海外で亡くなったときの手続き|遺体搬送と現地火葬の選び方
最初の連絡先は現地の日本大使館・領事館です。搬送か現地火葬かで費用が大きく変わります
旅行先や赴任先で、家族が亡くなったという連絡が入った。何から始めればよいのか分からない。
まず、現地の日本大使館または総領事館に連絡してください。手続きの案内を受けられます。
そのうえで、大きな判断が一つあります。遺体を日本へ運ぶか、現地で火葬して遺骨を持ち帰るか。費用が大きく変わります。
最初に連絡する先
現地の警察や病院から連絡が入った後、次の順で動きます。
大使館・領事館は、遺族への情報提供や、現地当局との連絡の仲介を行っています。手続きの費用を負担するものではありません。
外務省には、海外での事故や死亡に関する相談窓口があります。日本国内からも連絡できます。
旅行会社を通じた旅行であれば、その会社にも連絡してください。現地のサポート体制がある場合があります。
赴任中であれば、勤務先にも連絡します。会社が手配を引き受ける制度を持っていることがあります。
現地に知人がいる場合は、連絡を取っておくと動きやすくなります。言語と手続きの両面で助けになります。
情報が入るたびに、日時と相手を記録してください。関係先が多くなるため、経緯が分からなくなりがちです。
遺体搬送と現地火葬の違い
ここが最も大きな判断です。費用にも日数にも差が出ます。
| 方法 | 費用の目安 | 日数 |
|---|---|---|
| 遺体を日本へ搬送 | 100万円を超えることが多い | 1〜2週間以上 |
| 現地で火葬し、遺骨を持ち帰る | 大きく下がる | 数日〜1週間 |
| 現地で埋葬する | 国により制度が異なる | 現地の手続きによる |
遺体搬送では、防腐処置(エンバーミング)、専用の棺、航空貨物としての輸送、書類の手配が必要になります。
距離が遠いほど、費用は上がります。欧米からの搬送は、アジアからより高くなる傾向があります。
現地火葬を選ぶ場合、宗教上の理由から火葬が一般的でない国もあります。手続きに時間がかかることがあります。
家族の希望と費用の両方で判断してください。どちらが正しいというものではありません。
搬送を選ぶ場合、日本での葬儀を通常どおり行えます。対面での別れができる点が大きな違いです。
現地火葬を選ぶ場合でも、遺骨を持ち帰って日本で葬儀を行えます。形式が制約されるわけではありません。
費用の差は、数十万円から百万円以上になることがあります。家族で共有したうえで決めてください。
現地で必要になる書類
国によって異なりますが、共通して求められるものがあります。
- 現地当局が発行する死亡証明書
- 死因を示す書類(検案書など)
- 遺体搬送の場合は、防腐処置証明書と非感染証明書
- 遺体の輸送許可書
- 火葬の場合は、火葬証明書
これらは現地の言語で発行されます。日本での手続きには、日本語訳が必要になることがあります。
翻訳は、専門の業者に依頼するのが確実です。大使館・領事館で案内を受けられます。
書類がそろわないと、搬送も火葬も進みません。現地の葬儀業者や、日本の国際搬送業者が代行することが多くあります。
代行を依頼する場合は、どこまでが業務範囲かを確かめてください。翻訳や通訳が含まれるかで、費用が変わります。
現地での支払いが別に生じることもあります。「日本での支払いと現地での支払いを分けて教えてください」と伝えてください。
支払い方法も確かめておきます。現地で現金が必要になる場合があります。
死亡届の期限
日本での届出には、国内とは違う期限が定められています。
根拠となる条文 — 国外で死亡した場合の届出
死亡の届出は、死亡の事実を知った日から7日以内にしなければなりません。ただし、国外で死亡があったときは、その事実を知った日から3か月以内とされています(戸籍法86条1項)。
届書には、診断書または検案書を添付しなければならないとされています(同条2項)。国外の医師が作成した書類を添付する場合は、日本語訳が必要になるのが通常です。
届出義務者は、同居の親族、その他の同居者、家主・地主・家屋管理人などとされています(同法87条1項)。同居していない親族も届出をすることができます(同条2項)。
提出先は、現地の日本大使館・総領事館か、日本国内の市区町村です。
現地で提出した場合、日本の本籍地に届くまで時間がかかります。急ぐ手続きがある場合は、国内で提出するほうが早いことがあります。
3か月という期限は、国内の7日より長く設定されています。ただし、他の手続きは待ってくれません。早めに進めてください。
とくに、相続放棄の期限は3か月です。財産や負債の調査には時間がかかります。
海外に財産がある場合は、その国の法律も関係します。調査が長引くことを見込んでおいてください。
3か月で判断できないときは、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てられます。期限が来る前に手続きしてください。
火葬と埋葬の許可
現地で火葬した場合、日本での扱いを確かめる必要があります。
根拠となる条文 — 埋葬・火葬・改葬の許可
埋葬または火葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長の許可を受けなければならないとされています(墓地、埋葬等に関する法律5条1項)。
墓地または納骨堂の管理者は、埋葬、埋蔵または収蔵の求めを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならないとされています(同法13条)。
遺体を日本に搬送して火葬する場合は、通常どおり市町村長の許可を受けることになります。国外で火葬した焼骨を納骨する場合の取扱いは、市区町村によって異なることがあります。
現地で火葬した遺骨を納骨する場合、火葬証明書やその翻訳を求められることがあります。
納骨先の墓地や霊園にも、必要書類を確かめてください。市区町村の窓口と、両方に聞くのが確実です。
書類の要件は自治体によって異なります。帰国前に、日本の家族が窓口へ確かめておくと手戻りが減ります。
費用を賄える保険
費用が大きくなるため、保険の適用を必ず確かめてください。
| 保険 | 確かめること |
|---|---|
| 海外旅行保険 | 遺体搬送費用の特約があるか |
| クレジットカードの付帯保険 | 利用条件を満たしているか |
| 勤務先の保険 | 海外赴任者向けの補償があるか |
| 労災保険 | 業務中・出張中の死亡なら対象になり得る |
海外旅行保険には、遺体搬送費用を補償する特約が付いていることがあります。補償額に上限がある場合もあります。
クレジットカードの付帯保険は、旅行代金をそのカードで支払っていることが条件になっていることがあります。利用の記録を確かめてください。
業務中や出張中の死亡であれば、労災保険の対象になり得ます。勤務先を管轄する労働基準監督署に相談してください。
保険会社への連絡は、早いほど手続きが進みます。搬送を手配する前に連絡してください。
保険会社が提携する搬送業者を案内してくれることもあります。手配が早く進む場合があります。
補償の範囲を超える部分は、自己負担になります。上限額を確かめてから、方法を決めてください。
請求には期限があります。事故から一定期間内に手続きが必要とされているのが通常です。
帰国後の手続き
日本に戻った後の流れは、国内で亡くなった場合とほぼ同じです。
| 手続き | 期限 |
|---|---|
| 死亡届 | 事実を知った日から3か月以内 |
| 世帯主変更届 | 14日以内 |
| 健康保険・介護保険の資格喪失届 | 14日以内 |
| 年金の受給停止 | 厚生年金は10日、国民年金は14日以内 |
| 相続放棄・限定承認 | 3か月以内 |
| 準確定申告 | 4か月以内 |
| 相続税の申告 | 10か月以内 |
相続放棄の期限は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月です。海外での死亡でも変わりません。
海外に財産がある場合は、その国の法律も関係します。手続きが複雑になるため、早めに専門家に相談してください。
葬祭費や埋葬料の申請も、国内と同じように行えます。現地でかかった費用の領収書を保管してください。
海外での支払いは、外貨建ての領収書になります。日本円への換算方法を、窓口で確かめてください。
翻訳が必要になる場合もあります。まとめて依頼すると、費用が抑えられることがあります。
領収書は、費目ごとに分かる形で受け取ってください。相続税の申告でも使います。
費用を抑えるためにできること
判断の材料になる点を挙げます。
- 現地火葬を選ぶと、費用は大きく下がる
- 搬送業者は複数から見積もりを取れる
- 保険の適用範囲を先に確かめる
- 現地の葬儀業者と日本の業者、どちらに頼むかを比べる
見積もりを取るときは、含まれる範囲を確かめてください。防腐処置、棺、輸送、書類の手配、通訳など、項目ごとに分けてもらいます。
「この見積もりに入っていない支払いは何ですか」と聞くのが確実です。現地での支払いが別に生じることがあります。
急いでいる場面ですが、複数から見積もりを取る価値はあります。金額の差が大きい分野です。
日本の業者と現地の業者では、費用の構成が違います。両方から取ると、比べやすくなります。
見積もりを依頼するときは、同じ条件で頼んでください。搬送先の空港、日程、必要な処置をそろえます。
条件がそろっていないと、比較になりません。前提が違えば、金額も違って当然です。
相談できる窓口
一人で抱え込まないでください。相談先があります。
| 窓口 | できること |
|---|---|
| 現地の日本大使館・総領事館 | 現地手続きの案内、当局との連絡の仲介 |
| 外務省の相談窓口 | 日本国内からの相談 |
| 加入している保険会社 | 補償の適用と手配の支援 |
| 国際搬送を扱う葬儀業者 | 搬送・書類手配の実務 |
| 弁護士 | 海外財産を含む相続の相談 |
大使館・領事館は、費用を負担するものではありません。ただし、手続きの流れを知るうえで最も確実な窓口です。
言語の問題がある場合も、まず連絡してください。日本語で相談できます。
まとめ
海外での死亡は、最初の連絡先さえ分かれば進められます。
- まず現地の日本大使館・総領事館に連絡する
- 遺体搬送か現地火葬かを、費用と希望の両方で判断する
- 保険の適用を、手配の前に確かめる
死亡届の期限は3か月ですが、他の手続きは待ってくれません。早めに動いてください。
