直葬の流れ|臨終から火葬までの手順と注意点

やることは多くありません。ただし、菩提寺への相談だけは先に済ませてください

直葬にしようと決めた。でも、当日どう進むのかが分からない。

やることは、通常の葬儀より少なくなります。通夜も告別式も行わず、火葬だけを行う形式だからです。

ただし、先に済ませておくべきことが一つあります。菩提寺がある場合の相談です。

臨終から火葬までの流れ
臨終から火葬までの流れ(作図: 弁護士による葬儀ガード)

直葬とはどういう形式か

直葬は、通夜と告別式を行わず、火葬のみを行う形式です。「火葬式」とも呼ばれます。

株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると、直葬・火葬式の平均費用は49.56万円、実施割合は10.8%でした。

同じ調査による葬儀費用の総額の平均は96.73万円です。約半分の水準になります。

参列するのは、家族と近しい親族のみです。人数は数名から10名程度が一般的です。

宗教者を呼ぶかどうかは選べます。火葬炉の前で読経してもらう形も可能です。

「直葬=無宗教」ではありません。宗教者を呼びつつ、式そのものを省く形も選べます。

菩提寺との関係を保ちたい場合は、この形が現実的です。読経だけ依頼する形になります。

依頼するかどうかを、早い段階で決めてください。日程の調整に関わります。

全体の流れ

臨終から納骨まで、順に見ていきます。

段階内容目安
1死亡確認・死亡診断書の受け取り当日
2搬送・安置当日
3死亡届の提出・火葬許可証の交付1〜2日目
4火葬場の予約1〜2日目
5納棺火葬当日または前日
6出棺・火葬24時間経過後
7収骨火葬の1〜2時間後
8納骨四十九日を目安

通常の葬儀と違うのは、通夜と告別式がない点だけです。他の手順は同じです。

火葬場の予約が取れるまでは、安置が続きます。都市部では数日から1週間以上待つこともあります。

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料では、令和6年の死亡数が約161万人と、調査開始以来もっとも多かったことに触れています。火葬場の混雑は、その背景にあります。

安置の日数が延びると、そのぶん費用が増えます。直葬でも、ここは変わりません。

「今の時期は何日くらい待ちますか」と葬儀社に聞いて、日数の見込みを立ててください。

臨終から搬送まで

病院で亡くなった場合、まず死亡診断書を受け取ります。その後、搬送先を決めます。

搬送を頼んだからといって、その会社と葬儀契約を結ぶ義務は生じません。「搬送だけお願いします」と伝えられます。

安置先は、自宅か施設です。自宅は施設使用料がかかりませんが、搬入経路と室温の管理が必要になります。

安置には1日あたりの費用がかかります。「施設使用料とドライアイスを合わせて1日いくらか」を確かめてください。

この数字を1つ持っておけば、日数が延びたときの金額を自分で計算できます。

見積書の日数が実態と離れていると、後で差が出ます。現実的な日数で作ってもらってください。

多めに置いて実際が短ければ、精算で減ります。少なく置いて延びれば、追加請求になります。

24時間は火葬できません

法律で時間が定められています。

根拠となる条文 — 火葬までの時間と許可

埋葬または火葬は、原則として死亡または死産の後24時間を経過した後でなければ行ってはならないとされています(墓地、埋葬等に関する法律3条)。

埋葬または火葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長の許可を受けなければなりません(同法5条1項)。この許可を書面にしたものが火葬許可証です。

死亡の届出は、死亡の事実を知った日から7日以内に行わなければならないとされています(戸籍法86条1項)。火葬許可証は、この届出を経て交付されるのが通常です。

つまり、書類の手続きが済まないと火葬できません。死亡届と火葬許可申請は、早めに済ませてください。

葬儀社が代行することが多くあります。その場合も、いつ提出したかを確かめておいてください。

火葬許可証は、火葬当日に火葬場へ提出します。忘れると進行が止まります。

当日は、葬儀社が預かって持参することが多くあります。誰が持っているかを、前日までに確かめてください。

火葬が済むと、火葬の年月日を記入した許可証が返却されます。これが納骨の際に必要になります。

骨壺の箱に入れて渡されることが多いので、受け取った時点で確かめてください。

火葬当日の流れ

当日は、火葬場に集合する形が一般的です。

時間内容
集合火葬場または安置先に集まる
納棺前日までに済ませることが多い
お別れ火葬炉の前で最後の対面(10分程度)
火葬1〜2時間
収骨遺骨を骨壺に納める

お別れの時間は、10分程度が目安です。火葬場の運用によって変わります。

宗教者を呼ぶ場合は、この時間に読経が行われます。事前に葬儀社へ伝えておいてください。

副葬品を入れたい場合も、事前に確かめてください。入れられるものに制限があります。

火葬の間は、控室で待ちます。控室の使用料がかかる施設もあります。

飲食を用意するかどうかも選べます。直葬では、簡素にすることが多くあります。

収骨は、遺族が箸で遺骨を骨壺に納める形です。地域によって、全部を納めるか一部を納めるかが異なります。

分骨したい場合は、当日に火葬場へ申し出てください。分骨証明書を発行してもらえます。

菩提寺への相談は先に

直葬でもっとも問題になりやすいのが、この点です。

菩提寺がある場合、相談せずに直葬を行うと、後で納骨を断られることがあります。

寺院墓地は、その寺の檀家であることを前提に使用が認められていることがあります。使用規則に条件が定められている場合もあります。

  • 事前に電話で、直葬を考えている旨を伝える
  • 火葬炉の前での読経を依頼できるか確かめる
  • 納骨の条件を確かめる

相談があったかどうかで、その後の対応が変わります。順番としては、葬儀社より先です。

「費用の事情で直葬にしたい」と正直に伝えてかまいません。理解が得られることは多くあります。

読経だけを依頼する形であれば、応じてもらえることもあります。式を省くことと、宗教者を呼ばないことは別です。

すでに直葬を終えていて、納骨を断られた場合は、墓地の使用規則の写しをもらってください。何が条件かが分かります。

後から戒名を授かることで、条件を満たせる場合があります。費用を先に確かめてください。

別の納骨先を選ぶ方法もあります。公営墓地、納骨堂、樹木葬など、宗教を問わない形式があります。

遺骨の納骨に、法律上の期限はありません。決まるまで手元に置いておけます。

図で整理: 菩提寺への相談の順番
図で整理: 菩提寺への相談の順番(作図: 弁護士による葬儀ガード)

費用の内訳

直葬でも、かかる費目は決まっています。

費目内容
寝台車病院から安置先への搬送
安置料・ドライアイス1日あたり
棺・骨壺一式
霊柩車安置先から火葬場への搬送
火葬料自治体・施設による
収骨容器・骨箱一式
宗教者へのお礼依頼する場合

火葬料は、公営の施設なら住民は無料または低額のことがあります。市外の住民は数万円かかることがあります。

「この見積もりに入っていない支払いは何ですか」と聞いてください。総額の見込みが立ちます。

直葬でも、パックプランが用意されていることがあります。含まれる品目の一覧をもらってください。

一覧に載っていないものは、含まれていないということです。火葬料や宗教者へのお礼が、外にあることが多くあります。

見積書は、品目・数量・単価の3つが入った形で出してもらってください。

安置日数が延びると、そのぶん費用が増えます。日数の見込みも確かめておいてください。

後日の対応

直葬を終えた後も、やることがあります。

  1. 火葬済の証明が押された許可証を保管する(納骨で使う)
  2. 葬祭費・埋葬料の申請をする(期限は2年)
  3. 知らせていない人へ、書面で報告する
  4. 納骨先を決める

葬祭費や埋葬料は、直葬でも受け取れるのが通常です。葬祭を行ったことが要件で、形式は問われません。

火葬を行ったことが分かる書類を添えて申請してください。自治体によって扱いが異なることがあるため、窓口で確かめてください。

会葬礼状がない場合は、火葬許可証の写しや葬儀社の領収書で代えられることがあります。

領収書の宛名は、申請する人の名前にしてもらってください。異なると、確認を求められます。

期限は2年です。窓口へ行くときに、他の手続きとまとめて済ませてください。

後日の報告は、四十九日を過ぎたころに送る例が多くあります。弔問への対応の負担も、考えておいてください。

年末であれば、喪中はがきで兼ねることもできます。二重に送る必要はありません。

書面には、亡くなった日、直葬で執り行ったこと、事前に知らせなかったことへのお詫びを書きます。

香典や供物を辞退する場合は、その旨も明記してください。曖昧だと、送られてきます。

直葬を選ぶときの注意

費用は抑えられますが、後から後悔するという声もあります。

  • 参列できなかった親族から、不満が出ることがある
  • お別れの時間が短く、実感が持てないことがある
  • 菩提寺との関係が問題になることがある

対策はあります。火葬後に、あらためてお別れの会を開く方法です。日程に余裕を持って行えます。

四十九日の法要に合わせて集まる形もあります。参列できなかった人にも、機会が生まれます。

会場や形式は自由に決められます。費用も、葬儀ほどはかかりません。

直葬にしたことへの不満は、こうした機会を設けることで和らぐことが多くあります。

親族には、事前に直葬とする理由を伝えてください。「故人の意向で」と説明できると、納得が得られやすくなります。

決めるのは喪主で構いません。ただし、決めた理由を説明できるようにしておくと、後の対応が楽になります。

エンディングノートや手紙が残っていれば、それが根拠になります。探してみてください。

費用の事情で直葬を選ぶ場合も、正直に伝えてかまいません。理解が得られることは多くあります。

支払いが難しい場合は、葬祭扶助という制度もあります。ただし、葬儀を行う前に福祉事務所へ相談してください。

直葬 — 決める前の確認項目
直葬 — 決める前の確認項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

直葬は、手順そのものは簡単です。

  • 通夜と告別式がないだけで、他の手続きは通常と同じ
  • 24時間は火葬できない。安置の費用は日数で増える
  • 菩提寺がある場合は、必ず事前に相談する

火葬済の証明が押された許可証は、納骨まで保管してください。