法定相続情報一覧図の取り方|戸籍の束を1枚にまとめる制度

手数料は無料です。必要な数だけ交付され、金融機関や法務局で使い回せます

相続の手続きで、戸籍の束を何度も提出するのは大変です。金融機関ごとに求められ、そのたびに返却を待つことになります。

その手間を減らす制度があります。法定相続情報一覧図です。相続関係を1枚の図にまとめ、法務局が証明します。

手数料は無料で、必要な数だけ交付を受けられます。

戸籍の束が1枚にまとまります
戸籍の束が1枚にまとまります(作図: 弁護士による葬儀ガード)

制度の仕組み

2017年に始まった制度です。相続手続きの負担を減らすために設けられました。

相続人が作成した一覧図を法務局に提出すると、内容が確認されます。確認が済むと、認証文の付いた写しが交付されます。

この写しが、戸籍の束の代わりになります。相続関係の証明として使えます。

従来一覧図を使う場合
戸籍の束を各所に提出一覧図の写しを提出
返却を待って次へ同時に複数の手続きを進められる
何度も出し直す必要な数だけ交付を受けられる

複数の金融機関で手続きする場合、効果が大きくなります。同時並行で進められるためです。

戸籍の束は、金融機関に預けると返却まで数日から数週間かかります。その間、次の手続きに進めません。

一覧図の写しであれば、必要な枚数を最初に受け取れます。同時に3か所、4か所へ提出できます。

手続き先が多いほど、短縮できる時間も大きくなります。

使える場面

多くの手続きで使えます。

  • 金融機関の相続手続き(預貯金、証券口座)
  • 法務局の相続登記
  • 税務署への相続税の申告
  • 年金の手続き
  • 自動車の名義変更

ただし、すべての手続きで使えるわけではありません。提出先によっては、戸籍そのものを求められることがあります。

事前に「法定相続情報一覧図の写しで足りますか」と確かめてください。多くの場合、使えます。

なお、相続放棄をした人がいる場合、その事実は一覧図に記載されません。別に受理証明書などが必要になります。

一覧図は、法定相続人が誰かを示すものです。実際に誰が相続するかは、別の書類で示します。

だから、遺産分割協議書や遺言書とセットで使うことになります。一覧図だけでは足りません。

提出先に「他に必要な書類はありますか」と確かめてください。一度で済ませられます。

申出に必要な書類

そろえるものを整理します。

書類内容
故人の戸籍出生から死亡までの連続したもの
故人の住民票除票本籍の記載があるもの
相続人全員の戸籍謄本現在のもの
申出人の本人確認書類運転免許証、マイナンバーカードなど
一覧図(下書き)自分で作成する
申出書法務局の様式

一覧図に相続人の住所を記載する場合は、相続人全員の住民票も必要になります。

住所を記載しておくと、相続登記の手続きで住民票の提出を省けることがあります。記載しておくほうが便利です。

一方、住所を記載すると、その情報が写しに載ります。他の相続人に住所を知られたくない事情がある場合は、記載しない選択もあります。

記載するかどうかは、申出のときに決めます。後から変えるには、再度の申出が必要です。

判断に迷う場合は、記載しておくほうが手続きは楽になります。

戸籍は、原本を提出します。確認が済めば返却されます。

返却を受けるには、申出書にその旨を記載します。返却を希望しないと、戻ってこないことがあります。

郵送で申出をする場合は、返信用封筒に十分な切手を貼ってください。戸籍の束は厚みがあります。

コピーも取っておくと安心です。確認したいときに、原本を待たずに済みます。

一覧図の作り方

自分で作成します。法務局のウェブサイトに、様式と記載例があります。

続柄は「長男」「長女」「妻」などと書きます。「子」とだけ書くこともできますが、相続税の申告で使う場合は具体的に書くほうが安全です。

A4の用紙に、パソコンか手書きで作成します。決まった書式はありませんが、法務局の記載例に沿うのが確実です。

不備があると、修正を求められます。記載例を見ながら作れば、大きく外れることはありません。

修正を求められた場合は、その場で直せることもあります。窓口で申出をすると、その点が楽です。

郵送の場合は、やり取りに時間がかかります。急ぐ場合は、窓口へ持参するほうが確実です。

作成に不安がある場合は、司法書士に依頼することもできます。戸籍集めから一括で任せられます。

申出先と方法

申出できる法務局は、複数の中から選べます。

選べる法務局内容
被相続人の本籍地最後の本籍がある地
被相続人の最後の住所地住民票の住所
申出人の住所地申出をする相続人の住所
被相続人名義の不動産の所在地不動産がある地

自分の住所地の法務局を選べるのが便利です。遠方に行く必要はありません。

法務局には、支局や出張所があります。どこで受け付けているかは、事前に確かめてください。

登記の相談窓口とは別に、予約が必要な場合もあります。電話で確かめてから出向いてください。

窓口の受付時間は、平日の日中に限られます。時間を確保してから行ってください。

窓口へ持参するほか、郵送でも申出できます。郵送の場合は、返信用封筒を同封します。

交付までの目安は1〜2週間です。混み具合によって変わります。

急ぐ場合は、窓口で申出をして、交付の見込みを確かめてください。日数を教えてもらえます。

交付枚数は、申出のときに伝えます。多めに受け取っておくと、後から再交付を求める手間が省けます。

再交付も無料ですが、申出をした法務局に請求することになります。最初に必要数を伝えるほうが楽です。

図で整理: 申出から交付までの流れ
図で整理: 申出から交付までの流れ(作図: 弁護士による葬儀ガード)

申出できる人

相続人が申出をします。代理人に依頼することもできます。

根拠となる条文 — 戸籍謄本等の交付請求

戸籍に記載されている者、その配偶者、直系尊属または直系卑属は、戸籍謄本等の交付の請求をすることができます(戸籍法10条1項)。

自己の権利を行使し、または自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある者は、その理由を明らかにして交付の請求をすることができます(同法10条の2第1項1号)。

相続登記については、不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならないとされています(不動産登記法76条の2第1項)。正当な理由なく怠った場合、過料の対象となることがあります(同法164条1項)。

代理人になれるのは、法定代理人、親族、または資格を持つ専門家です。弁護士、司法書士、税理士、行政書士などが該当します。

親族が代理する場合は、委任状と、代理人が親族であることが分かる戸籍が必要です。

専門家に依頼する場合、戸籍集めから一括で任せられます。費用はかかりますが、手間は大きく減ります。

相続登記も併せて依頼する場合は、司法書士が窓口になることが多くあります。

相続税の申告がある場合は、税理士に相談してください。一覧図の作成も併せて対応してもらえることがあります。

誰に頼むかは、手続きの中身で決まります。まず、必要な手続きを一覧にしてください。

有効期限と再交付

一覧図の写しに、法律上の有効期限は定められていません。

ただし、提出先が「発行から◯か月以内」といった条件を設けていることがあります。事前に確かめてください。

法務局では、申出をした年の翌年から5年間、データが保管されます。この期間内であれば、再交付を受けられます。

再交付も無料です。追加で必要になったら、申出をした法務局に請求してください。

再交付を請求できるのは、当初の申出人です。他の相続人が請求する場合は、委任状が必要になります。

だから、誰が申出人になるかは、家族で相談して決めてください。後から動きやすい人が適しています。

申出人以外の相続人にも、写しを渡しておくと安心です。それぞれが手続きを進められます。

必要な枚数は、手続き先の数より少し多めに見ておいてください。

使えない場面

万能ではありません。次の場合は、注意が必要です。

  • 相続放棄をした人がいる(一覧図には記載されない)
  • 遺産分割の内容を示す必要がある(協議書が別に必要)
  • 相続人に外国籍の人がいる(戸籍がない場合)
  • 数次相続が生じている(複数の一覧図が必要になることがある)

一覧図が示すのは、法定相続人が誰かという事実だけです。誰が何を取得するかは示されません。

だから、遺産分割協議書や遺言書は、別に必要になります。一覧図とセットで提出する形です。

外国籍の相続人がいる場合は、戸籍に代わる書類が必要になります。一覧図の制度が使えないことがあります。

被相続人が外国籍の場合も、日本の戸籍がないため制度を利用できません。従来どおりの方法になります。

判断がつかない場合は、法務局に電話して確かめてください。事情を伝えれば、利用できるかを教えてもらえます。

利用できない場合でも、戸籍や証明書を集める作業は同じです。無駄にはなりません。

作るかどうかの判断

必ず作らなければならないものではありません。判断の目安を示します。

状況判断
金融機関が1つだけ作らなくてもよい
金融機関が複数ある作ると効率的
不動産の登記もある作ると効率的
相続税の申告もある作ると効率的
相続人が多い作ると効率的

手続き先が2つ以上あるなら、作る価値があります。戸籍の束を出し直す手間が省けます。

手数料は無料なので、費用の面での不利はありません。かかるのは、作成と申出の手間だけです。

戸籍を集める作業は、どのみち必要です。集め終えたら、そのまま申出をするのが効率的です。

申出をしておけば、後から必要になったときにも再交付を受けられます。5年間はデータが保管されます。

相続手続きは、思わぬところで追加が出ます。証券口座や保険が後から見つかることもあります。

そのときに、また戸籍を集め直さずに済みます。作っておく意味は、そこにもあります。

法定相続情報一覧図 — 申出前の確認項目
法定相続情報一覧図 — 申出前の確認項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

手続き先が複数あるなら、作る価値があります。

  • 手数料は無料。必要な枚数だけ交付を受けられる
  • 申出には、故人の出生から死亡までの戸籍が必要
  • 一覧図が示すのは法定相続人だけ。協議書や遺言書は別に必要

戸籍を集め終えたら、そのまま申出をするのが効率的です。