成年後見人がいた人が亡くなったとき|死亡後の手続きの流れ

後見は死亡で終わります。葬儀は家族が行い、後見人は財産を引き継ぐ側に回ります

後見人が付いていた家族が亡くなった。葬儀の手配は誰がするのか。財産はどうなるのか。

まず押さえてください。成年後見は、本人が亡くなった時点で終わります。後見人の代理権も、その時に消えます。

だから、葬儀は家族が行います。後見人は、財産を計算して相続人へ引き継ぐ立場に回ります。順に見ていきます。

死亡した時点で、後見人の役割が変わります
死亡した時点で、後見人の役割が変わります(作図: 弁護士による葬儀ガード)

後見は死亡で終わります

本人が亡くなると、後見の目的そのものがなくなります。代理権も消滅します。

根拠となる条文 — 後見の終了と管理の計算

代理権は、本人の死亡によって消滅します(民法111条1項1号)。成年後見も、本人の死亡によって終了します。

後見人の任務が終了したときは、後見人またはその相続人は、2か月以内にその管理の計算をしなければなりません(同法870条)。

後見が終了したときは、終了の登記を申請することとされています(後見登記等に関する法律8条2項)。登記が残ったままにならないよう、手続きが必要です。

つまり、亡くなった後は、後見人が財産を管理し続けることはできません。速やかに引継ぎに入ります。

家族から見ると、「今まで後見人がしてくれていたこと」が止まる場面です。何が止まるのかを知っておいてください。

葬儀は誰が行うのか

後見人には、葬儀を行う義務はありません。葬儀の主宰は、家族や親族が担います。

後見人が葬儀を手配することもありますが、それは義務ではなく、事実上の対応です。

  • 喪主は家族が務める
  • 契約は家族が結ぶ
  • 費用は、原則として相続財産か家族の負担になる

家族がいない、または連絡が取れない場合は、後見人が動くことがあります。その場合も、範囲には限りがあります。

後見人が立て替えた費用は、相続財産から精算されるのが通常です。領収書が残ります。

家族が後から現れた場合は、その精算の内容を確かめてください。説明を受けられます。

火葬・埋葬には許可が要ります

後見人ができる死後の事務は、法律で範囲が定められています。ここが実務の要点です。

根拠となる条文 — 成年被後見人の死亡後の事務

成年後見人は、成年被後見人が死亡した場合において、必要があるときは、相続人が相続財産を管理できるようになるまで、次の行為をすることができます(民法873条の2)。

一つ目は、相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為です。二つ目は、弁済期が到来した債務の弁済です。

三つ目が、その死体の火葬または埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為で、この行為には家庭裁判所の許可が必要とされています(同条3号)。

つまり、火葬や埋葬の契約を後見人が結ぶには、家庭裁判所の許可を得る必要があります。

許可は、申立てから数日で出ることもありますが、急ぐ場面では間に合わないこともあります。

だからこそ、家族がいる場合は家族が手配するほうが早く進みます。連絡が取れる親族がいるなら、まず連絡してください。

なお、この規定は成年後見人についてのものです。保佐人や補助人には適用されません。

保佐や補助を受けていた方が亡くなった場合は、家族が手配することになります。範囲がさらに限られます。

後見人がすること

後見人の側の手続きも知っておくと、やり取りがスムーズになります。

引継ぎの相手は相続人です。相続人が複数いる場合は、代表者を決めて引き継ぐのが通常です。

引継ぎの際には、財産目録と、通帳・証書などの現物が渡されます。内容を確かめてから受け取ってください。

不明な点があれば、その場で聞いてください。後見人には、説明する立場があります。

引継ぎの日時は、相続人の都合に合わせて調整できます。急かされる性質のものではありません。

複数の相続人が立ち会う形でも構いません。後から説明する手間が省けます。

家族が受け取る側ですること

引継ぎを受ける家族の側でも、確かめる点があります。

確かめること内容
財産目録預貯金、不動産、有価証券の一覧
収支の報告死亡直前までの入出金
未払いの費用医療費、施設利用料、後見人の報酬
引き継がれる書類通帳、証書、印鑑、保険証券

後見人の報酬は、家庭裁判所が決めます。死亡時までの分が、相続財産から支払われることがあります。

未払いの施設利用料や医療費も、相続財産から支払われます。相続放棄を考えている場合は、支払う前に確かめてください。

受け取った財産目録は、相続財産の調査の出発点になります。そのまま遺産分割の資料に使えます。

ただし、後見が始まる前の財産の動きは、目録には表れません。必要なら、取引履歴を別に取り寄せてください。

後見人が家庭裁判所へ提出してきた報告書も、閲覧できることがあります。裁判所に確かめてください。

図で整理: 死亡から引継ぎまでの流れ
図で整理: 死亡から引継ぎまでの流れ(作図: 弁護士による葬儀ガード)

相続放棄を考えている場合

借金が多いなどで放棄を考えている場合は、順番に注意してください。

引継ぎを受けること自体は、財産の保管にとどまります。使わずに保管しておけば、放棄の妨げにはなりにくいところです。

判断に迷う場合は、受け取る前に弁護士へ相談してください。3か月の期限内に決める必要があります。

後見人が管理していた場合、財産の状況は把握しやすい状態です。判断の材料はそろっています。

相続人がいない場合

身寄りがない方の後見をしていた場合は、別の手続きになります。

相続人がいない、または全員が放棄した場合は、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てます。

  • 申し立てるのは、利害関係人または検察官
  • 清算人が、債務を弁済し、残った財産を国庫に納める
  • 特別縁故者がいる場合は、財産の分与を申し立てられる

長年世話をしていた親族や知人は、特別縁故者として財産の分与を求められることがあります。期間の定めがあります。

手続きは複雑です。該当しそうな場合は、早めに弁護士や司法書士に相談してください。

申立てには、予納金が必要になることがあります。数十万円になる例もあるため、事前に確かめてください。

施設や病院への支払い

亡くなった時点で、施設利用料や医療費が未払いになっていることがあります。扱いを整理しておきます。

弁済期が到来した債務については、後見人が相続財産から支払うことができるとされています。家庭裁判所の許可は不要です。

一方、まだ期限が来ていない債務は対象になりません。相続人が引き継ぐことになります。

費用誰が支払うか
死亡前に期限が来ていた施設利用料後見人が相続財産から支払えることがある
死亡後に請求された分相続人が支払う
個室料などの追加分契約の内容による
後見人の報酬家庭裁判所が決め、相続財産から支払われる

支払った記録は、後の相続手続きに必要です。領収書と明細を受け取ってください。

相続放棄を考えている場合は、自分のお金で支払うか、支払いを保留するかを先に決めてください。相続財産から払うと、処分と評価されるおそれがあります。

判断に迷ったら、支払う前に施設へ事情を伝えてください。待ってもらえることがあります。

年金や給付金の手続き

後見人が受け取っていた年金も、死亡によって止まります。手続きは相続人が行います。

  • 年金受給権者死亡届の提出(日本年金機構)
  • 未支給年金の請求(生計を同じくしていた遺族)
  • 高額療養費や、介護保険の還付金の請求

未支給年金は、亡くなった月の分まで受け取れます。請求できる遺族の範囲と順位が決まっています。

後見人が管理していた口座は、金融機関に連絡した時点で凍結されます。年金の入金先だった場合は、届出が必要です。

これらの手続きは、期限があるものが多くあります。四十九日を過ぎたころに、一覧を作って確かめてください。

任意後見だった場合

任意後見契約を結んでいた場合も、本人の死亡で終了します。基本的な流れは同じです。

ただし、契約の内容によっては、死後事務についても定めがあることがあります。契約書を確かめてください。

  • 任意後見契約と、死後事務委任契約が一緒に結ばれていることがある
  • 死後事務委任契約があれば、葬儀や納骨まで委任されている場合がある
  • 契約書は、公正証書で作られていることが多い

公正証書であれば、公証役場に原本が保管されています。手元にない場合は、照会できます。

死後事務委任契約がある場合は、受任者が葬儀の手配を行います。家族は、その内容を確かめる立場になります。

費用が預託されていることもあります。残額の扱いを、受任者に確かめてください。

よくある行き違い

実際に相談の多い場面を挙げます。あらかじめ知っておくと、慌てません。

  1. 後見人が葬儀を手配してくれると思っていた
  2. 亡くなった直後に、口座からお金を出してもらえると思っていた
  3. 後見人が相続の手続きも続けてくれると思っていた
  4. 施設の未払い分を、後見人が払うと思っていた

いずれも、後見人の権限は死亡で終わるという点から生じる誤解です。

亡くなった時点で、財産の管理者は相続人に移ります。家族が動く必要がある、と理解してください。

葬儀費用が用意できない場合は、預貯金の仮払い制度や、葬祭費・埋葬料の申請を検討してください。

生活に困っている場合は、福祉事務所に葬祭扶助を相談できます。契約の前に連絡してください。

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件で、うち52.6%が料金に関するものでした。急ぎの場面ほど、確認が後回しになります。

後見終了後 — 家族が確認する項目
後見終了後 — 家族が確認する項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

後見は死亡で終わります。そこから先は、家族の手続きです。

  • 葬儀は家族が手配する。後見人に義務はない
  • 後見人は2か月以内に計算し、財産を引き継ぐ
  • 受け取った財産目録は、そのまま相続の資料になる

相続放棄を考えている場合は、引き継いだ財産を使わずに保管してください。