亡くなった人の公共料金の名義変更|止める前に確かめること

引き落とし口座が凍結されると、支払いが止まります。順番を決めて進めてください

電気やガスの契約が、亡くなった人の名義のままになっている。どうすればよいのか分からない。

まず確かめてほしいことがあります。その家に住み続ける人がいるかどうかです。ここで手続きが変わります。

そして、口座の凍結との関係にも注意が必要です。順番を間違えると、支払いが止まります。

住み続けるかどうかで手続きが分かれます
住み続けるかどうかで手続きが分かれます(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まず、住み続ける人がいるかを確かめる

配偶者が住み続ける場合と、誰も住まなくなる場合では、進め方が違います。

状況手続き
同居の家族が住み続ける名義変更(契約は続く)
空き家になる(売却・解体の予定)解約
賃貸で退去する解約(退去日に合わせる)
当面は残す(遺品整理などのため)名義変更してから、後で解約

すぐに空き家になるとは限りません。遺品整理や相続の手続きで、しばらく電気が必要になることがあります。

その場合は、いったん名義変更をして、後から解約する方法が確実です。電気を止めてしまうと、作業ができません。

判断がつかないときは、名義変更を先にしてください。後から解約できます。

名義変更をしても、契約の内容は変わりません。料金プランもそのまま引き継がれます。

一方、解約してから再契約すると、工事費や事務手数料がかかることがあります。順番が逆だと損をします。

とくにインターネット回線は、再契約に日数と費用がかかります。慎重に判断してください。

口座の凍結に注意する

公共料金は、故人の口座から引き落とされていることが多くあります。

金融機関が死亡を把握すると、口座は凍結されます。引き落としも止まります。

  • 引き落としが止まると、未納になる
  • 未納が続くと、供給停止になることがある
  • 後から一括で請求される

だから、口座を凍結する前に、支払い方法を切り替えておくのが安全です。順番が大切です。

切り替え先は、住み続ける人の口座やクレジットカードです。名義変更と同時に手続きできます。

金融機関にいつ死亡を伝えるかは、状況に応じて考えてください。急ぐ支払いがある場合は、預貯金の仮払い制度も検討できます。

仮払い制度では、一定額までは相続人が単独で引き出せます。同一の金融機関につき150万円が上限です。

手続きには、故人の出生から死亡までの戸籍と、相続人であることを示す書類が必要です。時間がかかります。

相続放棄を検討している場合は、引き出す前に相談してください。使い方によっては、放棄ができなくなることがあります。

名義変更の進め方

電気・ガス・水道は、電話やウェブで手続きできることが多くあります。

多くの場合、死亡診断書や戸籍謄本の提出は求められません。電話だけで済むこともあります。

お客様番号が分からない場合は、住所と契約者名で照会できます。検針票が手元になくても手続きできます。

支払い方法の変更には、新しい契約者の口座情報が必要です。通帳やキャッシュカードを用意しておいてください。

クレジットカード払いに切り替える方法もあります。手続きはウェブで完結することが多くあります。

切り替えが反映されるまでに、1〜2か月かかることがあります。その間の請求は、振込用紙で対応します。

いつから新しい方法になるかを、手続きの際に確かめてください。空白の期間ができないようにします。

解約する場合

誰も住まなくなる場合は、解約します。

手続き確かめること
電気最終の検針日、精算方法
ガス立ち会いが必要か(ガスは必要なことが多い)
水道最終の検針日、精算方法
固定電話番号を残すか、廃止するか
インターネット機器の返却が必要か

ガスの解約は、閉栓の立ち会いを求められることがあります。日時を調整してください。

最終の料金は、日割りで精算されるのが通常です。支払い方法を確かめてください。故人の口座が凍結されていると、引き落としができません。

その場合は、振込用紙を送ってもらう、コンビニ払いにするなどの方法があります。窓口に相談してください。

送付先の住所も伝えてください。故人の住所のままだと、請求書が届きません。

空き家になる場合は、郵便物の転送手続きも検討してください。郵便局で申し込めます。

転送の期間には限りがあります。期限が来る前に、各社の住所変更を済ませてください。

対象になる契約の一覧

見落としやすい契約もあります。まとめて確かめてください。

  • 電気・ガス・水道
  • 固定電話・携帯電話
  • インターネット回線・プロバイダ
  • NHK受信料
  • 新聞・定期購読
  • ケーブルテレビ・衛星放送
  • 各種サブスクリプション

サブスクリプションは、通帳やクレジットカードの明細から探せます。毎月同じ金額が引き落とされている項目を見てください。

クレジットカード払いの場合、カードを解約すると自動的に止まることがあります。ただし、未払いとして請求が続くこともあります。

一つずつ確かめて、解約の記録を残してください。「いつ、どこに、どう連絡したか」をメモしておきます。

デジタルのサービスは、契約の存在に気づきにくいものです。メールの受信箱を検索する方法もあります。

「ご請求」「お支払い」といった語で検索すると、契約先が見つかります。故人のスマートフォンやパソコンから確かめます。

ただし、故人の端末やアカウントへのアクセスには制約があることもあります。無理に開けようとせず、明細から追うほうが確実です。

図で整理: 口座凍結と支払い方法の切り替え
図で整理: 口座凍結と支払い方法の切り替え(作図: 弁護士による葬儀ガード)

相続放棄を検討している場合

注意が必要な場面です。

根拠となる条文 — 相続放棄と単純承認

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認、限定承認または放棄をしなければなりません(民法915条1項)。この期間は、家庭裁判所に申し立てて伸長してもらうことができます。

相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされます(民法921条1号)。

もっとも、大阪高等裁判所平成14年7月3日決定(家庭裁判月報55巻1号82頁)は、相当な範囲の葬儀費用の支出について、相続財産の処分にあたらないとしました。判断は事案によって分かれます。

故人の預金から未払いの料金を支払うと、財産の処分と評価される可能性があります。

一方、契約の解約そのものが直ちに処分になるとは限りません。判断は事情によって変わります。

放棄を考えている場合は、支払いや解約の前に弁護士に相談してください。後から取り返しがつかないことがあります。

自分の財布から立て替えて支払う場合も、記録を残してください。何を、いくら、なぜ払ったかが分かる形にします。

立て替えた分は、後から相続財産から精算できることがあります。領収書と振込の控えを保管してください。

家族の間で立替が重なると、後で整理が難しくなります。誰が何を払ったかを、一覧にしておくと確実です。

金額が大きくなる場合は、その都度メモを共有してください。後から思い出すのは難しくなります。

手続きの順番

まとめて動くほうが効率的です。

順番やること
1検針票・請求書・通帳の明細を集める
2契約の一覧を作る
3住み続けるか、空き家にするかを決める
4名義変更または解約の手続きをする
5支払い方法を切り替える

2番目の一覧づくりが要点です。ここで漏れると、後から請求が届きます。

通帳を1年分さかのぼって見ると、年払いの契約も見つかります。年に一度の引き落としは、見落としやすいものです。

クレジットカードの明細も同じです。3か月分ほど確かめてください。

明細は、カード会社のウェブサイトから取り寄せられることがあります。相続人であることを示す書類が必要です。

紙の明細が届いている場合は、それを見るのが早道です。郵便物を一度まとめて確かめてください。

引き落としの名称だけでは、何の契約か分からないこともあります。その場合は、カード会社に問い合わせてください。

市区町村の窓口でまとめて確かめる

水道は、市区町村が管理していることが多くあります。他の手続きと同時に済ませられます。

窓口では、次の手続きも扱っています。

  • 世帯主変更届(14日以内)
  • 国民健康保険・後期高齢者医療の資格喪失届
  • 介護保険の資格喪失届
  • 葬祭費の申請

一度に済ませられるか、事前に電話で確かめてください。必要書類も、あわせて聞いておきます。

自治体によっては、死亡に伴う手続きをまとめて案内する窓口を設けています。「おくやみ窓口」などの名称です。

予約が必要な場合もあります。まず電話してください。

窓口では、必要書類も教えてもらえます。一度で済ませるために、事前の確認が有効です。

手続きが複数にわたる場合、時間がかかります。半日ほど見ておくと安心です。

代理人が行く場合は、委任状を求められることがあります。書式を確かめてから出向いてください。

賃貸に住んでいた場合

賃貸物件の場合は、退去の日程と合わせて解約します。

管理会社に、いつまでに退去するかを確かめてください。その日に合わせて、電気・ガス・水道を止めます。

遺品整理の作業がある場合は、作業が終わるまで電気を残してください。照明がないと作業ができません。

原状回復費用の請求を受けた場合は、内訳を確かめてください。通常の使用による傷みは、借主の負担ではないのが原則です。

相続放棄を検討している場合は、遺品に手をつける前に相談してください。処分と評価されると、放棄ができなくなることがあります。

管理会社から早期の明け渡しを求められても、事情を説明してください。放棄の期限内であることを伝えれば、待ってもらえることがあります。

その間の家賃は、原則として発生し続けます。判断を先延ばしにすると、負担が増えます。

3か月で決められないときは、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てられます。期限が来る前に手続きしてください。

公共料金の手続き — 確認する項目
公共料金の手続き — 確認する項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

公共料金の手続きは、順番を決めれば難しくありません。

  • 住み続けるなら名義変更、空き家になるなら解約
  • 口座が凍結される前に、支払い方法を切り替える
  • 契約の一覧を作り、漏れがないか確かめる

相続放棄を検討している場合は、支払いや解約の前に相談してください。