死亡診断書と死体検案書の違い|費用と受け取り方

同じ1枚の用紙です。診療していた病気で亡くなったかどうかで、名前と費用が変わります

病院から渡された書類が「死体検案書」になっている。診断書ではないのか。

驚くかもしれませんが、用紙は同じ1枚です。右半分が医師の記入欄で、そこの表題が2つ並んでいます。

どちらになるかは、診療していた病気で亡くなったかどうかで決まります。費用にも差が出ます。順に見ていきます。

同じ1枚の用紙で、名前が変わります
同じ1枚の用紙で、名前が変わります(作図: 弁護士による葬儀ガード)

用紙は1枚です

まず、書類の形を知っておいてください。混乱の多くは、ここから生じます。

A3の用紙の右半分が、医師が記入する欄です。表題には「死亡診断書(死体検案書)」と書かれています。

左半分が、遺族が記入する死亡届です。1枚で両方を兼ねています。

そのため、医師から受け取ったら、左半分に自分で記入して市区町村へ提出します。

書き損じても、二重線で訂正できます。修正液は使わないでください。

記入に迷う欄があれば、市区町村の窓口で聞けます。その場で教えてもらえます。

どちらになるのか

分かれ目は決まっています。医師の判断で決まるものであり、遺族が選べるものではありません。

状況交付されるもの
診療していた傷病で亡くなった死亡診断書
最後の診察から時間が経ち、死因が判断できない死体検案書
自宅で急に亡くなった死体検案書(警察が関わることが多い)
事故・自死・災害死体検案書
死因が明らかでない死体検案書
根拠となる条文 — 医師の義務

医師は、診察や検案をした場合に、診断書や検案書の交付の求めがあったときは、正当な事由がなければ拒んではならないとされています(医師法19条2項)。

医師は、自ら診察しないで治療をしたり、診断書や処方せんを交付したりしてはなりません。ただし、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合には、改めて診察をしなくても死亡診断書を交付できるとされています(同法20条)。

医師は、死体を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければなりません(同法21条)。

つまり、施設や自宅で亡くなった場合でも、かかりつけ医が診療していた病気による死亡と判断できれば、死亡診断書が交付されます。

警察が関わる場合

死因が明らかでないときは、警察に連絡が行きます。ここで戸惑う家族が多くいます。

これは、亡くなった方や家族を疑っているという意味ではありません。法律で定められた手続きです。

参考になる判例 — 届出義務の位置づけ

最高裁判所平成16年4月13日判決は、医師法21条の異状死体の届出義務について、警察官が犯罪捜査の端緒を得ることを容易にする趣旨を含むものとしました。

そのうえで、届出義務が憲法38条1項(自己に不利益な供述の強要の禁止)に違反するものではないと判断しています。

つまり、届出は制度として予定された手続きです。異状があるからといって、事件性が疑われていると決まるわけではありません。

警察が関わると、次のような流れになります。時間がかかることを見込んでおいてください。

  1. 警察官が現場を確認する(検視)
  2. 医師が遺体を検案し、死因を判断する
  3. 必要と判断されれば、解剖が行われる
  4. 死体検案書が交付される
  5. 遺体が遺族に引き渡される

この間、遺体は警察の管理下に置かれます。搬送も、警察が手配した業者が行うのが通常です。

引き渡しまで1日から数日かかることがあります。葬儀の日程は、その後に決めることになります。

自宅で亡くなった場合の動き方

自宅で亡くなっているのを見つけたとき、何をすればよいか分からなくなります。順番を示しておきます。

まず、救急車を呼ぶか、警察に連絡するかで迷います。判断がつかない場合は、119番に電話して状況を伝えてください。

明らかに亡くなっている場合や、死因が分からない場合は、警察に連絡することになります。

  • 遺体を動かさない
  • 部屋の状態を変えない
  • かかりつけ医がいれば、連絡して指示を受ける

かかりつけ医が診療していた病気による死亡と判断できれば、その医師が死亡診断書を交付できます。警察の関与が不要になることがあります。

在宅で療養していた場合は、事前に主治医と連絡方法を確かめておくと安心です。夜間の連絡先も聞いておいてください。

看取りの体制が整っていれば、慌てずに済みます。訪問看護を利用している場合は、その事業所にも連絡します。

遺体の引き渡しを待つ間

警察が関わる場合、遺体はすぐには戻りません。その間にできることがあります。

引き渡しの見込みを確かめ、葬儀の日程を仮に組んでおきます。火葬場の予約も、見込みで進められることがあります。

待つ間にできること内容
葬儀社を選ぶ搬送だけを頼む形でも構わない
費用の見積もりを取る品目・数量・単価の入った形で
親族への連絡日程が未定である旨を伝える
書類の準備戸籍、印鑑、通帳の場所を確かめる

警察が手配する搬送業者に、そのまま葬儀を頼む必要はありません。ここは誤解されやすい点です。

「搬送だけお願いします」と伝えて差し支えありません。葬儀社は、自分で選べます。

費用の説明を受けないまま契約が進みそうな場合は、その場で決めないでください。持ち帰ると伝えれば足ります。

費用の目安

費用は、大きく違います。書類の性質と、行われる作業の量が違うためです。

書類費用の目安
死亡診断書3,000円〜1万円程度
死体検案書3万円〜10万円程度
解剖が行われた場合別に費用がかかることがある

金額は、医療機関や地域によって違います。文書料として請求され、健康保険は適用されません。

司法解剖が行われる場合、その費用は公費で負担されるのが通常です。承諾解剖や行政解剖の場合は、扱いが異なります。

警察が手配した搬送費も、遺族の負担になることがあります。金額を確かめてください。

いずれも、相続税の申告では葬式費用として扱えることがあります。国税庁のタックスアンサーNo.4129に、死体の捜索や運搬の費用が挙げられています。

図で整理: 受け取ってから提出するまで
図で整理: 受け取ってから提出するまで(作図: 弁護士による葬儀ガード)

受け取ったら確かめること

その場で確かめてください。訂正が必要になると、後の手続きが止まります。

氏名は、旧字体が使われていることがあります。戸籍と違うと、受理されないことがあります。

誤りを見つけたら、その場で医師や医事課に伝えてください。後からだと、再度出向くことになります。

内容に納得できない場合も、まず医療機関に確かめてください。説明を求めることはできます。

写しを取っておく

最も伝えたい点です。提出前に、必ず写しを取ってください。

死亡届に添えて提出すると、原本は手元に残りません。その後の手続きで、繰り返し求められます。

  • 生命保険の請求
  • 勤務先への提出(弔慰金、忌引き)
  • 遺族年金の請求
  • 金融機関の相続手続き
  • 各種の解約手続き

5枚から10枚あると安心です。コンビニのコピーで足ります。

提出した後に必要になった場合は、市区町村で死亡届の記載事項証明書を請求できることがあります。ただし、請求できる場面は限られます。

医療機関に再発行を頼むこともできます。その場合、文書料が改めてかかります。

葬儀社が代行する場合も、写しを頼めます。「コピーを5枚お願いします」と伝えてください。

写しは、白黒でも問題ありません。提出先によっては原本を求められることもあるため、確かめてください。

死亡届の書き方

左半分の死亡届は、遺族が記入します。難しい内容ではありません。

書く内容
氏名・生年月日戸籍のとおり
死亡したとき・ところ診断書の記載と一致させる
住所・世帯主住民票のとおり
本籍・筆頭者戸籍のとおり
届出人続柄を選び、署名する

届出の期限は、死亡の事実を知った日から7日以内です。国外で亡くなった場合は3か月以内になります。

提出先は、亡くなった場所、故人の本籍地、届出人の所在地のいずれかの市区町村です。

火葬許可の申請も同時に行います。多くの場合、葬儀社が代行します。

代行を頼む場合も、記入内容は確かめてください。誤りがあると、訂正のために出向くことになります。

死因の記載について

死体検案書には、死因が書かれます。内容が気になる場合の考え方を示しておきます。

死因の欄には、直接の死因と、その原因となった傷病が書かれます。「不詳」と記載されることもあります。

保険金の請求では、この記載が確認されます。内容によっては、追加の資料を求められることがあります。

  • 死因が「不詳」の場合、保険会社が確認に時間をかけることがある
  • 事故や災害による場合、災害割増の対象になることがある
  • 記載に疑問がある場合は、まず医療機関に説明を求める

記載を変えてもらうには、医学的な根拠が必要です。単に希望を伝えるだけでは変わりません。

保険の請求で疑問が生じた場合は、保険会社に何が必要かを聞いてください。追加の資料で足りることもあります。

判断に迷う場面が続く場合は、弁護士に相談できます。書類の意味から整理してもらえます。

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件で、うち52.6%が料金に関するものでした。急ぐ場面ほど、書類の確認が後回しになります。

覚えておきたいこと

最後に、押さえておく点をまとめます。どれも、後の手続きに効いてきます。

  1. 用紙は1枚。右が医師、左が遺族の記入欄
  2. どちらの書類になるかは、医師が判断する
  3. 検案書の費用は、診断書より高くなる
  4. 受け取ったら、その場で記載を確かめる
  5. 提出前に、写しを5枚以上取っておく

このうち、5つ目を忘れる人が最も多くいます。葬儀社が代行する場合も、写しを頼んでください。

写しは、封筒にまとめて保管してください。手続きのたびに探す手間がなくなります。

戸籍や印鑑証明書も、同じ封筒に入れておくと便利です。手続きの多くで、同じ書類が求められます。

死亡診断書 — 受け取ったら確認する項目
死亡診断書 — 受け取ったら確認する項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

書類の名前が違っても、慌てる必要はありません。

  • 用紙は1枚。右が医師の記入欄、左が死亡届
  • 検案書は費用が高い。金額を確かめておく
  • 受け取ったら記載を確かめ、提出前に写しを取る

写しの枚数だけは、多めに用意してください。後の手続きが、ずいぶん楽になります。