葬儀費用の保証人を求められたら|署名する前に確かめること

保証は「他人の借金を引き受ける」契約です。署名の前に、範囲と上限を確かめます

葬儀の契約書に、保証人の欄がある。あるいは「連帯保証人をお願いします」と言われた。

その場で署名する前に、知っておいてほしいことがあります。保証は、他人の支払い義務を引き受ける契約です。軽い手続きではありません。

断ってよい場面もあります。まず、何を求められているのかを確かめてください。

保証人になるとどうなるか
保証人になるとどうなるか(作図: 弁護士による葬儀ガード)

保証人とは、どういう立場か

保証人は、契約者が支払わなかったときに、代わりに支払う義務を負う人です。

葬儀の場面では、喪主が契約者となり、その親族が保証人を求められることがあります。支払いが確実に行われるようにするためです。

立場内容
契約者葬儀社と契約し、費用を支払う人
保証人契約者が払わないときに代わって払う人
連帯保証人契約者と並んで、直ちに請求を受ける立場

保証人になった時点では、支払いは発生しません。契約者が払えば、それで終わります。

ただし、契約者が払えなくなれば、請求は保証人に向かいます。そのときに「聞いていない」とは言えません。

葬儀費用は、数十万円から百万円を超えることもあります。株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると、葬儀費用の総額の平均は96.73万円です。

保証する金額としては、決して小さくありません。署名の前に、その規模を意識してください。

親族間の関係で断りにくい場面もあります。それでも、内容を確かめることは正当な行為です。

保証と連帯保証は、まったく違います

同じ「保証人」でも、連帯が付くかどうかで重さが変わります。

根拠となる条文 — 催告の抗弁と検索の抗弁

保証人は、債権者から履行を請求されたとき、まず主たる債務者に催告するよう求めることができます(民法452条)。催告の抗弁と呼ばれます。

また、主たる債務者に弁済の資力があり、執行が容易であることを証明すれば、まず主たる債務者の財産について執行するよう求めることもできます(民法453条)。検索の抗弁です。

ところが、連帯保証人には、これらの抗弁がありません(民法454条)。債権者は、契約者を飛ばして連帯保証人に全額を請求できます。

つまり、連帯保証人は「契約者に先に請求してください」と言えません。いきなり全額の請求を受けます。

実務では、連帯保証が求められることがほとんどです。だから、署名の前に内容を確かめる意味があります。

契約書の文言に「連帯して債務を負担する」と書かれていれば、連帯保証です。文字が小さくても、意味は変わりません。

複数の保証人がいる場合も、連帯保証では分割されません。一人で全額の請求を受けることがあります。

「他にも保証人がいるから半分でよい」とは限らないということです。ここは誤解の多いところです。

保証の契約には、書面が必要です

口頭での約束だけでは、保証の効力は生じません。

根拠となる条文 — 保証契約の要式性

保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じないとされています(民法446条2項)。電磁的記録によってされた場合も、書面によるものとみなされます(同条3項)。

さらに、個人が保証人となる根保証契約については、極度額を定めなければ効力を生じないとされています(民法465条の2第2項)。極度額とは、保証する金額の上限のことです。

事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする個人の保証については、公正証書による保証意思の確認が必要になる場合もあります(民法465条の6)。

葬儀費用のように金額が特定されている契約であれば、根保証には当たらないのが通常です。ただし、「今後発生する一切の債務」といった書き方になっていれば、極度額の定めが必要になります。

契約書の文言を読んで、保証する範囲がどこまでかを確かめてください。

書面がないまま「保証人になった」と言われても、効力は生じません。押印を求められた書類の内容は、その場で確かめてください。

複写式の場合は、控えをもらって帰ります。控えがすぐ出ない場合は、全ページを撮影しておいてください。

後から条項が加えられていないかを比べる材料になります。手間は1分ほどです。

署名の前に確かめる5つのこと

その場で聞ける内容です。答えられない項目があれば、保留してかまいません。

最後の項目が実は重要です。契約者に支払いの見込みがあるなら、保証人を立てる必要性は低いはずです。

上限額が書かれていない場合は、その理由を聞いてください。金額が確定している契約なら、上限を書けないはずがありません。

「見積書の総額まで」と書き入れてもらう方法もあります。欄外に手書きし、双方が署名すれば足ります。

範囲が限定されれば、負う義務も限定されます。ここを曖昧にしないでください。

「形式的なものです」と言われることがあります。ただ、形式であっても、法的な義務は生じます。

葬儀費用の支払いは、施行後1〜2週間以内とされることが多くあります。給付金や保険金の入金が間に合わないこともあります。

その場合に問題になるのが、保証人への請求です。契約者が一時的に払えないだけでも、請求は起こり得ます。

支払期限と入金の見込みを、契約者と一緒に確かめてください。段取りが立てば、保証の必要性も変わります。

断ってよい場面

保証人になることを断るのは、正当な判断です。

  • 支払いの見込みが分からない
  • 保証する金額の上限が書かれていない
  • 契約の内容を見せてもらえない
  • 自分に支払う資力がない

断り方は短くて足ります。「保証人にはなれません」で十分です。理由を説明する必要はありません。

葬儀社の側にも、別の方法があります。次のような提案ができます。

  1. 契約者を、実際に支払う人に変更する
  2. 費用の一部または全額を前払いする
  3. 契約者を複数にして、費用を分担する

保証を断ったからといって、葬儀ができなくなるわけではありません。

前払いは、確実で分かりやすい方法です。カードや振込が使えるかを、あわせて確かめてください。

一部を前払いし、残りを施行後に支払うという形も取れます。金額の分け方は相談できます。

いずれの方法でも、支払いの取り決めは書面に残してください。口約束のままにすると、後で行き違いが起こります。

図で整理: 保証を求められたときの選択肢
図で整理: 保証を求められたときの選択肢(作図: 弁護士による葬儀ガード)

そもそも誰が費用を負担するのか

保証の話の前に、誰が負担する費用なのかを整理しておく必要があります。

根拠となる裁判例 — 葬儀費用の負担者

東京地方裁判所平成19年7月27日判決は、葬儀費用について、葬儀を自己の責任と計算において手配し挙行した葬儀主宰者が負担すべきものとし、相続財産から差し引くことを認めませんでした。

名古屋高等裁判所平成24年3月29日判決は、通夜や告別式の費用は儀式を主宰した者が、遺体の火葬・埋葬の費用は祭祀を主宰すべき者が負担すべきものとしました。

東京地方裁判所令和3年9月28日判決も、葬儀費用等は当然に共同相続人が相続分に応じて負担すべき性質の費用とはいえないとしたうえで、葬儀を主宰したと認められる者が負担すべきものと判断しています。

つまり、契約した人が負担するのが基本です。他の親族に当然に請求できるわけではありません。

だからこそ、費用を分担する予定があるなら、契約の前に話しておく必要があります。保証ではなく、契約者を複数にするという方法もあります。

分担の取り決めは、金額と割合を書いた簡単な書面で足ります。署名だけでも、後の証拠になります。

香典をどう扱うかも、あわせて決めておいてください。費用に充てるのか、喪主が受け取るのかで結論が変わります。

話しにくい内容ですが、葬儀の前に決めるほうが揉めません。後回しにすると、感情の問題が重なります。

署名してしまった後にできること

すでに署名した場合でも、確かめられることはあります。

順番やること
1契約書の写しをもらい、保証条項を読む
2保証する金額の上限が書かれているか確かめる
3契約者が実際に支払う予定かを確かめる
4請求が来た場合は、その時点で相談する

保証人になったからといって、すぐに支払う義務が生じるわけではありません。契約者が支払えば、それで終わります。

請求が来た場合は、その金額の根拠を確かめてください。契約者に対する請求と同じ内容であるはずです。

契約者が争っている項目があれば、保証人も同じ主張ができます。契約者が持つ反論は、保証人も使えるのが原則です。

だから、請求を受けたらすぐ支払うのではなく、まず契約者に事情を確かめてください。

金額に争いがあるなら、その部分は留保できます。争いのない分だけ先に支払うという整理も可能です。

保証した金額を支払った場合、契約者に対して求償できます。支払った証拠を残しておいてください。

求償できるのは、実際に支払った金額です。振込の控えや領収書を保管してください。

契約者に一括で返す資力がない場合は、分割の取り決めを書面にしておきます。返済の期日と金額を明記してください。

親族間であっても、書面にすることをためらわないでください。記録があるほうが、関係は保たれます。

相続との関係にも注意

契約者が亡くなった場合、その支払い義務は相続の対象になります。

相続放棄をした場合でも、保証人としての義務は残ります。保証は、相続とは別の契約だからです。

  • 契約者の相続人が相続放棄しても、保証人は請求を受ける
  • 保証人自身が亡くなれば、保証の地位は相続される
  • 求償できる相手がいなくなる場合もある

金額が大きい契約では、この点が重くなります。署名の前に、範囲と上限を確かめる意味はここにもあります。

高齢の親族に保証人を頼む場合は、とくに慎重に考えてください。内容を理解しないまま署名することは避けるべきです。

判断能力に不安がある方に署名を求めるのは、後で契約の効力が争われる原因にもなります。

不安があるときは、消費者ホットライン188に電話して相談してください。契約の内容について助言を受けられます。

保証人を求められたとき — 署名前の確認項目
保証人を求められたとき — 署名前の確認項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

保証人の欄は、契約書の中でもっとも重い場所のひとつです。

  • 「連帯」の文字と、保証する金額の上限を確かめる
  • 保証は書面が必要。範囲が広い契約は、上限の定めがなければ効力を生じない
  • 断ってよい。契約者の変更や前払いという方法もある

急かされても、内容を確かめる時間を求めてください。