返礼品・会葬御礼の費用|数量と精算のしかた
数量は当日まで動きます。「余った分は返品できますか」を先に聞いてください
請求書に「返礼品120個」と書かれている。会葬者はそんなにいなかった気がする。
そう感じたら、確かめてください。返礼品の数量は、事実で検算できます。会葬者名簿と香典帳が手元にあれば十分です。
そして、余った分を返品できる契約もあります。仕組みを知っておけば、精算の交渉ができます。
会葬御礼と返礼品の違い
まず、言葉を整理します。この2つは、別のものです。
会葬御礼は、参列してくださったことへのお礼です。香典の有無にかかわらず、全員にお渡しします。
返礼品(香典返し)は、香典をいただいたことへのお返しです。香典をくださった方だけが対象です。
| 項目 | 対象 | 単価の目安 | 渡す時期 |
|---|---|---|---|
| 会葬御礼 | 参列者全員 | 500〜1,500円 | 当日 |
| 返礼品(当日返し) | 香典をくださった方 | 2,000〜4,000円 | 当日 |
| 返礼品(後日返し) | 香典をくださった方 | いただいた額の1/3〜1/2 | 四十九日後 |
会葬御礼には、会葬礼状(お礼の手紙)が添えられます。ハンカチやお茶が定番です。
返礼品は、地域によって「当日返し」と「後日返し」に分かれます。どちらが正しいということはありません。
両方が請求書に載っていても、二重ではありません。目的が違うためです。
当日返しと後日返し
どちらを選ぶかで、手間と金額が変わります。地域の慣習に合わせるのが基本です。
当日返しは、その場でお渡しする方法です。手間が少なく、後日の作業が減ります。
ただし、金額が一律になります。高額の香典をいただいた場合は、後日改めてお返しします。
後日返しは、いただいた額に応じてお返しする方法です。四十九日の後に発送します。
- 当日返し — 手間が少ない。単価は一律
- 後日返し — 額に応じて選べる。作業は増える
- 併用 — 当日に一律、高額の方には後日改めて
北海道や東北の一部では、当日返しが主流です。関西では後日返しが多い傾向にあります。
葬儀社に「この地域ではどちらが一般的ですか」と聞いてください。判断の助けになります。
家族葬で香典を辞退した場合は、返礼品そのものが不要になります。会葬御礼だけを用意します。
辞退したにもかかわらず香典が届くことがあります。その場合は、後日改めてお返しします。
後日返しは、四十九日の法要が済んでから発送するのが一般的です。挨拶状を添えます。
数量はどう決まるか
契約の時点では、参列者の人数は分かりません。だから、見込みで発注します。
見込み方は、連絡する相手を書き出す方法が確実です。名簿を作ってください。
- 同居の家族と、その配偶者
- 別居の子・孫と、その配偶者
- 故人の兄弟姉妹と、その配偶者
- 故人の友人・近所の方
- 故人が勤めていた会社の関係者
多めに見込んで、後から減らすほうが安全です。足りなくなるほうが困ります。
ただし、多く発注すれば、その分が請求されます。返品の条件が重要になります。
「余った分は返品できますか」。この一言を、契約前に必ず聞いてください。
返品の条件を確かめる
返品できる契約と、できない契約があります。品物によっても変わります。
| 品物 | 返品の可否 | 理由 |
|---|---|---|
| お茶・海苔・タオル | できることが多い | 保存がきく |
| 名入りの会葬礼状 | できない | 個別に印刷している |
| カタログギフト | 会社による | 発券済みの扱い |
| 生鮮品・菓子 | できないことが多い | 日持ちしない |
会葬礼状は、故人の名前を入れて印刷します。返品はできません。
そのため、会葬礼状の数量は慎重に決めてください。余りが出ても戻りません。
返品の条件は、契約書か注文書に書かれています。書かれていなければ、確かめてください。
請求書を検算する
請求書が届いたら、数量を確かめてください。事実で計算できます。
会葬御礼は参列者の人数、返礼品は香典の件数と対応します。ここがずれていれば、確かめる価値があります。
「返礼品が120個の請求ですが、香典帳は78件でした」。この一文で、話が具体的になります。
ただし、香典を連名でいただいた場合は、件数と個数が合わないことがあります。
会社からまとめて1件の香典があり、返礼品を人数分渡した、という例です。理由があれば納得できます。
余ったときの精算
余った分は、返品して精算するのが基本です。ただし、条件があります。
未開封であることが求められるのが通常です。箱を開けたものは返せません。
数量の確認は、当日か翌日に行ってください。時間が経つと、確かめにくくなります。
- 残った箱の数を数える
- 写真を撮っておく
- 担当者に立ち会ってもらう
余った品を自宅で使う選択もあります。その場合は、請求どおりの支払いになります。
法要の引出物に回す方法もあります。日持ちする品なら、無駄になりません。
余りが多い場合は、まず担当者に相談してください。柔軟に対応してもらえることがあります。
数量の精算に応じない契約であれば、それも確かめておく価値があります。
契約前に条件を聞いておけば、当日の判断が変わります。多めに頼むか、控えめにするかを選べます。
単価の考え方
単価は、地域と家の慣習で決めて構いません。決まりはありません。
香典返しは、いただいた額の3分の1から半分を目安とする地域が一般的です。
- 香典5,000円 → 返礼品2,000円前後
- 香典10,000円 → 返礼品3,000〜5,000円
- 香典30,000円 → 返礼品10,000〜15,000円
当日返しでは、多くの方が5,000円前後の香典を想定します。単価2,000円台が標準です。
高額の香典をいただいた方には、後日改めてお返しします。名簿を分けて管理してください。
株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると、葬儀の総額平均は96.73万円、基本料金の平均は72.02万円でした。
差額の約25万円が、飲食と返礼品にあたる部分です。人数で動く費用の中心です。
品物の選び方
品物には、選ばれやすい定番があります。迷ったら、この中から選べば失礼になりません。
「あとに残らないもの」を選ぶ考え方が、広く共有されています。消えものと呼ばれます。
| 品物 | 特徴 |
|---|---|
| お茶・海苔 | 日持ちする。定番で失礼がない |
| タオル・寝具 | 実用的。かさばる点に注意 |
| 洗剤・石けん | 消耗品として使いやすい |
| 菓子折り | 日持ちの短いものは避ける |
| カタログギフト | 相手が選べる。単価の幅が広い |
カタログギフトは、金額の幅を選べます。高額の香典をいただいた方にも対応できます。
肉・魚などの生ものは、仏事では避ける地域があります。地域の慣習を確かめてください。
商品券は、金額が分かるため避ける考え方があります。一方、実用性から選ぶ家庭もあります。
葬儀社に相談すれば、地域で選ばれている品を教えてもらえます。
相続税での扱い
税の場面では、香典返しの扱いが特殊です。ここは間違えやすい点です。
根拠となる条文 — 葬式費用の控除と香典返し
相続または遺贈により財産を取得した者が被相続人の葬式費用を負担した場合には、その負担した金額を課税価格から控除するとされています(相続税法13条1項2号)。
香典は、社会通念上相当と認められる範囲であれば課税されないとされています(相続税法基本通達21の3-9)。
そのため、香典返しにかかった費用は、相続税の計算上、葬式費用として控除することができません(国税庁タックスアンサー No.4129)。
一方、会葬御礼の費用は扱いが分かれます。香典返しを兼ねている場合は控除できません。
会葬御礼だけを別に渡している場合は、控除できると整理されることがあります。判断に迷うときは税理士に確かめてください。
領収書は、会葬御礼と返礼品を分けて発行してもらうと、後の説明が楽になります。
申告の際は、控除できるものとできないものを分けた一覧を作ってください。
金額の大きい費目なので、区分を誤ると税額に響きます。迷うときは税理士に確かめてください。
家族への精算に使う
葬儀費用を立て替えた場合、返礼品の費用も精算の対象になります。
計算は式ひとつです。手出しの実額 = 支出の合計 −(香典 − 香典返し)
香典から香典返しを引くのは、香典返しが香典に対応する出費だからです。
この計算を先にしておくと、家族への説明がしやすくなります。数字が透明であるほど、話は早く進みます。
香典帳が残っていれば、それが最も確かな記録です。金額と氏名が並んでいます。
一覧表は、項目・支払先・金額の3列で足ります。手書きでも構いません。
領収書のコピーを添えて渡すと、説明が省けます。数字が見えれば、話は進みます。
香典を引かずに請求すると、話がこじれます。先に引いておくほうが早く進みます。
説明と違った場合
数量や単価が説明と違っていた場合の考え方です。
根拠となる条文 — 説明されなかったときの考え方
事業者が消費者の利益となることだけを告げ、不利益となる事実を故意または重大な過失により告げなかった場合、消費者はその契約の意思表示を取り消すことができます(消費者契約法4条2項)。
法令の規定に比べて消費者の権利を制限し、または義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効です(同法10条)。
法律上の原因なく他人の財産によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において返還する義務を負います(民法703条)。
もっとも、実務では数量の確認から始めるのが現実的です。事実で確かめられる項目だからです。
国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件で、うち52.6%が料金に関するものでした。
説明を求めても数字が出てこないときは、消費者ホットライン188へ相談してください。無料です。
支払期限が近い場合は、争いのある行だけを保留し、残りを期限内に払う形が現実的です。
「この行の根拠を教えてください。それ以外は期限内に支払います」と書けば足ります。
まとめ
返礼品の費用は、数量で決まります。数量は事実で確かめられます。
- 会葬御礼は参列者数、返礼品は香典の件数と対応する
- 契約前に「余った分は返品できますか」を聞く
- 請求書は、会葬者名簿と香典帳で検算する
差があれば、その差だけを伝えてください。落ち着いて確認すれば大丈夫です。
