葬儀の生前契約は解約できるか|返金の考え方

解約はできます。争点になるのは、手数料がいくらまで妥当かです

親が生前に葬儀の契約をしていた。内容が合わないので解約したい。できるのだろうか。

解約はできます。継続的な役務の契約を、一方的に縛り続けることはできません。

争点になるのは、手数料がいくらまで妥当かです。ここには法律上の考え方があります。

生前契約は、どの型かで扱いが変わる
生前契約は、どの型かで扱いが変わる(作図: 弁護士による葬儀ガード)

契約の型を確かめる

まず、どの型の契約かを確かめてください。扱いが変わります。

中身主な規律
互助会(積立型)月々の掛金を積み立てる割賦販売法・消費者契約法
前払い型契約時に代金の全部または一部を払う消費者契約法
予約型内容だけを決め、支払いは葬儀の後消費者契約法
会員型入会金を払い、割引を受ける消費者契約法
死後事務委任契約手続き全般を委任し、預託金を預ける民法(委任)

積立型は、割賦販売法の規律を受けます。保全措置の義務があります。

予約型は、まだお金を払っていないことが多く、解約も簡単です。

まず、契約書を探してください。会員証や、掛金の払込票も手がかりになります。

見当たらない場合は、通帳の引き落としを確かめてください。会社名が記録に残っています。

郵便物にも手がかりがあります。年賀状や、会報が届いていることがあります。

会社名が分かれば、電話で契約の有無を確かめられます。氏名と生年月日を伝えてください。

家族が加入を知らないままの例は多くあります。まず探すところから始めてください。

解約手数料の上限

いちばん多い争点です。考え方は決まっています。

根拠となる条文 — 解約料は「平均的な損害」まで

消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、または違約金を定める条項は、同種の契約の解除に伴い事業者に生じる平均的な損害の額を超える部分について無効となります(消費者契約法9条1項1号)。

最高裁判所は平成18年11月27日の判決(民集60巻9号3437頁)で、平均的な損害とは、解除の事由や時期などで区分した同種の契約の解除に伴い、事業者に生じる損害額の平均値を指すと示しました。

事業者は、消費者から算定の根拠について説明を求められたときは、その概要を説明する努力義務を負います(同法9条2項)。

つまり、実際に生じていない損害まで請求することはできません。

まだ祭壇も料理も手配していない段階であれば、生じている損害は限られます。

「解約手数料の内訳を教えてください」と聞いてください。これは正当な依頼です。

説明が数字で返ってくれば、判断できます。返ってこない場合は、確かめる価値があります。

互助会の解約

積立型の互助会では、解約に一定の手数料がかかるのが一般的です。

積み立てた金額から、手数料を差し引いた額が返金されます。

  • 掛金の総額から、手数料を引いた額が戻る
  • 手数料は、契約や積立期間によって異なる
  • 満期前でも解約できる

手数料の額が高すぎると感じたら、内訳の説明を求めてください。

過去には、互助会の解約手数料をめぐる裁判で、一部が無効とされた例があります。

適格消費者団体が差止めを求めた訴訟で、手数料の一部が無効と判断された例が知られています。

その後、返金の割合を見直した互助会もあります。加入時期によって扱いが違うことがあります。

自分の契約がどの規約に基づくかを確かめてください。加入した年が手がかりになります。

根拠となる条文 — 前払式特定取引と保全措置

葬儀のための費用を、2か月以上の期間にわたり3回以上に分割して受領する取引は、前払式特定取引として割賦販売法の規律を受けます(割賦販売法2条6項)。

この取引を業として行う者は、経済産業大臣の許可を受けなければなりません(同法11条)。

許可を受けた事業者は、前受金の2分の1に相当する額について、保全措置を講じなければならないとされています(同法18条の3)。

保全措置があるため、会社が倒産しても一定の範囲は保護されます。それでも全額ではありません。

解約の手続き

手順は決まっています。順番どおりに進めてください。

書類の提出から返金まで、1か月から3か月かかることがあります。

窓口が遠方の場合は、郵送で手続きできることが多くあります。確かめてください。

「解約したい」と伝えると、引き止められることがあります。断って構いません。

対応が進まない場合は、書面で申し出てください。日付が記録に残ります。

内容証明郵便を使えば、送った内容と日付の両方が記録されます。費用は1,500円ほどです。

まずは普通のメールや手紙で足ります。応じない場合に、内容証明を検討してください。

電話でのやり取りは、日時と担当者名をメモに残してください。

図で整理: 解約から返金までの流れ
図で整理: 解約から返金までの流れ(作図: 弁護士による葬儀ガード)

本人が亡くなった後の解約

契約者本人が亡くなった後でも、解約はできます。相続人が手続きを行います。

必要な書類が増えます。事前に確かめてください。

書類目的
契約書・会員証契約の特定
除籍謄本死亡の確認
相続人の戸籍相続人であることの確認
相続人全員の同意書手続きの権限の確認
印鑑証明書本人確認
返金先の口座情報振込先

相続人全員の同意を求められることが多くあります。1人だけでは進まないことがあります。

書類が多く、集めるのに時間がかかります。早めに始めてください。

なお、契約をそのまま使って葬儀を行う選択もあります。解約が唯一の道ではありません。

積立金を葬儀の代金に充てられるかを、まず確かめてください。

相続放棄との関係

解約して返金を受けると、相続財産を処分したと見られるおそれがあります。

根拠となる条文 — 相続財産の処分と単純承認

相続人が相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされます(民法921条1号)。

相続の承認または放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内にしなければなりません(同法915条1項)。

もっとも、社会通念上相当な範囲の葬儀費用の支出については、単純承認にあたらないと判断された例があります(大阪高等裁判所平成14年7月3日決定、家月55巻1号82頁)。

相続放棄を考えている場合は、解約の前に弁護士へ確かめてください。

返金を受け取って使ってしまうと、放棄ができなくなるおそれがあります。

判断に迷う場合は、手続きを保留してください。3か月の期限には注意が必要です。

会社が倒産した場合

積み立てていた会社が倒産することもあります。備えがあります。

前払式特定取引の許可を受けた事業者には、前受金の2分の1について保全措置の義務があります。

保全されているのは半額です。全額が戻るわけではありません。

  • まず、前受金保全の仕組みを確かめる
  • 破産管財人や、承継した会社からの案内を待つ
  • 消費者ホットライン188に相談する

倒産の情報は、官報や報道で知ることになります。放置しないでください。

他社が事業を承継し、契約がそのまま引き継がれることもあります。案内を確かめてください。

承継された場合、これまでの積立金がそのまま使えることがあります。

条件が変わることもあります。新しい規約を確かめてください。

訪問を受けて契約した場合

自宅を訪れて勧誘を受け、契約した場合は、別の仕組みがあります。

根拠となる条文 — 訪問販売と書面交付

営業所等以外の場所で契約の申込みを受け、または契約を締結した販売や役務提供は、訪問販売にあたります(特定商取引法2条1項)。

事業者は、契約の内容を明らかにする書面を遅滞なく交付しなければなりません(同法4条、5条)。

申込みの撤回や契約の解除は、法定の書面を受け取った日から起算して8日間はできるとされています(同法9条1項)。ただし、葬祭に関する役務のうち政令で定めるものなど、対象から除かれる取引もあります。

自分の契約が対象かどうかは、書面の記載と契約の場所で変わります。

判断に迷うときは、消費者ホットライン188に電話して確かめてください。無料です。

進まないときの窓口

自分で申し出ても手続きが進まない場合は、外部の窓口を使ってください。

窓口内容
消費者ホットライン188最寄りの消費生活センターへ
国民生活センター紛争解決委員会による和解の仲介
法テラス要件を満たせば無料法律相談
弁護士契約内容と手数料の妥当性の確認

消費生活センターは、事業者との間に入ってあっせんを行うこともできます。費用はかかりません。

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件で、うち52.6%が料金に関するものでした。

互助会の解約に関する相談も、その中に含まれています。同じ相談を日常的に受けています。

相談の前に、契約書・払込票・やり取りの記録をそろえてください。話が早く進みます。

相談した日付と受付番号は控えてください。後で経過を確かめるときに使います。

あっせんは裁判ではありません。話し合いの場を作る手続きです。

第三者が入るだけで、話が動くことがあります。ためらわずに使ってください。

解約する前に考えること

急いで解約する前に、確かめておくとよい点があります。

株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると、葬儀の総額平均は96.73万円でした。

積立金を充てられるなら、実際の負担は下がります。解約すると、その分がなくなります。

  • 積立金を葬儀の代金に充てられるか
  • 使える地域はどこか(引っ越し先で使えるか)
  • 名義を家族に変更できるか
  • 内容を変更して使えるか

名義変更に応じる互助会もあります。手数料がかかることがあります。

解約が唯一の選択ではありません。まず、使える形があるかを聞いてください。

積立金で足りない分は、追加で支払う形になります。総額の見積もりを求めてください。

「積立金を充てると、総額はいくらになりますか」と聞けば、数字が返ってきます。

その金額を、他社の見積もりと比べてください。判断の材料になります。

比べたうえで解約するなら、納得のいく判断になります。

生前契約の解約 — 申し出る前の確認項目
生前契約の解約 — 申し出る前の確認項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

生前契約は解約できます。確かめるのは手数料です。

  • 契約書を探し、解約の条件と手数料の定めを読む
  • 手数料の内訳を、書面で求める
  • 進まないときは、消費者ホットライン188へ相談する

解約せずに使う道もあります。落ち着いて確認すれば大丈夫です。