無宗教葬とは|費用・流れ・注意点

読経も戒名もない葬儀です。自由な分、決めることが増えます

「宗教にこだわらない見送りにしたい」。そう考えて、無宗教葬を調べていませんか。

できます。読経も戒名もない葬儀です。式の内容は、家族が自由に決められます。

ただし、注意すべき点が2つあります。菩提寺との関係と、納骨先です。先に確かめてください。

無宗教葬は、何をして何をしないのか
無宗教葬は、何をして何をしないのか(作図: 弁護士による葬儀ガード)

何をしない葬儀か

まず、一般的な仏式の葬儀と比べます。省かれるのは、宗教にかかわる部分です。

項目仏式無宗教葬
僧侶の読経ありなし
戒名ありなし(俗名のまま)
焼香あり献花に置き換えることが多い
位牌あり作らないことが多い
お布施必要不要
通夜・告別式行う自由に決める
火葬行う行う

火葬は、宗教にかかわらず必要です。ここは変わりません。

戒名がない場合、位牌には俗名(生前の名前)を記します。作らない家庭もあります。

焼香の代わりに、献花を行うことが一般的です。白い花を1本ずつ手向けます。

費用の目安

宗教者を招かない分、費用は下がります。

形式費用の目安
無宗教葬(1日)30万〜60万円
無宗教葬(2日)50万〜80万円
お別れの会(後日開催)30万〜150万円

株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると、葬儀の総額平均は96.73万円、基本料金の平均は72.02万円でした。

無宗教葬では、お布施が不要です。お布施の相場は20万円から50万円とされています。

その分、総額は下がります。ただし、演出や音楽を加えると、費用が上がることもあります。

祭壇を花で飾る形が多く、生花の量で金額が変わります。見積書で本数を確かめてください。

花祭壇は、20万円から100万円以上まで幅があります。故人の好きだった花を使うこともできます。

写真や映像を流す場合は、機材の使用料がかかることがあります。金額を確かめてください。

演奏を頼む場合は、演奏者への謝礼が生じます。1人あたり数万円が目安です。

自由度が高い分、加えれば加えるほど費用は上がります。優先順位を決めてください。

当日の流れを作る

決まった形式がないため、内容は自分で組み立てます。これが最大の特徴です。

参考になる流れは、次のとおりです。

  1. 開式の言葉
  2. 黙祷
  3. 故人の紹介(略歴の朗読)
  4. 思い出の映像や写真の上映
  5. 好きだった音楽の演奏・再生
  6. 弔辞・お別れの言葉
  7. 献花
  8. 喪主の挨拶
  9. 閉式の言葉

すべてを入れる必要はありません。3つか4つに絞る家庭もあります。

進行は、葬儀社の司会者が担当します。台本を一緒に作ってもらえます。

音楽を流す場合は、著作権の扱いを葬儀社に確かめてください。式場によって条件が異なります。

決めることが増えます

自由であることは、決めることが多いということでもあります。

  • どんな音楽を流すか
  • 誰に弔辞を頼むか
  • 写真をどう選ぶか
  • 献花の花を何にするか
  • 会場をどう飾るか

時間がない中で決めるのは、負担になります。

急いでいる場合は、内容を絞ってください。黙祷と献花だけでも、十分に見送りの形になります。

生前に希望を聞いておくと、迷いが減ります。エンディングノートに書き残す方法があります。

好きだった音楽、見送ってほしい人、飾ってほしい写真。この3つを書いておくだけで足ります。

家族が判断に迷ったとき、拠り所になります。「本人の希望です」と言えることは大きな支えです。

書き残しがない場合は、家族で思い出を持ち寄ってください。手がかりが見つかります。

図で整理: 無宗教葬を決めるまでの手順
図で整理: 無宗教葬を決めるまでの手順(作図: 弁護士による葬儀ガード)

菩提寺がある場合の注意

ここが最も大事な注意点です。先に確かめてください。

先祖代々の墓が寺院にある場合、その寺院を菩提寺といいます。

菩提寺がある場合、無宗教で葬儀を行うと、納骨を断られることがあります。

理由は、その寺院の宗旨に従った葬儀を経ていないためです。戒名がないことも理由になります。

  • 納骨を断られる
  • 戒名を改めて授かるよう求められる
  • 別に法要を行うよう求められる

いずれも、後から解決するのは大変です。葬儀の前に相談してください。

「無宗教で行いたいと考えています」と、正直に伝えてください。

寺院によっては、了解が得られることもあります。話をしないまま進めるのが、いちばん問題になります。

菩提寺があるかどうか分からない場合は、親族に確かめてください。

先祖の墓がどこにあるか、法要をどの寺院に頼んできたか。この2つが手がかりになります。

過去の法要のお布施の記録が残っていることもあります。通帳や領収書を探してください。

菩提寺と縁を切る場合は、離檀の手続きになります。改葬の許可も必要です。

離檀料を求められることがあります。法律上の支払い義務が定められているわけではありません。

納骨先を確保する

菩提寺がない場合でも、納骨先は先に確かめてください。

宗旨・宗派を問わない納骨先を選ぶ必要があります。

納骨先宗旨・宗派費用の目安
公営霊園問わない数万〜数十万円
民営霊園問わないことが多い50万〜150万円
納骨堂施設による20万〜150万円
樹木葬問わないことが多い20万〜80万円
合葬墓・永代供養墓問わないことが多い5万〜50万円
海洋散骨問わない5万〜30万円

公営霊園は、費用が抑えられます。ただし、募集の時期が限られ、抽選になることがあります。

申込みの資格に、住所や遺骨の有無の要件があります。自治体のホームページで確かめてください。

納骨に必要な書類は、火葬後に返却される火葬許可証です。証明印が押されたものを使います。

根拠となる条文 — 埋葬・火葬と納骨の手続き

埋葬または火葬は、死亡または死産の後24時間を経過した後でなければ行うことができません(墓地埋葬法3条)。

埋葬・火葬を行おうとする者は、市町村長の許可を受けなければなりません(同法5条1項)。

墓地または納骨堂の管理者は、埋葬・埋蔵・収蔵の求めを受けたときは、許可証の交付を受けたものであることを確認した後でなければ、これを行ってはならないとされています(同法14条)。

遺骨は誰が引き継ぐか

納骨先を決めるとき、誰が遺骨を引き継ぐかも決まります。考え方は定まっています。

根拠となる条文と判例 — 祭祀の承継と遺骨の帰属

系譜、祭具及び墳墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継します。ただし、被相続人の指定があるときは、その指定に従います(民法897条1項)。

慣習が明らかでないときは、家庭裁判所が承継すべき者を定めます(同条2項)。

最高裁判所は平成元年7月18日の判決(家月41巻10号128頁)で、遺骨は慣習に従って祭祀を主宰すべき者に帰属すると判断しました。遺骨は相続財産として分割の対象になるものではありません。

つまり、遺骨は相続財産として分けるものではありません。祭祀を主宰する人が引き継ぎます。

長男である必要はありません。娘でも、親族以外でもなり得ます。

無宗教葬を選ぶ場合、祭祀の形も自由に決められます。仏壇を置かない選択もできます。

その代わり、次の世代に何を残すかを決めておいてください。判断が委ねられます。

エンディングノートに希望を書き残す方法があります。法的な効力はありませんが、意思は伝わります。

親族への説明

無宗教葬に、抵抗を感じる親族がいることもあります。事前の説明が効きます。

伝える内容は、次の3つで足ります。

  • 故人の希望であること(希望があった場合)
  • 読経や焼香がないこと
  • 献花で見送る形になること

当日に初めて知ると、戸惑いが生まれます。前もって伝えてください。

高齢の親族には、電話で直接伝えるほうが伝わります。書面だけでは伝わりにくい部分です。

「宗教を否定するものではない」と一言添えると、受け入れられやすくなります。

意見が分かれた場合は、折り合いをつける形もあります。読経だけを頼み、他は自由にする形です。

宗教者を手配するサービスを使えば、菩提寺がなくても読経を頼めます。費用は数万円からです。

反対に、火葬だけを行い、後日にお別れの会を開く方法もあります。

時間を置けば、親族の気持ちも整理されます。急いで結論を出す必要はありません。

大事なのは、家族が納得できる形を選ぶことです。正解はひとつではありません。

後日の法要はどうするか

無宗教葬では、四十九日や一周忌の法要を行わないこともできます。決まりはありません。

代わりに、家族で集まって食事をする形を取る家庭もあります。

  • 四十九日に、家族で集まって思い出を話す
  • 命日に、故人の好きだった場所を訪ねる
  • 何も行わない

どれも差し支えありません。家族の気持ちに合わせて構いません。

節目を作っておくと、気持ちの整理がつきやすくなります。何もしないより負担が軽いこともあります。

納骨の時期にも決まりはありません。四十九日にこだわる必要はありません。

墓所や納骨堂の準備が整ってからで構いません。自宅に置いたままでも差し支えありません。

なお、法要の費用は、相続税の計算で控除できません。葬儀の費用とは扱いが分かれます。

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件で、うち52.6%が料金に関するものでした。

無宗教葬でも、見積書の確かめ方は同じです。単価と数量を確かめてください。

対応できる葬儀社を選ぶ

すべての葬儀社が慣れているわけではありません。実績を確かめてください。

寺院が運営する式場では、無宗教の式を断られることがあります。事前に確かめてください。

公営の式場は、宗教を問わないのが通常です。選択肢に入れてください。

見積書は、単価と数量が入った形でもらってください。「一式」では比べられません。

無宗教葬を扱った経験が少ない会社では、当日の進行が滞ることがあります。

実績を尋ねたときの答え方で、慣れているかどうかが分かります。

「これまでどんな内容をされましたか」と聞けば、具体的な例が返ってきます。

答えが具体的な会社を選んでください。判断の材料になります。

無宗教葬 — 決める前に確認する項目
無宗教葬 — 決める前に確認する項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

無宗教葬は選べます。ただし、順番が大事です。

  • 菩提寺がある場合は、葬儀の前に相談する
  • 納骨先を先に確かめる。宗旨・宗派を問わない先を選ぶ
  • 式の内容は、3つか4つに絞れば十分

親族には前もって伝えてください。落ち着いて決めれば大丈夫です。