死亡保険金はいつ受け取れるか|葬儀費用の支払いに間に合わせる方法

書類がそろってから5営業日程度が目安です。間に合わないときは、支払期限のほうを動かします

葬儀費用の支払期限は来週。保険金はまだ振り込まれていない。

まず、目安を知ってください。必要書類が保険会社に届いてから、5営業日程度で支払われるのが一般的です。

ただし、書類をそろえるまでに数日かかります。だから、間に合わないことがあります。そのときは、支払期限のほうを動かします。

請求から入金まで、どれくらいかかるのか
請求から入金まで、どれくらいかかるのか(作図: 弁護士による葬儀ガード)

入金までの流れ

まず全体の流れを押さえてください。手続き自体は難しくありません。

  1. 保険会社に連絡する(電話またはウェブ)
  2. 請求書類が送られてくる(数日)
  3. 死亡診断書の写しや戸籍をそろえる(数日〜1週間)
  4. 書類を返送する
  5. 会社で内容を確認し、支払われる(5営業日程度)

全体では、連絡してから2週間前後になることが多くあります。書類をそろえる時間が、最も読みにくい部分です。

死亡診断書は、死亡届に添えて提出します。原本は手元に残らないため、事前に写しを数枚取っておいてください。

戸籍は、本籍地の市区町村で取れます。2024年3月からは、本籍地以外の窓口でもまとめて請求できる広域交付が始まっています。

支払期限は法律でも意識されています

保険会社が支払いを引き延ばすことのないよう、法律に定めがあります。

根拠となる条文 — 保険給付の履行期

保険給付を行う期限を定めた場合であっても、その期限が、保険事故や給付事由の確認のために必要な期間を経過した後の日であるときは、その期間を経過する日が期限とされます(保険法21条1項)。

期限を定めなかったときは、保険給付の請求があった後、確認をするために必要な期間を経過するまでは、遅滞の責任を負わないとされています(同条2項)。

保険給付を請求する権利は、3年間行使しないときは時効によって消滅します(同法95条1項)。請求は早めに行ってください。

多くの約款では、書類が到着した日の翌日から5営業日以内に支払うと定められています。まずは約款を確かめてください。

確認が必要な場合には、支払いまでの期間が長くなることがあります。その場合も、約款に上限の日数が定められているのが通常です。

遅れるのはどんなときか

すべての請求が5営業日で済むわけではありません。時間がかかる場面を知っておくと、判断しやすくなります。

状況起きること
死因の確認が必要な場合医療機関への照会に時間がかかる
契約から間もない場合告知の内容の確認が行われることがある
事故や災害による死亡状況の確認に時間を要する
受取人が複数いる場合全員の書類がそろうまで支払われない
受取人が先に亡くなっている相続人の確定が必要になる

受取人が複数いる場合は、1人でも書類が遅れると全体が止まります。早めに連絡を取り合ってください。

受取人が指定されていない、または先に亡くなっている場合は、戸籍をそろえる必要があります。時間がかかります。

心当たりがある場合は、最初の電話でその事情を伝えてください。必要な書類を先に教えてもらえます。

確認に時間がかかる場合でも、途中の状況は問い合わせられます。「今どの段階ですか」と聞いて構いません。

見通しが分かれば、葬儀費用の支払い方を組み立てられます。分からないまま待つのが一番苦しくなります。

葬儀費用の支払期限との調整

葬儀社への支払期限は、葬儀の後1週間から10日程度に設定されることが多くあります。

保険金の入金と合わないときは、支払期限のほうを動かすのが現実的です。相談は普通のことです。

多くの会社は、事情を説明すれば応じてくれます。黙って遅れるより、先に伝えるほうが関係は保てます。

延滞金の定めがある場合もあります。契約書を確かめ、必要なら免除を相談してください。

株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると、葬儀の総額平均は96.73万円でした。まとまった金額です。

図で整理: 入金までをつなぐ方法
図で整理: 入金までをつなぐ方法(作図: 弁護士による葬儀ガード)

つなぐための選択肢

支払期限を動かせない場合は、別の方法でつなぎます。負担の少ない順に検討してください。

  • 香典を充てる(すでに手元にある)
  • 葬祭費・埋葬料を申請する(5万〜7万円程度)
  • 故人の預貯金の仮払い制度を使う
  • クレジットカードで支払う
  • 葬儀社の分割払いを使う
  • 葬儀ローンを申し込む

上から順に、費用の負担が小さくなります。ローンは金利がかかるため、最後に検討してください。

預貯金の仮払いは、遺産分割の前でも使える制度です。書類がそろえば、金融機関の窓口で手続きできます。

根拠となる条文 — 預貯金の仮払い

共同相続された預貯金債権について、各相続人は、遺産分割の前でも、口座ごとに残高の3分の1に自分の法定相続分を掛けた額を単独で払い戻すことができます(民法909条の2)。金融機関ごとの上限は150万円です。

この払い戻しは、遺産の一部分割によって取得したものとみなされます。後の分割で、自分の取り分から差し引かれます。

預貯金債権が遺産分割の対象になることは、最高裁判所大法廷平成28年12月19日決定が示しました。全額を自由に引き出せるわけではありません。

相続放棄を考えている場合は、預貯金に手を付けないでください。処分とみなされるおそれがあります。

受け取ったお金は誰のものか

保険金の性質を知っておくと、判断が楽になります。

根拠となる条文 — 保険金は受取人固有の財産

最高裁判所昭和40年2月2日判決(民集19巻1号1頁)は、保険契約者が自己以外の者を保険金受取人と指定した場合、その受取人は契約の効力発生と同時に固有の権利として保険金請求権を取得するとしました。

そのため、死亡保険金は相続財産に含まれず、遺産分割の対象にもなりません。

受取人が指定されていれば、相続放棄をしても受け取れます。ただし、相続税の非課税枠は使えなくなります。

つまり、受け取った保険金は受取人自身のお金です。葬儀費用に充てるかどうかも、受取人が決められます。

とはいえ、家族の間で認識がずれると後でもめます。使い道を先に共有しておくと安心です。

「保険金で葬儀費用を払い、残りはこうする」と最初に伝えておけば、後の精算がすんなり進みます。

必要な書類

早くそろえるほど、入金も早くなります。連絡した日から動き始めてください。

書類取得先目安
保険金請求書保険会社(所定の様式)数日で届く
死亡診断書または死体検案書の写し病院・医師当日〜数日
被保険者の死亡が分かる戸籍本籍地の市区町村即日〜1週間
受取人の本人確認書類手元にあるもの即日
保険証券手元にあるもの即日

証券が見つからない場合でも、契約者の氏名と生年月日で照会できます。まず電話してください。

どこの会社か分からない場合は、生命保険協会の照会制度を使えます。手数料と書類が必要です。

前もって受け取れる仕組み

契約によっては、亡くなる前に受け取れる仕組みがあります。該当するか確かめてください。

  • リビングニーズ特約(余命が一定期間以内と判断された場合)
  • 指定代理請求特約(本人が請求できない状態のときに家族が請求できる)

いずれも、契約に特約が付いている場合に限られます。証券や約款で確かめてください。

余命の告知を受けている段階で確かめておくと、葬儀費用の準備に使えることがあります。

ただし、受け取った分は死亡保険金から差し引かれます。使い道は慎重に決めてください。

税務上の扱いも変わります。金額が大きい場合は、事前に税理士へ確かめておくと安心です。

会社の保険や共済も確かめる

契約している保険は、1つとは限りません。見落とされやすいものを挙げます。

種類確かめ方
会社の団体保険勤務先の総務・人事に問い合わせる
共済(都道府県民共済・こくみん共済など)加入証書、口座引き落としの履歴
労働組合の共済組合の窓口
クレジットカードの付帯保険カード会社に問い合わせる
住宅ローンの団体信用生命保険借入先の金融機関

団体信用生命保険は、住宅ローンの残りが保険で支払われる仕組みです。該当する場合は、金融機関に早めに連絡してください。

共済は、掛金が少額のため見落とされがちです。通帳の引き落とし履歴を、1年分さかのぼって確かめてください。

勤務先の団体保険は、家族が把握していないことがあります。在職中に亡くなった場合は、必ず問い合わせてください。

家族に伝えておくこと

いざというときに使えないと意味がありません。元気なうちに共有しておいてください。

  • 加入している保険会社と、証券の保管場所
  • 受取人が誰になっているか
  • 特約が付いているか

エンディングノートに書いておく方法もあります。法的な効力はありませんが、探す手間が大きく減ります。

証券そのものを預けなくても、会社名と連絡先が分かれば足ります。番号は照会できます。

受取人が古いままになっていないかも、確かめておいてください。離婚や再婚があった場合は特に注意が必要です。

税金の扱い

保険金は、相続税の対象になります。ただし、非課税の枠があります。

500万円に法定相続人の数を掛けた額までは、相続税がかかりません。国税庁のタックスアンサーに扱いが示されています。

  • 相続を放棄した人は、この非課税枠を使えない
  • 契約者・被保険者・受取人の組み合わせで、税の種類が変わることがある
  • 受取人が契約者本人の場合は、所得税の対象になることがある

金額が大きい場合は、税理士に確かめてください。組み合わせによって結論が変わります。

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件で、うち52.6%が料金に関するものでした。お金の見通しを持たないまま契約すると、後で苦しくなります。

保険金の請求 — 連絡する前に確認する項目
保険金の請求 — 連絡する前に確認する項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

入金までの日数は、思っているより読めます。先に見込んでおいてください。

  • 書類が届いてから5営業日程度が目安
  • 死亡診断書の写しは、提出前に数枚取っておく
  • 間に合わないときは、葬儀社に支払期限の延長を相談する

香典・葬祭費・仮払い制度でつなげます。ローンは最後の選択肢にしてください。