相続税の申告期限は10か月|間に合わないときの対応
相続税法27条の10か月。分割が間に合わなくても期限は来る
相続税の申告と納付の期限は、相続税法27条1項により、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。この期限は、遺産分割が終わっているかどうかに関係なく到来します。分割がまとまらない場合でも、法定相続分で分けたものとして申告し、納税する必要があります。まず、そもそも申告が必要かどうかを基礎控除で確認し、必要であれば逆算して準備を始めてください。
申告が必要かを基礎控除で判断する
相続税には基礎控除があり、遺産の総額がこれを下回れば、原則として申告も納税も不要です。
基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算します。相続人が3人であれば4,800万円です。
ただし、次の特例を使って納税額がゼロになる場合は、申告が必要です。
- 配偶者の税額軽減(相続税法19条の2)── 配偶者が取得した財産が、法定相続分か1億6,000万円のいずれか多い金額までは相続税がかからない制度
- 小規模宅地等の特例(租税特別措置法69条の4)── 一定の宅地の評価額を減額する制度
これらは「申告することが適用の要件」とされています。納税額がゼロだから申告しなくてよい、と考えると適用を受けられません。
10か月の間にすること
期限までに行うのは、次の作業です。
- 相続人の確定(戸籍の収集)
- 相続財産の調査(不動産、預貯金、有価証券、生命保険金、負債)
- 財産の評価
- 遺産分割協議
- 申告書の作成と提出、納付
不動産の評価や、非上場株式がある場合の評価には時間がかかります。10か月は、実際に着手してみると余裕のある期間ではありません。
葬式費用は、債務控除として遺産総額から差し引けます。国税庁のタックスアンサーNo.4129が範囲を示しており、香典返戻費用や法会に要する費用は対象外です。詳しくは相続税から控除できる葬式費用を参照してください。領収書は必ず保管してください。
遺産分割が間に合わない場合
期限までに分割がまとまらないときは、法定相続分で取得したものとして申告し、納税します。これを未分割申告といいます。
このとき問題になるのが、配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例です。これらは原則として、分割が確定していることが適用の要件とされています。未分割のままでは適用できません。
そこで、申告書とあわせて「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておきます。これにより、申告期限から3年以内に分割が成立した場合、更正の請求により特例を適用できます。提出を忘れると、後から特例を使えなくなります。
分割が成立したら、実際の取得額に応じて修正申告または更正の請求を行います。協議書の作り方は遺産分割協議書の書き方にまとめました。
期限に遅れた場合
期限を過ぎると、次の負担が生じます。
- 延滞税 ── 納付が遅れた期間に応じてかかります
- 無申告加算税 ── 申告しなかった場合にかかります
- 過少申告加算税 ── 申告額が過少だった場合にかかります
税務調査の通知を受ける前に自主的に申告すれば、加算税が軽減される取扱いがあります。遅れていることに気づいた時点で、早めに動く方が負担は小さくなります。
納税資金の準備
相続税は原則として金銭で一括納付します。遺産の大半が不動産という場合、納税資金の確保が課題になります。
預金から支払う場合は、凍結解除の手続に時間がかかります。書類がそろってから払戻しまで2週間から1か月程度、戸籍の収集を含めると数か月を見ておく必要があります。手順は凍結された預金口座の解除手続きにまとめました。
一括納付が難しい場合には、延納や物納という制度がありますが、いずれも要件が厳格で、申請期限も申告期限と同じです。検討する場合は早めに税理士に相談してください。
まとめ
相続税の申告・納付期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月です。基礎控除を超えるか、特例の適用を受ける場合には申告が必要になります。
遺産分割が間に合わない場合は、法定相続分で申告したうえで「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておいてください。これを忘れると特例が使えなくなります。相続人間で協議が進まない場合は、期限から逆算して、早い段階で弁護士に相談することをお勧めします。
