凍結された預金口座の解除手続き|必要書類と流れ
遺言の有無と分割の成否で必要書類が変わる。急ぐなら仮払い制度を先に
金融機関が名義人の死亡を把握すると、その口座は凍結され、入出金ができなくなります。凍結を解くには、相続人が確定していることと、誰がその預金を取得するかが決まっていることを、書類で示す必要があります。遺言書がある場合、遺産分割協議が成立している場合、いずれもない場合とで、提出する書類が変わります。葬儀費用の支払いを急ぐ場合は、民法909条の2の仮払い制度を先に検討してください。
なぜ凍結されるのか
口座の凍結は、法律で義務づけられた手続ではなく、金融機関が相続人間の紛争や二重払いを避けるために行う実務上の取扱いです。
死亡の事実は、相続人からの連絡のほか、新聞のお悔やみ欄などから金融機関が把握することもあります。凍結されると、公共料金の口座振替も停止するため、生活口座であれば早めに切り替えの手配が必要です。
凍結前であっても、他の相続人に無断で引き出すと、後の遺産分割で使途の説明を求められます。相続放棄を検討している場合は、民法921条1号により単純承認とみなされるおそれもあります。考え方は相続放棄ができなくなる行為を参照してください。
共通して必要になる書類
金融機関によって異なりますが、おおむね次の書類が求められます。
- 金融機関所定の相続手続依頼書(相続人全員の署名・実印での押印を求められることが一般的)
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑登録証明書
- 被相続人の通帳、キャッシュカード、届出印
戸籍については、法定相続情報一覧図の写しを提出することで、戸籍の束の提出を省略できる金融機関が多くあります。複数の金融機関や法務局で手続をする場合、一覧図を作っておくと大幅に手間が減ります。作成は法務局に申出を行い、無料で交付を受けられます。
遺言書がある場合
遺言書がある場合は、その内容に従って手続を進めます。提出書類は次のとおりです。
- 遺言書(自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所の検認済証明書付き)
- 遺言執行者が指定されていれば、その資格を証する書面
- 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
- 預金を取得する相続人の印鑑登録証明書
自筆証書遺言は、原則として家庭裁判所の検認が必要です(民法1004条1項)。ただし、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合と、公正証書遺言の場合は検認が不要です。
遺産分割協議が成立している場合
協議が成立していれば、遺産分割協議書を提出します。相続人全員が署名し、実印で押印したものに、全員の印鑑登録証明書を添えます。
協議書の作り方は遺産分割協議書の書き方にまとめました。預金の記載では、金融機関名・支店名・預金の種類・口座番号を特定してください。特定が不十分だと、金融機関に受け付けてもらえないことがあります。
協議が未了の場合でも、相続人全員が手続依頼書に署名・押印すれば、払戻しに応じる金融機関があります。事前に取扱いを確認してください。
急ぐ場合は仮払い制度を使う
相続手続には時間がかかるため、葬儀費用の支払いに間に合わないことがあります。この場合、民法909条の2の仮払い制度が使えます。
各相続人が単独で、「相続開始時の預貯金債権額 × 3分の1 × その相続人の法定相続分」を、同一の金融機関ごとに150万円を上限として払戻しを受けられる制度です。他の相続人の同意は不要です。詳しくは預貯金の仮払い制度にまとめています。
ただし、これも相続財産の一部を受け取る行為です。相続放棄を検討している場合は慎重に判断してください。
手続にかかる期間
書類がそろってから払戻しまで、金融機関にもよりますが2週間から1か月程度かかるのが一般的です。戸籍の収集に要する時間を含めると、全体では1か月から数か月を見ておく必要があります。
相続税の申告期限は、相続税法27条により、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月です。納税資金を預金から用意する場合は、逆算して手続を始めてください。期限の考え方は相続税の申告期限は10か月を参照してください。
まとめ
凍結された口座を解除するには、相続人の確定と、預金を取得する人の決定を書類で示す必要があります。遺言書の有無、遺産分割協議の成否によって提出書類が変わります。
法定相続情報一覧図を作っておくと、複数の金融機関での手続が楽になります。葬儀費用の支払いを急ぐ場合は、仮払い制度を先に検討してください。相続人間で意見が分かれている場合は、早い段階で弁護士に相談すると、手続が止まる期間を短くできます。
