出生から死亡までの戸籍の集め方|広域交付で変わった点

死亡から出生へ、さかのぼって集めます。2024年から最寄りの窓口でも請求できます

相続の手続きで「出生から死亡までの戸籍」を求められた。何をどう集めればよいのか分からない。

集め方には順番があります。死亡の記載がある戸籍から、出生に向かってさかのぼる方法です。

2024年から、最寄りの窓口でまとめて請求できる制度が始まりました。手間が大きく減っています。

死亡から出生へ、さかのぼって集めます
死亡から出生へ、さかのぼって集めます(作図: 弁護士による葬儀ガード)

なぜ「出生から死亡まで」が必要なのか

相続の手続きでは、相続人が誰かを確定する必要があります。

戸籍をさかのぼると、故人に子がいたかどうかが分かります。前の婚姻で子がいた場合も、記録に残っています。

  • 認知した子がいないか
  • 養子縁組をしていないか
  • 前の婚姻での子がいないか

これらを確かめるために、生まれてから亡くなるまでの記録が必要になります。一部だけでは足りません。

金融機関、法務局、税務署のいずれでも、同じ範囲が求められます。一度集めれば、使い回せます。

ただし、原本の返却を待つ必要があります。同時に複数の手続きを進めたい場合は、法定相続情報一覧図を作るほうが早道です。

集めた戸籍は、順番に並べて保管してください。古い順に並べておくと、後から確かめやすくなります。

コピーも取っておいてください。原本を提出している間に、内容を確かめたくなることがあります。

戸籍の種類

3つの言葉を知っておくと、窓口でのやり取りが楽になります。

種類内容
戸籍謄本(全部事項証明書)現在の戸籍。在籍している人がいる
除籍謄本全員が抜けた戸籍。死亡・婚姻・転籍などで
改製原戸籍法改正で作り替えられる前の戸籍

「原戸籍」は「はらこせき」と読まれることもあります。窓口では、どちらでも通じます。

改製は、過去に何度か行われています。昭和と平成の改製が、実務でよく出てきます。

改製の際、すでに抜けた人の記録は新しい戸籍に書き写されません。だから、改製前の戸籍も必要になります。

たとえば、離婚した前の配偶者や、すでに婚姻して抜けた子の記録です。新しい戸籍には現れません。

この点があるため、「現在の戸籍だけでは足りない」ということになります。

窓口で「相続手続きに使います」と伝えれば、必要な範囲を判断してもらえます。自分で判断する必要はありません。

集める手順

順番に進めれば、迷いません。

2番目と3番目が要点です。戸籍の冒頭に、その戸籍が作られた理由と日付が書かれています。

「◯年◯月◯日 ◯◯市から転籍」といった記載があれば、その市区町村に前の戸籍があります。

窓口で「この戸籍の前はどこですか」と聞けば、教えてもらえます。分からないまま帰らないでください。

同じ市区町村内で転籍している場合は、その役所ですべてそろうこともあります。

一方、県をまたいで転籍している場合は、複数の役所に請求することになります。郵送を使う場面です。

どこまでさかのぼったかを、メモしておいてください。途中で分からなくなることがあります。

2024年に始まった広域交付

大きく変わった点です。本籍地以外の市区町村でも、戸籍謄本を請求できるようになりました。

項目内容
請求できる場所最寄りの市区町村の窓口
請求できる人本人、配偶者、直系尊属、直系卑属
対象外兄弟姉妹の戸籍、コンピュータ化されていない戸籍
必要なもの顔写真付きの本人確認書類
郵送・代理対象外(窓口で本人が請求する)

子が親の戸籍を集める場合は、この制度が使えます。一度の窓口訪問で、複数の戸籍がそろうことがあります。

一方、兄弟姉妹の戸籍は対象外です。故人に子がなく、兄弟姉妹が相続人になる場合は、従来どおり本籍地に請求します。

古い戸籍で、電子化されていないものも対象外です。その場合も、本籍地に請求することになります。

窓口では、請求書に「出生から死亡までのすべて」と書けば足ります。担当者が判断してくれます。

広域交付では、その場ですぐに発行されないことがあります。他の市区町村に照会する時間がかかるためです。

日数がかかる場合は、後日の受け取りか郵送になります。窓口で確かめてください。

顔写真付きの本人確認書類が必要です。健康保険証だけでは足りないことがあります。

図で整理: 広域交付で請求できる範囲
図で整理: 広域交付で請求できる範囲(作図: 弁護士による葬儀ガード)

郵送で請求する場合

広域交付が使えない場合は、郵送で請求します。

同封するものは、次のとおりです。

  • 請求書(各市区町村のウェブサイトから入手できる)
  • 本人確認書類の写し
  • 故人との関係が分かる戸籍の写し
  • 手数料分の定額小為替(郵便局で購入)
  • 返信用封筒(切手を貼る)

手数料は、戸籍謄本450円、除籍謄本と改製原戸籍750円が一般的です。何通必要か分からない場合は、多めに小為替を入れておきます。

余った分は返送されます。足りないと、追加の連絡が来て時間がかかります。

請求書には「相続手続きのため、出生から死亡までのすべて」と書いてください。担当者が必要な範囲を判断します。

往復で2週間程度かかることがあります。余裕をもって始めてください。

複数の役所に請求する場合は、同時に出してください。1つずつ順番に進めると、時間が倍以上かかります。

先に本籍の変遷が分かっていれば、まとめて請求できます。まず1通取って、変遷を確かめるところから始めます。

請求書には、電話番号を書いておいてください。不明な点があると、役所から連絡が来ます。

集める権利があるかどうか

戸籍は、誰でも請求できるわけではありません。

根拠となる条文 — 戸籍謄本等の交付請求

戸籍に記載されている者、その配偶者、直系尊属または直系卑属は、戸籍謄本等の交付の請求をすることができます(戸籍法10条1項)。

自己の権利を行使し、または自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある者は、その理由を明らかにして交付の請求をすることができます(同法10条の2第1項1号)。

死亡の届出は、死亡の事実を知った日から7日以内に行わなければならないとされています(同法86条1項)。戸籍に死亡が反映されるまでには、届出から1週間から10日ほどかかるのが通常です。

相続人であれば、故人の戸籍を請求できます。相続手続きのためであることを、請求書に書いてください。

兄弟姉妹が相続人になる場合は、故人の父母の戸籍まで必要になります。範囲が広がるため、時間もかかります。

代理人が請求する場合は、委任状が必要です。書式は市区町村によって異なります。

司法書士や弁護士に依頼すると、職務上請求という方法で取得できます。委任状は必要です。

費用はかかりますが、範囲が広い場合や、期限が迫っている場合には有効です。

自分で集めるか依頼するかは、相続人の数と本籍の変遷の多さで判断してください。

集められない場合

古い戸籍が失われていることがあります。戦災や災害による焼失などです。

その場合は、「告知書」や「廃棄証明書」の交付を受けます。戸籍が存在しないことを証明する書類です。

金融機関や法務局では、この書類で対応してもらえることが通常です。窓口で事情を説明してください。

あわせて、他の相続人がいないことを示す上申書などを求められることがあります。書式は提出先によって異なります。

自分で判断せず、提出先に「何を出せばよいですか」と確かめてください。求められる書類が分かります。

戸籍がそろわないからといって、手続きが進められないわけではありません。代わりの方法があります。

判読が難しい古い戸籍もあります。手書きの毛筆で書かれているものです。

読めない場合は、窓口で確かめるか、司法書士や弁護士に依頼してください。読み違えると、相続人の確定を誤ります。

法定相続情報一覧図の申出をすれば、法務局が内容を確認します。読み違えがあれば、その段階で指摘されます。

自分で読み解く自信がないときは、この制度を使うのが安全です。手数料も無料です。

確認の過程で、思いがけない相続人が判明することもあります。落ち着いて対応してください。

集めた後にすること

戸籍がそろったら、法定相続情報一覧図を作ることをおすすめします。

法務局に申し出て、相続関係を1枚にまとめた図の交付を受ける制度です。手数料は無料です。

利点内容
使い回せる必要な数だけ交付を受けられる
手続きが軽い戸籍の束を何度も提出しなくてよい
費用がかからない交付手数料は無料

複数の金融機関で手続きする場合、この制度を使うと大きく手間が減ります。

作成には、集めた戸籍がすべて必要です。だから、戸籍集めが先です。

司法書士や弁護士に依頼することもできます。自分で申し出ることも可能です。

期限との関係

相続には、期限のある手続きがあります。戸籍集めに時間がかかると、間に合わなくなることがあります。

手続き期限
相続放棄・限定承認3か月以内
準確定申告4か月以内
相続税の申告10か月以内
相続登記3年以内

相続放棄を検討している場合は、3か月が最優先です。戸籍がそろわないうちに期限が近づいたら、家庭裁判所に期間の伸長を申し立ててください。

相続登記は、2024年から義務化されました。取得を知った日から3年以内に申請する必要があります。

正当な理由なく怠った場合、過料の対象となることがあります。放置しないでください。

過去の相続で登記が済んでいない不動産がある場合も、対象になります。祖父母名義のままという例は珍しくありません。

その場合、戸籍を集める範囲がさらに広がります。早めに司法書士に相談してください。

いずれの手続きでも、戸籍が土台になります。早めに集め始めてください。

四十九日が終わったころから始めると、間に合うことが多くあります。それより前は、他のことで手一杯です。

ただし、相続放棄を検討している場合は、待たないでください。3か月は短いものです。

まず、財産と負債の概要を調べるところから始めてください。戸籍集めは、その後でも構いません。

戸籍集め — 確認する項目
戸籍集め — 確認する項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

戸籍集めは、順番どおり進めれば難しくありません。

  • 死亡の記載がある戸籍から、出生に向かってさかのぼる
  • 2024年から、最寄りの窓口でも請求できる(制限あり)
  • 集めたら、法定相続情報一覧図にまとめて使い回す

期限のある手続きがあります。早めに始めてください。