労災の葬祭料|31万5000円+給付基礎日額30日分

仕事中・通勤中の死亡なら、健康保険ではなく労災保険から支給されます

労災の葬祭料|31万5000円+給付基礎日額30日分

仕事中や通勤途中の事故・災害で亡くなった場合、健康保険の埋葬料ではなく、労災保険から給付があります。

業務災害なら葬祭料、通勤災害なら葬祭給付という名前です。

金額は定額ではありません。計算式で決まります。

31万5000円+給付基礎日額30日分。60日分の最低保障あり
31万5000円+給付基礎日額30日分。60日分の最低保障あり(作図: 弁護士による葬儀ガード)

支給額の計算

計算式は2段階です。

根拠となる考え方 — 葬祭料の額

労働者災害補償保険法17条は、葬祭料について、通常葬祭に要する費用を考慮して厚生労働大臣が定める金額とすると定めています。

これを受けた告示により、次のように計算されます。

  • 原則 ── 31万5000円 + 給付基礎日額の30日分
  • 上記が給付基礎日額の60日分に満たない場合 ── 給付基礎日額の60日分

給付基礎日額は、原則として労働基準法上の平均賃金に相当する額です。災害発生日以前3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数で割って算出します。賞与などは含まれません。

通勤災害の場合は「葬祭給付」という名称になりますが、計算方法は同じです(同法22条の5)。

具体例で見てみます。

給付基礎日額計算支給額
10,000円31.5万+30万=61.5万円(60日分は60万円)61.5万円
5,000円31.5万+15万=46.5万円(60日分は30万円)46.5万円
20,000円31.5万+60万=91.5万円(60日分は120万円)120万円

3つ目のように、日額が高い場合は60日分のほうが大きくなります。その場合は60日分が支給されます。

健康保険の埋葬料と比べる

金額の差は大きくなります。

制度金額
健康保険の埋葬料5万円
国民健康保険の葬祭費自治体による(東京23区は7万円)
労災の葬祭料31万5000円+α(最低60日分)
根拠となる条文 — 併給されません

労災保険の給付を受けることができる場合には、健康保険の給付は行われません(健康保険法55条)。

つまり、労災と認められれば労災保険から、認められなければ健康保険から、というかたちで一方だけになります。

金額が大きく違うため、業務上の死亡にあたる可能性があるなら、必ず確かめてください。

図で整理: 健康保険と労災で金額が大きく違う
図で整理: 健康保険と労災で金額が大きく違う(作図: 弁護士による葬儀ガード)

請求できる人

請求できるのは、葬祭を行う者です。通常は遺族になります。

遺族がいない場合に事業主が葬祭を行ったときは、その事業主が請求できるとされています。

「葬祭を行う者」であることが要件のため、実際に葬儀を執り行ったことを示す書類が必要です。葬儀費用の領収書や会葬礼状を保管しておいてください。

なお、葬祭料・葬祭給付は、遺族補償年金(遺族年金)や遺族補償一時金とは別の給付です。あわせて請求を検討してください。

請求の手順

請求先は、故人の勤務先を管轄する労働基準監督署です。

災害の種類請求書の様式
業務災害葬祭料請求書(様式第16号)
通勤災害葬祭給付請求書(様式第16号の10)

事業主の証明欄があるため、勤務先に記入を依頼します。

事業主が証明に応じない場合でも、その事情を記載して請求すること自体は可能です。業務上の死亡かどうかを判断するのは、事業主ではなく労働基準監督署です。

労災かどうか迷う場合

業務上の死亡かどうかは、必ずしも明らかではありません。

判断が分かれやすい場面内容
勤務中の発症脳・心臓疾患による死亡
長時間労働が背景過労が疑われる場合
精神的な負荷ハラスメントなどが背景にある場合
出張中・社外での事故業務との関係が問題になります
通勤経路を外れていた通勤の要件を満たすかが問題になります

これらは、業務との因果関係や、通勤の要件を満たすかが争点になります。

労働基準監督署が調査のうえ判断するため、遺族の側で結論を出す必要はありません。まず請求してみることが出発点です。

判断材料になるのは、勤務時間の記録、業務内容が分かる資料、健康診断の結果などです。多くは会社に保管されているため、早い段階で保全を求めておくと確実です。

労災の葬祭料 — 請求前に確認する項目
労災の葬祭料 — 請求前に確認する項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

時効は2年です

根拠となる条文 — 請求の期限

葬祭料および葬祭給付を受ける権利は、2年を経過したときに時効によって消滅します(労働者災害補償保険法42条)。

起算日は死亡の日の翌日です。

労災の認定手続には時間がかかることがありますが、時効は請求の時点で判断されます。認定の結論を待たずに請求しておいてください。

なお、遺族補償年金や遺族補償一時金の時効は5年とされています。葬祭料の2年とは違うため、混同しないよう注意してください。

公務員の場合は制度が違います

国家公務員や地方公務員が公務上の災害で亡くなった場合は、労災保険ではなく別の制度によります。

対象根拠窓口
国家公務員国家公務員災害補償法各実施機関
地方公務員地方公務員災害補償法地方公務員災害補償基金の支部

制度の名称と窓口が異なるだけで、葬祭を行った者に対して給付が行われるという構造は共通しています。

勤務先の共済組合や人事担当部署に確かめてください。

あわせて請求できる給付

葬祭料のほかにも、労災保険からの給付があります。金額が大きいため、必ず確かめてください。

給付内容
遺族補償年金生計を維持されていた遺族に、年金として支給
遺族補償一時金年金の受給権者がいない場合などに一時金として支給
遺族特別支給金一時金として支給される特別支給金

遺族補償年金の対象になるのは、死亡当時その収入によって生計を維持していた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹です。順位があります。

夫、父母、祖父母、兄弟姉妹については、年齢や障害の状態に関する要件があります。

葬祭料だけを請求して終わりにしないでください。遺族補償年金は継続的に支給されるため、金額の影響がはるかに大きくなります。

請求先は同じ労働基準監督署です。まとめて相談してください。

労災保険は全員が対象です

「うちは加入していない」と思われる方がいますが、誤解であることが多くあります。

労災保険は、労働者を1人でも雇う事業に適用されるのが原則です。パート、アルバイト、日雇いであっても、労働者であれば対象になります。

事業主が保険料を納めていなかった場合でも、労働者への給付は行われます。

一方、事業主本人や役員は、原則として対象外です。ただし、特別加入という制度を利用していれば対象になります。

立場対象か
正社員・パート・アルバイト対象です
派遣労働者派遣元の労災保険が適用されます
事業主・役員原則対象外(特別加入していれば対象)
一人親方原則対象外(特別加入していれば対象)

判断に迷う場合は、労働基準監督署に事情を伝えて確かめてください。

葬儀費用の全体との関係

労災の葬祭料は、健康保険の埋葬料に比べれば大きな金額です。ただ、葬儀費用の全体をまかなえるとは限りません。

調査による葬儀費用の平均額を挙げます。

形式平均
一般葬122.01万円
家族葬96.39万円
一日葬74.43万円
直葬・火葬式49.56万円

全体の平均は96.73万円です。この金額にお布施は含まれていません。

給付基礎日額が1万円なら葬祭料は61.5万円ですから、一般葬の費用には届きません。

実質の持ち出しを出すには、香典と給付を引いて計算してください。

支払時期とのずれに注意

労災の給付は、認定の手続きを経るため、支給まで時間がかかります。数か月に及ぶこともあります。

一方、葬儀費用の支払期日は、葬儀の後1週間から10日ほどに設定されることが多くあります。

つまり、支払いのほうがはるかに先に来ます。

給付を当てにして支払いを待つことはできません。いったん立て替える現金が必要です。

手元の資金が足りない場合は、香典、生命保険金、故人の口座からの仮払いで不足を減らせないか確かめてください。凍結された口座からも、金融機関ごとに150万円までは払い戻せます。

勤務先から弔慰金や死亡退職金が支給されることもあります。あわせて確かめてください。

相談できる窓口

労災に関する手続きは、判断が難しい場面が多くあります。

相談先内容費用
労働基準監督署労災に当たるか、請求の方法無料
勤務先の担当部署事業主証明、弔慰金・死亡退職金—
弁護士認定されない場合の対応、会社への請求事務所による

まず労働基準監督署に相談してください。認定の可否を判断するのは監督署です。

過労死や、業務との因果関係が争われそうな場合は、早い段階で弁護士に相談する意味があります。勤務時間の記録などの資料が、時間とともに失われることがあるためです。

会社に対して別途、損害賠償を求められる場合もあります。労災の給付とは別の問題として整理されます。

記録の残し方

労災の請求では、業務との関係を示す資料が結論を左右します。

多くは会社に保管されています。時間が経つと廃棄されることもあるため、早い段階で保全を求めてください。

「労災の請求を考えているので、勤務記録の写しをいただけますか」と伝えれば足ります。応じてもらえない場合、その事実も記録に残しておいてください。

葬儀費用の領収書も必要です。葬祭を行ったことを示す資料になります。明細つきのものを保管してください。相続税の申告でも使うため、一か所にまとめておくと確実です。