お布施の相場と渡し方|戒名料との関係

葬儀費用の平均には含まれていません。別枠で、現金で用意するものと考えてください

お布施の相場と渡し方|戒名料との関係

葬儀の見積書に、お布施は載っていません。

よく目にする「葬儀費用の平均96.73万円」という数字にも、お布施は入っていません。基本料金・飲食費・返礼品費を足した金額だからです。

つまり、お布施は別枠で、現金で用意するものです。ここを知らないまま予算を組むと、後で足りなくなります。金額の決まりがなく、寺院から示されないことも多いので、調べ方と記録の残し方を先に押さえておきましょう。

お布施の相場と渡し方の全体像。判断が分かれる点を一枚で示す
お布施の相場と渡し方の全体像。判断が分かれる点を一枚で示す(作図: 弁護士による葬儀ガード)

そもそもお布施は「料金」ではありません

お布施は、読経や戒名に対する代金ではありません。寺院への布施として渡すものと位置づけられています。

定価が示されないのは、この性質によります。「いくらですか」と聞いても「お気持ちで」と返ってくるのは、はぐらかしているわけではないのです。

とはいえ、払う側には目安が必要です。実際、多くの方が金額の判断に困っています。

『葬儀の口コミ』(株式会社ディライト)の調査によると、お布施の金額について「非常に高い」が27.2%、「やや高い」が38.5%でした。約7割が高いと感じたことになります。

寺院からの示され方も、次のように分かれています。

寺院からの説明割合
明確な金額の指定があった34.6%
目安の金額を伝えられた46.6%
示されなかった残り

金額を相談した相手は、家族・親戚が41.9%で最も多く、葬儀会社が40.4%、お寺(僧侶・住職)が28.4%と続きます。

金額の幅と、地域による違い

同じ『葬儀の口コミ』が2026年3月28日から4月11日にかけて、全国20の政令指定都市で調査を行っています。お布施を納めた経験のある方が対象です。

その結果が次のとおりです。

場面目安
葬儀のお布施20万〜50万円が中心
四十九日法要3万〜5万円
一周忌・三回忌1万〜5万円

同じ調査で、最も高い回答はさいたま市の170万円、最も低い回答は熊本市の8万円でした。

8万円から170万円。この幅の広さが意味するのは、全国平均を自分の場合に当てはめても役に立たないということです。

金額を左右するのは次の4つです。

  • 宗派
  • 寺院との関係の深さ(檀家かどうか、代々の付き合いか)
  • 地域の慣習
  • 戒名の位号

ですから、参考にすべきは全国平均ではありません。同じ寺院に近い時期にお布施を納めた親族の話です。

先代の葬儀のときにいくら包んだか。それが分かれば、いちばん確かな目安になります。当時の記録が残っていないか、年長の親族に確認してみてください。

戒名料は、分けずに包むのが一般的です

葬儀のお布施には、次のものがまとめて含まれるのが一般的です。

  • 通夜・葬儀の読経
  • 戒名(法名)の授与
  • 火葬場での読経
  • 初七日の読経

「読経がいくら、戒名がいくら」と分けずに、一括して包みます。これも対価ではないという性質の表れです。

戒名については、位号によって金額の目安が変わるとされています。位号とは、戒名の末尾に付く部分です。

位号の例位置づけ
信士・信女一般的な位号
居士・大姉それより上位とされる
院号(院居士・院大姉)最も上位とされる

位号の希望を伝えるかどうかは、金額に直結する判断です。

ただし、菩提寺がある場合は独断で決めないでください。故人や先祖の戒名との釣り合いを取る必要があることが多いためです。

たとえば、父親が院号なのに子が信士では、後で違和感が残ります。逆に、先祖より上の位号を希望すると、寺院から止められることもあります。

なお、浄土真宗では戒名ではなく法名を授かります。位号による区分の考え方も異なるため、他宗派の話をそのまま当てはめないでください。

図で整理: 金額を尋ねるときの言い方
図で整理: 金額を尋ねるときの言い方(作図: 弁護士による葬儀ガード)

金額を尋ねるときの言い方

寺院に直接尋ねてよいのか、迷う方が多くいます。

失礼にはあたりません。尋ね方さえ整っていれば、自然なやり取りとして受け止められます。

よく使われるのは、次のような形です。

「皆さまはどのくらいお包みされていますか」

「当家の場合、どのようにさせていただくのがよいでしょうか」

「いくらですか」と直接聞くのではなく、慣例を尋ねる形にするのがこつです。

それでも「お気持ちで」としか返ってこないことがあります。そのときは、次の3つを試してください。

  1. 同じ檀家の方に聞く(総代や世話役の方が事情を知っています)
  2. 地域の事情を知る葬儀社に聞く
  3. 墓誌に刻まれた先祖の戒名から、位号の水準を推し量る

用意できる金額に限りがあるときは、正直に伝えて差し支えありません。事情を伝えたうえで相談すれば、応じてもらえることが多くあります。

菩提寺がない場合

葬儀社を通じて僧侶を手配する方法があります。この場合、金額は事前に提示されることがほとんどです。

ただし、ここで確認すべき点があります。見積書に載っているのが手配料なのか、お布施本体なのかです。

「寺院手配」という項目があっても、お布施は別途というケースがあります。手配料は葬儀社の役務の対価ですから、内訳が示されるべき項目です。

「この金額に、寺院にお渡しする分は含まれていますか」と一言確認してください。

渡し方の作法

作法として、次の点を押さえておけば大きく外れません。

香典と違い、薄墨は使いません。ここを間違える方が多いところです。

お布施とは別に、次の2つを包む慣習があります。

名目どんなとき
御車代遠方から来ていただいた場合
御膳料会食を辞退された場合

これらも金額に決まりはありません。それぞれ別の封筒に分けて用意し、記録も分けて残しておくと、後の整理が楽になります。

記録を残してください

弁護士の立場から、ここは強くお伝えしておきます。

お布施は領収書が出ません。それでも、相続税の計算で遺産から差し引ける費用です。

国税庁のタックスアンサーNo.4129では、葬式に当たり寺院などに読経料などのお礼をした費用は、差し引ける葬式費用に含まれるとされています。

記録がなければ、対象になり得るものを説明できません。残すのは次の5つです。

  • 支払日
  • 寺院名(戒名を授けた僧侶の名前でも可)
  • 金額
  • 名目(読経料・戒名料・御車代など)
  • 誰が支払ったか

金封の表書きを、渡す前にスマホで撮っておくのが確実です。銀行から出金した記録も裏づけになります。

最後の「誰が支払ったか」は見落とされがちです。相続税で差し引けるのは、実際に負担した相続人だからです。喪主が立て替えた場合と、兄弟で分担した場合とでは、差し引ける人が変わります。

根拠となる条文 — 葬式費用の控除

相続または遺贈により財産を取得した相続人・包括受遺者が負担した葬式費用は、課税価格の計算上、取得財産の価額から控除されます(相続税法13条1項2号)。

差し引ける費用の範囲は相続税法基本通達13-4に定められ、寺院への読経料などのお礼はこれに含まれます。

一方、同13-5は、香典返戻費用、墓碑および墓地の買入費ならびに墓地の借入料、法会に要する費用を控除できないものとしています。四十九日法要のお布施は、この「法会に要する費用」に当たると整理されます。

葬儀のお布施は差し引ける。四十九日のお布施は差し引けない。同じ寺院に渡すお金でも扱いが違いますから、名目と日付を分けて記録してください。

お布施の相場と渡し方 — 支払う前・動く前に確認しておきたい項目
お布施の相場と渡し方 — 支払う前・動く前に確認しておきたい項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

予算全体の中で考える

お布施だけを切り離して考えると、高いのか妥当なのかが判断できません。全体の中に置いてみてください。

株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると、葬儀費用の総額平均は96.73万円です。形式別では次のようになっています。

形式平均
一般葬122.01万円
家族葬96.39万円
一日葬74.43万円
直葬・火葬式49.56万円

ここにお布施が加わります。20万〜50万円が中心ですから、家族葬なら総額は120万〜150万円ほどになる計算です。

一方、実際の持ち出しは総額より小さくなります。差し引けるものが3つあるからです。

差し引くもの内容
香典喪主に渡された贈り物。遺産には入りません
葬祭費国民健康保険・後期高齢者医療。東京23区は7万円
埋葬料健康保険。5万円

葬祭費と埋葬料は、申請しないともらえません。期限は2年です。窓口は市区町村か、加入していた健康保険です。

これらを引いた実質額を先に出しておくと、お布施にどれだけ充てられるかが見えてきます。数字が見えると、寺院に相談するときも話が具体的になります。

菩提寺との関係を保つために

金額の話は、その後の付き合いに影響します。ここは慎重に進めてください。

菩提寺とは、これから何十年も関係が続きます。四十九日、一周忌、三回忌、お盆、お彼岸、そして次の代の葬儀。そのたびに顔を合わせます。

ですから、金額だけを理由に関係を損なうのは得策ではありません。次の3点を守れば、たいていの場合は円満に進みます。

  1. 事前に相談する(渡してから「多すぎた」と言わない)
  2. 事情があるときは率直に伝える(黙って少なく包まない)
  3. 決まったことは、その場で言葉にして確認する

一方で、菩提寺があるのに他の僧侶に葬儀を頼んでしまうと、納骨を断られることがあります。急いでいても、菩提寺への連絡だけは先に済ませてください。

菩提寺が遠方にある、あるいは付き合いが途絶えているという場合も、まず電話を1本入れることをおすすめします。事情を伝えれば、地元の同じ宗派の寺院を紹介してもらえることもあります。

まとめ

お布施について、覚えておくことは3つです。

  1. 別枠で用意する。葬儀費用の平均には含まれていない
  2. 全国平均より地元の実例。同じ寺院・同じ地域で包まれた額を聞く
  3. 記録を残す。日付・寺院名・金額・名目・払った人の5つ

寺院に尋ねることも、事情を伝えることも、失礼ではありません。黙って悩むより、聞いてしまったほうが早く片づきます。

親族の間で負担の分担が決まらないときは、記録をそろえたうえで相談してください。金額と支払った人がはっきりしていれば、話し合いは前に進みます。