直葬を葬儀社に断られたとき|理由別の進め方
断られても、直葬ができないわけではありません。理由を聞けば、次の一手が決まります
火葬だけの直葬にしたいと伝えたら、「うちでは扱っていません」と言われた。
まず落ち着いてください。直葬ができないわけではありません。その会社が受けていない、というだけです。
大切なのは、断られた理由を聞くことです。理由によって、次にすべきことが変わります。順に見ていきます。
直葬とはどういう形か
通夜も告別式も行わず、火葬のみを行う形です。火葬式とも呼ばれます。
亡くなってから火葬までは、24時間を空ける必要があります。その間の安置は必ず生じます。
根拠となる条文 — 火葬までの手続き
埋葬または火葬は、原則として死亡または死産の時から24時間を経過した後でなければ行ってはならないとされています(墓地、埋葬等に関する法律3条)。
埋葬または火葬を行おうとする者は、市町村長の許可を受けなければなりません(同法5条1項)。この許可は、死亡届を受理した後に交付されます。
なお、葬儀の形式について法律上の定めはありません。式を行わず火葬のみとすることも、家族が選べる形です。
つまり、直葬は法律上まったく問題のない形です。断られたとしても、制度上の理由ではありません。
株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると、直葬・火葬式の総額平均は49.56万円でした。全体の平均は96.73万円です。
なぜ断られるのか
理由はいくつかに分かれます。まず、どれに当たるかを聞いてください。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 会社の方針 | 直葬のプランを設けていない |
| 安置場所の空き | 自社の施設が埋まっている |
| 火葬場の予約 | 希望の日程が取れない |
| 遺体の状態 | 保全に特別な対応が必要 |
| 宗教上の理由 | 提携する寺院の方針 |
| 支払いの見込み | 費用の支払いに不安がある場合 |
「会社の方針」であれば、他社に当たれば解決します。地域には複数の事業者があります。
「安置場所の空き」や「火葬場の予約」であれば、日程を動かせば受けてもらえることがあります。
契約を結ぶかどうかは、事業者にも自由があります。断られたこと自体は、不当な扱いではありません。
根拠となる条文 — 契約するかどうかの自由
何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができます(民法521条1項)。契約の内容も、当事者が自由に決められるのが原則です(同条2項)。
そのため、葬儀社が特定の形式を扱わないと決めることも、それ自体は認められています。
一方、事業者は、消費者契約の内容が明確かつ平易になるよう配慮し、必要な情報を提供するよう努めることとされています(消費者契約法3条1項)。理由を尋ねることは、この趣旨に沿う行為です。
他社に当たるときの伝え方
問い合わせるときの伝え方で、話が早く進みます。次の内容を最初に伝えてください。
5つ目を伝えると、話が具体的になります。「この予算でできますか」と聞けば、その場で判断してもらえます。
搬送だけを先に頼み、施行の契約は後で決める形もとれます。この2つは別の契約です。
「まず搬送と安置だけお願いします」と伝えて差し支えありません。断られる理由は通常ありません。
搬送を頼んだ会社に、そのまま葬儀まで任せる義務はありません。ここは誤解されやすい点です。
搬送費と安置料の金額は、その場で確かめてください。距離と時間帯で変わります。
公営の制度を確かめる
自治体の制度も選択肢になります。費用を抑えたい場合に効きます。
- 市民葬・区民葬(自治体が葬儀社と協定を結び、低額で施行する制度)
- 公営斎場の利用(使用料が低く設定されていることが多い)
- 公営火葬場(住民は無料または低額のことがある)
市民葬は、設けていない自治体もあります。市区町村のウェブサイトで「市民葬」「区民葬」と検索してください。
利用できるのは、その自治体に住民登録がある場合に限られるのが通常です。条件を確かめてください。
指定された葬儀社に依頼する形になります。自由に選べない点は、あらかじめ知っておいてください。
内容は最低限に絞られていることが多く、追加すると通常の料金になります。範囲を確かめてください。
それでも、公営の火葬場と組み合わせれば、費用はかなり抑えられます。
火葬場に併設された施設を使う
直葬を受けてもらいやすい方法があります。火葬場に併設された施設を使う形です。
安置室と告別のための小部屋を備えた火葬場があります。搬送の回数が減り、費用も抑えられます。
| 利点 | 内容 |
|---|---|
| 搬送が減る | 安置から火葬まで、同じ施設で完結する |
| 費用が読める | 使用料が公表されていることが多い |
| 日程が組みやすい | 火葬の予約と安置が一体になる |
公営の施設であれば、使用料が低く設定されています。住民であれば、さらに低くなります。
利用できるかどうかは、施設によって違います。市区町村のウェブサイトか、電話で確かめてください。
葬儀社に「そちらの施設を使いたい」と伝えると、対応してもらえることがあります。まず聞いてみてください。
依頼先の探し方
1社に断られたら、次を探します。効率のよい探し方があります。
- 使いたい火葬場の名前と「直葬」で検索する
- 市区町村の窓口で、市民葬の取扱店を聞く
- 地域の葬儀社に、電話で直接聞く
- 病院や施設の相談窓口に聞く
火葬場の名前で探すと、その地域で施行している事業者が見つかります。搬送の距離も短くなります。
電話では、最初に「直葬でお願いしたい」と伝えてください。扱っていない会社なら、その時点で分かります。
2社か3社に聞けば、受けてくれる会社が見つかるのが通常です。時間はかかりません。
紹介サイトを使う方法もありますが、手数料が上乗せされていることがあります。総額で比べてください。
費用が払えない場合
支払いの見込みが理由で断られることもあります。その場合は、順番が大切です。
生活に困っている場合は、契約の前に福祉事務所へ連絡してください。葬祭扶助という制度があります。
- 葬儀の契約より前に、福祉事務所に連絡する
- 支給の決定を受けてから、火葬を行う
- 葬儀社には「葬祭扶助を申請中」と伝える
終わってから申請しても、原則として認められません。費用を支払えたという事実が、資力があった証拠と評価されるためです。
夜間や休日に亡くなった場合は、搬送と安置だけを頼み、翌開庁日の朝に連絡してください。
扶助の範囲で施行した経験のある葬儀社なら、話が早く進みます。福祉事務所に相談すれば、地域の事業者を教えてもらえることがあります。
支給される範囲は、火葬を中心とした最低限のものです。通夜や告別式は含まれません。
菩提寺がある場合の注意
直葬を選ぶ前に、必ず確かめてほしい点があります。納骨との関係です。
先祖代々のお寺がある場合、読経も戒名もないまま火葬すると、納骨を断られることがあります。
根拠となる条文 — 遺骨の帰属と納骨
最高裁判所平成元年7月18日判決(家庭裁判月報41巻10号128頁)は、遺骨は慣習に従って祭祀を主宰すべき者に帰属するとしました。祭祀を主宰すべき者は、被相続人の指定、慣習、家庭裁判所の指定の順で決まります(民法897条1項、2項)。
一方、寺院墓地への納骨は、墓地の管理者との契約や規則によります。宗派や戒名についての条件が定められていることがあります。
そのため、遺骨を管理する立場にあっても、特定の墓地に納骨できるかは別の問題になります。
対処は、順番を変えるだけです。火葬の前に、菩提寺へ一報を入れてください。
- 直葬を考えている旨を伝える
- 火葬の際に読経をお願いできるかを聞く
- 戒名をどうするかを確かめる
- 納骨の時期と方法を確かめる
火葬場で読経を受ける形にすれば、受け入れられることが多くあります。時間は10分ほどです。
その場合のお礼の額も、あわせて聞いておいてください。通常の葬儀より低くなるのが一般的です。
読経のために来ていただく場合は、御車代も用意します。5,000円から1万円程度が目安です。
菩提寺がない場合は、宗派を問わない霊園や納骨堂、合葬墓を選べます。納骨先を先に決めておくと安心です。
家族の理解も確かめる
直葬は費用を抑えられますが、後から後悔する家族もいます。事前に話しておいてください。
- お別れの時間が短い(火葬場での対面のみ)
- 参列できなかった親族から、不満が出ることがある
- 香典を受けないため、費用の全額が手出しになる
親族が集まる機会を、後日に設ける方法もあります。四十九日にあわせて、お別れの会を開く家庭があります。
反対しそうな親族には、先に事情を伝えてください。決めた後で伝えると、話がこじれます。
費用が理由であれば、正直に伝えて差し支えありません。分担の申し出があることもあります。
故人が生前に「簡素でよい」と言っていた場合は、その旨を伝えてください。理解を得やすくなります。
エンディングノートや手紙が残っていれば、根拠として示せます。
直葬でも確かめること
依頼が決まったら、次の点を確かめてください。「一式」で済ませないことが大切です。
| 確かめること | 理由 |
|---|---|
| 火葬料が含まれているか | 別立てのことがある |
| 安置は何日分か | 日数で費用が増える |
| 搬送は何回分か | 病院から安置所、火葬場までで変わる |
| 骨壺は含まれるか | 火葬場で購入する場合がある |
| 火葬場での読経の可否 | 宗教者を呼ぶ場合に必要 |
火葬までの日数が延びると、安置料とドライアイスが1日あたり2万円前後増えることがあります。
国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件で、うち52.6%が料金に関するものでした。直葬でも、内訳の確認は必要です。
見積書は、品目・数量・単価の入った形で受け取ってください。総額だけでは、後から検証できません。
直葬は費目が少ないため、確認は数分で終わります。省かずに確かめてください。
まとめ
断られても、行き止まりではありません。
- まず、断られた理由を聞く
- 会社の方針が理由なら、他社に当たる
- 菩提寺がある場合は、火葬の前に一報を入れる
費用が払えない場合は、契約の前に福祉事務所へ連絡してください。順番がすべてです。
