安置場所の選び方|自宅と施設で費用と手間がどう変わるか

費用だけで決めないでください。会いに行けるかどうかが、後になって効いてきます

病院から「早めに搬送先を決めてください」と言われた。どこに運べばよいのか。

まず知っておいてください。亡くなった当日に火葬することはできません。必ず、どこかで安置する時間が生じます。

選択肢は、自宅か、施設です。費用だけで決めないでください。会いに行けるかどうかが、後になって効いてきます。

自宅と施設 — 費用と面会のちがい
自宅と施設 — 費用と面会のちがい(作図: 弁護士による葬儀ガード)

なぜ安置が必要なのか

法律で、火葬までの時間が定められています。急いでも、当日には終えられません。

根拠となる条文 — 火葬までの時間

埋葬または火葬は、原則として死亡または死産の時から24時間を経過した後でなければ行ってはならないとされています(墓地、埋葬等に関する法律3条)。

火葬を行うには、市町村長の許可が必要です(同法5条1項)。この許可は、死亡届を受理した後に交付されます。

そのため、亡くなった当日に火葬することはできません。最短でも1日、火葬場の予約状況によっては数日の安置が必要になります。

つまり、安置は避けられない工程です。どこで過ごすかを選ぶ、という問題になります。

自宅と施設の違い

まず、全体を比べてください。費用だけでは決まりません。

項目自宅施設
施設の使用料かからない1日1万円前後
ドライアイス必要(1日1万円前後)必要(同程度)
面会いつでもできる時間や回数に制限があることが多い
付き添いできるできる施設とできない施設がある
搬入経路の確認が必要問題にならない
近隣への配慮必要になることがある不要

自宅の利点は、費用が抑えられることと、いつでもそばにいられることです。

施設の利点は、手間がかからないことと、温度管理が整っていることです。

どちらが良いかは、家族の状況によります。介護をしてきた家族ほど、自宅を選ぶ傾向があります。

自宅を選ぶときの確認

自宅に安置できるかどうかは、建物の条件で決まります。先に確かめてください。

3つ目と4つ目でつまずくことがあります。エレベーターの奥行きが足りないと、寝かせたまま運べません。

古い集合住宅では、階段の踊り場で曲がれないことがあります。葬儀社に事前に確かめてもらってください。

搬入できないと分かれば、施設に切り替えることになります。早く分かるほど、慌てずに済みます。

近隣への配慮

集合住宅では、近隣の目が気になることがあります。実際に、次のような点が問題になります。

  • 寝台車が建物の前に停まる
  • 出入りが増える
  • 管理規約で、遺体の搬入を制限している場合がある

管理規約を確かめておくと安心です。禁止している例は多くありませんが、確かめる価値はあります。

大家や管理会社に一報を入れておくと、後のやり取りが穏やかになります。

近所づきあいのある地域では、隣近所にも伝えておく家庭が多くあります。地域の慣習によります。

図で整理: 費用が積み上がる場所
図で整理: 費用が積み上がる場所(作図: 弁護士による葬儀ガード)

自宅で過ごす場合の準備

自宅に迎える場合、用意するものがあります。多くは葬儀社が持ってきますが、家側の準備も必要です。

部屋を空け、布団を敷ける状態にします。仏間があればそこを使い、なければ和室や居間を使います。

用意するもの補足
敷布団と掛け布団使い慣れたもので構わない
部屋の空きスペース6畳程度あると動きやすい
冷房温度を低く保つ。切らない
枕飾りの台葬儀社が用意することが多い

冷房は、費用を抑えるうえでも大切です。室温が高いと、ドライアイスの使用量が増えます。

線香やろうそくを絶やさない慣習もありますが、近年は火を使わないものも使われています。無理をする必要はありません。

ペットがいる場合は、部屋を分ける配慮が要ることがあります。葬儀社に相談してください。

小さな子どもがいる家庭では、驚かせないよう説明の仕方を考えてください。無理に対面させる必要はありません。

病院や施設からの搬送

安置先を決めたら、搬送を手配します。ここで気をつけたい点があります。

病院で紹介された葬儀社に、そのまま葬儀まで任せる必要はありません。搬送と葬儀は、別の契約です。

  • 「搬送と安置だけお願いします」と伝えられる
  • 葬儀の内容は、翌日以降に決めても間に合うことが多い
  • 搬送を頼んだ会社に、義務として続けて頼む必要はない

搬送を頼む時点で、金額は確かめてください。距離と時間帯で変わります。深夜早朝は割増になるのが通常です。

安置してから他社に切り替える場合は、発生済みの費用を精算することになります。その分の見積もりを求めてください。

急いでいても、金額を聞く時間はあります。「搬送と安置で、いくらになりますか」の一言で足ります。

施設を選ぶときの確認

施設に預ける場合は、条件を確かめてください。会社によって、扱いが大きく違います。

確かめること聞き方
1日あたりの費用「安置料とドライアイスで、1日いくらですか」
面会の可否「面会はできますか。回数や時間の制限はありますか」
面会の費用「面会のたびに費用はかかりますか」
付き添い「泊まって付き添うことはできますか」
保冷設備「保冷室ですか。ドライアイスは減りますか」

面会できない施設もあります。棺に納めるまで会えない、という運用のところもあります。

会いたい家族がいる場合は、ここを必ず確かめてください。後から変更するのは難しくなります。

遠方の親族が到着するまで、顔を見せたいという場面もあります。到着の見込みも踏まえて選んでください。

面会が有料の施設もあります。「1回いくらですか」と確かめておくと、後から驚きません。

日数で費用が増えます

安置の費用は、日数で動きます。ここが総額に効いてきます。

費目1日あたりの目安
安置施設の使用料1万円前後
ドライアイス1万円前後
面会・立ち会いの費用かかる施設もある

合計すると、1日あたり2万円前後です。3日延びれば、6万円が増える計算になります。

火葬場の予約が取れない地域では、数日待つことがあります。厚生労働省の衛生行政報告例によると、火葬の件数は増加が続いています。

株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると、葬儀の総額平均は96.73万円でした。安置の日数は、この総額を動かす要素の1つです。

日程を決めるときに、「この日程だと安置は何日分になりますか」と聞いてください。

搬送の回数にも影響します

安置場所によって、搬送の回数が変わります。ここも費用に響きます。

  • 病院 → 安置所 → 式場 → 火葬場(安置所と式場が別の場合)
  • 病院 → 式場併設の安置室 → 火葬場(回数が減る)
  • 病院 → 自宅 → 式場 → 火葬場

式場に併設された安置室を使えば、搬送が1回減ることがあります。距離も短くなります。

搬送費は、距離と時間帯で変わります。1回あたり1万〜3万円程度の例が多く見られます。

安置場所を決めるときは、式場をどこにするかとあわせて考えてください。総額が変わります。

見積書での確かめ方

安置に関する費用は、見積書のどこに書かれているかを確かめてください。

  1. 「安置料 〇日分」と日数が書かれているか
  2. 「ドライアイス 〇日分」と書かれているか
  3. 基本料金に何日分が含まれているか
  4. 超過した場合の1日あたりの金額はいくらか

「一式」とだけ書かれている場合は、日数と単価を書き足してもらってください。後から検証できる形にします。

根拠となる条文 — 説明を求められる立場

事業者は、消費者契約の内容が消費者にとって明確かつ平易なものになるよう配慮し、必要な情報を提供するよう努めることとされています(消費者契約法3条1項)。

事業者が重要事項について事実と異なることを告げ、消費者が誤認して契約した場合には、その意思表示を取り消すことができます(同法4条1項1号)。消費者に利益となることだけを告げ、不利益な事実を故意または重大な過失により告げなかった場合も同様です(同条2項)。

日数と単価を尋ねることは、この趣旨に沿う行為です。断られる理由はありません。

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件で、うち52.6%が料金に関するものでした。安置の延長による増額も、その一部です。

遺体は誰が管理するのか

安置中の遺体について、親族の間で意見が割れることがあります。考え方を示しておきます。

根拠となる条文 — 遺体・遺骨の帰属

最高裁判所平成元年7月18日判決(家庭裁判月報41巻10号128頁)は、遺骨は慣習に従って祭祀を主宰すべき者に帰属するとしました。この考え方は、遺体についても同様に理解されています。

祭祀を主宰すべき者は、被相続人の指定、慣習、家庭裁判所の指定の順で決まります(民法897条1項、2項)。

葬儀社は、契約に基づいて一時的に預かっている立場です。費用の支払いを理由に引き渡しを拒むことは、正当化されにくいと考えられます。

安置先を変えたい場合も、家族の判断で決められます。すでに発生した費用は精算する必要があります。

他の葬儀社に切り替えたい場合は、搬送費と安置料を精算したうえで移せます。契約書の定めを確かめてください。

決める前に聞く4つ

急いでいる場面でも、この4つは聞いてください。1分で終わります。

  • 「安置料とドライアイスで、1日いくらですか」
  • 「面会はできますか。制限はありますか」
  • 「火葬まで何日かかる見込みですか」
  • 「搬送は何回になりますか」

4つの答えが出れば、総額の見当がつきます。判断の材料はそろいます。

答えが返ってこない場合は、その場で決めなくて構いません。搬送だけを頼み、後から決める方法もあります。

安置場所を決める — 搬送を頼む前の確認項目
安置場所を決める — 搬送を頼む前の確認項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

安置は必ず生じます。どこで過ごすかを、条件で選んでください。

  • 自宅は費用が抑えられる。搬入経路を先に確かめる
  • 施設は手間がかからない。面会の可否を必ず聞く
  • 日数が延びると、1日あたり2万円前後が増える

急ぐのは搬送だけです。式の内容は、落ち着いてから決めて構いません。