お布施を葬儀社経由で払うとき|手配料と内訳の確認方法

お寺に渡る額と、葬儀社に残る額は別です。内訳を聞くのは失礼ではありません

葬儀社から「お布施もこちらでお預かりします」と言われた。金額も提示された。

便利な仕組みですが、確かめておくことがあります。その金額のうち、いくらがお寺に渡り、いくらが葬儀社に残るのかです。

聞くのは失礼ではありません。支払う側として当然の確認です。順に見ていきます。

お布施はどこを通って、どこに届くのか
お布施はどこを通って、どこに届くのか(作図: 弁護士による葬儀ガード)

葬儀社経由の仕組み

宗教者を葬儀社が手配し、お礼も葬儀社が預かって渡す。この形が広がっています。

菩提寺がない家庭が増えたためです。頼む先がない状態で、当日までに読経をお願いするのは簡単ではありません。

葬儀社は、提携する寺院や僧侶に依頼し、日程を調整します。この手間に対する費用が発生します。

そのため、支払う金額は次のように分かれていることがあります。

内訳意味支払先
布施読経や戒名に対するお礼寺院・僧侶
手配料・紹介料手配にかかる事務の費用葬儀社・手配会社
御車代・御膳料交通費・食事に代わるもの寺院・僧侶

分かれていること自体は問題ありません。問題になるのは、分かれていることが伝えられていない場合です。

「お布施は◯万円です」とだけ言われると、全額が寺院に渡ると受け取ります。ここに行き違いが生まれます。

後から寺院と話す機会があったときに、金額が食い違って気づくことがあります。気まずさが残ります。

先に内訳を知っておけば、こうした行き違いは起きません。確認は、関係を守るためでもあります。

内訳を聞くのは自然なことです

聞き方は簡単です。角の立たない言い方で足ります。

  • 「このうち、お寺様にお渡しする額はいくらですか」
  • 「手配にかかる費用は別にありますか」
  • 「御車代と御膳料は、この中に含まれていますか」

この3つで内訳は分かります。答えが返ってこない場合は、その事実自体が判断材料になります。

葬儀社は、あなたの依頼を受けて寺院に取り次ぐ立場です。取り次いだ結果を説明する立場でもあります。

根拠となる条文 — 預かった側の説明義務

他人に事務の処理を委託する契約を委任といい、報酬の有無にかかわらず、受任者は委任の本旨に従って善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負います(民法644条)。

受任者は、委任者の請求があるときはいつでも委任事務の処理の状況を報告しなければなりません(同法645条)。また、委任事務を処理するにあたって受け取った金銭は、委任者に引き渡す義務があります(同法646条1項)。

お布施を預けて寺院へ渡してもらう関係は、この委任に近いものです。だから、いくら渡したかの報告を求めることができます。

手配料の相場

宗教者手配サービスの費用は、あらかじめ定額で示されていることが多くあります。

株式会社鎌倉新書の「第7回 お葬式に関する全国調査」(2026年)によると、葬儀の総額平均は96.73万円でした。宗教者へのお礼は、この総額とは別に扱われることがあります。

  • 読経のみの手配は、数万円から10万円台の例が多い
  • 戒名が付く場合は、位号によって金額が上がる
  • 追加の法要(初七日など)は別料金の例が多い

定額であることは、分かりやすさの点では利点です。金額が事前に決まっているためです。

一方、戒名の位号による差は分かりにくい部分です。何が違うのかを聞いてから決めてください。

読経の回数によっても金額が変わります。通夜と告別式の両方か、告別式のみかで違います。

初七日を同じ日に行う場合の扱いも聞いておいてください。別料金になることがあります。

菩提寺がある場合は順番に注意

これが一番大きな注意点です。先祖代々のお寺がある場合は、必ず先に菩提寺へ連絡してください。

葬儀社が手配した僧侶に読経してもらった後で菩提寺に伝えると、納骨を断られることがあります。

菩提寺が遠方の場合、同じ宗派の寺院を紹介してもらえることがあります。その場合も、戒名は菩提寺が付けます。

後から戒名を付け直すことになると、費用が二重にかかります。順番の問題だけで避けられます。

金額でもめたときの考え方

お布施の額そのものについては、法律で判断しにくい面があります。

根拠となる条文 — 宗教上の問題と裁判

最高裁判所昭和56年4月7日判決(民集35巻3号443頁)は、宗教上の教義や信仰の内容に関する判断が前提となる紛争について、法律上の争訟にあたらないとしました。

つまり、「この戒名にこの額は高すぎる」という宗教上の評価そのものを、裁判所が判断することにはなじみません。

一方、葬儀社との間で「いくらを渡す」という契約が成立していれば、その履行は民事の問題です。渡された額の確認は求められます。

だから、争点を分けてください。宗教上の評価ではなく、契約の内容と、実際に渡された額を確かめます。

「◯万円のうち◯万円をお寺に渡すと聞いた」という説明があったなら、そのとおりに実行されたかが問題になります。

説明と違う扱いになっていた場合は、書面で説明を求めてください。それでも解決しなければ、相談窓口を使えます。

消費者ホットライン188に電話すると、最寄りの消費生活センターにつながります。相談は無料です。

寺院との関係が続く場合は、直接の対立を避けたいこともあります。その場合も、まず窓口に相談してください。

図で整理: 菩提寺がある場合とない場合の進め方
図で整理: 菩提寺がある場合とない場合の進め方(作図: 弁護士による葬儀ガード)

領収書が出ないときの記録

お布施は、宗教上のお礼という性質から、領収書が出ないことがあります。

そのままにすると、後で困ります。相続税の申告や、家族への説明のときに根拠がなくなるためです。

この5つがあれば、記録として足ります。ノートでも、スマートフォンのメモでもかまいません。

葬儀社経由で払った場合は、葬儀社の請求書に記載されることがあります。その場合は請求書が記録になります。

「布施」の行が請求書にあるかを確かめてください。なければ、別に記録が要ります。

相続税の申告での扱い

葬式費用は、相続財産から差し引けます。お布施も対象に含まれます。

国税庁のタックスアンサーNo.4129によると、控除できるのは通夜や葬式にかかった費用、火葬や埋葬の費用、読経料などのお礼です。

控除できる控除できない
読経料・戒名料などのお礼香典返しの費用
通夜・葬式の費用墓石や墓地の購入費用
火葬・埋葬・納骨の費用初七日以降の法要の費用

領収書がなくても、日付・相手・金額のメモがあれば説明できます。だから記録が要ります。

なお、消費税の扱いも分かれます。お布施は対価性のない喜捨として消費税がかからないのが通常です。

一方、葬儀社の手配料はサービスの対価なので、消費税がかかります。請求書の税区分を見ると、内訳が推測できることがあります。

御車代と御膳料

お布施とは別に、御車代と御膳料を渡す慣習があります。金額は地域と寺院で違います。

  • 御車代は、寺院から式場までの交通費に代わるもの
  • 御膳料は、会食に参加しない場合の食事に代わるもの
  • どちらも5,000円から1万円程度の例が多い

葬儀社が手配した場合は、これらが定額に含まれていることがあります。含まれるかどうかを確かめてください。

含まれているのに別に渡すと、二重になります。渡す前に一言聞けば足ります。

戒名の位号で金額が変わります

戒名は、宗派によって呼び方が違います。浄土真宗では法名、神道では諡と呼ばれます。

金額の差が出るのは、位号と呼ばれる末尾の部分です。信士・信女から、居士・大姉、院号へと段階があります。

位号の例一般的な位置づけ
信士・信女基本となる位号
居士・大姉信士・信女より上とされる
院号を伴うもの寺院への貢献などを踏まえて授けられる

金額は寺院によって大きく違います。数万円から、院号を伴う場合は数十万円になる例もあります。

大切なのは、選べるということです。すすめられた位号をそのまま受け入れる必要はありません。

「信士・信女でお願いしたい」と伝えてかまいません。家の慣習や、先に亡くなった家族との釣り合いで決める人が多くいます。

先祖の位牌を見ると、これまでどの位号だったかが分かります。迷ったら、それに合わせるのが自然です。

判断に迷うときは、寺院に「これまでのうちの家はどうでしたか」と聞いてください。過去帳で確かめてもらえます。

支払いのタイミング

いつ渡すかも、あらかじめ決めておくと慌てません。地域と寺院によって慣習が違います。

  • 通夜の前にあいさつをして渡す
  • 葬儀・告別式の後に渡す
  • 後日、寺院へうかがって渡す

葬儀社経由の場合は、葬儀社への支払いに含まれるのが通常です。別に用意する必要はありません。

現金で直接渡す場合は、白い封筒か奉書紙に包みます。表書きは「御布施」とするのが一般的です。

新札でなければならない決まりはありません。香典と違い、あらかじめ用意しておくものだからです。

依頼する前に確かめること

宗教者の手配を頼む場合は、次を先に確かめてください。すべて事前に聞けます。

  1. 宗派は選べるか(希望する宗派で手配できるか)
  2. 戒名は付くか。位号による金額の違いはあるか
  3. お布施のうち、寺院に渡る額はいくらか
  4. 初七日や四十九日も同じ僧侶に頼めるか
  5. 後日、菩提寺に納骨する予定はあるか

5つ目は、自分側の確認です。納骨先が決まっていないなら、先に決めるほうが安全です。

国民生活センターが2026年6月3日に公表した資料によると、葬儀サービスに関する相談は2025年度に917件で、うち52.6%が料金に関するものでした。宗教者の手配に関する行き違いも起きています。

お布施の支払い — 渡す前に確認する項目
お布施の支払い — 渡す前に確認する項目(作図: 弁護士による葬儀ガード)

まとめ

葬儀社経由でお布施を払うときは、内訳を確かめてください。

  • 寺院に渡る額と、手配料を分けて聞く
  • 菩提寺がある場合は、必ず先に連絡する
  • 領収書が出ない分は、自分でメモを残す

順番と記録の2つを押さえておけば、後から困ることはほとんどありません。