病院から搬送したあと、どこに安置するか|選択肢と費用の違い

自宅か、施設か。決め手は搬入経路と日数、そして家族が休めるかどうかです

病院から搬送するよう言われた。でも、どこに運べばよいのか決まっていない。

選択肢は大きく2つです。自宅か、施設か。どちらにも向き不向きがあります。

決め手になるのは、搬入経路、火葬までの日数、そして家族が休めるかどうかです。費用だけで決めないでください。

安置場所ごとの違い
安置場所ごとの違い(作図: 弁護士による葬儀ガード)

安置が必要な理由

亡くなってすぐに火葬することはできません。法律で時間が定められています。

根拠となる条文 — 火葬までの時間と許可

埋葬または火葬は、原則として死亡または死産の後24時間を経過した後でなければ行ってはならないとされています(墓地、埋葬等に関する法律3条)。

埋葬または火葬を行おうとする者は、市町村長の許可を受けなければなりません(同法5条1項)。この許可を書面にしたものが火葬許可証です。

死亡の届出は、死亡の事実を知った日から7日以内に行わなければならないとされています(戸籍法86条1項)。火葬許可証は、この届出を経て交付されるのが通常です。

実際には、火葬場の予約状況によって、3日から1週間程度になることが多くあります。都市部ではさらに延びることもあります。

その間、故人を適切な状態で保つ必要があります。それが安置です。

安置の方法は、ドライアイスによる保全が基本です。1日ごとに交換します。

保冷設備のある施設では、冷蔵によって保ちます。ドライアイスの使用量が減ることがあります。

どちらの方式でも、日数が延びればそのぶん費用が増えます。日数の見込みを、先に確かめてください。

選択肢は3つ

安置場所費用面会
自宅施設使用料は不要。ドライアイス代は発生いつでも可能
葬儀社の安置室1日あたりの使用料施設の時間内
保冷設備のある施設1日あたりの使用料(高め)制限があることが多い

自宅は、費用が最も抑えられます。付き添える時間にも制限がありません。

一方、施設は設備が整っています。保冷ができるため、日数が延びても状態を保ちやすくなります。

どちらを選ぶかは、住宅の事情と家族の状況で決まります。正解は一つではありません。

自宅を選ぶ家族は、そばにいたいという理由を挙げることが多くあります。時間の制約がない点が大きな利点です。

一方、施設を選ぶ家族は、負担の軽さを挙げます。弔問への対応や室温の管理から解放されます。

どちらにも理由があります。他の家庭がどうしているかではなく、自分たちの事情で決めてください。

自宅に安置する場合の確認点

自宅を選ぶ場合、事前に確かめることがあります。

  1. 搬入経路 — 玄関・廊下・階段の幅、エレベーターの寸法
  2. 安置する部屋 — 布団を敷けるか、直射日光が当たらないか
  3. 室温 — 空調を効かせ続けられるか
  4. 近隣への配慮 — 搬入の時間帯、弔問客の出入り

マンションでは、エレベーターにストレッチャーが入らないことがあります。その場合、階段での搬入になります。

管理規約で、共用部分の使用に制限がある建物もあります。事前に管理会社へ確認しておくと安心です。

搬入の時間帯も考えてください。深夜の搬入は、近隣への配慮が必要になります。

葬儀社は、こうした事情に慣れています。「マンションですが大丈夫ですか」と伝えれば、方法を提案してもらえます。

部屋の中では、故人を寝かせる場所を確保します。直射日光が当たらず、空調が届く部屋が適しています。

夏場は、室温の管理が重要になります。空調を止められないため、電気代も考慮に入れてください。

弔問客が訪れることも想定しておいてください。人数が多いと、部屋の広さが問題になります。

近隣に知らせるかどうかも、先に決めておくと落ち着きます。家族葬にする場合は、伝える範囲を絞ります。

自宅に安置しても、通夜と告別式は式場で行うことができます。安置場所と式場は別に決められます。

施設に安置する場合の確認点

施設を選ぶ場合は、費用と条件を確かめます。

1つ目が要点です。安置室使用料とドライアイス代が別立てになっていることが多いため、合計で聞いてください。

この数字を1つ持っておけば、日数が延びたときの金額を自分で計算できます。

面会の条件は、施設によって大きく違います。いつでも会える施設もあれば、事前予約が必要な施設もあります。

家族が会いたいと思ったときに会えるかどうかは、後から効いてきます。費用と同じくらい大切な条件です。

遠方から親族が来る場合は、到着の時間帯に面会できるかも確かめてください。夜間は入れない施設もあります。

面会に予約が必要な施設もあります。その場合は、連絡先と受付時間を控えておいてください。

安置室の場所も確かめておきます。式場と離れていると、移動の手間が生じます。

費用の考え方

安置にかかる費用は、「1日あたりの単価 × 日数」で計算されます。

費目単位
安置室使用料1日あたり
保冷設備使用料1日あたり
ドライアイス1日あたり(交換ごと)
布団・枕飾りの貸出一式
面会・付き添い回数・時間

これらが別立てになっていると、1日延びるだけで複数の項目が増えます。だから、増額が大きく感じられます。

保冷設備のある施設は単価が高めですが、ドライアイスの量が減ることがあります。合計で比べてください。

自宅の場合も、ドライアイス代は毎日発生します。「無料」ではない点に注意してください。

見積書に「安置料一式」とだけ書かれている場合は、内訳と日数を聞いてください。何日分で計算されているかが分かります。

数量欄が空欄のままだと、延びたときの増額に気づけません。契約前であれば、その場で書き入れてもらえます。

数字が入っていれば、後から請求書と突き合わせられます。

図で整理: 日数と場所で変わる費用
図で整理: 日数と場所で変わる費用(作図: 弁護士による葬儀ガード)

決められないときの進め方

病院からは、早めの搬送を求められます。その場で決められないこともあります。

その場合は、まず葬儀社の安置施設に運んでもらい、後から判断する方法があります。自宅に移すことも可能です。

大切なのは、搬送の依頼と葬儀の契約を分けることです。搬送を頼んだからといって、その会社と葬儀契約を結ぶ義務は生じません。

伝え方は簡単です。「搬送と安置だけお願いします。葬儀は後で決めます」で足ります。

安置してからの1〜2日で、他の葬儀社に概算を聞くこともできます。電話でも数字は出ます。

条件をそろえて聞けば、比較になります。人数・日数・式場・宗教者の有無の4つです。

比べたうえで契約する会社を決めれば、納得して進められます。

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料では、病院で紹介された葬儀社を利用した事例が相談として取り上げられています。急いで決めなくてよい部分は、急がないでください。

日数が延びる場合

火葬場の予約が取れず、日数が延びることがあります。自分の都合とは関係なく起こります。

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料では、令和6年の死亡数が約161万人と、調査開始以来もっとも多かったことに触れています。火葬場の混雑は、その背景にあります。

火葬場の予約は、死亡届と火葬許可証の交付を経て行うのが通常です。書類の手配が遅れると、予約も遅れます。

書類の代行を葬儀社に頼んでいる場合は、いつ提出したかを確かめてください。日付が記録に残っています。

日数が延びる見込みがあるなら、次を確かめてください。

  • 保冷設備のある施設に移せるか
  • 移す場合の搬送費はいくらか
  • 1日あたりの費用がどう変わるか

長期になる場合、エンバーミングという選択肢もあります。ただし費用は十数万円からかかります。合計で比べて判断してください。

「10日間の場合、どちらが総額でいくらになりますか」と聞けば、比較できる数字が出ます。

処置には遺族の同意が必要です。内容の説明を受けたうえで判断してください。

行わない選択も当然にあります。任意の処置であり、断っても葬儀は行えます。

契約時に見積書で確かめること

安置に関する行は、次の点を見てください。

確かめること内容
日数何日分で見積もっているか
単価1日あたりいくらか
内訳施設使用料とドライアイスが分かれているか
延長時1日延びたらいくら増えるか

見積書の日数が実態と離れていると、後で必ず差が出ます。「今の時期は何日くらい待ちますか」と聞いて、現実的な日数で作ってもらってください。

多めに置いて実際が短ければ、精算で減ります。少なく置いて延びれば、追加請求になります。

どちらが心理的に楽かを考えると、多めに置くほうが安心です。総額の見込みも立てやすくなります。

見積書は、安く見せるための書類ではありません。実態に近い数字であることに意味があります。

差し替えのたびに日付を確かめ、古い版も残しておいてください。後から比べる材料になります。

相続税の申告での扱い

安置にかかった費用は、相続税の計算で差し引ける葬式費用に含まれるのが通常です。

国税庁のタックスアンサーNo.4129は、範囲を次のように整理しています。埋葬・火葬・納骨などに要した費用。遺体の回送にかかった費用。通夜など葬式の前後に生じた出費で、通常必要と認められるもの。

領収書は、費目ごとに分かる形で保管してください。「葬儀一式」とだけ書かれていると、仕分けができません。

明細は、公的給付の申請でも使います。まとめて頼んでおくと、二度手間になりません。

領収書の宛名は、実際に費用を負担した人の名前にしてもらってください。申請者と一致していないと、確認を求められます。

葬祭費や埋葬料の申請には、期限があります。原則として2年です。

期限は長いようで、手続きに追われるうちに過ぎます。四十九日が終わったころに、まとめて確かめてください。

安置場所を決めるとき — 確認する項目
安置場所を決めるとき — 確認する項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

安置場所は、費用だけで決めないでください。

  • 自宅は費用が抑えられるが、搬入経路と室温の管理が必要
  • 施設は設備が整うが、1日あたりの使用料と面会の条件を確かめる
  • 決められないときは、まず施設に運び、後から判断してよい

搬送の依頼と葬儀の契約は別です。急いで契約する必要はありません。