相続した車の名義変更|必要書類と手続きの順番

15日以内という定めがあります。まず車検証を見て、所有者が誰になっているかを確かめてください

親が乗っていた車が残っている。名義はそのままで大丈夫なのか。

そのままにはできません。所有者が変わったときは、15日以内に移転登録の申請をするという定めがあります。

まず、車検証を見てください。「所有者」の欄が誰になっているかで、手続きの内容が変わります。ここが出発点です。

まず車検証の所有者欄を見ます
まず車検証の所有者欄を見ます(作図: 弁護士による葬儀ガード)

車検証の所有者欄を見る

最初にすることは、これだけです。車検証(自動車検査証)の「所有者の氏名又は名称」を見てください。

記載意味手続き
故人の氏名故人が所有していた相続による移転登録
信販会社・ディーラー名ローンの担保として所有権が留保されている先に信販会社へ連絡
家族の氏名故人の所有ではない相続の対象にならない

使用者が故人でも、所有者が信販会社になっていることがあります。この場合、車は完済まで信販会社のものです。

まず信販会社に連絡し、残債の有無と手続きを確かめてください。完済していれば、所有権の解除を受けられます。

車検証は、車内のダッシュボードに入れられていることが多くあります。見つからない場合は再交付を受けられます。

2023年からは、ICタグを備えた電子車検証への切り替えが進んでいます。記載事項は、読み取りアプリでも確かめられます。

見方が分からない場合は、ディーラーや整備工場で確かめてもらえます。

期限があります

自動車の名義変更には、法律上の期限が定められています。忘れやすい点です。

根拠となる条文 — 移転登録の申請

新規登録を受けた自動車について所有者の変更があったときは、新所有者は、その事由があった日から15日以内に、国土交通大臣に対し移転登録の申請をしなければなりません(道路運送車両法13条1項)。

相続は、被相続人の死亡によって開始します(民法882条)。相続人は、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(同法896条)。

相続人が複数いる場合、相続財産は共有に属します(同法898条1項)。遺産分割によって、誰が取得するかを決めることになります。

実際には、15日を過ぎてから手続きする例が多くあります。それで直ちに罰せられるわけではありません。

ただし、名義が故人のままだと、売却も廃車もできません。自動車税の通知も故人あてに届きます。

保険の手続きにも影響します。放置せず、早めに進めてください。

自動車税の納税通知書は、毎年5月ごろに届きます。名義がそのままだと、故人あてに届き続けます。

納税義務者を変えないと、督促の通知が来ることもあります。手続きは、早いほど手間が少なくなります。

誰の名義にするかを決める

手続きの前に、相続人の間で誰が取得するかを決めます。ここが決まらないと進みません。

  • 遺言があれば、その内容による
  • 遺言がなければ、遺産分割の話し合いで決める
  • 相続人が1人なら、その人が取得する

決まったら、遺産分割協議書を作ります。車について書く場合は、次の項目を入れてください。

  1. 自動車の登録番号(ナンバー)
  2. 車台番号
  3. 車名・型式
  4. 誰が取得するか

車台番号は、車検証に書かれています。転記の誤りが多い部分なので、確かめながら書いてください。

協議書は、車だけを対象にしたものを作ることもできます。不動産や預金は別に進めたい場合に便利です。

その場合も、相続人全員の署名と実印、印鑑証明書が必要になります。

図で整理: 手続きの順番と必要書類
図で整理: 手続きの順番と必要書類(作図: 弁護士による葬儀ガード)

必要な書類

普通車の場合の書類です。窓口は、車の使用の本拠地を管轄する運輸支局です。

書類取得先
自動車検査証(車検証)手元にあるもの
故人の出生から死亡までの戸籍本籍地の市区町村
相続人全員の戸籍同上
遺産分割協議書相続人が作成
新しい所有者の印鑑証明書市区町村(発行から3か月以内)
新しい所有者の実印手元にあるもの
車庫証明書警察署(保管場所が変わる場合)
手数料納付書・申請書運輸支局の窓口

戸籍をそろえるのに時間がかかります。法定相続情報一覧図があれば、戸籍の束の代わりに使えます。

一覧図は、法務局が無料で交付します。他の相続手続きにも使えるため、先に取っておくと効率的です。

車庫証明は、保管する場所が変わる場合に必要です。同じ場所で使い続けるなら、不要なこともあります。

価格が100万円以下の場合

相続する自動車の価格が100万円以下であれば、簡易な方法が用意されています。

遺産分割協議書の代わりに、「遺産分割協議成立申立書」を使える取扱いがあります。相続人全員の署名押印が不要になります。

  • 車の価格が100万円以下であることを示す資料が必要
  • 査定書や、業者が発行した査定価格が分かる書面を使う
  • 取得する相続人1人の署名押印で足りる

古い車であれば、この方法が使えることが多くあります。運輸支局の窓口で確かめてください。

相続人が集まりにくい場合に、負担を減らせる方法です。まず、車の価格を調べてください。

査定は、買取業者に頼めば無料で受けられることが多くあります。売却しなくても差し支えありません。

軽自動車の場合

軽自動車は、手続きが簡単です。窓口も、軽自動車検査協会になります。

普通車軽自動車
運輸支局軽自動車検査協会
戸籍一式が必要死亡が分かる戸籍で足りることが多い
遺産分割協議書が必要原則として不要
印鑑証明書が必要原則として不要

軽自動車には所有権の登録制度がないため、届出で足ります。相続人全員の同意を示す書類も、原則として求められません。

ただし、相続人の間で話がついていないまま進めると、後でもめます。実際に誰が使うかは、先に決めてください。

必要書類は変更されることがあります。行く前に、軽自動車検査協会に確かめてください。

窓口は全国にあります。管轄はナンバーの地名で決まるため、確かめてから出向いてください。

ローンが残っている場合

所有者が信販会社になっている場合は、順番が変わります。まず信販会社に連絡してください。

  1. 信販会社に、契約者が亡くなったことを伝える
  2. 残債の額を確かめる
  3. 完済するか、契約を引き継ぐかを決める
  4. 完済後、所有権解除の書類を受け取る
  5. その書類を使って、移転登録を行う

残債があるまま名義変更はできません。まず、支払いの整理が必要です。

団体信用生命保険が付いている場合は、残債が保険で支払われることがあります。契約内容を確かめてください。

残債が大きく、車の価値がそれを下回る場合は、相続放棄も含めて検討することになります。

相続放棄を考えている場合

車の扱いは、相続放棄と深く関わります。順番を間違えないでください。

根拠となる条文 — 処分とみなされる行為

相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされます(民法921条1号)。放棄や限定承認は、原則として自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければなりません(同法915条1項)。

葬儀費用については、大阪高等裁判所平成14年7月3日決定(家庭裁判月報55巻1号82頁)が、身分相応の葬儀費用を相続財産から支出したことは処分にあたらないと判断しました。

もっとも、これは葬儀費用についての判断です。財産的価値のある自動車の処分は、別に評価されます。

保管しておくだけであれば、処分にはあたらないと考えられます。判断に迷う場合は、動かさずに相談してください。

売却・廃車をする場合

乗る人がいない場合は、売却や廃車を選ぶことになります。手続きの順番があります。

まず、相続による名義変更を済ませます。そのうえで、新しい所有者として売却や廃車の手続きを行います。

  • 名義変更をせずに売却することはできない
  • 買取業者が、名義変更を代行してくれることもある
  • 廃車(永久抹消登録)にも、同じ書類が必要

自動車税は、年度の途中で廃車にすると還付を受けられることがあります。手続きの際に確かめてください。

自動車重量税も、車検の残り期間に応じて還付されることがあります。永久抹消登録をした場合です。

保険と税金の手続き

名義変更と合わせて、保険と税金の手続きも必要です。忘れやすい部分です。

手続き窓口備考
自賠責保険の名義変更保険会社車検証と一緒に確かめる
任意保険の名義変更保険会社・代理店等級を引き継げることがある
自動車税の納税義務者の変更都道府県の税事務所移転登録に伴って処理される

任意保険の等級は、配偶者や同居の親族であれば引き継げるのが通常です。条件は保険会社に確かめてください。

保険の手続きを忘れると、事故のときに補償を受けられないおそれがあります。名義変更と同時に進めてください。

車を使わない期間も、保険は必要です。保管中に動かす場合も、補償の範囲を確かめてください。

しばらく乗らない場合は、一時抹消登録という方法もあります。自動車税がかからなくなります。

進め方のまとめ

順番を整理しておきます。この順で進めれば、迷いません。

書類集めが最も時間のかかる部分です。他の相続手続きと共通するものが多いため、まとめて集めてください。

自分で手続きするのが難しい場合は、行政書士やディーラーに依頼できます。費用は数万円程度が目安です。

依頼する場合も、戸籍と印鑑証明書は自分でそろえるのが通常です。書類の準備は変わりません。

平日に窓口へ行けない場合は、依頼する価値があります。運輸支局は平日のみの受付です。

車の名義変更 — 手続きの前に確認する項目
車の名義変更 — 手続きの前に確認する項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

車の手続きは、車検証を見るところから始まります。

  • 所有者が故人か、信販会社かを確かめる
  • 誰が取得するかを決め、戸籍と印鑑証明書をそろえる
  • 保険と税金の手続きまで済ませる

相続放棄を考えている場合は、売却も廃車も待ってください。動かす前に相談することが大切です。