孤独死が見つかった後の流れ|費用負担の分かれ目
片付けを急ぐと相続放棄ができなくなる。貴重品と書類の保全が先
一人暮らしの方が亡くなって発見された場合、通常の死亡とは異なる手続が重なります。警察による検視・検案、遺体の引き渡し、住居の片付け、賃貸であれば貸主との原状回復の協議です。費用の負担が問題になりやすく、しかも相続放棄を検討している場合には、片付けの進め方そのものが判断に影響します。順序を誤らないよう、まず何をして、何を保留にするかを整理してください。
発見から引き渡しまで
発見したら、まず110番または119番に連絡します。室内のものを動かしたり片付けたりせず、警察の到着を待ってください。現場の状況が死因の判断材料になります。
その後は、検視と医師による検案が行われ、死体検案書が作成されて遺体が引き渡されます。刑事訴訟法229条に基づく手続で、事件性を疑われているという意味ではありません。流れの詳細は検視・検案で警察が関わるときの流れにまとめました。
引き渡しの時期が決まるまで、葬儀の日程は確定できません。搬送・安置と、式の内容の決定を分けて進めてください。
住居の片付けと特殊清掃
発見までに時間が経過している場合、通常の清掃では対応できないことがあります。専門業者による特殊清掃や、消臭・原状回復の作業が必要になり、費用は状況により大きく変わります。
依頼する際は、次の点を確認してください。
- 作業範囲(清掃のみか、内装の解体・交換を含むか)
- 見積書に数量と単価が入っているか
- 追加費用が生じる条件
- 遺品の処分と、貴重品・書類の取り扱い
とくに重要なのが、通帳・保険証券・契約書類・遺言書などを先に確保することです。作業が始まると回収できなくなります。
相続放棄を検討している場合
故人に負債がある可能性があるなど、相続放棄を検討している場合は、片付けの進め方に注意が必要です。
民法921条1号は、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなすと定めています。価値のある遺品を処分したり、故人の預金を引き出して費用に充てたりすると、相続放棄ができなくなるおそれがあります。
もっとも、相当な範囲の葬儀費用の支出について、相続財産の処分にあたらないとした裁判例(大阪高裁平成14年7月3日決定)があります。考え方は相続放棄をしても葬儀費用は払えるかと相続放棄ができなくなる行為にまとめました。
相続放棄の期限は、民法915条1項により、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月です。片付けを急ぐ一方で、この期間内に判断する必要があります。期限の考え方は相続放棄の期限は3か月を参照してください。
判断がつかない段階では、必要最小限の対応にとどめ、貴重品や書類を保全しておくのが安全です。
賃貸住宅の場合の費用負担
賃貸住宅であれば、貸主から原状回復や残置物の撤去、さらには賃料の減収分について請求を受けることがあります。
ここで区別すべきは、次の三つです。
- 賃貸借契約に基づく債務(未払賃料、原状回復義務)── 相続の対象となり、相続放棄をすれば承継しません
- 連帯保証人としての債務 ── 保証人自身の債務であり、相続放棄とは別に責任が残ります
- 不法行為に基づく損害賠償 ── 請求の根拠と範囲が争点になります
連帯保証人になっている場合は、相続放棄をしても保証債務は残ります。まず自分がどの立場にあるのかを確認してください。
原状回復の範囲は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が示す考え方が参考になります。通常損耗や経年変化にあたる部分の負担については、争いになることがあります。請求を受けた場合は、内訳と算定根拠の開示を求めてください。
費用を誰が負担するか
特殊清掃や残置物撤去の費用は、誰が負担すべきかが明確でないことがあります。実務では、相続人が負担するか、相続財産から支出するか、連帯保証人が負担するかで整理されます。
葬儀費用そのものについては、法律に明文の定めがなく、裁判例は喪主負担説を中心に分かれています。考え方は葬儀費用は誰が払うのかにまとめています。
相続人が複数いる場合は、誰がいくら立て替えたかを記録しておいてください。後の精算で資料が必要になります。
まとめ
孤独死が見つかった後は、警察による検視・検案、遺体の引き渡し、住居の片付け、賃貸であれば原状回復の協議という順に進みます。費用負担が争点になりやすい領域です。
相続放棄を検討している場合は、遺品の処分や預金の使用が単純承認とみなされないよう、必要最小限の対応にとどめてください。貴重品と書類を先に保全し、3か月の熟慮期間内に方針を決める必要があります。判断に迷う場合は、早い段階で弁護士に相談してください。
