家族葬のメリットとデメリット|後から困りやすい点まで
費用が必ず安くなるとは限りません。香典が減るぶん、手出しが増えることがあります
「家族葬にすれば安く済む」と聞いた。本当にそうなのか。
半分は正しく、半分は違います。総額は下がりますが、香典も減ります。その結果、手出しが変わらないこともあります。
利点も、後から困る点も、どちらも知ったうえで選んでください。順に見ていきます。
家族葬とは何か
法律上の定義はありません。「参列者を家族や近親者に絞って行う葬儀」を指す言葉として使われています。
通夜と告別式を行う点は、一般葬と同じです。人数が少ないという違いだけです。
そのため、内容は幅があります。10人ほどで行う場合もあれば、30人を超えることもあります。
「家族葬」という名前のプランがあっても、含まれる内容は会社によって違います。中身で判断してください。
含まれる人数の上限が決まっていることもあります。超えると追加になるため、確かめてください。
火葬料や式場使用料が別立てになっている場合もあります。総額で比べてください。
費用はどれだけ下がるか
数字で見ておきましょう。総額の平均は、形式によって次のように違います。
| 形式 | 総額の平均 |
|---|---|
| 全体の平均 | 96.73万円 |
| 家族葬 | 96.39万円 |
| 一日葬 | 74.43万円 |
| 直葬・火葬式 | 49.56万円 |
株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)による数字です。
家族葬の平均が全体とほとんど変わらない点に注目してください。人数を絞っても、総額は大きく下がらないことがあります。
理由は、費用の構造にあります。祭壇、式場、棺、搬送、火葬料といった費目は、人数では変わりません。
人数で変わるのは、料理と返礼品です。同じ調査によると、飲食費の平均は11.67万円、返礼品費の平均は13.03万円でした。
つまり、人数を半分にしても、下がるのはこの部分だけです。総額の4分の1程度が上限になります。
香典が減ることを見落とさない
ここが最も見落とされやすい点です。参列者が減れば、香典も減ります。
- 参列者1人あたりの香典は、5,000〜1万円程度が中心
- 30人減れば、20万〜30万円の収入が減る計算になる
- 一方、減る費用は料理と返礼品の分だけ
差し引きで、手出しが増えることもあります。特に、故人の交友関係が広かった場合です。
根拠となる条文 — 香典の扱い
香典は、遺族の負担を軽くするために贈られる贈与と理解されています(民法549条)。故人の財産ではないため、相続財産には含まれないと扱われるのが一般的です。
そのため、遺産分割の対象にはならず、葬儀費用に充てることができます。
なお、相続税の計算では、葬式費用を相続財産から差し引けます(相続税法13条1項2号)。ただし、香典返しの費用は控除できません(国税庁タックスアンサーNo.4129)。
香典を辞退すれば、香典返しの手間と費用はなくなります。その分、手出しは増えます。
どちらがよいかは、参列予定の人数と、家の慣習で決まります。金額で試算してから選んでください。
家族葬の利点
費用以外の利点があります。実際には、こちらを理由に選ぶ家庭が多くあります。
- 気を使わずに過ごせる(受付や案内の対応が減る)
- ゆっくり見送れる(人数が少ないぶん、時間を取れる)
- 準備の負担が軽い(連絡や手配が減る)
- 形式にとらわれない(内容を家族で決めやすい)
高齢の遺族が喪主を務める場合、この負担の差は大きくなります。当日の疲れ方が違います。
介護を長く続けてきた家族にとって、静かに送れることは大きな意味があります。
参列者への気遣いが減るぶん、故人と過ごす時間が取れます。これは金額では測れません。
小さな子どもがいる家庭でも、進めやすくなります。長時間の対応が減るためです。
後から困りやすい点
一方で、後から生じる負担があります。これを知らずに選ぶと、想定外になります。
| 困りやすい点 | 内容 |
|---|---|
| 後日の弔問 | 知った人が、個別に自宅を訪れる |
| 親族の不満 | 「なぜ知らせてくれなかった」と言われる |
| 香典の後日受け取り | 訪問のたびに応対と返礼が必要になる |
| 会社関係の対応 | 弔問や供花の申し出への対応 |
| 菩提寺との関係 | 事前に相談していないと、後で問題になる |
一番多いのが、後日の弔問です。1人ずつ訪れると、そのたびに応対することになります。
数か月にわたって続くこともあります。まとめて対応する場を設ける家庭もあります。
四十九日の後に「お別れの会」を開く方法です。日を決めておけば、個別の訪問は減ります。
会場を借りず、自宅で受ける形でも構いません。時間を区切って知らせてください。
後日の弔問を減らすには
事前と事後の伝え方で、負担はかなり変わります。
- 訃報に「家族のみで執り行います」とはっきり書く
- 香典・供花を辞退する場合も、同じ文面に入れる
- 葬儀後、四十九日までに手紙かはがきで知らせる
- 「後日のご弔問はご遠慮ください」と添えることもできる
知らせないままにすると、後から知った人が驚きます。連絡の遅れは、関係を損なう原因になります。
手紙には、家族葬にした理由を一言添えてください。「故人の遺志により」で足ります。
親族への説明
家族葬でもめる原因の多くが、親族との行き違いです。事前の説明で防げます。
- 誰までを呼ぶかを、先に決めて共有する
- 高齢の親族には、電話で事情を伝える
- 呼ばない親族にも、日程は伝えておく方法がある
「2親等まで」といった線引きを決めておくと、説明しやすくなります。基準があると、角が立ちません。
呼ばれなかった親族が、後から強く不満を示すことがあります。特に、故人の兄弟姉妹は配慮が必要です。
費用を分担してもらう予定がある場合は、なおさら先に相談してください。決めた後では、話がこじれます。
決めた内容は、簡単なメモにして共有してください。口頭だけだと、後から食い違います。
葬儀費用の負担については、裁判例でも判断が分かれています。あらかじめ決めておくのが確実です。
呼ぶ範囲の決め方
一番迷うのが、どこまで呼ぶかです。基準を決めておくと、説明がしやすくなります。
よく使われるのは、次のような線引きです。どれが正しいというものではありません。
| 基準 | 呼ぶ範囲の例 |
|---|---|
| 同居家族のみ | 配偶者、同居の子 |
| 2親等まで | 配偶者、子、親、孫、兄弟姉妹 |
| 3親等まで | 上記に、おじ・おば、甥・姪を加える |
| 交流のあった人まで | 親族以外の友人も含める |
基準を決めたら、その理由も一言用意しておいてください。「今回は2親等までとしました」と伝えられます。
迷ったときは、故人が親しくしていたかどうかで判断してかまいません。形式より、実際の関係です。
呼ばない場合でも、亡くなったことは伝えるのが穏当です。伝えたうえで、参列を辞退してもらう形にします。
線引きに例外を作ると、説明が難しくなります。1人を特別に呼ぶと、他の人にも伝わります。
当日の流れは一般葬と同じです
家族葬だからといって、進行が大きく変わるわけではありません。通夜と告別式を行う点は同じです。
省けるのは、人数に応じた対応です。受付を置かない、会葬礼状を作らないといった判断ができます。
- 受付を親族に頼まず、喪主が直接受け取る
- 会葬礼状を省き、当日の返礼品も絞る
- 席次を細かく決めず、自由に座る
- 弔電の紹介を短くする
省いてよいかどうかは、参列する顔ぶれで決まります。親族だけであれば、かなり簡素にできます。
一方、会社関係の方が数名来る場合は、受付があったほうが進みやすくなります。
判断に迷う点は、葬儀社の担当者に聞いてください。実際の場面をよく知っています。
菩提寺がある場合
先祖代々のお寺がある場合は、必ず先に相談してください。順番を誤ると、後で困ります。
家族葬であっても、読経と戒名は菩提寺に依頼するのが原則です。他で手配すると、納骨を断られることがあります。
- 家族葬にする旨を、事前に伝える
- 参列者が少ないことも、あらかじめ伝えておく
- 遠方の場合は、来られるかどうかを確かめる
「小規模だから連絡しなくてよい」ということはありません。むしろ、先に伝えておくほうが円滑に進みます。
菩提寺がない場合は、宗教者手配のサービスを使えます。定額で示されることが多く、金額が分かりやすい仕組みです。
その場合も、納骨先が決まっているかを先に確かめてください。宗派の指定があることがあります。
判断するときの確認
決める前に、次の項目を確かめてください。数字と条件がそろえば、判断できます。
3つ目を飛ばす人が多くいます。手出しの額は、香典を差し引いて初めて分かります。
見積書は、火葬料と式場使用料が含まれているかを確かめてください。含まれていないと、総額が変わります。
国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件で、うち52.6%が料金に関するものでした。「家族葬だから安い」と考えたまま契約すると、差が生じます。
一日葬・直葬という選択
費用を抑えることが目的なら、形式そのものを見直す方法もあります。
| 形式 | 内容 | 総額の平均 |
|---|---|---|
| 家族葬 | 通夜と告別式を、家族中心で行う | 96.39万円 |
| 一日葬 | 通夜を行わず、告別式のみ | 74.43万円 |
| 直葬・火葬式 | 式を行わず、火葬のみ | 49.56万円 |
一日葬は、通夜にかかる費用と、その分の飲食費が減ります。参列者の負担も軽くなります。
ただし、菩提寺によっては通夜を省くことを認めない場合があります。事前の相談が必要です。
直葬は、最も費用を抑えられます。一方、後から「お別れができなかった」と感じる家族もいます。
形式は、費用と気持ちの両方で決めてください。安さだけで選ぶと、後悔が残ることがあります。
迷う場合は、家族の中で一番反対しそうな人の意見を先に聞いてください。後の対立を避けられます。
まとめ
「家族葬=安い」ではありません。数字で確かめてください。
- 減るのは料理と返礼品。祭壇や火葬料は変わらない
- 香典も減る。手出しは差し引きで計算する
- 菩提寺と主な親族には、事前に伝える
費用を抑えたいなら、人数ではなく形式を見直すほうが効きます。
