葬儀社が倒産したときの前払金|返還を求める手順
互助会とは制度が違う。一般の前払金に保全はなく、破産債権として扱われる
葬儀社に前払いした金銭は、その葬儀社が倒産した場合、原則として一般の債権として扱われます。互助会のような前受金の保全制度が適用されないため、破産手続の中で配当を受けられるかどうかという問題になり、全額の回収は難しいのが実情です。まずは、契約の形態がどちらに当たるのかを確認し、管財人からの通知に沿って債権届出を行ってください。
互助会と一般の葬儀社では制度が違う
冠婚葬祭互助会は、割賦販売法上の「前払式特定取引」に当たり、事業を営むには経済産業大臣の許可が必要です。許可を受けた事業者は、受け取った前受金の2分の1に相当する額について、供託や保証契約により保全する義務を負います。破綻時にはこの保全分から弁済が行われます。詳しくは互助会が倒産したら払込金はどうなるかにまとめました。
一方、通常の葬儀社に一括または数回で前払いした金銭には、こうした保全制度がありません。生前契約や事前予約として代金の一部を預けていた場合も同様です。事業者が破綻すれば、その金銭の返還請求権は一般の破産債権となります。
自分の契約がどちらなのかは、契約書の名称ではなく、支払いの形態で判断します。二か月以上の期間にわたり三回以上に分割して前払いしているなら前払式特定取引に当たる可能性が高く、一括で預けたのであれば通常の前払金です。
破産手続が始まったときの流れ
葬儀社について破産手続開始の決定がされると、裁判所が選任した破産管財人が財産を管理します。債権者には、破産手続開始の通知と債権届出の書式が送られます。
対応の手順は次のとおりです。
- 届いた通知を確認し、債権届出の期限を控える
- 契約書、領収書、振込記録など、前払いの事実と金額を示す資料を用意する
- 債権届出書に金額と原因を記載し、資料の写しを添えて期限内に提出する
- 以後、管財人からの連絡や債権者集会の案内を確認する
配当があるかどうか、あるとしてどの程度かは、破産財団の状況によります。届出をしなければ配当の対象から外れるため、期限内の提出は欠かせません。
施行の途中で止まった場合
すでに搬送や安置が始まっている段階で葬儀社の事業が止まった場合は、金銭の回収より先に、遺体の安置と火葬の手配を確保することが優先です。
このとき確認すべきは、遺体が現在どこにあるか、安置施設の管理者が誰か、火葬場の予約がどうなっているかの三点です。安置施設が葬儀社の自社施設である場合と、外部の施設を借りている場合とで、連絡先が変わります。
火葬には市区町村長の許可が必要で、墓地、埋葬等に関する法律5条により、火葬を行おうとする者は許可を受けなければなりません。許可証の所在も確認してください。紛失している場合の対応は火葬許可証を紛失したときの再発行にまとめています。
別の葬儀社に引き継ぐ場合、支払い済みの金額が二重負担になる可能性がありますが、まずは施行を完了させ、金銭の問題は後から破産手続の中で処理するという順序になります。
契約前にできる確認
倒産リスクを完全に避けることはできませんが、前払いの必要性そのものを確認することはできます。
- 施行前に代金の全額を前払いする必要が本当にあるのか
- 前払いする場合、その金銭の保全措置があるか
- 生前契約であれば、契約から施行までの期間にどのような保護があるか
- 解約したい場合の返戻条件はどうなっているか
葬儀費用の支払時期は葬儀社によって異なり、施行後の後払いが可能な場合もあります。支払時期の考え方は葬儀費用はいくら用意すればよいかを、契約前の確認事項は葬儀社の選び方を参照してください。
生前契約をしている場合の確認
生前に葬儀の契約を結び、代金の一部または全部を預けている場合は、次の点を確認しておいてください。
契約の相手方 ── 契約書に記載された事業者の商号と所在地を確認します。窓口となった事業者と、実際に施行する事業者が異なることがあります。
預けた金銭の位置づけ ── 前払金なのか、預り金なのか、内金なのかで扱いが変わります。契約書のどこにも記載がない場合は、書面での確認を求めてください。
保全措置の有無 ── 前払式特定取引に該当する契約であれば、割賦販売法に基づく保全措置が講じられています。該当しない場合は、保全がないことを前提に判断することになります。
解約時の返戻条件 ── 施行前に解約した場合、いくら返るのかを確認します。消費者契約法9条1項1号により、平均的な損害を超える解約料の定めは、その超過部分が無効です。考え方は解約手数料が高すぎる場合は無効かにまとめました。
契約内容の記録 ── 契約書、パンフレット、支払記録を一か所にまとめ、家族が把握できる場所に保管しておいてください。本人以外が契約の存在を知らないと、いざというときに使えません。
まとめ
一般の葬儀社に前払いした金銭には保全制度がなく、倒産時には破産債権として扱われます。互助会の掛金とは制度が異なるため、まず自分の契約がどちらかを確認してください。
破産手続が始まった場合は、期限内の債権届出が第一歩です。施行の途中で止まった場合は、遺体の安置と火葬の確保を優先し、金銭の問題は手続の中で処理します。契約や届出の内容に不安がある場合は、契約書と支払記録をそろえて弁護士に相談してください。
