会社からの弔慰金と香典|申請方法と税金の扱い
就業規則に定めがあれば受け取れます。まず慶弔規程を見せてもらってください
会社から「弔慰金をお出しします」と言われた。これは何なのか、税金はかかるのか。
弔慰金は、就業規則や慶弔規程に基づいて支給されるお金です。法律で義務づけられたものではありません。
だから、まず確かめるのは規程です。「慶弔規程を見せてください」と伝えれば、金額と手続きが分かります。
弔慰金とは何か
従業員や、その家族が亡くなったときに、会社が支給するお金です。慶弔見舞金の一種です。
支給するかどうか、いくら支給するかは、会社が定めます。法律に定めはありません。
根拠となる条文 — 就業規則での定め
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければなりません(労働基準法89条)。
臨時の賃金等や、それ以外で事業場の労働者すべてに適用される定めをする場合には、就業規則に記載することとされています(同条3号の2、10号)。弔慰金や慶弔見舞金は、この定めに含まれることがあります。
使用者は、労働者に就業規則を周知させなければなりません(同法106条1項)。そのため、規程の内容を確かめることができます。
つまり、支給の根拠は規程にあります。まず、その写しを見せてもらってください。
金額の目安
金額は会社によって大きく違います。おおよその傾向を知っておいてください。
| 対象 | 目安 |
|---|---|
| 従業員本人が亡くなった場合 | 数万円〜数十万円 |
| 従業員の配偶者・子・親 | 1万〜5万円程度 |
| 業務上の死亡 | 業務外より高く設定されることが多い |
大企業では、規程が細かく定められていることが多くあります。中小企業では、慣行で運用されている例もあります。
労働組合がある会社では、組合からも見舞金が出ることがあります。あわせて確かめてください。
規程がない会社でも、支給されることがあります。その場合は、社長や上司の判断によります。
金額を交渉する性質のものではありません。示された額を受け取る形になります。
支給がない場合でも、それが違法になるわけではありません。義務ではないためです。
株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると、葬儀の総額平均は96.73万円でした。弔慰金だけで賄える額ではありませんが、助けにはなります。
香典との違い
会社からは、弔慰金とは別に香典が出ることもあります。性質が違います。
- 弔慰金:会社の規程に基づいて支給される。会社の費用として処理される
- 会社名義の香典:社葬や葬儀の場で渡される。慶弔費として扱われる
- 同僚からの香典:個人が包むもの。会社とは関係がない
同僚がまとめて包む場合もあります。この場合は、会社ではなく個人からの香典です。
どれがどれかは、袋の表書きと差出人で分かります。記録するときに分けておいてください。
香典の一覧を作るときも、会社関係は分けて書いておくと後の整理が楽になります。
弔慰金は振込で支払われることが多く、香典は現金で渡されることが多い、という違いもあります。
香典返しの対象になるかどうかも変わります。会社名義の香典には、返礼をしないのが通例です。
死亡退職金との違い
弔慰金と死亡退職金は、別のものです。両方が支給されることもあります。
| 種類 | 性質 | 支給の根拠 |
|---|---|---|
| 弔慰金 | 弔意を表すためのもの | 慶弔規程 |
| 死亡退職金 | 退職金として支払われるもの | 退職金規程 |
死亡退職金は、金額が大きくなることがあります。誰が受け取るかも、規程で定められているのが通常です。
規程で受取人が定められている場合、その人が固有の権利として受け取ると理解されています。
根拠となる条文 — 死亡退職金の扱い
最高裁判所昭和55年11月27日判決(民集34巻6号815頁)は、退職金規程で受給権者の範囲と順位が民法の相続の規定と異なる形で定められている場合、その死亡退職金は受給権者である遺族が固有の権利として取得するとしました。
相続税の計算では、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した退職手当金等は、みなし相続財産として課税の対象になります(相続税法3条1項2号)。
相続人が受け取ったものについては、500万円に法定相続人の数を掛けた額までが非課税とされています(同法12条1項6号)。
税金の扱い
弔慰金には、非課税として扱われる範囲があります。金額によって扱いが変わります。
国税庁の説明によると、被相続人の死亡によって受け取る弔慰金のうち、次の範囲までは相続税の対象になりません。
| 死亡の区分 | 非課税として扱われる範囲 |
|---|---|
| 業務上の死亡 | 死亡時の普通給与の3年分に相当する額 |
| 業務外の死亡 | 死亡時の普通給与の半年分に相当する額 |
この範囲を超える部分は、退職手当金等として相続税の対象になります。
普通給与には、賞与は含まれないものとして扱われます。判断に迷う場合は、税務署か税理士に確かめてください。
金額が大きい会社では、この線引きが問題になります。支給の名目と実質の両方が見られます。
支給を受けたら、明細を保管してください。名目と金額が分かる書面が必要になります。
相続税の申告をする場合は、税理士にその明細を渡してください。区分によって計算が変わります。
申請の手順
会社から連絡が来ることもありますが、こちらから確かめるほうが確実です。
在職中に亡くなった場合は、他の手続きも同時に進みます。健康保険の埋葬料も、勤務先を通じて申請します。
退職して間もない場合は、資格喪失後の給付が受けられることがあります。あわせて確かめてください。
遺族が直接連絡しにくい場合は、同僚や上司に取り次いでもらう方法もあります。
連絡は、葬儀が終わってからでも構いません。会社側も、落ち着いてからの連絡を想定しています。
私物の引き取りや、貸与品の返却も同時に案内されることが多くあります。まとめて確かめてください。
業務上の死亡だった場合
仕事中や通勤中の事故で亡くなった場合は、労災保険からの給付も受けられます。
- 葬祭料(葬祭給付):葬儀を行った人に支給される
- 遺族補償年金・遺族補償一時金:生計を維持されていた遺族に支給される
労災の葬祭料は、健康保険の埋葬料とは別の制度です。両方を重ねて受け取ることはできません。
申請は、労働基準監督署に対して行います。会社を通じて手続きすることが多くあります。
会社の弔慰金とは別に受け取れます。混同しないよう、それぞれ確かめてください。
遺産分割との関係
弔慰金や死亡退職金が、遺産分割の対象になるのかという問題があります。
規程で受取人が定められている場合は、その人が固有の権利として受け取ると理解されています。相続財産には含まれません。
一方、規程がなく、受取人も定まっていない場合は、相続財産として扱われることがあります。判断は事案によります。
- 規程に受取人の範囲と順位が定められているか
- 実際に誰に支払われたか
- 会社がどのような趣旨で支給したか
この3つが判断の材料になります。争いになりそうな場合は、規程の写しを保管してください。
金額が大きく、相続人の間で意見が分かれるときは、早めに弁護士へ相談してください。後からの整理は難しくなります。
社葬を行う場合
会社が葬儀を主催する社葬という形もあります。費用の負担が変わります。
社葬では、会社が費用の全部または一部を負担します。遺族が負担する範囲を、先に決めておく必要があります。
| 費目 | 負担することが多い側 |
|---|---|
| 式場使用料・祭壇・運営 | 会社 |
| 火葬料・戒名・お布施 | 遺族 |
| 会葬者への返礼品 | 会社(社葬分) |
| 密葬の費用 | 遺族 |
社葬の前に、家族だけで密葬を行う形が一般的です。この場合、密葬は遺族が費用を負担します。
会社が負担する費用の範囲は、書面で確かめてください。口頭のままだと、後から負担を求められることがあります。
税務上、社葬の費用が会社の損金として認められる範囲は、社会通念上相当と認められるかどうかで判断されます。
密葬の費用や、墓地・仏壇に関する費用は、会社の損金にはならないとされています。負担の区分が必要です。
他に受け取れるもの
会社関係以外にも、確かめておくとよい給付があります。まとめて挙げます。
| 種類 | 申請先 |
|---|---|
| 健康保険の埋葬料・埋葬費 | 協会けんぽ・健康保険組合 |
| 国民健康保険の葬祭費 | 市区町村 |
| 労働組合や共済の給付 | 組合・共済の窓口 |
| 団体保険 | 勤務先を通じて保険会社へ |
団体保険は、家族が把握していないことがあります。在職中に亡くなった場合は、必ず問い合わせてください。
健康保険の埋葬料は5万円です。国民健康保険の葬祭費は、自治体によって3万円から7万円程度です。
いずれも、申請しなければ支給されません。期限は、いずれも2年です。
どの制度に加入していたかは、保険証で分かります。返却する前に、写真を撮っておいてください。
在職中か退職後かで申請先が変わります。判断に迷う場合は、勤務先か市区町村に聞いてください。
忌引きと手続き
自分の家族が亡くなった場合、忌引きの扱いも確かめてください。会社の規程で定められています。
- 日数は続柄によって変わる(配偶者・父母は5〜7日程度が多い)
- 有給か無給かも、規程による
- 申請の方法と、提出する書類を確かめる
会葬礼状や、死亡診断書の写しを求められることがあります。何が必要かを先に聞いてください。
家族葬で会葬礼状を作らなかった場合は、葬儀社が発行する証明書で対応できることがあります。
忌引きの日数は、葬儀の日を含めて数えるのが一般的です。遠方の場合は、移動日が加算されることもあります。
連続して取れない場合は、分割して取得できるかを確かめてください。会社によって扱いが違います。
国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件で、うち52.6%が料金に関するものでした。使える制度を確かめることは、負担を減らす近道です。
まとめ
会社から受け取れるお金は、規程を見れば分かります。
- 慶弔規程の写しをもらい、弔慰金の有無と金額を確かめる
- 死亡退職金や団体保険も、あわせて確かめる
- 業務上の死亡であれば、労災の給付も申請する
申請しなければ受け取れないものばかりです。総務の担当者に、まとめて聞いてください。
