一日葬は菩提寺の許可がいるか|先に相談する順番

許可という言葉は正確ではありません。ただ、事前に相談しないと納骨で困ることがあります

通夜を省いて、告別式だけの一日葬にしたい。お寺の許可は必要なのか。

「許可」という言葉は、正確ではありません。寺院が葬儀の形を決める権限を持っているわけではありません。

ただし、菩提寺がある場合は、先に相談しないと後で困ります。納骨を断られる例があるためです。順に見ていきます。

相談の順番を間違えないでください
相談の順番を間違えないでください(作図: 弁護士による葬儀ガード)

一日葬とはどういう形か

通夜を行わず、告別式と火葬を1日で行う形です。近年、選ぶ家庭が増えています。

参列者が高齢である場合や、遠方から集まる場合に、2日間の拘束を避けられる利点があります。

費用も下がります。株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると、一日葬の総額平均は74.43万円でした。

全体の平均は96.73万円、家族葬は96.39万円です。通夜を省くことで、20万円ほど下がる計算になります。

下がるのは、通夜にかかる式場費と、通夜振る舞いの飲食費です。人数によって変わります。

一方、祭壇や棺、搬送、火葬料は変わりません。総額の大部分は、この部分が占めています。

そのため、劇的に安くなるわけではありません。数字で確かめてから決めてください。

なぜ相談が必要なのか

菩提寺がある場合、葬儀と納骨はつながっています。ここが理解の要点です。

寺院墓地に納骨するには、その寺院に読経と戒名を依頼するのが原則です。他で済ませると、受け入れを断られることがあります。

一日葬そのものを断られるというより、手順を踏まなかったことが問題になるという構図です。

  • 事前に相談していれば、通夜を省く形でも受け入れられることが多い
  • 相談せずに済ませると、納骨の段階で問題になる
  • 戒名を他で付けた場合は、付け直しを求められることがある

つまり、確かめるべきは「できるか」ではなく「どう進めればよいか」です。

聞き方も、「一日葬でもよいですか」より「一日葬を考えていますが、どのようにすればよいでしょうか」のほうが話が進みます。

相談を受けた側も、事情が分かれば方法を示しやすくなります。

通夜を省くことへの考え方

宗派によって、通夜の位置づけが違います。事前に聞いておくと、話が通じやすくなります。

考え方内容
通夜も含めて一連の儀式とする省くことに慎重な立場
告別式の読経で足りるとする一日葬を受け入れやすい立場
家族の事情を優先する事情を聞いたうえで判断する

同じ宗派でも、寺院によって考え方は異なります。一般論で判断せず、直接聞いてください。

高齢の参列者が多い、遠方から集まる、家族の体調がすぐれない。こうした事情を伝えると、理解を得やすくなります。

費用を理由に挙げるより、事情を伝えるほうが受け入れられやすい傾向があります。

もっとも、費用が理由であることを隠す必要もありません。正直に伝えて差し支えありません。

相談の順番

順番を守るだけで、たいていの問題は避けられます。

1つ目が最も大切です。葬儀社を決める前でも構いません。亡くなった当日に電話してください。

2つ目で反対された場合も、その場で決める必要はありません。理由を聞いて、家族で話し合ってください。

5つ目を忘れないでください。戒名と納骨は、葬儀の形とは別に確かめておく必要があります。

戒名のお礼の額も、このときに聞いておくと安心です。位号によって変わります。

「うちの家はこれまでどうでしたか」と聞けば、過去帳で確かめてもらえます。

図で整理: 相談から納骨まで
図で整理: 相談から納骨まで(作図: 弁護士による葬儀ガード)

断られたときの選択肢

反対された場合の対応です。いくつかの道があります。

  • 一日葬をあきらめ、通夜を行う形にする
  • 通夜を簡略化する(家族だけで短時間行う)
  • 別の寺院に依頼し、納骨先も変える
  • 納骨先を、宗派を問わない霊園や納骨堂に変える

2つ目は、折り合いをつけやすい方法です。参列者を呼ばず、家族だけで短時間の読経を受ける形です。

3つ目と4つ目は、菩提寺との関係を変えることになります。離檀に伴う費用を求められることがあります。

金額に納得できない場合は、根拠を書面で示すよう求めてください。それでも解決しない場合は、消費生活センターや弁護士に相談できます。

離檀を決める前に、遺骨をどこへ移すかを決めておいてください。移す先がないまま話を進めると、行き詰まります。

改葬には、いまの墓地がある市区町村の許可が必要です。手続きの順番も確かめてください。

菩提寺があるか分からないとき

そもそも、菩提寺があるかどうかが分からない家庭も増えています。確かめ方があります。

  1. 親族に、法要をどこで営んできたかを聞く
  2. お盆に僧侶が来ていたかを確かめる
  3. 位牌の裏書きや、過去帳を見る
  4. お墓の場所と、管理者を確かめる

お墓が寺院の敷地内にあれば、その寺院が菩提寺です。公営墓地や民営霊園であれば、菩提寺がないことが多くあります。

分からないまま進めると、後から判明して困ります。まず親族に一度確かめてください。

年忌法要の案内が届いていた形跡があれば、その差出人が手がかりになります。

仏壇の引き出しに、寺院の名前が入った書類が残っていることもあります。

菩提寺がない場合は、宗教者手配のサービスを使えます。金額があらかじめ示されるため、判断しやすくなります。

費用はどう変わるか

一日葬にすると、費用の内訳も変わります。何が減って、何が変わらないかを整理します。

費目一日葬にした場合
式場使用料1日分になる(減る)
通夜振る舞いの飲食費なくなる
祭壇・棺・搬送変わらない
火葬料変わらない
宗教者へのお礼減る場合と、変わらない場合がある
安置料・ドライアイス日数によっては変わらない

宗教者へのお礼は、読経の回数によって変わることがあります。事前に確かめてください。

安置の日数は、火葬場の予約状況で決まります。通夜を省いても、火葬が先延ばしになれば安置料は同じです。

見積書を出してもらうときは、通夜を行う場合と行わない場合の両方を頼んでください。差額が分かります。

差額が思ったより小さい場合は、通夜を行う判断もあります。金額を見てから決められます。

条件をそろえて出してもらうのがこつです。人数と式場を同じにして比べてください。

当日の流れ

一日葬の当日は、告別式から火葬まで一続きで進みます。おおまかな流れを知っておくと、動きやすくなります。

時間の目安内容
開式の1時間前家族が集合し、受付の準備をする
開式読経、焼香
開式から1時間ほど出棺、火葬場へ移動
火葬中待合室で待つ(1〜2時間)
収骨骨上げ、骨壺を受け取る
その後会食(省くこともある)

初七日の法要を、この日にあわせて行う家庭が増えています。繰り上げて行う形です。

同日に行う場合、読経の回数が増えるため、お礼が加算されることがあります。事前に確かめてください。

会食を省くこともできます。参列者が少ない場合は、そのまま解散する形も一般的です。

省く場合は、持ち帰りの弁当を用意する家庭もあります。人数分の費用がかかります。

前日の夜は、家族だけで故人と過ごす時間を取れます。安置先で面会できるかを確かめておいてください。

面会に制限がある施設もあります。会いたい家族がいる場合は、契約の前に確かめてください。

自宅に安置できれば、いつでもそばにいられます。搬入経路の確認が必要です。

親族への説明

通夜がないことに、驚く親族がいます。事前に伝えておくと、当日の混乱を避けられます。

特に、遠方から来る親族には早めに伝えてください。前泊が必要かどうかの判断に関わります。

  • 通夜がないことを、日程の連絡と同時に伝える
  • 前日に会いたい場合の対応を決めておく(安置先での面会など)
  • 高齢の親族には、電話で直接説明する

「簡略にした」と受け取られると、不満につながります。理由を添えて伝えてください。

参列者の年齢や、移動の負担を理由に挙げると、理解を得やすくなります。実際、多くの家庭がその理由で選んでいます。

費用を分担してもらう場合は、形式の相談も一緒に行ってください。後から決め方を問われることがあります。

参列者への伝え方

一日葬にすると、参列できる時間が限られます。伝え方に配慮してください。

  • 訃報に、告別式のみである旨をはっきり書く
  • 通夜がないことを、明記する
  • 開式の時間と、火葬場へ向かう時間を書く

「通夜はいつですか」という問い合わせが来ないよう、先に書いておくのが親切です。

仕事の都合で日中に来られない方には、後日の弔問を受ける旨を添える方法もあります。

会社関係の方が多い場合は、通夜のほうが参列しやすいという事情もあります。参列者の顔ぶれで判断してください。

参列を辞退する場合は、その旨も同じ文面に書いてください。曖昧だと、相手が迷います。

決める前の確認

最後に、確かめる項目をまとめます。順番が大切です。

根拠となる条文 — 火葬までの時間と手続き

埋葬または火葬は、原則として死亡または死産の時から24時間を経過した後でなければ行ってはならないとされています(墓地、埋葬等に関する法律3条)。

火葬を行うには、市町村長の許可が必要です(同法5条1項)。この許可は、死亡届を受理した後に交付されます。

なお、葬儀の形式について法律上の定めはありません。通夜を行うかどうかは、家族が決められる事柄です。

法律上、通夜は必須ではありません。決めるのは家族です。

葬儀社から「通夜はされますよね」と前提のように聞かれることもあります。断って差し支えありません。

一方、寺院との関係や、納骨先の条件は、事実として存在します。そこを確かめてから決めてください。

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件で、うち52.6%が料金に関するものでした。形式を決める際も、費用の確認は同時に行ってください。

一日葬を選ぶ — 決める前に確認する項目
一日葬を選ぶ — 決める前に確認する項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

許可の問題ではありません。順番の問題です。

  • 菩提寺があるなら、亡くなった当日に電話で相談する
  • 一日葬にしたい理由を、簡潔に伝える
  • 戒名と納骨についても、同時に確かめる

先に相談しておけば、後で困ることはほとんどありません。