戒名がないと納骨を断られたとき|話し合いの進め方と別の方法

納骨できないと言われても、遺骨の行き場がなくなるわけではありません。順番に確かめます

直葬や無宗教の葬儀を行った後、菩提寺から「このままでは納骨できません」と言われることがあります。

驚く方が多い場面です。ただ、遺骨の行き場がなくなるわけではありません。選べる道はいくつもあります。

まず、なぜそう言われるのかを理解してください。そこから話し合いの進め方が決まります。

納骨を断られたときに取れる道
納骨を断られたときに取れる道(作図: 弁護士による葬儀ガード)

なぜ「納骨できない」と言われるのか

寺院が管理する墓地は、その寺の檀家であることを前提に使用が認められていることがあります。

墓地の使用は、寺院と使用者との間の契約に基づきます。契約には、墓地の使用規則が付いているのが通常です。

規則に「当寺の作法により葬儀を行った者」といった条件があると、それを満たしていないという説明になります。

  • 戒名を受けていないこと
  • 当該寺院の僧侶による葬儀を行っていないこと
  • 檀家としての手続きを経ていないこと

これらは宗教上の理由でもあり、契約上の条件でもあります。だから、まず規則を確かめることが出発点になります。

もうひとつ、感情的な背景もあります。長く付き合ってきた寺院にとって、相談なく葬儀が済んでいたこと自体が問題になることがあります。

その場合、条件そのものより、経緯の説明で話が進むことがあります。まず一度、会って話す時間を取ってください。

電話やメールだけで済ませようとすると、行き違いが深まりがちです。訪問して事情を伝えるほうが早いことが多くあります。

最初にすること — 規則の確認

感情的なやり取りに入る前に、書面を見てください。

規則が見当たらないことも珍しくありません。何十年も前に取り決めた場合、書面が残っていないことがあります。

その場合は、慣行として何が求められてきたかを聞くことになります。親族の年長者が経緯を知っていることもあります。

寺院側も、はっきりした条件を示せないことがあります。だからこそ、書面で確かめる意味があります。

規則が見つかった場合は、写しを取って保管してください。後で改葬を検討するときにも使います。

年間の管理料を払っている場合は、その領収書も手がかりになります。誰が使用者として登録されているかが分かります。

使用者の名義が亡くなった方のままだと、承継の手続きが別に必要になることもあります。あわせて確かめてください。

埋葬の手続き自体は、法律で決まっています

納骨には、書類の面での要件もあります。宗教上の条件とは別のものです。

根拠となる条文 — 埋葬・火葬・改葬の許可

埋葬または火葬を行おうとする者は、市町村長の許可を受けなければなりません(墓地、埋葬等に関する法律5条1項)。火葬許可証は、この許可を書面にしたものです。

墓地の管理者は、埋葬または焼骨の埋蔵の求めを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならないとされています(同法13条)。

すでに埋葬・埋蔵されている焼骨を他の墓地へ移す場合は、改葬として市町村長の許可が必要です(同法5条1項)。改葬許可の申請には、現在の墓地の管理者が発行する埋葬・埋蔵の証明が必要になるのが通常です。

同法13条の「正当の理由」に何が当たるかは、事案によって判断が分かれます。宗教上の理由が正当な理由に当たるかどうかは、争いのあるところです。

つまり、「絶対に納骨できない」とも「必ず納骨できる」とも言い切れません。だから、話し合いが必要になります。

裁判で争うという選択肢もありますが、時間と費用がかかります。多くの場合は、話し合いか別の納骨先の検討が現実的です。

判断のためには、両方の選択肢の費用を並べる必要があります。戒名を受ける場合の金額と、改葬した場合の総額です。

数字が並べば、決めやすくなります。感情だけで決めると、後で後悔しやすい場面です。

話し合いの進め方

相手は宗教者であり、契約の相手方でもあります。二つの側面があることを意識すると、話しやすくなります。

  • 経緯を説明する。なぜその形の葬儀にしたのかを、正直に伝える
  • 条件を確かめる。何をすれば納骨できるのかを具体的に聞く
  • 費用を確かめる。戒名を受ける場合の金額を先に聞く
  • 期限を確かめる。いつまでに決めればよいのかを聞く

責める姿勢で臨むと、話が進みません。確かめる姿勢のほうが結果につながります。

一人で行きにくい場合は、親族に同席してもらってください。話した内容は、その日のうちにメモに残します。

伝えるときは、決めつけないことが大切です。「納骨できないと聞きましたが、どうすればよいでしょうか」という形が進みやすくなります。

条件が示されたら、その場で決めなくて構いません。「持ち帰って家族と相談します」と伝えてください。

一度で結論を出そうとしないほうが、結果的に早くまとまります。

後から戒名を受けるという選択

葬儀の後でも、戒名を授けてもらえることがあります。これで条件を満たせる場合があります。

費用は寺院や宗派によって幅があります。位号によって金額が変わる運用もあります。

金額を聞くこと自体は、失礼にあたりません。「お布施として、どのくらいをお包みすればよいでしょうか」と尋ねれば足ります。

「お気持ちで」と言われたときは、目安を聞き直してかまいません。「他の方はどのくらいでしょうか」という聞き方もあります。

金額に納得できない場合は、別の道を選ぶことになります。それも選択肢のひとつです。

戒名は、宗派によって考え方が異なります。浄土真宗では法名、日蓮宗では法号と呼ばれます。

授かる方法も一つではありません。四十九日や一周忌の法要にあわせて授かる例もあります。

いつまでに決めるべきかを聞いておくと、家族で相談する時間が取れます。

図で整理: 条件を確かめてから選択肢を比べる
図で整理: 条件を確かめてから選択肢を比べる(作図: 弁護士による葬儀ガード)

別の納骨先を選ぶ

菩提寺での納骨にこだわらないという判断もあります。選択肢は増えています。

納骨先特徴
公営墓地宗教を問わないことが多い。募集時期が限られる
民営霊園宗教を問わない区画がある
納骨堂屋内。承継者がいなくても利用しやすい
樹木葬自然葬。永代供養が付くことが多い
永代供養墓寺院や霊園が管理を続ける

いずれも、宗派を問わない形が用意されていることがあります。申し込みの前に、条件を確かめてください。

すでに菩提寺の墓に他の家族が眠っている場合は、話が複雑になります。改葬という手続きが必要になるためです。

新しい遺骨だけを別の場所に納め、先祖の墓はそのままにするという方法もあります。家族が離れて眠ることになる点は、親族と相談してください。

公営墓地は、応募の時期が年に1回程度と限られていることがあります。募集要項を早めに確かめておいてください。

申し込みには、遺骨があることや承継者がいることといった条件が付く場合があります。条件は自治体ごとに違います。

すでにある墓から移す場合(改葬)

先祖の遺骨を移す場合は、改葬の手続きを取ります。市町村長の許可が必要です。

順番やること
1新しい納骨先を決め、受入証明書をもらう
2現在の墓地の管理者から、埋蔵の証明をもらう
3市区町村に改葬許可を申請する
4許可証を受け取り、遺骨を取り出して移す
5元の墓を撤去し、土地を返す(墓じまい)

2番目で、寺院の署名が必要になります。話し合いがまとまっていないと、ここで止まることがあります。

離檀に伴う費用を求められることもあります。金額の根拠を確かめ、納得できなければ相談してください。

墓じまいの工事費は、区画の広さや立地によって変わります。複数の石材店から見積もりを取ることができます。

指定石材店の制度がある霊園では、業者を選べないことがあります。使用規則で確かめてください。

見積もりは、区画の面積・石の量・搬出経路によって変わります。現地を見てもらったうえで出してもらってください。

改葬の手続きは、遺骨1体ごとに許可が必要になるのが通常です。先祖の遺骨が複数ある場合は、その数だけ申請します。

急いで決めなくてよい理由

遺骨を、いつまでに納めなければならないという法律上の期限はありません。

四十九日や一周忌に合わせる慣習はありますが、それは決まりではありません。決まらないうちは、手元に置いておけます。

  • 自宅で保管する(手元供養)
  • 寺院や霊園の一時預かりを利用する
  • 納骨堂の期限付き区画を使う

一時預かりは、月額や年額で費用がかかることがあります。期間と費用を確かめてから決めてください。

急いで決めた納骨先は、後から変えるのに手間がかかります。落ち着いて選ぶほうが結果的に負担が少なくなります。

一度納骨した遺骨を移すには、改葬の許可が必要です。手続きと費用が、もう一度かかることになります。

だから、決めるまでの期間は費用と割り切って考えてもかまいません。一時預かりの費用は、やり直す費用より小さいことが多いはずです。

家族の意見が割れているときは、なおさら急がないでください。合意ができてから決めるほうが、後々の負担が減ります。

相談できる窓口

話し合いが進まないときは、外部に相談してください。

窓口できること
市区町村の生活衛生担当課墓地の許可・改葬の手続きに関する案内
消費生活センター(188)契約・費用に関する相談
弁護士使用契約や費用請求についての判断

墓地の使用は契約に基づくものなので、法的な整理ができる場面もあります。書類をそろえて相談してください。

持っていくのは、使用許可証、管理料の領収書、墓地の規則、やり取りのメモです。

離檀料として高額を求められている場合も、相談の対象になります。金額の根拠を確かめたうえで判断してください。

宗教上の判断そのものに立ち入ることはできませんが、契約と費用の面では整理がつくことが多くあります。

納骨を断られたとき — 確認する項目
納骨を断られたとき — 確認する項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

納骨を断られても、道が閉ざされたわけではありません。

  • まず墓地の使用規則をもらい、条件を具体的に確かめる
  • 後から戒名を受ける、別の納骨先を選ぶ、という選択肢がある
  • 遺骨に納骨の期限はない。落ち着いて決めてよい

話し合いの内容は、その日のうちにメモに残しておいてください。