葬儀費用を安く抑える方法|削ってよい項目とそうでない項目
削れるのは変動費。固定費と安置料は形式を変えても減らない
葬儀費用を抑えたいとき、最初に手をつけるべきは総額の値引き交渉ではなく、項目ごとの取捨選択です。祭壇のグレードや生花の量、返礼品の単価は後から問題が起きにくい一方、安置や搬送、菩提寺への連絡を削ると、後日かえって費用や労力が増えることがあります。加えて、国民健康保険や健康保険からの給付を申請すれば、負担額そのものが下がります。順番を間違えないことが結果的に効きます。
まず「動かせない費用」を切り分ける
葬儀費用には、こちらの選択で動く部分と、制度上ほぼ動かない部分があります。火葬料は火葬場を運営する自治体や事業者が決めており、死亡診断書・死体検案書の文書料は病院や医師が決めています。これらは葬儀社と交渉しても変わりません。
一方、株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年、直近2年以内に喪主を経験した全国40歳以上の男女2,000人が対象)によると、葬儀費用の総額平均96.73万円のうち基本料金が72.02万円、飲食費が11.67万円、返礼品費が13.03万円でした。基本料金と飲食費・返礼品費は、選び方によって幅が生まれる部分です。費用の層ごとの読み方は葬儀費用の内訳にまとめています。
削っても問題が起きにくい項目
次の項目は、金額の幅が大きく、削っても後日のトラブルにつながりにくい部分です。
- 祭壇のグレード:同じ会場でも祭壇の規模で数十万円の差が出ることがあります。写真で複数のランクを見せてもらい、実際の会場の広さに合うものを選ぶと過剰になりません
- 生花・供花の量:追加の花輪や籠花は単価が明確なため、数を決めやすい項目です
- 料理と返礼品の単価:人数を減らすのではなく単価を1段下げる方法があります。人数を減らすと参列者との関係に影響しますが、単価の調整はそうなりにくい部分です
- 遺影の加工オプション:背景合成や大判パネルの追加は必須ではありません
- マイクロバス・ハイヤー:参列者が自家用車で移動できるなら省けます
- 湯灌・エンバーミングなどの任意サービス:必要性を説明してもらったうえで判断する項目です
- 式場のグレード:公営斎場が使える地域では、民営式場より使用料が抑えられることがあります。利用条件は市区町村の窓口で確認できます
削るべきでない項目
一方、目先の金額のために削ると、後で費用や負担が戻ってくる項目があります。
安置とドライアイスは削れません。火葬場の予約が取れるまでご遺体を適切に保全する必要があり、日数分は必ずかかります。国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料では、令和6年の死亡数が約161万人と厚生労働省の調査開始以来最多になり、葬儀の取扱件数も増加していると指摘されています。安置日数は自分では選べないと考えたほうが現実的です。
搬送と人員も安全に直結します。ご遺体の搬送や納棺には人手が必要で、無理に減らすと当日に追加を求められることがあります。
菩提寺への連絡は費用項目ではありませんが、省くと後に大きな影響が出ます。事前の相談なく通夜・告別式を省略した結果、納骨の受け入れについて改めて話し合いが必要になることがあります。
書面の受け取りを省くのも避けてください。「口頭で安くしてもらった」状態は、後から確認する手段がありません。国民生活センターは消費者へのアドバイスとして、見積書は必ず受領し内容(明細)をよく確認することを挙げています。確認項目は葬儀の見積書チェックポイントにまとめました。
形式の変更と相見積もり
形式そのものを変える方法もあります。前述の調査の形式別平均は、一般葬122.01万円、家族葬96.39万円、一日葬74.43万円、直葬・火葬式49.56万円です。ただし形式を下げると香典収入も減るため、実質的な負担が想定ほど下がらないことがあります。総額ではなく手元から出る金額で比べてください。各形式の内容は家族葬の費用相場と直葬の費用相場で扱っています。
相見積もりも有効です。同じ調査では、相見積もりを取らなかった人が87.1%、事前の準備をしていなかった人が63.8%でした。時間がない状況でも、条件をそろえた見積書を2社から取るだけで、含まれる範囲の違いが見えてきます。国民生活センターも、葬儀社との打ち合わせは親族や第三者など複数で行うことをすすめています。
比較のコツは、総額ではなく条件をそろえることです。会葬者数、式場、安置日数、火葬場を同じにして見積りを依頼すれば、金額の差が「サービスの差」なのか「含まれる範囲の差」なのかが分かります。条件をそろえずに総額だけを比べると、安く見える見積書のほうが実際には高くつくことがあります。
なお、病院で紹介された葬儀社にその場で決めなければならない決まりはありません。搬送だけを依頼して、葬儀そのものは別の葬儀社に依頼することも可能です。断り方は病院で紹介された葬儀社の断り方で扱っています。
公的給付で実質負担を下げる
支出を削るだけでなく、受け取れるものを受け取る視点も重要です。国民健康保険や後期高齢者医療制度の加入者が亡くなった場合、葬祭を行った人に葬祭費が支給されます。国民健康保険法58条1項と高齢者の医療の確保に関する法律86条を根拠とし、金額は自治体の条例で定められるため地域差があります。東京23区は7万円で、港区の案内では申請期限は葬祭を行った日の翌日から2年以内とされています。金額と期限はお住まいの自治体で確認してください。詳しくは葬祭費の申請方法と支給額をご覧ください。
会社員などが加入する健康保険では、協会けんぽの場合、生計を維持されていた方に埋葬料5万円が支給され、該当者がいないときは実際に埋葬を行った人に上限5万円の埋葬費が支給されます。申請期限は2年です。詳しくは埋葬料・埋葬費の申請方法をご覧ください。
まとめ
葬儀費用を抑える順番は、動かせない費用を切り分け、祭壇・生花・料理と返礼品の単価・任意オプションといった選択の余地がある項目を調整し、そのうえで公的給付を漏れなく申請することです。安置・搬送・人員・菩提寺への連絡・書面の受け取りは、削ると後で負担が戻ってくる部分と考えてください。
値引きを求めるより、条件をそろえた見積書を複数取り、含まれる範囲を比べるほうが確実です。契約後に金額の説明に納得できない場合は、見積書と請求書を並べて差分を整理したうえで、弁護士や消費生活センターに確認を求めることができます。
