意しておくと、進みが早くなります。かかりつけ医の名前が分かるものがあれば、なお良いです。

答えられないことは「分かりません」と伝えて構いません。無理に思い出そうとしなくて大丈夫です。

死体検案書と、その費用

医師が作成するのは、死亡診断書ではなく死体検案書です。

名称が違うだけで、死亡届に添える書類としての役割は同じです。書式も死亡届と一体になっています。

死亡診断書死体検案書
誰が作成するか診療していた医師検案した医師
どういう場合診療中の傷病で亡くなったそれ以外
死亡届への添付できるできる

費用は公的医療保険の対象外です。検案を行った医師や自治体の運用によって変わります。

死亡診断書より高額になることがあり、数万円になる例もあります。

このほか、次の費用が別途生じることがあります。

  • 遺体の搬送費用
  • 解剖が行われた場合の費用
  • 遺体の保管費用(引き渡しまでの日数分)

金額は事前に確認しておいてください。説明がないまま請求されることがあります。

相続税との関係も押さえておきましょう。国税庁のタックスアンサーNo.4129は、医学上または裁判上の特別の処置に要した費用を、差し引ける葬式費用に含まれないものとして挙げています。

検案に関する費用の扱いは内容によって分かれます。領収書を分けて保管したうえで、税務署か税理士に確認してください。

図で整理: 葬儀の手配との関係
図で整理: 葬儀の手配との関係(作図: 弁護士による葬儀ガード)

葬儀の手配は、分けて進めてください

引き渡しの時期が読めないため、葬儀社との契約もその前提で進める必要があります。

引き渡し前の段階で、日程を確定した契約を結ばないでください。日程変更に伴う費用が生じることがあります。

順序としては、次のようにしてください。

  1. まず、搬送と安置だけを依頼する
  2. 引き渡しの時期が見えてから、日程を決める
  3. 日程が決まってから、式の内容を決める

また、警察が紹介する葬儀社に必ず依頼しなければならないわけではありません。

搬送を依頼した葬儀社と、葬儀を依頼する葬儀社が別でも構いません。断るときは、「親族と相談してから決めます」と伝えれば足ります。

火葬までの日数が延びれば、安置料とドライアイスの費用が積み上がります。

1日あたりの単価と、何日分が見積もりに入っているかを確認しておいてください。単価が分かっていれば、日数が延びたときの金額を自分で計算できます。

一人暮らしの方が亡くなった場合

発見が遅れた場合には、遺体の状況によって特殊清掃や原状回復の問題が加わります。

賃貸住宅であれば、貸主との間で費用負担が争点になることもあります。

ここで、順序を間違えないでください。

根拠となる条文 — 相続放棄との関係

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続について単純承認、限定承認または放棄をしなければなりません(民法915条1項)。

相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされます(同法921条1号)。ただし、保存行為などはこの限りではありません。

もっとも、相当な範囲の葬儀費用の支出について、相続財産の処分にあたらないとした裁判例があります(大阪高裁平成14年7月3日決定)。

故人に借金がありそうな場合は、支払いや片付けを始める前に弁護士へ確認してください。3か月の期限があります。

手続きが終わった後にすること

遺体が引き渡されたら、通常の流れに戻ります。

  1. 死体検案書を受け取る(コピーを10枚取ってから提出)
  2. 死亡届を提出し、火葬許可を得る
  3. 葬儀の日程を決める
  4. 通夜・告別式・火葬

死亡届の期限は、死亡の事実を知った日から7日以内です。

書類がそろわないうちは、その旨を窓口に伝えておいてください。期限は「知った日」から数えますので、慌てなくて大丈夫です。

なお、警察の関与があった場合でも、葬祭費や埋葬料の申請は通常どおりできます。申請しないともらえませんので、忘れずに手続きしてください。

検視・検案で警察が関わるときの流れ — 支払う前・動く前に確認しておきたい項目
検視・検案で警察が関わるときの流れ — 支払う前・動く前に確認しておきたい項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

待っている間にできること

引き渡しを待つ間は、どうにも落ち着かない時間です。それでも、進めておけることがあります。

親族への連絡。日程が決まらないことを含めて伝えてください。「まだ日程が確定していません」と伝えておけば、相手も予定を立てやすくなります。

菩提寺への連絡。あるなら、この段階で一報を入れておいてください。日程が読めないことも伝えます。

書類の確認。故人の保険証、年金手帳、通帳、保険証券の所在を確認します。相続手続きで必要になります。

葬儀社の比較。時間があるので、複数社から見積書を取ることもできます。同じ条件を伝えれば、比較できる書面が返ってきます。

そろえる条件は、形式、参列予定者数、希望する式場、安置予定日数の4つです。

参考までに、株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)による平均額を挙げておきます。

形式平均
一般葬122.01万円
家族葬96.39万円
一日葬74.43万円
直葬・火葬式49.56万円

全体の平均は96.73万円です。この金額にお布施は含まれていません。

賃貸住宅だった場合

賃貸住宅で亡くなった場合、貸主との間で費用の話が出てきます。

請求される可能性があるのは、次のものです。

請求されるもの誰が負うか
未払賃料、原状回復費用相続の対象。放棄すれば承継しません
連帯保証人としての債務保証人自身の債務。放棄しても残ります
損害賠償請求の根拠と範囲が争点になります

連帯保証人になっている場合は、相続放棄をしても保証債務は残ります。まず、自分がどの立場にあるのかを確認してください。

賃貸借契約書を探し、保証人欄に誰の名前が書かれているかを見てください。

原状回復の範囲については、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が示す考え方が参考になります。

通常損耗や経年変化にあたる部分の負担については、争いになることがあります。請求を受けた場合は、内訳と算定根拠の開示を求めてください。

「特殊清掃一式」といった請求では、妥当性を確かめられません。作業範囲と単価が書かれた明細を求めてください。

金額が大きいときは、支払う前に相談してください。争える範囲があるかどうかは、書面を見れば判断がつきます。

まとめ

警察が関わるときは、次の3つを押さえてください。

  1. 疑われているわけではない。死因を確かめるための手続きです
  2. 葬儀は分けて進める。まず搬送と安置、日程は引き渡し後に決めます
  3. 片付けを急がない。相続放棄を考えているなら、なおさらです

引き渡しまでの日数は状況によって変わります。日程が読めない間は、確定した契約を結ばないでください。

費用や相続の判断に迷う点が出てきたときは、領収書と資料を保管したうえで相談してください。順番を変えるだけで、結果が変わることがあります。