葬儀費用はクレジットカードで払えるか|支払停止の抗弁も解説
限度額と名義の壁がある。分割にすれば支払停止の抗弁という選択肢が増える
葬儀費用をクレジットカードで支払える葬儀社は増えていますが、すべてではありません。また、支払えるとしても利用限度額の範囲に限られ、100万円前後になる葬儀費用を1枚のカードで決済できないこともあります。カード払いを予定するなら、契約前に「カードが使えるか」「限度額は足りるか」「分割にした場合の手数料はどうか」を確認してください。あわせて、故人名義のカードは使えないという点も押さえておく必要があります。
使えるかどうかは葬儀社によって異なる
カード決済には加盟店手数料がかかるため、対応していない葬儀社や、現金払いに限る項目を設けている葬儀社があります。よくあるのは、葬儀社に支払う費用はカードで決済できるが、火葬場の料金や宗教者へのお布施は現金が必要というパターンです。
見積書を受け取った段階で、どの項目がカード決済の対象になるかを確認してください。お布施は葬儀社への支払いとは性質が異なり、通常は現金で用意します。考え方はお布施の相場と渡し方にまとめました。
利用限度額と名義の確認
カードの利用限度額は、ショッピング枠の残高がそのまま使えるとは限りません。他の利用分がある場合、その分だけ枠が減っています。
葬儀費用の相場は、鎌倉新書「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると総額の平均が96.73万円です。一般的なカードの限度額を超える可能性があるため、事前にカード会社の会員ページで利用可能額を確認しておくと確実です。
名義も重要です。カードは名義人本人しか使えないため、喪主名義のカードで支払うのが原則になります。故人名義のカードは、死亡により契約が終了するため使用できません。使用した場合、後日カード会社との間で問題になり得ます。故人名義の契約の整理についてはデジタル遺品とサブスクの解約を参照してください。
支払停止の抗弁が使える場面
カード払いには、トラブルが生じたときの制度上の利点があります。割賦販売法30条の4は、包括信用購入あっせん(カードのショッピング)を利用した場合に、購入者が販売業者に対して生じている事由をもって、カード会社からの支払請求を拒むことができると定めています。いわゆる支払停止の抗弁です。
ただし、適用には範囲があります。
- 対象は、2か月を超える期間にわたる分割払いなど、割賦販売法上の要件を満たす取引です。翌月一括払いは原則として対象外です。
- 支払総額が政令で定める金額(4万円)に満たない取引は対象外とされています。
- 抗弁の主張は、カード会社に書面等で通知して行います。
つまり、分割払いにしていれば、葬儀社との間で契約内容の争いが生じたときに、カード会社への支払いを一時的に止められる余地があります。一括払いでは、この仕組みは使えません。
葬儀社との間で争いが生じた場合の考え方は葬儀の追加料金を払わないことはできるかと葬儀費用の返金を請求する方法にまとめています。
分割にする場合の確認点
カードの分割払いやリボ払いを使う場合は、実質年率と支払総額を確認してください。リボ払いは毎月の負担が一定になる一方、残高が減りにくく、総額が膨らみやすい仕組みです。
信販会社の葬儀ローンとの比較も含めた整理は葬儀費用の分割払いにまとめました。
領収書と相続税申告
カードで支払った場合も、葬儀社から領収書を受け取ってください。相続税の申告で葬式費用を控除する際、支出の内容と金額を示す資料が必要になります。国税庁のタックスアンサーNo.4129は、控除できる葬式費用の範囲を示しています。
カードの利用明細は決済の事実を示しますが、内訳までは分かりません。葬儀社発行の明細付き領収書とあわせて保管してください。控除の範囲は相続税から控除できる葬式費用を参照してください。
ポイントやマイルの扱い
カードで高額の決済をすると、ポイントやマイルが付与されます。これ自体は利用者の利益ですが、葬儀費用の場合に注意したい点があります。
喪主が自分名義のカードで支払い、後に相続財産から精算する場合、付与されたポイントの扱いが問題になることがあります。相続人間で費用負担を協議する際、「立て替えた側にポイントが入っている」という指摘が出ることがあるためです。
金額としては小さいことが多いものの、精算の話し合いが難航している場合には、余計な論点を増やさないよう、事前に説明しておく方が無難です。
より重要なのは、故人名義のポイントやマイルの扱いです。これらは規約により、死亡時に失効するものと、相続人が承継できるものがあります。承継できる場合は相続財産の一部となり、遺産分割の対象になり得ます。
相続放棄を検討している場合、故人名義のポイントを使う行為は、民法921条1号の相続財産の処分にあたると評価されるおそれがあります。判断に迷う場合は使わずに保留してください。考え方は相続放棄ができなくなる行為に、契約の整理はデジタル遺品とサブスクの解約にまとめています。
まとめ
葬儀費用のカード払いは可能な葬儀社が増えていますが、対象項目・限度額・名義の三点を事前に確認する必要があります。故人名義のカードは使えません。
分割払いにした場合は、割賦販売法30条の4の支払停止の抗弁が使える余地があり、トラブル時の選択肢が一つ増えます。ただし手数料により総額は増えるため、支払総額を確認したうえで判断してください。契約内容に不安がある場合は、見積書を持って弁護士に確認してもらうとよいでしょう。
