葬儀社の見積もりを複数くらべる方法|条件をそろえないと比べられません

総額を並べても意味がありません。人数・日数・式場をそろえて初めて比較になります

見積もりを2社取ったのに、どちらが安いのか分からない。よくあることです。

原因ははっきりしています。前提の条件が違うまま総額を並べているからです。会葬者30名の見積もりと60名の見積もりは、比べても意味がありません。

条件をそろえる方法は簡単です。同じ紙を渡して、同じ条件で出してもらうだけです。

条件をそろえてから、同じ費目どうしを比べる
条件をそろえてから、同じ費目どうしを比べる(作図: 弁護士による葬儀ガード)

なぜ総額を並べても比べられないのか

葬儀の見積書は、前提の置き方で総額が大きく動きます。

会葬者の人数、安置の日数、式場の種類、宗教者を呼ぶかどうか。この4つが違えば、同じ内容の葬儀でも数十万円の差が出ます。

前提総額への影響
会葬者が30名増える料理・返礼品で十数万円
安置が3日延びる安置料・ドライアイスで数万円
民営式場を使う式場使用料で十数万円
宗教者を呼ぶお礼で数十万円

安く見せたい見積書は、前提を小さく置きます。悪意がなくても起きます。担当者が「たぶんこのくらい」と置いた数字が、そのまま前提になるからです。

だから、前提はこちらから指定します。そうすれば、比較できる2枚が手に入ります。

前提をそろえると、もうひとつ分かることがあります。同じ条件なのに総額が違うとき、その差は仕様か利益の乗せ方から出ています。

どちらなのかは、費目ごとに見れば分かります。祭壇の大きさが違うのか、同じ大きさで値段だけ違うのか。ここが比較の中身です。

そろえる4つの条件

依頼する前に、次の4つを決めておきます。決められない項目は「仮に◯◯として」と伝えれば足ります。

  1. 会葬者の人数 — 家族のみか、親族まで含めるか、会社関係も呼ぶか
  2. 安置の日数 — 火葬までの想定日数(3日〜1週間で置くことが多い)
  3. 式場 — 公営か民営か、自宅か。地名まで書く
  4. 宗教者 — 菩提寺があるか、葬儀社の紹介を使うか、呼ばないか

この4つを紙に書いて、各社に同じものを渡します。メールで送れるなら、送信履歴が残るのでなお確実です。

「まだ決まっていないので、それぞれの場合で出してください」と頼む方法もあります。人数の幅がある場合は、こちらのほうが実態に近くなります。

宗教者の扱いは、金額への影響がとくに大きい項目です。菩提寺があるなら、まずそちらに連絡して、来てもらえるかを確かめてください。

菩提寺に相談せずに葬儀を進めると、後で納骨の段階で問題になることがあります。順番としては、葬儀社より先です。

依頼するときに、そのまま使える伝え方

電話でも、そのまま読めば伝わります。

1つ目を隠す必要はありません。他社と比べていると伝えたほうが、条件のそろった見積書が出てきます。

4つ目が抜けると、火葬料やお礼が漏れます。総額の外に置かれた費用は、比較のときに見落としやすいところです。

依頼の期限も伝えておきます。「明日の午前中までにいただけますか」と言えば、各社の回答時期がそろいます。

回答が遅い会社を待って判断が遅れると、比較の意味が薄れます。期限を切るのは、失礼ではありません。

比較表は、費目ごとに並べる

受け取ったら、総額ではなく費目ごとに並べます。表計算ソフトでなくても、紙で足ります。

費目A社B社
寝台車(〇km)
安置料(1日あたり×日数)
ドライアイス(1日あたり×日数)
祭壇
式場使用料
料理(1名×人数)
返礼品(1名×人数)
火葬料

こうして並べると、差がどこから出ているかが一目で分かります。「祭壇だけ20万円違う」なら、そこの仕様を聞けばよいわけです。

差が大きい費目が見つかったら、安いほうの会社にその内容を伝えて、同じ仕様に直してもらう方法もあります。比較は、値切るためではなく、内容をそろえるための作業です。

見るのは金額だけではありません。数量の置き方も比べてください。安置日数を3日で置いた会社と5日で置いた会社では、前提そのものが違います。

実際にかかる日数は、火葬場の予約状況で決まります。予約が混んでいる地域なら、長めに置いた見積書のほうが実態に近いこともあります。

「この日数はどう決めましたか」と聞けば、その会社が地域の状況をどれだけ把握しているかも分かります。

見積書の外に出やすい費用

総額に入っていないことが多いのは、次の費目です。

  • 火葬料 — 自治体や施設で大きく違う。市民料金と市外料金がある
  • 式場使用料 — 公営と民営で差が大きい
  • 宗教者へのお礼 — 葬儀社を通さない支払いになることが多い
  • 心づけ — 慣習として渡す地域がある。義務ではない
  • 後日の費用 — 位牌、仏壇、納骨、法要

火葬料は、公営の施設なら住民は無料または低額のことがあります。一方、市外の住民は数万円かかることがあります。故人の住民票がどこにあったかで変わります。

株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると、葬儀費用の総額の平均は96.73万円です。この数字にどこまで含まれているかを意識すると、見積書の読み方が変わります。

図で整理: 見積書の中と外で発生する費用
図で整理: 見積書の中と外で発生する費用(作図: 弁護士による葬儀ガード)

急いでいて2社取る時間がないとき

亡くなった直後は、比較する時間がないのが普通です。それでもできることがあります。

搬送と安置だけを先に依頼し、葬儀一式の契約は後から決める方法です。搬送を頼んだからといって、その会社と葬儀契約を結ぶ義務は生じません。

段階決めること急ぐか
当日搬送先・安置場所急ぐ
1〜2日目火葬場の予約・日程急ぐ
2〜3日目式の内容・祭壇・料理数日の余地がある

安置してから契約するまでの1〜2日で、電話で概算を聞くだけでも比較になります。「同じ条件で概算を教えてください」と伝えれば、口頭でも数字は出ます。

事前に取っておくという選択

時間があるうちに取っておくのが、いちばん確実です。多くの葬儀社が、事前見積もりを無料で出しています。

事前見積もりを取ったからといって、その会社と契約する義務はありません。見積もりを取ることと、契約することは別です。

事前に取ると、次のことが分かります。

  • その地域の費用の水準
  • 自分が想定している規模での実際の金額
  • 各社の説明の丁寧さと、内訳の書き方

説明の仕方は、実際の対応の質と関係します。急いでいる場面で内訳を出さない会社は、事前でも出しません。

事前に取った見積書は、印刷して家族が分かる場所に置いてください。いざというときに探せなければ、取った意味がありません。

積立型の会員契約とは違い、事前見積もりにお金はかかりません。積み立てを求められたら、それは別の契約です。内容をよく確かめてください。

断るときの伝え方

複数取れば、断る会社が出ます。気が重い作業ですが、短く伝えれば済みます。

  1. 「今回は他社にお願いすることにしました」
  2. 「ありがとうございました」

理由を説明する義務はありません。金額を伝える必要もありません。断ったあとに引き止められても、同じ言葉を繰り返せば足ります。

しつこく連絡が来る場合は、連絡を控えてほしい旨を書面かメールで伝えてください。記録が残る形にしておくと、後の対応が楽になります。

事前見積もりの段階で断る場合も同じです。何度も訪問を受けるようなら、その旨を明確に伝えてかまいません。

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件ありました。断りにくさが背景にある相談も含まれています。

比較を断られたときにどう考えるか

「うちは他社と比べられません」と言われることがあります。内訳を出さない会社もあります。

その対応自体が、判断材料になります。事業者には、契約内容を明確で平易なものにするよう配慮する義務があるからです。

根拠となる条文 — 契約内容の明確化と情報提供

事業者は、消費者契約の内容が明確かつ平易なものになるよう配慮するとともに、契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために必要な情報を提供するよう努めなければならないとされています(消費者契約法3条1項)。

2022年の改正で、この努力義務の内容が具体化されました。消費者の権利義務その他の契約内容についての必要な情報を提供することが求められています。

努力義務であるため、違反が直ちに契約の効力を左右するわけではありません。ただし、内訳の説明を求めることが正当な行為であることの根拠にはなります。

契約してしまった後で、他社のほうがよいと分かったとき

比較の途中で契約してしまうこともあります。そのときも、解約という選択肢が消えるわけではありません。

根拠となる条文 — 解約料の上限

契約の解除に伴う損害賠償や違約金を定める条項は、同種の契約の解除で事業者に生じる平均的な損害の額を超える部分が無効になります(消費者契約法9条1項1号)。

最高裁判所平成18年11月27日判決(民集60巻9号3437頁)は、平均的な損害とは、解除の事由や時期などで区分した同種契約について事業者に生じる損害額の平均を指すと判断しました。

さらに、自宅など営業所以外の場所で勧誘を受けて契約した場合には、訪問販売として書面の交付から8日間のクーリング・オフができることがあります(特定商取引法9条1項)。

契約からの日数が浅く、手配が進んでいなければ、生じている費用はわずかです。まず、契約書と約款を手元に集めてください。

葬儀社を比べるとき — 依頼前と受領後の確認項目
葬儀社を比べるとき — 依頼前と受領後の確認項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

見積もりは、比べ方さえ決まっていれば難しくありません。

  • 人数・日数・式場・宗教者の4条件をそろえて依頼する
  • 総額ではなく、費目ごとの単価を並べて見る
  • 火葬料や宗教者へのお礼など、見積書の外の費用も忘れずに足す

急いでいるときは、搬送だけ頼んで契約は後から決めてかまいません。