密葬と家族葬の違い|本葬の有無で変わること

違いは本葬の有無。呼ぶ範囲ではなく、後に別の式を行うかで分かれる

密葬と家族葬は、どちらも身内だけで行う点が同じため混同されがちですが、決定的に違うのは後日に本葬を行うかどうかです。密葬は本葬を前提とした先行の葬儀で、家族葬はそれ一回で完結します。この違いは費用に直結します。密葬を選ぶと、密葬と本葬の二回分の費用がかかるのが原則だからです。どちらの言葉も法律上の定義はなく、葬儀社によって使い方が揺れる点にも注意が必要です。

違いは本葬を行うかどうか

密葬は「本葬とセット」の前半部分

密葬は、もともと社葬や団体葬を行う際の手順として使われてきた言葉です。故人が亡くなった直後に近親者だけで通夜・告別式・火葬を済ませ、日を改めて広く参列者を招く本葬やお別れの会を開きます。

この順序を取る理由は主に二つあります。一つは、火葬は死亡または死産後24時間を経過した後でなければ行えず(墓地、埋葬等に関する法律3条)、逆に長く延ばすと安置の負担が増えるため、まず火葬を済ませる必要があること。もう一つは、会社の役員葬や著名人の葬儀では、会場の手配や案内状の送付に数週間から一か月程度かかり、その準備期間を確保する必要があることです。

したがって密葬では、訃報を本葬まで伏せるのが通例です。案内には「葬儀は近親者にて相済ませました」「後日あらためてお別れの会を執り行います」といった表現が使われます。

家族葬はそれ一回で完結する

家族葬は、参列者を近親者や親しい人に限定して行う葬儀で、後日に本葬を予定しません。鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)では、家族葬が全体の47.0%を占めて最多でした。

内容としては通夜・告別式・火葬を行い、一般葬と流れは同じです。違いは規模だけで、そのため訃報も参列してほしい範囲にだけ伝えます。詳しくは家族葬とは|メリット・デメリットと費用の実際を参照してください。

近年は密葬という言葉を「小規模な葬儀」の意味で使う葬儀社もあり、本葬の予定がないのに密葬プランと呼ばれることがあります。プラン名ではなく、本葬を行うかどうかで判断してください。

費用は二重にかかるのが原則

密葬を選ぶ場合、費用の考え方が家族葬とまったく変わります。

家族葬の平均は前述の調査で96.39万円ですが、これは一回分です。密葬を行った上で本葬を開くのであれば、密葬の費用に加えて、本葬の会場費、祭壇や献花の設営費、案内状の印刷と郵送費、受付や進行の人員費、当日の飲食費と返礼品費が別途かかります。参列者が多ければ、本葬のほうが密葬より高額になることも珍しくありません。

見積りを取るときは、密葬と本葬を必ず一体で試算することが重要です。密葬の見積書だけを見て「安い」と判断すると、後から本葬の費用が想定を大きく超えます。会社が社葬として費用を負担する場合は、遺族負担分と会社負担分の線引きを書面で確認してください。費用の構造の見方は葬儀費用の内訳|固定費と変動費の見分け方、削れる項目の判断は葬儀費用を安く抑える方法|削ってよい項目とそうでない項目で扱っています。

香典と相続税の扱いの違い

密葬と本葬の二段構えにすると、香典の受け取りも二回に分かれます。密葬では辞退し、本葬で受け取るという運用も見られます。香典が誰に帰属するかについては香典は誰のものか|相続財産になるかを弁護士が解説で整理しています。

相続税の計算上、葬式費用は相続財産から差し引ける場合があります。ただし対象になる範囲は限られており、国税庁は通夜・告別式や火葬・埋葬に要した費用は対象になる一方、法要にかかった費用や香典返しの費用は対象にならないとしています。本葬が社葬や偲ぶ会として行われる場合、その費用が控除の対象になるかは実態によって判断が分かれます。詳しくは相続税から控除できる葬式費用|対象になるもの・ならないものを参照してください。

訃報の出し方で変わること

密葬と家族葬は、周囲への伝え方も異なります。

家族葬では、参列してほしい人に日程と場所を伝え、それ以外の人には葬儀後に「葬儀は近親者にて相済ませました」と報告するのが一般的です。参列を辞退してほしい場合は、その旨をはっきり書き添えないと、知った人が駆けつけてしまい、料理や返礼品の追加が必要になることがあります。

密葬では、火葬までの間は訃報そのものを限定的にとどめ、本葬の案内をもって正式な訃報とします。本葬の案内状には日時・会場・服装・香典の扱いを明記します。ここで香典を受けるか辞退するかを決めておかないと、当日の受付が混乱します。

いずれの場合も、参列を辞退してもらう相手にこそ、後日の報告を丁寧に行うことが、後の関係を保つうえで効果があります。連絡が届かなかったことへの不満は、金額の問題より長く残る傾向があります。

どちらを選ぶかの目安

判断材料になるのは、次のような点です。

  • 参列を希望する人の数。 故人が会社の代表者だった、地域や団体で役職に就いていたなど、参列希望者が多く見込まれる場合は、密葬と本葬に分けたほうが当日の混乱が少なくなります。
  • 準備に使える時間。 亡くなってから数日で数百人規模の式を整えるのは現実的ではありません。時間を確保する手段として密葬は機能します。
  • 費用の負担者。 本葬の費用を会社や団体が負担するのであれば、遺族の負担は密葬分に限られます。全額を遺族が負担するなら、二回分の総額で判断する必要があります。
  • 遺族の体力。 二回の式を主催するのは負担が大きく、四十九日の法要と本葬を兼ねる形で調整することもあります。

参列者が近親者だけで足りるのであれば、家族葬一回で完結させるほうが費用も負担も抑えられます。

まとめ

密葬と家族葬の違いは規模ではなく、後日の本葬を予定するかどうかです。密葬は本葬とセットで費用が二回分かかり、訃報は本葬まで伏せるのが通例です。家族葬は一回で完結し、訃報も参列してほしい範囲にだけ伝えます。葬儀社のプラン名は業界内でも使い方が統一されていないため、契約前に「本葬を行う前提か」「本葬の費用は誰が負担するか」を書面で確認してください。二回分の総額が見えない状態で契約を進めると、後から金額の食い違いが起きやすくなります。判断に迷う見積書があれば、契約前に第三者に確認してもらう方法もあります。