社葬の費用と損金算入|会社が負担できる範囲

社会通念上相当と認められる範囲であれば、会社の損金にできます

会社から「社葬にしたい」と申し出があった。費用はどうなるのか、遺族は何を負担するのか。

区分は決まっています。社会通念上相当と認められる範囲の費用は、会社の損金にできます。

一方、遺族が負担すべき費目もあります。そこを分けておかないと、後で混乱します。

社葬の費用は誰が負担するのか
社葬の費用は誰が負担するのか(作図: 弁護士による葬儀ガード)

社葬とは何か

会社が主宰し、費用を負担して行う葬儀です。故人の功績を社内外に示す意味があります。

創業者、経営者、在職中に亡くなった役員・従業員が対象になることが多くあります。

進め方には、いくつかの形があります。

形式内容
社葬会社が主宰し、費用を負担する
合同葬会社と遺族が共同で主宰する
お別れの会密葬の後、日を改めて会社が行う
部分社葬費用の一部を会社が負担する

近年は、先に家族で密葬を行い、後日にお別れの会を開く形が増えています。

日程に余裕ができるため、準備が整えやすくなります。参列者の都合もつきやすくなります。

密葬から1か月から2か月後に開くのが一般的です。会場の手配にも時間がかかります。

会場は、ホテルの宴会場や、大きな斎場が使われます。人数によって選びます。

平日の午後に開くことが多くあります。取引先が参列しやすい時間帯だからです。

案内状は、1か月前までに出します。返信で人数を把握し、飲食と返礼品を手配します。

損金にできる範囲

税務上の扱いは、通達に示されています。

根拠となる条文・通達 — 社葬費用の損金算入

法人が、その役員または使用人が死亡したため社葬を行い、その費用を負担した場合において、その社葬を行うことが社会通念上相当と認められるときは、その負担した金額のうち社葬のために通常要すると認められる部分の金額は、その支出した日の属する事業年度の損金の額に算入することができるとされています(法人税基本通達9-7-19)。

会葬者が持参した香典等を法人の収入としないで遺族の収入としたときは、これを認めるものとされています(同通達の注書き)。

内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとされています(法人税法22条4項)。

「社会通念上相当」と「通常要する」の2つが基準です。

会社の規模、故人の地位、参列者の数などから判断されます。過大な部分は否認されるおそれがあります。

判断に迷う場合は、税理士に確かめてください。金額が大きい費目です。

社葬の規模は、数百万円になることもあります。処理を誤ると影響が大きくなります。

損金にできない費目

会社が払っても、損金にできないものがあります。ここを分けてください。

損金にできる損金にできない
式場の使用料密葬(家族葬)の費用
祭壇・生花・装飾墓地・墓石の購入費
会葬礼状・返礼品仏壇・位牌の購入費
会場の警備・受付の人件費戒名料
案内状・新聞広告四十九日以降の法要の費用
遺影の作成遺族が負担すべき香典返し

密葬の費用は、遺族の私的な葬儀にあたります。会社が払っても損金にはなりません。

戒名料も同様です。宗教にかかわる部分は、遺族の負担とするのが原則です。

会社が肩代わりした場合、故人や遺族への給与や贈与として扱われることがあります。

その場合、遺族に課税が生じることもあります。分けておくほうが安全です。

金額が大きい費目です。判断に迷うときは、契約の前に税理士へ確かめてください。

香典の扱い

香典をどちらが受け取るかで、扱いが変わります。先に決めておいてください。

  • 会社が受け取る → 会社の収入(雑収入)になる
  • 遺族が受け取る → 遺族のもの(会社の収入にしない扱いが認められる)

実務では、遺族が受け取る形が多くあります。通達でも、この扱いが認められています。

その場合、香典返しの費用も遺族が負担します。整合が取れます。

どちらにするかを、事前に会社と遺族で確かめてください。当日に迷うと混乱します。

香典を辞退する形もあります。案内状にその旨を明記します。

辞退すれば、香典返しの手配が不要になります。遺族の負担は軽くなります。

一方、参列者が持参してしまうこともあります。受付での対応を決めておいてください。

会葬者名簿や香典帳の管理も、受け取る側が行います。

図で整理: 費用の区分と請求の分け方
図で整理: 費用の区分と請求の分け方(作図: 弁護士による葬儀ガード)

契約の段階で分ける

いちばん大事な実務のポイントです。契約の段階で、請求先を分けてください。

葬儀社に「会社宛てと遺族宛てで分けて請求してください」と伝えます。

会社宛て遺族宛て
式場使用料密葬の費用
祭壇・生花戒名料・お布施
会葬礼状・返礼品香典返し(遺族が香典を受け取る場合)
受付・警備の人件費位牌・仏壇
案内状・広告納骨・墓石

後から分けようとすると、手間がかかります。契約前に伝えれば、書式を分けてもらえます。

見積書も、2つに分けて出してもらってください。金額の確認が楽になります。

会社の経理担当者に、必要な書式を確かめてから依頼すると確実です。

インボイスの登録番号が必要になることもあります。葬儀社に確かめてください。

支払いの時期も、会社の締めに合わせる必要があります。事前に伝えておいてください。

遺族が立て替えて、後から会社に請求する形は避けたほうが無難です。処理が複雑になります。

社内の手続き

会社側でも、手続きが必要です。記録を残してください。

決議の記録は、税務上も意味を持ちます。会社の意思決定として行ったことを示せます。

社葬取扱規程を設けている会社もあります。対象者や負担の範囲が定められています。

規程がない場合は、この機会に整備しておくと、次からの判断が楽になります。

規程には、対象者の範囲、負担する費用の範囲、決議の方法を書いておきます。

社葬委員会の役割分担も決めておくと、当日の動きが円滑になります。

受付、案内、記帳、駐車場の誘導。人数が多いほど、人手が必要です。

社員が担当する場合は、通常の業務との調整も必要になります。早めに決めてください。

遺族が確かめること

遺族の立場では、次の点を確かめてください。

  1. どこまでを会社が負担するのか
  2. 香典は会社と遺族のどちらが受け取るのか
  3. 密葬の費用は誰が払うのか
  4. 弔慰金は別に支給されるのか
  5. 死亡退職金の扱いはどうなるのか

4番と5番は、社葬の費用とは別の話です。混同しないでください。

弔慰金は、一定の範囲まで相続税の対象になりません。業務外の死亡なら給与の半年分、業務上なら3年分が目安です。

死亡退職金には、500万円×法定相続人の数の非課税枠があります。

株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると、葬儀の総額平均は96.73万円でした。社葬の規模は、これを大きく上回ることがあります。

相続税での扱い

遺族が負担した葬儀費用は、相続税の課税価格から差し引けます。

会社が負担した部分は、遺族の負担ではありません。控除の対象になりません。

費目相続税の控除
遺族が負担した密葬の費用できる
遺族が負担したお布施・戒名料できる
会社が負担した社葬の費用できない
香典返しの費用できない
墓地・墓石の購入費できない

この区分は、国税庁のタックスアンサー No.4129 に示されています。

領収書は、会社負担分と遺族負担分を分けて保管してください。申告のときに使います。

判断に迷うときは、税理士に確かめてください。相談だけなら費用はかかりません。

会社側は顧問税理士に、遺族側は自分で依頼する税理士に確かめる形になります。

両者で扱いが食い違うと、後から修正が必要になります。早めに確かめてください。

領収書の宛名も、会社と個人で分けてもらってください。経理処理の前提になります。

死亡退職金と弔慰金の扱い

社葬とは別に、会社から支給されるお金があります。整理しておきます。

根拠となる条文 — 退職手当金等の課税と非課税枠

被相続人の死亡により相続人等が取得した退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続または遺贈により取得したものとみなされます(相続税法3条1項2号)。

相続人が取得した退職手当金等については、500万円に法定相続人の数を乗じた金額までが非課税とされています(同法12条1項6号)。

弔慰金等については、業務上の死亡である場合は賞与以外の給与の3年分、業務外の死亡である場合は半年分に相当する額までは、退職手当金等として扱わないこととされています(相続税法基本通達3-20)。

死亡退職金は、会社の退職金規程で受給者が定められていれば、その人固有の権利です。

遺産分割の対象にはなりません。ただし、相続税では課税の対象です。

弔慰金は、上記の範囲まで相続税の対象になりません。超えた分は退職金として扱われます。

社葬の費用、死亡退職金、弔慰金。この3つは別のものです。混同しないでください。

会社の経理担当者に、それぞれの金額と名目を確かめてください。支給明細に記載があります。

費用の妥当性を確かめる

社葬は規模が大きく、金額も大きくなります。確かめ方は通常の葬儀と同じです。

  • 見積書は「単価×数量」で出してもらう
  • 「一式」の行は、内訳を求める
  • 参列者の見込み人数を確かめる
  • 追加が出る条件を、書面で確かめる

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件で、うち52.6%が料金に関するものでした。

会社が支払う場合でも、内訳の確認は必要です。経理の説明責任があるためです。

参列者が想定より増えれば、返礼品と飲食が増えます。実数で精算する形を確かめてください。

余った返礼品を返品できる契約かどうかも、事前に確かめてください。

会葬者名簿の人数と、請求書の数量を突き合わせれば、検算できます。

差があれば、その差だけを指摘してください。全体を疑う必要はありません。

社葬の実施 — 契約する前の確認項目
社葬の実施 — 契約する前の確認項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

社葬は、費用の区分が要点です。

  • 社会通念上相当な範囲であれば、会社の損金にできる
  • 密葬・戒名料・墓石は、損金にできない
  • 契約の段階で、会社宛てと遺族宛ての請求を分ける

取締役会の決議と明細を残してください。落ち着いて進めれば大丈夫です。